★ 【Sol lucet omnibus】閃刃綺譚 〜ソード&ダガー&カトラリー〜 ★
クリエイター犬井ハク(wrht8172)
管理番号102-8466 オファー日2009-06-29(月) 20:08
オファーPC 刀冴(cscd9567) ムービースター 男 35歳 将軍、剣士
ゲストPC1 ジャック=オー・ロビン(cxpu4312) ムービースター 男 25歳 切り裂き魔
<ノベル>

 初夏の午後。
 鮮やかな陽光が瑞々しい緑を照らし出す、静かな――小さなカフェテリアの前。
「おや」
「よう」
 刀冴(とうご)は、お気に入りのカフェである【ジャルダン・ド・ソレイユ】の入り口にジャック=オー・ロビンの姿を見い出して顔をほころばせた。
 ジャックもまた、刀冴の姿を目にして、人形のように整った美しい顔を無邪気な友愛のかたちにしてみせる。
「刀冴、こんなところで会うなんて……キミもここのファンなのかい?」
「ん、ああ、ここのハーブティーがな、独特で好きなんだわ。自分でレシピを突き止めてやろうと思って通い詰めてる。あんたは?」
「ボクはここのスイーツのファンなんだよ。特に、エッグタルトとピティヴィエがね、絶品なんだ。もちろん、紅茶の美味しさも」
「へェ……そりゃ知らなかったな」
 異世界ファンタジー映画から実体化した青狼将軍と、スプラッタ系アクション映画から実体化した切り裂き魔という、本来ならば接点のなさそうなふたりだが、実は、三月の末に神の子リオネが催した花見パーティで意気投合して以来、顔を合わせれば親しく言葉を交わすようになっていたのだ。
「ここで会ったのも……エン、と言うのだったかな。一緒にお茶でも?」
「もちろんだぜ」
 女神となったリオネより魔法の終焉が告げられて数日。
 自分がここから去らねばならぬことに一抹の寂しさを感じつつも、やるべきことをやったという刀冴の思い、充足、誇らしい気持ちに変わりはなく、残り十日を切った今でも、日々の行動に変化はないのだった。
 そんなわけで、いつものようにお気に入りの輸入食品店へ出かけ、対策課へ顔を出し、その後あちこちへまわって親しい人たちといつも通りの会話をして、そしてこのカフェテリアへとやってきたのだ。
「今日の俺は運がいい」
「うん?」
「……こんなとこで、あんたに会えたからな」
「そうだね、ボクも運がいい」
 顔を見合わせて笑い、連れ立って中へ入ると、すでに顔見知りになった店員が、ふたりをいつもの席に――お互いに確認して知ったことだが、偶然にも、同じ席をいつも使っていたらしい――案内してくれる。
「じゃあボクは、まず、ヌワラエリヤのホットをストレートで。あと、エッグタルト、ピティヴィエにベリータルト、マンゴーのムースに、ベイクドチーズケーキとさくらんぼのパルフェにシルキーチョコレートの盛り合わせ、五種類のクッキーセット、あとは……オススメハーブのグラニテとフルーツの盛り合わせにしようかな」
「すげぇ量だな。そんだけ一遍に食うのか?」
「え? このくらい普通だと思うけど? むしろちょっと控え目過ぎたかな、って思っていたくらいだよ?」
「……そういうもんか。俺はオリジナルブレンドのハーブティーに、じゃあそのエッグタルトを頼むわ」
 刀冴は、自分の周囲の甘味好きたちはどうしてこうも無尽蔵に食うんだろう、などと思いつつ、血のように赤い艶やかな花を咲かせる、つやつやとした薔薇のアーチを窓の向こう側に見遣った。
 しばらく待つと注文した品が運ばれてきて――ジャックのオーダー品は多すぎてテーブルに載り切らず、隣のテーブルを拝借することになったが――、ふたりは笑顔でティーカップを手に取り、フォークを手にする。
「へぇ……確かにこのエッグタルト、美味いな。フィリングの舌触りが滑らかでいい」
「だろう? ほら刀冴、こっちのピティヴィエも食べてご覧よ」
「ん、ああ、ありがとう。……お、このパイ、生地がしっかり焼きこまれてていい。バターの織り込み方がいいんだろうな、ふくらみ方も綺麗だし」
「おや、詳しいね。そういえば……キミも確か、美味しいお菓子を焼くんだよね? どこかで聞いたことがある。一度食べてみたいな」
「そうか? なら、明日にでも特大のタルトを焼くから、アイスクリームと一緒に、ってのはどうだ? あんたなら、いつでも歓迎だぜ?」
「それは素晴らしいね! じゃあ、お言葉に甘えてお邪魔しようかな♪」
 明日の予定が出来た、と無邪気に喜ぶジャックに笑い、刀冴は俺も楽しみが増えた、と返した。
 そこからまた、近況や街の様子、友人たちとのあれこれなど、他愛ない話に花を咲かせていると、
「そういえば、お花見での続きだけど」
 刃物化した右手の人差し指でメロンを細かくカットしながら、ジャックが刀冴の手を見つめた。
「刃物の素晴らしさはどんなところにあると思う、刀冴?」
 その問いに、刀冴は小さく笑って右手の平から守り刀を一本、生やしてみせる。
 刃の長さはおよそ四十cm。柄の部分は二十cm。すらりと細長い刃では金と銀が清流と濁流のように混じりあい、柄の部分には見事な桜の木が刻み込まれている、とても美しい守り刀だった。
「紛うことなき道具でありながら、ある種の完成された美を保ち続けること、かな」
「ふふ、いいね……ボクもそう思うよ。そして、これほどの美を持ちながら、使い手の意志によってヒトを殺す道具にもヒトを守る道具にもなり得る……という危うさかな。そういえば、そのナイフは、前に見せてもらったものと違うね?」
「ああ、これは【詩櫻(シオウ)】っていうんだ。俺が二十四になったときだったかな、桜が見事な年で、それでこの銘になったんだとさ」
「へえ……何というか、作り手の強い想いが感じ取れるね、これも」
「そうだな、愛情と執着がぎっしり詰まってるからな。そういうあんたのそれは……どこまで刃物化させられるんだ?」
「ボクかい? 必要とあらば、髪の毛一本、睫毛の先端まで変えられるよ」
 言ったジャックの黒髪の一部が、白く輝く細いナイフに変わり、刀冴は素直に感心した。
「かたちも好きに変えられるしね。キミのそれと同じに――……は、難しいかな。単純に鋳造によって創られているわけではなさそうだ。……興味深い」
 指先を刀冴の【詩櫻】に模してみようと試し、まったく別のかたちになったそれを、小首を傾げて見つめつつ、ジャックが楽しげに目を細める。
 切り裂き魔、殺人鬼という、恐らく故郷で出会えばどちらかが斃れるまで戦うしかない相手だが、銀幕市でのジャックは殺人ではない方向に興味を示してきたようで、その無邪気な好奇心、探究心は、決して不快ではない。
「話は変わるけど、サムライソードは芸術性と強度が素晴らしいよね」
「サムライソード? ああ、刀のことか。そうだな、刀本体の斬れ味もあるが、何より持ち手の技巧が如実に反映されるしな。俺の弟分が刀使いなんだが、そいつの刀は鋼でも両断するんだぜ。それに……確かに、とんでもなく綺麗だよな。そいつが刀を揮うと、白銀の光が舞い散るみてぇなんだ」
「ふうん……きっととてつもなく美しい光景なんだろうね、それは」
「ああ。それと、こっちにきて初めて知ったんだが、あのサバイバルナイフってのも面白ぇよな」
「うん、あの『行動』に特化した合理性はいいね! 迷いがない、っていうのかな。シンプルさが美しさに結びつくところもいい。――ああ、こんなことを言っていたら、実際に使ってみたくなるよね」
 と、目を輝かせたジャックが、ティーセットの下に敷かれた紙ナプキンを引っ張り出した。
「そうそう、せっかく会えたんだから……こんなのも披露してしまおう」
 ジャックの指先がまたナイフに変わり、紙ナプキンの上を滑っていく。
 それは巧みに、ひとつの誤りもなく紙ナプキンをカットして行き、やがて鋭い刃物が折り重ねられ編み込まれたかのような、峻烈にして優美なる翼の切り絵となった。
「おお、すげぇな」
 素直な感嘆とともに差し出されたそれを受け取り、まじまじと見つめる。
「刀冴をイメージしてみたよ」
「はは、そうか……ありがとな。こんなに綺麗なもんなのかは正直微妙なとこだけどな」
 と、礼を言って刀冴が笑ったときだった。
 店の外が、突然騒がしくなったのは。
 そして、
「……何か、来る」
「ああ……よくねぇものの匂いがする……」
 店の外に、他者への悪意と攻撃性に満ちた何かの気配があふれ出したのは。
 外から転がり込んで来た人々が、口々に、すぐ傍に魔物が湧き出すムービーハザードが発生したこと、人型から異形まで、多種多様なモンスターが現れて通行人や民家を襲おうとしていることなどを、興奮し狼狽した口調で教えてくれる。
「やれやれ……」
 刀冴は席に立てかけてあった大剣【明緋星】を掴んで立ち上がった。
「もうじきお終いだってのに、慌しいこった」
「うん、最後まで賑やかでいい」
 刀冴が立ち上がったのは、護るものとしての武人としての矜持ゆえ。
 ジャックが立ったのは、きっと、好奇心と楽しみのため。
 立ち位置はまるで違うが、並んで戦えることは、お互いにとって頼もしい。
 刀冴はにやりと笑って歩き出した。
「……ちょうどいい、ここで実践て奴をやっちまおう」
「ああ、いいね。楽しく行こうよ、楽しく派手に、ね」
 店内へ避難してきた人々が恐怖に身を縮こまらせるのへ、心配しなくてもいいと言葉を投げかけ、外へと向かう。
 ――ふたりとも、どこか楽しげに。

 * * * * *

 この近辺は、どうやら小規模な悪玉ムービーハザードに飲み込まれたようだった。
「変な色の空だな」
 刀冴が言うように、先ほどまで真っ青な、透き通った晴れ間を覗かせていた空は黄土色と赤茶色に濁り、内臓のようにどろどろと蠢いている。
「でもまぁ、彼らには相応しい色じゃないかな? 彼らが秋空の下で健全に行動してる様子って、想像出来ないよね?」
「あー……言われてみりゃ」
 はらわた色の外皮を持つ、二足歩行する甲虫型のモンスター。
 全長十メートルの、鈍い黒に光る、八本脚のワニ。
 骨だけのボーンドラゴン。
 火を吐く獅子、触れたものを腐敗させる八つ首の竜、鋭い爪と牙を持つ赤銅色の大鬼たち、ぼろぼろに朽ちた件を持つ首なし騎士たち。
 豚顔のオーク、身の丈五メートルのオーグル、美女の顔を持つ怪鳥ハルピュイア。
 わらわらと湧いて出るのは、飢餓によって腹がふくれた餓鬼の群れだ。
 その他にも、雑多なモンスターたちが次から次へと湧いてくる。
「……面白ぇ取り合わせだな。無節操、っつーのか?」
「確かに……色々な種類のモンスターを掻き集めてみました、っていう感じだね?」
「元々の映画がどんなんだったのか、ちょっと気になるよな」
「そうだね」
 暢気な会話を交わしつつ、ジャックは両手の指を刃物化させた。
 バシャッ、という音とともに、指先がすべてサバイバルナイフに変化する。
 ジャックはそれで、キチキチという音を立てながら突っ込んで来た昆虫人間を賽の目に切り刻んだ。
 ばしゃり。
 赤くない血が地面に撒き散らされ、薔薇の文様を描く。
 故郷の世界では、ジャックのサインとして扱われていた血飛沫の薔薇だが、
「……赤くない」
 血が赤くないのは、面白くない。
 ちょっとがっかりしたジャックだったが、すぐに気を取り直して赤銅色の大鬼に向かう。
 轟、と吼えた大鬼が、ケダモノのような乱杭歯を剥き出しにして掴みかかろうとするのへ、剣化させた右脚で流れるような蹴りを放ち、大鬼のふくらはぎ辺りを骨ごと半ばまで断ち斬る。
「キミの血は……赤いね。素敵だ」
 苦痛の咆哮とともにぐらりとバランスを崩した大鬼に無邪気な笑みを向け、両手を一閃させた。
 ばしゃり。
 血飛沫の、大輪の薔薇が地面に描かれる。
「便利だな……あちこち刃物化出来るってのは」
 感心したように言う刀冴は、全長10メートルを超える巨大なワニと睨み合っている。
 サイズで言えば五分の一以下の刀冴だが、睨み合うと言いつつもどう見ても刀冴の方が優勢で、ワニはすでに、八本ある脚の内の五本までを失って、身動きが取れなくなりつつあった。
 巨大な、自動車でもひと口、というあぎとをがちがちと噛み慣らして威嚇するものの、刀冴がそれに恐怖を感じている様子はなかった。
「てめぇとだけ遊んでるってわけにもいかねぇみてぇだから、な!」
 低い呼気を吐いた刀冴が、赤く煌めく大剣を、剣の切っ先が霞む速度で一閃すると、ワニの首が半ばまで切断され、再度の一閃でヒョウと宙を舞う。
「お見事」
 怪力に俊足、不死身という、殺人鬼のお約束を備えているジャックだが、その彼をしても、刀冴の動き、膂力と言うのは規格外だった。
 天人という種族にも興味が湧いてくる、というのがジャックの正直な気持ちだ。
「はは、あんたもな」
 笑った刀冴が、右腕から数本の守り刀を生やし、投擲する。それらは狙い過たず弾丸のように飛び、餓鬼たちを次々に刺し貫いて動きを止めた。
「日本のニンジャたちが使ったっていう手裏剣ってこんな感じなのかな?」
 呟き、髪の一部で手裏剣を創り出し、身体から切り離して投擲してみる。
 眉間に手裏剣を喰らって、オークの一体が身の毛もよだつ絶叫を上げた。
「んー、悪くないけど、やっぱり、手応えを感じたいから、ね」
 やはりこれが一番だ、と、両手の指をすべて刃物に変えた状態で、モンスターの群れへ突っ込んで行く。ジャックのすぐ隣の刀冴は、青い風のような速さで、特大サイズのモンスターたちを次々に葬っていく。
 彼の動きには無駄がなく、一切の容赦もないのに、何故かそれは優美で、静かで、いにしえより伝えられてきた舞踊を見ているような気分になる。
「刀冴、キミの戦いは、まるで舞を見ているようだよ」
 喚きながら群がってくるハルピュイアたちを微塵に刻み、その血で赤い薔薇を描いてジャックが目を細めると、ふと振り向いた刀冴は目だけでかすかな笑みを伝えた。
 その手の平から、先ほどカフェで見た守り刀【詩櫻】が現れたかと思うと、一陣の風の如くに飛んだそれが、ジャックの背後に忍び寄っていた昆虫人間の顔面を貫き、『彼』を赤くない血とともに沈没させる。
「おや、これはありがとう」
 ジャックは優雅に一礼し、次の瞬間には跳躍して、刀冴の背後に迫っていたボーンドラゴンの頭部を粉々に斬り砕いた。
 ガコンッ! という音がして、頭部を失った骨の竜が地面に沈む。
「骨は血が出ないから薔薇が描けないね」
「骨の粉じゃ駄目なのか? なんか、身体によさそうじゃねぇか」
「ああ、粉末にして、薬として……って? あれって本当に効くのかな」
「さあ……たとえ効くにしても、あんまり飲みたかねぇな、俺は」
 暢気な会話と、ティータイムの延長そのものの表情で、ふたりは獰悪なハザード内を疾走する。
 特に大きなサイズのモンスターの相手をしている刀冴は、あちこちに傷を負っていたが、本人がそれに頓着している様子はなかった。
 ジャックにはよく判らないが、それがきっと武人としての矜持なのだろう。
 それが、護るものとして凜と立ち続ける刀冴の、行動を伴った覚悟の発露なのだろう。
「……もう少し、かな?」
 ふたりの活躍の甲斐あってか、ハザード内の魔物たちはかなり数を減らしていた。
「どうやら魔物の発生自体は止まったみてぇだな……残りこんだけってんなら、話は早ぇ」
「一気に行くかい?」
「だな」
 顔を見合わせて笑い、ふたりは同時に走り出した。
 擦れ違いざまに腕を、剣を揮い、胴を両断された骸と、薔薇の血文様を残していく。
 ふと見遣ると、刀冴は笑っていた。
 雄々しい、猛々しい、武人としての笑みだ。
 ジャックもまたくすくすと笑い、
「いいね、うん、すごくいい。こういう楽しいことをキミと一緒にできるっていうのもいい♪」
 最後の一体となった昆虫人間をばらばらに刻んで――血が赤くないのはつまらないが、この際なので我慢する――、赤くない薔薇を地面に描いた。
 刀冴が火を吐く獅子と真っ向から渡り合い、その巨体を一刀両断にする。
 モンスターたちの姿は、もうほとんど見えない。

 * * * * *

「やれやれ」
 すべてが終わったのはそこから数分後のことだった。
 刀冴は、赤かったり赤くなかったりする体液を剣から払い、それを鞘に戻した。
 モンスターたちはすべて大小さまざまな肉塊となって地面に転がり、辺りはすっかり静かになっている。
 モンスターたちが斃されると同時にハザードも収束したらしく、モンスターの骸や気色の悪い空が、ゆっくりと薄れて消えていく。
「結構時間食ったみてぇだな……そろそろ帰らねぇと」
 元の空を見上げて刀冴が言うとおり、さきほどまで鮮やかな初夏の青を垣間見せていたそこは、もうすでにあかがねの色になり、朱金の太陽を西の向こう側へと見送ろうとしている。
「普通の茶の時間のはずが、色気のねぇことになっちまったな」
「うん、でも、キミと一緒だったから、ボクは楽しかったけど?」
 ジャックの無邪気な物言いに、刀冴は肩をすくめて笑った。
「なるほど、そういう考え方もあるか」
「ね?」
「はは、そうだな……悪くなかった」
 カフェに避難していた人たちが、恐る恐る顔を覗かせ、安堵の表情を見せている。
「まぁ、怪我人もいなかったみてぇだしな」
「キミは少し怪我をしたようだけどね?」
「こんなの怪我のうちに入らねぇよ、すぐに治る」
 覚醒領域に意識を預け、もう一度周囲に危険がないことだけ確認してから、刀冴はジャックに、明日のことを尋ねた。
「じゃあ、十時と午後三時のお茶の時間に♪」
 すると、そんなあっけらかんとした答えが返り、刀冴に笑みを浮かべさせる。
「なら、朝の茶の時間と午後の茶の時間、両方のために菓子を焼かなきゃな」
「そうだね、チョコレートとフルーツだと嬉しいかな!」
「判った、楽しみにしておいてくれ。……じゃあ、またな」
 つい数分前まで激しい戦いを繰り広げていたとは思えない暢気な会話のあと、刀冴は軽く片手を挙げて挨拶し、ジャックが同じ仕草をするのへ笑いかけたのち、踵を返した。
「うん、じゃあ、また明日♪」
 ジャックの、軽快で楽しげな声が背中にぶつかる。
 刀冴は小さく笑い、振り返らずにまっすぐ歩き出した。

 ――また明日。
 残り少ない時間の中でも、躊躇いなくその言葉を使える今を、とても幸せだと思う。
 それはきっと、自分たちが今までに築き上げてきたもののすべてが、そうさせているのだろうと思うから。

クリエイターコメントオファー、どうもありがとうございました!
銀幕市での思い出を描くプラノベ群【Sol lucet omnibus】をお届けいたします。

のんきで無邪気なおふたりの、のんびりしていながら実は物騒なお話、ということで、ティータイムの描写と同じく戦闘シーンも楽しく書かせていただきましたが、いかがでしたでしょうか。

このノベルが、おふたりの最後の日々に彩りを添えられたのなら、幸いです。


それでは、オファー、どうもありがとうございました。
またいつか、きっと、どこかで。
公開日時2009-07-22(水) 22:20
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