★ 【最後の日々】子供達に笑顔を……。 ★
<オープニング>

●最後の日々
「そうですか……。マスティマが倒されましたか……」
 平見 舞音はその話を聞き、ほっと一息吐く。しかし、それと同時に聞かされたことは、彼があと10日すこしでこの世界から消えてしまうと言うことだった。
「えっ……。うそですよね?」
「ああ、間違いねぇ。本当の話だ」
「そうですか……。何か、手伝えることはありませんか?
 せめて、この街で御世話になった人たちに恩返しをしたいんです。
 私がここにいた証明と、思いを残すために……」
「まぁ、とりあえず、市役所へ行ってみたらどうだ。そこで、何か、情報があるだろう」
「ええ……。ありがとうございます。それから、色々と御世話になりました」
「バカ! まだ10日以上あるんだ。別れを言うのは、その時にするんだよ!!」
 管理人に思わず言われてしまう舞音。それには、ただ返事を返すしかなかった。

 それから、市役所へ赴こうとする舞音。
 市役所へ向かう道を行く人々の流れは常に忙しい。マスティア戦の戦災から復興するため、あちこちで、工事の土音が聞こえていた。
「まるで、どこかの村みたいですね。焼き払われて傷ついても」
 そんな中、「希望の灯台で、お祭りをやりますので、是非お願いします!」と言うおばちゃんたちの声で、舞音は一枚のチラシを手に取った。そこには、6月に「希望の灯台」で行われる祭りのことが書かれていた。

「マスティマ戦の傷や梅雨を吹っ飛ばせ!
 『希望の灯台幼稚園』紫陽花祭り開催のお知らせ!

 開催日 :6/7
 開催場所:ダウンタウン南『希望の灯台幼稚園』
 開催時間:午前10時〜午後6時」

 これ以外にも、様々なムービースターの姿を描いた絵が描かれていた。
 子供達にとってムービースターは憧れの存在なのである。
 しかし、その彼らと触れ合うことが出来る時間も限られてきてしまっている。
 舞音は何かひらめいた。
「そうだ、ここの幼稚園へ伺って、子供達と一緒に楽しんで貰いましょう!
 それに、子供達もムービースターたちが来てくれれば、喜んでくれるかも知れませんね」
 そう言いながら、舞音は復興途中のカフェスキャンダルへと向かった。
 カフェスキャンダルに着いた舞音は、ドアを開け、一言こう告げた。
「6月7日にダウンタウンの幼稚園へ伺ってみませんか?
 そこで、私たちが居た証を幼稚園に残しませんか?」
 舞音はこう言って、スキャンダルのマスターから、ポスターを貼らせて貰い、その後、紅茶を飲み、去っていった。

●日が経って
 6月7日の朝、希望の灯台幼稚園では、祭りの最後の確認に行っていた。
「先生ー、ムービースターのみんなは今年も来てくれるのかな?」
 園児の1人がそう言うと、先生はこう答える。
「そうねぇ…。今年も来てくれるわよ。だって、マー君は、お願いしたんでしょ?」
「うんっ!」
 元気よく返事をする園児。それを見た、先生はこう言った。
「みんなで、頑張ってやるんだよ! ムービースターの皆さんも来てくれるからねぇ」と言う先生の声で、動きは一層速くなる。
「せんせー、俺らのとこ終わったよ」
「先生、僕のとこ終わったもんね!」
「せんせい、あたしの所も終わりました!」
 子供達が準備を済ませつつある中、幼稚園の入口には、保護者たちを始め、多くの人が並んでいた。
 その中には、この町を救ってくれたムービースターやムービーファンの人たちもいて、彼らも楽しそうな表情を浮かべて、開門を待っていた。

種別名パーティシナリオ 管理番号1039
クリエイター小坂 智秋(wrcr4918)
クリエイターコメント ご無沙汰しております。小坂智秋でございます。
 前回のプラノベで全作業を終わらせたつもりだったのですが、最後のイベントシナリオが発生しましたので、思わず参加させて頂きました。
 今回は、ダウンタウン南地区にある「希望の灯台幼稚園」で子供達と触れ合って頂きたく思います。
 この日は丁度、お祭りも開催していて、射的や焼きそば、それから、たこ焼きにかき氷、杏飴などの屋台が園庭にはあり、年長3組(うみ、やま、ふね)、年中3組(さくら、あじさい、もみじ)、年少3組(りす、うさぎ、ひよこ)の各教室では、各組の園児が一生懸命劇や出し物、模擬店等をしております。
 彼らに声援を送ることも一つの証になるかも知れませんね。
 また、屋台村で子供達と一緒に遊んだり、料理をおごったりして、彼らの記憶に残すことも、一つの証を残すことになるでしょう。
 また、幼稚園に申し出て何か作るのも良いかもしれません。
 注意点としては、公序良俗に反しないことと幼稚園園内でのたばこの禁煙を守って頂ければ、構いません。

 また、平見舞音も同行致します。平見も最後の同行依頼になりますが、平見にやって欲しいことがあれば、プレイングにてご指示を願います。
 それでは、Last Danceを舞音と共に楽しんで下さい!
 皆様のご参加、心よりお待ち申し上げます。

参加者
コーディ(cxxy1831) ムービースター 女 7歳 電脳イルカ
アレン・ブランシュ(ccpx7934) ムービースター 男 20歳 ※※※
リデル・ガードナー(cusf9294) ムービースター 男 23歳 ※※※
シリル・ウェルマン(camx9187) ムービースター 男 15歳 ※※※
トト(cbax8839) ムービースター その他 12歳 金魚使い
ファレル・クロス(czcs1395) ムービースター 男 21歳 特殊能力者
コレット・アイロニー(cdcn5103) ムービーファン 女 18歳 綺羅星学園大学生
<ノベル>

●空泳ぐイルカ
 子供達が空を泳ぐメタリックブルーのイルカを見て、驚きの声を上げる。
「うわ〜、すげ〜!」
「こんにちは、わたしはコーディー」
 コーディーの挨拶に子供達は、最初はちょっと驚いていたものの、すぐさま、挨拶を返す。
「こんにちは!」
「トゥース!!」
 冗談半分で、お笑いコンビのボケ役の挨拶をする子供もいたものの、子供達は元気よく挨拶を交わした。
 リオネからの話が既に子供達には届いているのか、いないのか分からない。
 だけど、コーディーを中心に、人の輪が出来上がっていた。
「ミンナ元気で楽しいのよね。今日はいっぱい遊ぶノヨ!」とコーディーが言うと、さっき、空を泳ぎながらやってきたコーディーを見て、羨ましくなったのだろう。子供の一人が「ねぇねぇ、みんなを背中に乗せられるなぁ?」と尋ねて来た。
「いいよ! 皆とはいかないけど、一緒に遊ぼう!!
 ミンナ、順番に一列に並んでネ!」
 子供達は、その声に合わせ、一気にわぁっと押し寄せる。それを何とかしつつ、コーディーは、子供達を数人乗せた。
「じゃ、行くわヨ!」
 そう言って、子供達を背中に乗せたコーディーは空へ舞い上がる。
 子供の一人が目を閉じながら、その子は必死に掴まる。
「目を開けてごらん」
 コーディーに言われるがまま、子供はおっかなびっくり目を開けてみる。
 彼の視線には、銀幕市の風景が広がっていた。
 工業地帯、壊れてしまったホテルに市長邸。そして、海賊船が浮かぶ海。それが、今の銀幕市の光景である。
「うわ……、綺麗……」
「これが君やコーディーがいる銀幕市ダヨ。しっかり目に焼き付けてネ!」とコーディーが言うと、彼は、笑みを浮かべつつ、真剣に自らが住む銀幕市を必死に記憶しようとしていた。

●語る者
 一人の青年が、職員室を訪れていた。その青年は屈強な体を持つ男と銀色の髪の少年と共にやってきたのだが、屈強な体を持つ男は子供達と遊ぶために、銀色の髪の青年は、別行動を
 中世ヨーロッパ時代の服装に身を包んだ青年―アレン・ブランシュが、入口の所でドアをノックする。
「はい、どうぞ……」
 一人の青年の声が聞こえてくると、アレンはドアを開け、室内に入る。「失礼します」という人と一言と共に…。
「えっと、どういったご用件で?」
 職員の一人が尋ねると、アレンは、子供達の為にお話会をしたいと申し出て、ここの幼稚園の園長がいるか尋ねてみたが、外に出て、子供達のために綿飴を作っていることをつげた。
「いえいえ、僕の方から園長先生を探しに行きますから……。
 お邪魔してしまい、申し訳ありません。それでは、失礼します」
 そう言って、アレンは職員室を出て、園長先生がいると思しき、庭の綿菓子売り場へ向かう。
 その中で、一生懸命綿飴を作っている中年のおじさんの姿があり、アレンが彼に声をかけてみるとその人物は園長先生だった。彼から、許可を得て、

 それから、園内の庭を歩くアレンを珍しく思ったのか、子供達が声をかけてきた。
「おじちゃん、一緒に遊ぼうよ?」
「ぼ、僕、『おじさん』ですか!?」
 彼の心の抗議の声が、子供に届いたかどうか分からないが、それでも、笑みを浮かべて、「何で遊びましょうか?」と尋ねてみれば、彼の側にいる饅頭の様な物体と遊びたいと言う子供たちに「いいですよ」と答えた。
 隣の蝙蝠については、なかなか子供達が遊ぼうとしてくれないが、アレンが「怖くないですよ。襲っても来ないですからね」と言うと子供達は、おそるおそる手を伸ばして、蝙蝠に触れる。
「ね、怖くないでしょう?」
 アレンがこう尋ねると、子供達は笑みを浮かべて、その蝙蝠とも遊び始めた。
 因みに、饅頭の方にはミッシェル、蝙蝠にはジェラルドという名前のがあるのだが、子供達にそう言っても、そういう風に呼ばれることはなく、もっぱら、「蝙蝠」とか「ダイフク」で呼ばれていた。

●食すもの
 一方、幼稚園の庭に用意された模擬店では、ファレル・クロスがあちこちの店に顔を出しては、色々買っていく。
 彼にとって、二度と味わうことが出来なくなる味である。なぜなら、彼は、ムービースターで、13日の深夜には、姿を消してしまうからた。
 しかし、彼は再びこの町に戻ってきたいと思うが、それも叶わぬ夢なのかも知れない。
 だからこそ、今日は色々食べ歩いてみようと思い、あちこちの屋台で色々買っていく。
 焼きそば、お好み焼き、綿飴、たこ焼き、焼き鳥と言った屋台の定番ものから、牛サーロイン串焼き、おでんと言ったものまで色々食べていた。
 あちこちで、屋台料理を平らげるファレルを見て、たまたま来ていたコレット・アイロニーは心配そうな表情を浮かべることしか出来なかった。
 因みに、彼が平らげたものを列挙すると、こんな感じである。
 焼き鳥、お好み焼き、綿飴、たこ焼き、牛サーロイン串焼き、トムヤンクンヌードル、焼きそば、広島風お好み焼き、ハッカ飴に季節的に早いがかき氷……。

●手伝う者と芝居する者
 コレット・アイロニーは幼稚園内にある教室に来ていた。
 ここでは、劇をやると言うことで、子供達やその親たちが準備に忙しく動いていた。
 コレットは子供達のそのお芝居を手伝わせて欲しいと願い出て、その準備の中で、出来上がっていない小道具の作成に動いていた。
 ファレルや他のムービースター、バッキーとの別れと言う悲しみを前向きな力に変えるために……。
 たまたま、教室の近くを通りかかった平見に、彼女は声をかけた。
「平見さん、もしよかったら、手伝って欲しいの?」
「ええ、構いませんが……。どこからしましょうか?」
 そう言った平見にコレットは子供達のために小道具類を作って欲しいと頼んだ。
「分かりました。出来る限りやってみますね」
 平見の手がぎこちなく動く。それでも、懸命に彼は、簡単なアクセサリーなどを作っていった。
 そして、芝居が始まる。コレットは子供達の着替えや装飾品の確認、舞台上のセットの入れ替えなどで忙しく動いていた。
 芝居の内容は、先日行われたマスティマ戦の話と、その後の復興へ向けた思いをそれぞれに告げるような内容で、それを見たトトや子供達に誘われて見に来たリデルもまた、その光景を懐かしく思い、また、前を見ようとする子供達の姿を見て、胸に来るものがあった。

●遊ぶもの
 その一方で、最後の思い出作りにと、懸命に追いかけっこや、鬼ごっこ、影踏みの遊び方を教えつつ、それを子供達と一緒に遊ぶ者もいる。
 芝居を見終え、アレン・ブランシュやシリル・ウェルマンと共に来ていたリデル・ガードナーが子供達の相手をしていた。
「次は何をして遊ぼうか? 今日はとことん付き合うぞ」
 笑みを浮かべながら言うリデルに、子供達は「おじちゃん、追いかけっこしよう」と元気に応えていた。
 そこに、子供達を乗せ終えて一息吐いたコーディーもいた。
 それから、トトも金魚と共に、子供達と一緒に遊ぶ。影鬼や鬼ごっこ、お手玉なども加えて、遊び方を教えながら遊ぶ。
「お兄ちゃん、一緒に鬼ごっこして遊ぼうよ!!」と同年代よりちょっと年上のトトに声をかける。年長組の子らしい子供達は、年少組の子たちを引き連れてやってきている。
 それは、とてもとてもほほえましい光景で、周りにいた人も「かわいいわねぇ〜。カルガモさんの行進みたい」とほほえましい一言を告げていた。
 わいわいと、声を上げながら子供達を見て、シリルは射的の所にいる子供達に、自身の経験を生かして、射的の指導をしていた。
 最も、シリルも最初のうちは射的に夢中になって、当てたお菓子などを子供達に振る舞ったりしていた。
 リデルもまた、子供達に肩車をしたり、コーディーやトトと共に、鬼ごっこをしたり、影踏みをしたりしている。
 トトは、子供達と楽しく遊び、彼らにとって最良の思い出を作ろうと、色々と昔の遊びを教えていた。

●語る者再び
 芝居が終わった後、暫く経ってから、今度はアレンも参加するお話会になる。
 多くの親が参加し、子供達のために、話を聞かせていく。時には面白く、時には切なく、感情を込めて読む親たちに、話し終えた後、拍手で迎えられていた。
「今度は僕の番ですね」
 そう言って、アレンが舞台に出ると、いきなり拍手で迎えられる。
 椅子に座り、彼の口から語り出す話は、銀幕市で実際にあった昔話や、今までの自身が生きてきた中で見たり、聞いたりしてきたこと、そして、銀幕市で実際にあった話など、多岐にわたった。
 元々、昔話や童話の類は、某かの教訓があるわけで、それを子供達にわかりやすくしてみたのが童話なのだ。
 その話に、子供達はグッと引き込まれ、親たちはその話をどう語り継ごうかと考えていた。
 全ての話を話し終えたアレンに対して、会場内から鳴り止まない拍手が送られた。

●ここより永遠に……
 そんなこんなで、時間はもう夕方。一緒に楽しく遊んでいたり、美味しいものをたくさん食べていたムービースターと子供達にとって、夢の時間の終わりが告げられようとしていた。
 外で射的を教えていたシリルや外で遊んでいたリデル、それに講堂で話をしていたアレンも合流する。
 トトは、金魚のアカガネとクロガネと共に子供達と最後まで別れを惜しんでいる。
「ボク、また遊びに来るからね!」
「また、遊びに来てね!」
 子供達は別れるのが悲しいのか、涙を流していた。
 そして、コーディーが「コーディは海にかえるけど、コーディのことわすれないでね」と言うと、「うん!」と首を縦に頷いた子供達の姿があった。
 最後に、色々食べ尽くしていたファレルはコレットに小一時間説教されたそうだ。
「見て、一番星」と子供の一人が言って、空を見上げてみると、夕焼けの空に一番星が輝いていた。

クリエイターコメント ※このパーティーシナリオは、特別なイベントシナリオですので、ノベルの文字数が規定以上になっています。
 ご参加頂きありがとうございました。
 久々のシナリオで、楽しく書かせて頂きました。
 本当にありがとうございました。
 また、どこかで、お会いしましょう。
公開日時2009-06-15(月) 18:00
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