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はじまりのお話(SS)
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2009-06-03(水) 22:09 |
ルカ・へウィト(cvah8297) |
白い花が風に揺れる。薄青い空と銀幕市の街並みを眺めながら、アマリリスの髪飾りをした娘は誰にともなく笑みを零した。 (とうとう、終わってしまう時が来たんだね) 見慣れた街を酷く懐かしそうな眼差しで見つめ、今は掌に無い数多くの思い出を心に想い浮かべた。 (いつかは必ず終わるんだから。終わってしまえば何もかも消えてしまうかもしれないけれど――でも、ほら) 目を閉じれば全てが鮮明に、瞼の裏側に流れていく。 幾つもの小さな出来事が、暗い闇の中で星粒のように瞬き、ぱしりと光の粉を振り撒いては彼女の掌に降り注いだ。紐解く度に鮮やかな感情が沸き上がり、その度に彼女の胸を締め付ける。 「何故だろうね……分かっていた、筈なのに」 胸の中は降り積もった星の粉でいっぱいになり、ついには透明な雫となって彼女の頬を流れ落ちていった。
小さな願い事が、憧れが、なんて事の無かった日常が、人知れず主人の手を離れ、そっと海原のように広大な空へと浮かび上がっていくのだ。集まった沢山の光の粒はやがて白い天の川となり、大きな流れとなって何処かへと去って行く。 いつか主が小さな星粒へと手を延ばし、そのリボンを紐解く時が来ようとも……光のカケラは何時までも、沢山の宝石と共に輝き続けていくだろう。 永遠に、消え去る事なく。
「……そうだ!良い事思いついた」 ごしごしと顔を拭うと、娘はまたいつも通りの笑顔を浮かべ、何処かへと走り出した。
「おい、離しやがれ……!この団子頭!」 抵抗する黒ツナギの男の腕を半ば引きずるように引っ張りながら、娘はにこにこと前方を指差した。 「お兄さんに協力して欲しい事があるの!いいでしょ??あれ見て!」 眉間に眉を寄せて示された方角に目をやると、そこには何やら作業をしているらしい数人の人々と、幾つもの機材が並べられているのが見えた。 「…何してるが知らねェが、雑用なんざ死んでもやらねェぞ」 踵を返して立ち去ろうとした男の服を慌てて掴み、娘がぶんぶんと首を振る。 「違う違う、お兄さんには壁画についてのそーだんしたいだけだよ」 「壁画ァ?」 娘はにっかりと笑い、『きかくしょ☆』と書かれた自由帳を広げて見せた。
「皆でおまつりをやりたいの。沢山の人から貰った幸せを有り難うって。僕らからの感謝の気持ちを込めて、すっごく楽しいお祭りをさ。ね?」 「ほんとー!?やるやるー!」 娘の提案に、白に近い青色の髪の少年が元気に頷く。 「わたしに出来る事があるなら、お手伝いするわ」 バスタブ大の水溜まりに半身を浸かった黒髪の人魚が、愛らしく小首を傾げて微笑んだ。 「楽しそうだねぇ、わたしも喜んでお手伝いするよ」 少年や少女を幸せそうに見渡しながら、青年が蜜色の瞳を細めて頷いた。 「喫茶店を開いて、皆で食事しよう。あと記念品を作ったり……メッセージのついたプレゼントを用意しよう。まずは『会場作り』からだね!見た目をとっても綺麗にしなきゃ」
「えいっ!」 ぱしぱしと霜柱が張るような音色を立てながら、少年の掛け声に合わせて幾つもの透き通った氷のような――薄青い不思議な樹木が地面から生え、辺りに立ち並んだ。 人魚や青年の周囲から湧き出た透明な水がさわさわと足元に流れ始めた。黒ツナギの男が描いた銀色の小魚が浅い水辺を自由に泳ぎ始め、お団子頭の娘はシャボン玉を吹いて周囲に飛ばした。夜桜の姫君が虚空へそっと手を差し出すと、現れた光の粒が花吹雪のようにふわりふわりと降り注ぎ、ガラス色の樹々や、虹色のシャボン玉や、銀色の小魚の鱗が――繊細なガラス細工のような涼やかな空間が、きらりと光を反射して、まるで宝石のようにきらめいた。
「はいはい。言われてた看板持ってきたよー」 黒い背広の男が現れ、手にしていたステンドグラスの板を面子に見せる。鮮やかなガラスの上に刻まれていた言葉は、『Thank you, and I love yours.』。 「よーし、有り難う!これでもうすぐ始められるね、僕らのおまつり」 「うむ。準備は整ってきたようじゃしのう」 「ボク、すっごく楽しそうでわくわくする!」 「そうだねぇ、わたしも喜んでお手伝いするよ」 「…ボケんなよじいさん」 看板は樹と樹の間に跨ぐように飾られ、光の粒を浴びて不思議な空間を彩った。
こうして『皆のおまつり』は始まったのです。 ありがとう、そして、沢山の大好きを伝える為に。 |
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おわりのおはなし(SS)
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2009-06-30(火) 23:54 |
ティモネ(chzv2725) |
「さて……」 立ち上がった拍子にふと、棚の上に置いてあるアオタケ人形と目が合い、思わず軽く撫でてから棚の戸を開けた。 「再生してみましょうか……思い出の映像とやらを、ね」 取り出したのは、一本のビデオテープである。
★壁画★
案山子の格好をさせられたカメラ(カメラを取り付けられた案山子?)のレンズが、砂浜に集まった人々を捉えている。 「はいはーい!今から壁画制作始めまーす!」 お団子頭が手をぶんぶん振ってカメラにアピールすると、やってきた猫背の男が興味深そうに鼻を鳴らしてしゃがみ込んだ。 「成程なァ……壁画云々っつってたのはこの事か」 「そうそう。凄いでしょう」 にかっと笑みを見せて、お団子頭が筆と皿を渡す。 「まァ、シンプルに行くのが一番だろ」 ひやりとした石版に、最初の手形が押された。
「トウ!」 突如、掛け声と共に金色のシルエットが上空より現れ、きらきらと閃光を放ちながら石版に突っ込んでいった。あまりの眩しさに黒ツナギの男が顔をしかめる。 「………なんだァ?」 顔を上げて石版を見ると、金色の子供の手形が二つ、パーの形で並んでいた。
「……」 「………」 「………え?!アクションそれだけ!」 ノーリアクションに見兼ねたのか、思わず隣の石版で作業していたお団子頭が突っ込みを入れた。 「……なあ、ミゲル。これ、で、ええんか…?」 覚束ない手つきで掌にペンキを塗っていた青年が、恐る恐る尋ねながらべちゃりとスタンプした。塗料の塗りすぎで思い切り形が崩れている。 「……いや、どう見ても塗りすぎだろ。塗るのは軽くで良いから」 男は洗浄液を浸したタオルを手渡すと、紫の絵筆を手に取り、自分の掌に塗ってやり方を見せた。 「………」 隣から様子を見ていた少年が一人こくりと頷き、真剣な顔付きで石版と両手にペンキを塗る。 「……………」 ぺったん。出来た跡は、丸が三つ並んだありがちな動物モチーフにそっくりだった。 「へー面白そうだねー」 その隣では尻尾のついた少年が白いペンキ缶を手に、無表情のまま白い手形を大増殖させていた。 「壁画だって!弥平さん。ほらほら、一緒にやろう」 茶髪の少女がパステルピンクのペンキ缶を取り、自分の掌とバッキーの左手に塗――ろうとして、手元が狂って鼻にも付いた。 「……あ。……ごめ」 気を取り直して、自分の手形とバッキーの手形(と鼻形)を残した。 「んしょ、んしょ」 細い少年が青のペンキで手形を押し、『は。は。 おね―ちやんすき』と歪な字を書き始める。 「おや、面白そうですねー。では私も……」 間延びした声で呟きながら、青年もオレンジ色のペンキで両手のスタンプを押していく。下の方から黒猫が足跡スタンプを押した。 「記念に、のう。私たちが生きた証を、ここに」 褐色の肌の女性が、薄い緑のペンキを自分と赤子の手に着け、そっとスタンプを押した。 「妾の国にこのような催し事があれば、楽しかったのであろうな……」 桜色の手形を残しながら、艶やかな和装の少女が少しだけ淋しげに微笑んだ。 「シュビデュバッ!」 前半で聞いた覚えのある声と共に金色のシルエットが石版を駆け抜けていった。近くの人々が眩しさのあまり顔をしかめ、気が付いた時には石版にフィーバーなポーズが刻まれていた。片膝を着いて天を指差す角度の良さが心憎い。
「ふーん、なーるほど!」 お団子頭が唸りながら石版の全体像を眺めた。三枚目の石版は、赤や黄色や桜色、大量に押された白色が目立っているようである。 「何が出来るのかしら?」 「まだ分かりませんねー」 茶髪の少女や黒髪の男性もうーんと首を傾げた。
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「えーーーーーナニコレナニコレ」 ヘッドフォンからジャカジャカと激しく音洩れさせながら、赤髪の少年がふらりと現れる。 「殴っていいの?マジかよオケーオケェ。ローラもやろうぜ」 ヒャッハハハハと病的な笑い声を立てて赤のペンキで激しく手形を残すと、バッキーの小さな手にもペンキをつけてスタンプしていった。 赤いペンキの飛沫をぴしゃぴしゃと浴びながら、青色の七ツ首のドラゴンが楽しそうにそれぞれの頭をペンキ缶に入れた。 「きゅいーきゅっきゅきゅいー」 赤、燈、黄、緑、青、紫、桃色の鼻スタンプがぽんぽんと石版に押されていく。 「わぁい、虹みたいでキレイ〜、ぺったんいくノよー!」 目を輝かせたイルカが、全身にカラフルなペンキを塗ったぐって石版に飛び込んだ。背中を地面にぐりぐりやってる猫か、陸揚げされたばかりのマグロみたいな動きでびちびち跳ね回った。周囲からにわかに悲鳴が上がる。 「手形で絵を描くなんて面白そうだね」 赤目の少年が若葉色のペンキを手に取り、ぺたぺたぺたと「ハハハ」の形でスタンプを押した。 「これは負けていられませんね」 何の勝ち負けかは謎だったが、長髪の青年がふむ、と唸り声を上げて両手を重ねた形のスタンプを押した。 「どうです、ハトに見えませんか」 「お言葉ですが、その手形はハトではなくカニに見えると思います」 自らの使い魔たる少女に淡々と突っ込まれ、青年が再びふむと唸り声を上げた。 「……」 と、脇から眺めていたピュアスノーのバッキーが、何を思ったか突然パステルグリーンのペンキ缶にダイビングした。 「うわ、ふー坊!?仕方のない子だね……これじゃあまるで、ハーブカラーの子のようだよ?」 苦笑を零し、やってきた品の良さそうな男性がペンキ塗れのバッキーを抱き上げた。 「……(一粒で二度美味ちいふー坊でち)」 両手を伸ばし、バッキーがびたりと全身でバキ拓を残した。男性もバキ拓を挟むように左右に手形を押す。 「Tresbien!皆との合作、出来上がりが楽しみだねぇ」 「………」 しばし黙って眺めていたファッショナブルな装いの少年だったが、これにしよ、と素っ気なく呟くと、器用にもピンク色の手形をぺぺぺぺと素早い動きで押し始めた。 「後で綺麗に洗ってやるから、やってくるか。な?」 引き連れた生き物達に目をやり、不思議な髪色の若者がペンキ皿を地面に置いた。群がったペット達はペンキを足や手に付着させ、とてとてと石版を歩いて行く。足が無い生き物は全身にペンキを塗って転がり始めた。 「アプレレキオは……でかすぎか?」 大き過ぎた怪鳥は、片足だけ石版の上に置いた。 「せっかくだからな。余も何か残しておいてやるのだ。感謝するがよいぞ!」 赤色の手形を押し、小さな皇帝はペンキのついた顔でえっへんと意気込んだ。 「んー?っと、白と水色な」 何を連想したのか二つの色に微笑を零し、黒髪の男はぺたぺたと手形を押し始めた。 「俺の証って奴か。なんかかっこいいよな。うん」 鮮やかな花の翼の少年が軽く頷き、ぺたりと水色の手形を押した。
「あらあら、カラフルだわね……」 二枚目の石版に目をやり、チャイナ服の女が笑った。一部虹色が斬新な事になっている。 「ペタペタはスゴク楽しいノよ〜v」 「ふむ……緑色が森のようにも見えるねぇ」 ペンキ塗れのイルカやバッキー連れの男性も石版を眺めた。
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「ピーピロロロ……」 悲しげなモデム音を鳴らし、動くペットボトルが石版に二本のタイヤ跡を残していく。 「ふふ、面白そうね」 銀髪の女性が楽しそうに目を細めると、濃い藍色の塗料を手に塗ってスタンプを押した。 「こうやって……こうか?」 「あら、上手じゃない?」 「ッ……っせぇな」 彼女の隣から、少し背の高い青年が石版に手形を押した。仲良く四つの手形が残された。 「僕達もやってみましょうか」 柔らかな微笑みの青年がコウモリとお饅頭?に声を掛け、それぞれ二匹に塗料を塗ってスタンプを押した。「記念に俺も押していくか……」 傍らに居た友人もペンキを手に取り、彼らの傍に少し大きめの手形を残した。 「手形、ねぇ。………手形。ね」 黒髪の男は一人呟いて白のペンキを右手に付け、石版に手形を押した。押すだけ押して、さっさと水辺で洗い流し始める。 「………」 その様子を観察していた少女は、掌で白と青を混ぜて水色をこしらえると、彼の手形の近くにべしっと押した。何を見比べたのか交互に見遣って舌打ちし、不機嫌に睨み付けた。 「どれどれー、僕も一つ押してみようかねーぇ」 痩せ細った男が白いペンキを塗り始める。骨張った掌が白色でまさしく骨に見える。 「あいやいやー!」 押された手形はやはり骨にしか見えず、レントゲン写真のようになっていた。 小さな蝙蝠がぱたぱたと何処からともなく飛んでくると、道具置場にひらりと舞い降りてしばし作業現場を眺めた。やがて楽しそうに一鳴きし、色とりどりの刷毛に身体をなすり始める。現れた主人は苦笑を零し、蝙蝠拓に満足気な彼を掬い上げて連れて行った。
「ほー?大分色が着いてきたじゃねえか」 いつの間にかやってきた屋台の親父が石版を眺めながら通り過ぎていった。 「青色系が多いから、空みたいに見えるわね?」 「ええ……こうして見ると、本当に鮮やかですね」 銀髪の女性や蝙蝠の主人も目を合わせ、柔らかな微笑を零した。
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「僕も残すよー!えーい!」 掛け声と共に少年が手形を押し、上から覗き込んでいた妖艶な獣人も赤いペンキでハート型の手形を残していった。 「お花、おいらたちもやってみよ。な?」 「あ、たつ、待って……」可愛いらしい少年達もとてとてと集まり、お揃いの緑の塗料で手形を押した。 「これ、何の絵が出来るんやろね……」 しばし絵画を眺めていた二人の後ろから二匹(?)がちょこまかと現れ、躊躇いなく黄色のペンキに両手を突っ込んだ。 「覚悟しろ!!はーーーっ!」 子犬の足跡と、逆三角形の穴が開いた小さな手形がスタンプされた。 「よくできました!ぷひーv」 無意味な語尾が非常に可愛い。 「わ、可愛いね。わたしもやろーっと」 赤毛の少女は深味のある鮮やかな青色のペンキ缶を取り、思いっきり手を突っ込んでスタンプを押し始める。 「ふふふ……一度に二色を押す……!」 現れた台風の人は、右手に赤を左手に白を着け、まさに台風の勢いで大量の手形を残していった。計らずも遠目からは桃色のペンキに見える。 「こういうのって気持ちが湿っぽくなっちゃうから柄じゃないんだけど……ついついあなたが居たから来ちゃったわ」 空色の手形を押しながら、妙齢のスタイリッシュな美女が金髪の小さい人にウインクした。 「綺麗の空色ぺったん、よくできました!」 小さい人は彼女の真似をして隣に手形を残した。あまりの可愛さに美女がきゃーと黄色い声を上げて撫で倒す。小さい人はぷひーと喜びの声を上げて抱き着いた。 「くっ、地球人めが……!」 二人の様子に思い切り下唇を噛んで嫉妬する巨乳の翁も居たりした。 「最後の記念にお邪魔しますねー」 鳩頭のサラリーマンが顔を出し、無表情で手形を押した。予想外に人間の手型だった。 「ぽよんす!いくぞー!」毛皮の彼がぽよりと片手を上げて参上すると、赤色のペンキを着けてぺったんとにくきうすたんぷを押した。 「でやーーーー!!」 雄叫びと共に現れたのはペンキ塗れの翼の少年である。壁画に体当たりし、広範囲に渡って真っ赤な塗料だらけにした。 「魚拓ならぬ俺拓!どうよこれ」 結果、俺拓は残念クオリティである。出来栄えはあまり気にしていないようであったが。
「あ、な、何だか……海、みたいです」 「あ、本当だ。しかし紅白みたいになってる箇所が大胆ですねー」 「痕跡を残したいという欲求もまた、有限なる人生を持つ人間の本能かもしれん」 おどおど少女の隣に鳩頭なサラリーマンと怪しい美少女が佇んでいる事に気がつき、驚いたのか少女は小さく悲鳴を上げた。 |
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それから、
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2009-07-01(水) 00:05 |
ティモネ(chzv2725) |
★完成★
4枚の石版を並べ直し、一同は改めて絵画を眺めた。 それはとても鮮やかな色彩だった。淡い水色の空を藍色や卵色の羽根がひらひらと舞い踊り、白い積乱雲を超えて地上に舞い落ちていく。鮮やかな青色の海から飛沫を上げて飛び出したそれは、大きな大きな赤い魚だった。 「うわぁ……」 絵画の中から、まるで音色が聞こえてくるかのようだった。きしきしと不思議な音を立てて赤い鱗が綻び始め、桜色の花弁に姿を変えながら海や森へと降り注いだ。森の中から鮮やかな虹が飛び出し、空に浮かぶ雲の中へと吸い込まれていく。海の向こうからそっと夕日が現れ、地平線に淡い黄色の光を零した。赤い魚は巨体をゆっくりと傾け、自分の頭に乗った金色の妖精と共に夕焼けの中へと泳いでいった。 「不思議だね…」 誰かが静かに頷いた。完成を誰も知らなかったのだ。こんな不可思議な――夢のような絵画が、此処に完成するとは。 森の中をよく見ると「ハハハ」の文字があったり、動物の足跡があったり、虹をよく見つめるとイルカのようなシルエットが写りこんでいた。気付いた誰かが笑い声を漏らす。 空の中にはカラフルなコウモリが飛んでいたし、魚の体には可愛らしいハートのタトゥが入っていた。魚の体が綻んで花びらになっている箇所は、よく見ると白と赤の手形が大量に押され、混ざり合って桃色に見えていた。魚の穏やかそうな目は、一つの黒い手形が目玉になっていた。 此処に、その絵画は完成した。
水辺のパーティは他にも色々なところで盛り上がっていたようだ。ダンスパーティではカップル達やでれでれのお兄ちゃんの姿が見え、屋台では可愛らしい衣装の少女が贈り物を買い求めていた。ガラスのテーブルに人々が集まってお茶を飲み、水辺の森では綺麗な音色が紡がれていた。
そうして、掛け替えの無い時間は過ぎていった。
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「……ほんと、明るい人たちだったわねぇ」 ビデオを止め、目元をそっと拭って立ち上がった。窓際に置いてあったサングラスを掛けたぬいぐるみを軽く叩くと、ふうと背伸びした。 「さ。御仕事始めましょう」 何事も無かったかのように、ガラガラと店のシャッターを開け始めた。
星は全ての空に輝き、いつしか人の心の中に降り積もっていく。 誰かの手によってその星が紐解かれる時、それは新たな星粒となって輝き続けると信じていたい。 きっと彼女なら――そう、言ってくれるだろう。 「みんな。どうか夢を―――」 沢山の星に見守られるこの世界なら、きっとこれからも輝き続けていく筈だから。 誰のものでもなく、それでも沢山の人の中で、きらきらと鮮やかな光の粉を零して。
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〜〜〜壁画制作〜〜 ご参加有難う御座いました。 石版の並びは、Aが左上、Bが右上、Cが左下、Dが右下、のような形となっておりました。
Aの色合い: 藍色・瑠璃色・スカイブルー・ベビーブルー・水色・緑・緑・白・白・ベビーピンク・卵色・カラフル →青系が中心だったので「空」に決定
Bの色合い: 赤・赤・ピンク・桜色・オレンジ・パステルグリーン・パステルブリーン・若葉色・水色・水色・白・スミレ色・虹色・イルカラフル →赤系を中心に緑や鮮やかな色彩が見られたので、「魚の胴体」と「森」、差し掛かる「夕日」と「桜の花びら」に決定
Cの色合い: パステルピンク・桜色・赤・オレンジ・金色・薄青・青・薄緑・紫・黒・白 →たった一色だった黒を「魚の目」に、「魚の胴体」や「夕焼け空」に決定
Dの色合い: 深い青・空色・空色・空色・空色・水色・水色・赤・赤・赤と白・パステルイエロー・卵色・緑・緑 →青系が中心だったので「大海原」に「魚の胴体」「綻ぶ鱗」「森の下半分」「地平線の光」に決定
独断と偏見でこのような感じに仕上がりました。イラストがありませんので、脳内保管です(汗) ご参加、本当に有難う御座いました。 |
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