★ 空に還る。 ★
クリエイター志芽 凛(wzab7994)
管理番号136-8159 オファー日2009-06-10(水) 01:10
オファーPC 鬼灯 柘榴(chay2262) ムービースター 女 21歳 呪い屋
<ノベル>

 
 見下ろせば、銀幕市に立ち並ぶ、様々な家々が視界一杯に広がっている。くすんだ色合いの屋根が、どことなく列を成して並んでいる光景。緑の木々が、申し訳程度にその中にぽつん、と生えているのが見えるのだ。
 鬼灯柘榴は、その光景を静かに見下ろしていた。
 時々景色が揺れるのは、彼女を乗せている、真達羅がゆらりと揺れるからだろう。柘榴は、その平たい身体にそっと、右手を乗せた。
 もう、こうしてこの街の上を飛ぶことが出来るのも、あと僅か。そんな事を考えて、少しだけ口の端を上げた。
 ひゅる、と耳元で風の音が鳴る。ここは地上よりも圧倒的に風が多い。そして、地上よりも冷たい。ただ、地上よりも澄んだ空気である事は間違いなかった。
 その風を受けて、柘榴の着物が僅かに揺れる。
 前を見れば青い空。下を見れば、くすんだ色々の間に、灰色の線。その光景をじっと見下ろして、そして柘榴は、左手へと視線を落とした。
 そこには、一本のフィルムがある。
 今こうしてここにいるのも、全てはこのフィルムが発端なのだ。そして、彼女が関わったひとつの事件が。


 * * *


 かたん、と小さな音を立てて、茶色の小さな引き出しを取り出した。しばらく開いていないそれには、様々な日常の小物が、ごちゃごちゃと詰まっている。
 銀幕市に来る前からあるもの。
 そして、銀幕市に実体化してからあるもの。
 それは確実に、この銀幕市での柘榴の歩みを示していた。銀幕市では、ほとんど世捨て人に近いような生活をしていた柘榴にも、確実に歴史は積もっていくのだ。
 今日は夏晴れの陽気にかなり近いようだ。
 掃除の為に開け放した障子の向こうには、青い空、そしてぽかりと浮かぶ入道雲が見える。じっとりとした湿気が、身体を包んでいるのが分かる。
 もうすぐ、この銀幕市に魔法の終わりがやってくる。魔法によって、実体化した自分はもうすぐ消えるのだろう。
 それを知った柘榴は、なんともなしに、こうして部屋の中を整理していた。
 引き出しの中に入っている細々としたものを入れ替える。こうしてあるべき場所に、ものをきちんと入れ替える作業をしていると、何となく気持ちも引き締まる感覚を覚えるから不思議だと思った。
 普段、いつもの通りに生活していれば、あまり目につかないもの。そういったものでも、確かにこの時間の経過を示しているのだ。
 そんな事をぼんやり考えながら、また別の引き出しを引っ張り出した。
 そこにもまた、昔からあるものと、この銀幕市で手に入れたものが混在していた。骨董品に近いものもあれば、この銀幕市で手に入れたものもある。
 それはまるで、この銀幕市を象徴しているかのようだ。
「……これは……」
 その中で、柘榴はとあるものに目が留まって、作業の手を止めていた。そして、引き出しの中から、その目に留まったものをそっと取り出す。
 それは、一本のフィルムだった。
 柘榴が関わったとある事件で、最後に彼女の前に落ちていた、ひとつのフィルム。
 彼女の脳裏に、その出来事で関わった、何人かの人物が浮かんでは消える。
 少年と、青年。
 そして、あの赤い、鮮烈な色が浮かんで、消えた。
(――良かった。許されたらどうしようかと思った)
 最後に交わした、彼女の言葉が耳に浮かび上がる。柘榴はその手にフィルムを乗せたまま、少しだけ、思いを馳せた。そして、とある事を思い出した。
 事件の後に読んだジャーナルでは、確かひとりだけ、生き残りがいた筈だった。
 あの少年。
 クレナイを探し、そして最後にひとりだけ、「セカイ」から抜け出すことが出来た少年。彼はどこまでもクレナイを敬愛し、そして、幾人もの人に守られて、裏切られて。
 結果、ひとりだけ、銀幕市に残っている。何か事件に巻き込まれていなければ、今も彼はこの銀幕市で生活している筈だった。
 このフィルムは、このまま自分が持っていて良いのだろうか。
 少年の笑顔を思い出して、ふと、そんな思いに駆られていた。これは自分が預かるべきものでは、無いような気がする。
 返すべきなのだろうか。このフィルムを。あの、少年に。
 そう考えて、柘榴はぴたりと思考の手を休めていた。障子の向こうにある、遠くて近い空をじっと眺めている。
「……」
 返すことは、いけない事ではないだろう。だが、果たしてそれが良いのだろうか。
 渡すことが――否、自分が彼の前に姿を現しても、良いのだろうか。
 柘榴はそう考えて、静かに空から目を離す。かさ、と机の上に置いてある紙が、風に揺られて音を立てた。
 セカイの大本となっていた、スパコンを壊したのは、自分なのだ。
 彼のセカイを奪ったのは――紛れも無い、自分なのだ。
 ひとまず、そのフィルムを机の上に置き、止まっていた整理を続ける事にする。
 手際よくそれらを動かしながらも、頭はフィルムの事で引っ掛かったままだ。
 あの少年の事を考えるのならば、渡さない方が良いのかもしれない。けれども、もうすぐ魔法は終わるのだ。
 柘榴も、あの少年も、映画の住人へと戻ってしまう。引き出しをもう一度元の場所に戻し、そうして別の引き出しを繰り出していた。
 そこにも、細々とした道具が、幾重にも折り重なって仕舞い込まれていた。それを在るべき場所へときちんと整理していく。
 その内に、柘榴の中でも、覚悟のようなものが少しずつ固まっていくのが分かった。彼女はその引き出しをゆっくりと仕舞い込み、そうして誰にとも無くぽつり、と呟く。
「行きましょうか……」
 彼女は小さく呟くと、重い腰を上げたのだった。


 * * *


 柘榴は真達羅に行く先を任せながら、ぼうやりと町を見下ろしていた。目の下には、かつて柘榴が、彼等の「セカイ」と交わっていた一本の道が見えてくる。
 初めは、クレナイ、という名前を聞いたからだった。
 柘榴にとって、何よりも大きな存在、紅と同じ名前を持つ人。
 そして、ムラクという少年に出会った。彼は初め、クレナイを探して、銀幕市に姿を見せていた。柘榴はそんな彼を追いかけて、澱んだ気配の向こうに消えた二人を追いかけたのだった。
 彼らが住むセカイは、強さが全てのセカイであったこと。
 彼らを追いかけて、見つかった時、ムラクの目は爛々と輝いていたこと。
 この道の向こうには、そんなセカイも存在していた。
 そして、このセカイで――、柘榴はクレナイと呼ばれる女性に会ったのだ。彼女のあの赤いワンピースを思い浮かべると、心のどこかがずくり、と動くのが分かる。
 彼女の事は、きっといつまでも許すことは出来ない。それほどまでに、彼女が犯そうとした罪は、許されないものだと、今でも思っている。
 だから――セカイを自分が壊したことに後悔は無い。
 けれども。
 ――何故かどうしようも無く、哀しいのだ。そう、どうしようもなく、哀しいくて、虚しい。やり切れない、というのは、こういう事をいうのだろうか。
 柘榴は、町へと下ろしていた視線を空へと上げていた。
 初夏の空独特の、濃い空に、灰と白が混ざった雲がぽつぽつと姿を見せている。それを眺めながら、紅の事を考えた。そして、自らが今背負っている業の事も。
 この銀幕市に実体化して、様々な出会いがあった。喜びも、そして悲しみも。今、手にあるフィルムだって、クレナイと出会えたから、ここにいる。
 だが、それでも。彼女が背負う業が消えることは、決して無いのだ。自らが背負う業も、そして今、自分を乗せている真達羅も、影に潜む使鬼達に背負わせなければならない業も。
 それは常に自らとあり、決してそれらの業が軽くなる事は、生涯有り得ないだろう――。
 今の柘榴には、彼女達がどうして、境界を越えてまで、幾重もの業を背負わせてまで――それを成し遂げねばならなかったのか。少しだけ理解できる気がしていた。
 きっと、クレナイも、紅もただただ、幸せを願っていたのではないだろうか。
 ただ、沢山の事を背負いすぎた罪は重い。そして、今、魔法が解ける事も、通りだと彼女は考えていた。
 許されることは、決して無いのだ。
 そうしていると、不意に真達羅が、高度を緩やかに下げていた。柘榴はそれに気がついて、地上へと目を下ろす。
 真達羅が降りようとしているのは、どうやら銀幕市にあるらしい、小さな公園であるようだった。幾つかの遊具が、ぽつんと置かれている。
 更に目を凝らして、柘榴はそこに、ひとりの少年がぽつりと佇んでいるのを見つけた。その少年はパソコンを片手に、椅子に腰掛けて何かをしているようである。
 高度を下げていくにつれて、少年の顔がはっきりと見えるようになってきた。
 そして、少年は空に何かがある事が分かったのだろう。訝しげに顔を上に上げて、そして柘榴とはっきりと視線を合わせていた。
 少年――ムラクは、あの時の姿のまま、柘榴が降りていくのをただ黙って見つめているようだった。 


 * * *


 ひゅる、と僅かに風切り音をさせて、真達羅は地上へと降りていく。柘榴は少年を見つめたまま、一言も発しなかった。
 少年もまた、一言も発しないままだ。
 真達羅が地面へと降り立つと、柘榴は沈黙のまま、静かに地へと足をつけた。柘榴が完全に地へと足が着いたのを見てか、真達羅は僅かに身を揺らすと、しゅるり、と影へとその身を吸い込ませていく。
 柘榴はそれを見やると、視線を少年へと戻した。
 ムラクは柘榴をただ、見つめている。
 そこに、何らかの激しい感情は見当たらない。
「――こんにちは」
 何を話すか、全く考えていなかった柘榴は、ひとまず挨拶の言葉を述べて、ぺこりと頭を下げた。ムラクはそれに合わせてか、ただ頭を下げてくる。
「こんにちは……」
 ムラクの言葉に、柘榴は顔を上げる。彼は無表情で柘榴を見つめていたが、顔を上げた彼女に、僅かに口元を緩めてみせた。
 二人が立つ場所は、昼間であるからか、驚くほど静かだった。
 子供が遊ぶにも微妙な時間なので、今はムラクと柘榴しか姿が見受けられない。ただ、無人の遊具が、どこか所在なさげに立ち並んでいるだけだ。
「えっと……俺に何の用かな……?」
 聞こえようによっては冷たく取ることが出来るその言葉だったが、目の前の少年の表情には困惑が浮かび上がっていた。
 確かに、まだ何も告げていないのだ。
 いきなり空から、こうして自分が降ってきた事は、この少年にとって予想外な事なのだから。
 柘榴はそこに気がつくと、ええ、と小さく呟きながら、手のフィルムを差し出した。
「これは……」
「これをムラクさんに、渡そうと思いまして」
「渡す……? これは、誰のなの……?」
 至極最もな質問に、柘榴は僅かに戸惑いの表情を浮かべた。そして、少しの逡巡の後、ゆっくりと口を開く。
「これは、ムラクさん達のセカイが壊れた後に、私の前に残っていたフィルムです。誰のであるかは、はっきりとは分かりませんが……少なくとも、私が最後に会ったのは、クレナイさんでした」
「……!」
 ムラクは、かつての自分が住んでいた場所の名前を出された途端、目の色を変えた。そして更に、クレナイの名前が出されると、驚きに、その目を見開く。
「渡すのがとても遅くなってしまって……すみませんでした」
 柘榴はそう言うと、ムラクの方へとそれを差し出した。ムラクは未だ困惑の表情を浮かべたまま、おずおずとそれを受け取る。
「クレナイの姉ちゃん……」
 ムラクはそれだけを呟くと、しばらくじっと、そのフィルムを見つめていた。
 ざわり、と公園を囲むように立ち並んでいる木々が、緑の葉を揺らしていく。そしてその喧騒の向こうで、微かに車が行き交う音がしていた。
「……クレナイさんは……」
 柘榴はそこまで言うと、その先の言葉が見つからずに、口を噤んだ。
 あの時の会話をどうやって、この少年に告げたら良いのか、迷っていたのだ。
 そうしている内に、ムラクはそのフィルムから顔を上げた。そこには、柘榴が予想していた、怒りでも憎悪でも無く、――ただ真摯なまでの表情があるだけだった。
「クレナイの姉ちゃん、……最後、笑ってた?」
 その言葉に、柘榴は一瞬だけ目を閉じて、そして小さく頷く。
 脳裏に、クレナイが最期に残した言葉が、そして彼女の笑顔が、ひらりと浮かんでいた。
(――許されたら、どうしようかと思った)
「ええ……とても晴れやかに、笑っていました」
「そっか……」
 ムラクはそれだけ呟くと、そのフィルムを大事そうにポケットへしまった。そうして視線を横に向けて、しばらくその場所をじっと眺めているようだった。柘榴もその視線の先へと顔を向けるが、そこには誰もいない。
 ただ、古びたブランコが、ぷらん、ぷらん、と風に僅かに揺られているだけ。
「こうして、じっと見つめていると……まだ、俺が住んでいたセカイが、こうして姿を現すんじゃないか、って思うときがあるんだ」
 ムラクは淡々と、そこから視線を移す事無くそう告げた。柘榴はただそれを黙って聞いている。
 今、彼は――この銀幕市に馴染めているのだろうか。それとも、ただ茫洋として過ごしているのだろうか。そんな思いが、脳裏を掠めた。
 ムラクと自分は違う。
 自分には、彼とは違って、幾重にも重なる業がある。違う領域へと、境界を越えたが為に自らが負った業。そして、沢山の命に背負わせてしまった業。
 ムラクは、自分とは違って、そのような罪は背負っていない。あのセカイは、クレナイが全ての重いものを背負って消えていったから。
 だから、彼にかける言葉は、何も浮かばないのだ。
 そんな柘榴の前で、ムラクはゆっくりと視線を戻していった。そうして顔を上げて、小さく笑う。
「本当だったら、俺はここであなたを怒らなくちゃならないのかもしれない。罵らなくちゃ、いけないのかもしれない。それが、あのセカイを少しだろうと統べた俺の為すべき事なのかも、しれない」
 ふ、と彼は視線を横に向けた。もう一度だけ、今さっきまで視線を向けていた場所へと目をやり、そうしてまた視線を戻していく。
「実は俺さ、クレナイが本当に笑ってるとこって、見たことないんだ。一度もね」
「……」
「――だから、あなたが、見た最期のクレナイが、本当に笑っていたのなら――俺はあなたを責めることは出来ないし、しない」
 思っていたのとは、違う言葉に、柘榴は眉根を僅かに上げた。そんな彼女に、再びムラクはへらりと笑ってみせる。
「俺は子供だからさ。例え強くたって、パソコンを上手く操れるからって、本当の意味で、ミズホ兄ちゃんや、クレナイの姉ちゃんには適わない事が分かってたから。だから、俺はせめて子供らしく、へらへらして、我侭を通して生きることしか出来なかったんだ」
 だって、そうでもなきゃ、あのセカイを生きるには空しすぎたから。ムラクはぽつりと呟くと、一歩動いた。くるり、と後ろを向いて、そうして足を踏み出していく。
 一歩、また一歩。歩いた先には、ジャングルジムがひとつ。それは時間が経過して、ところどころ塗料が剥げていた。
 その姿は、柘榴に何故か、あの荒れ果てていたセカイを思い起こさせた。
 彼はジャングルジムに手を掛けると、えい、と声を掛けながら、ジャングルジムを登っていく。柘榴は少しだけ彼に近付くと、ただ、声を掛けるでもなく、ムラクの動きを見守っていた。
 ムラクは、ジャングルジムのてっぺんまで上りきると、くるりと柘榴の方を振り返った。そうして、えへへ、と笑ってみせる。
「俺は子供だから、色んな事が許されたけど、子供だからこそ、決定的な何かをする事は不可能だったんだ」
「……」
「だから、さ」
 ムラクはぽつり、と呟くと、空を仰いだ。柘榴もつられて、空を見上げる。
 悠久の、どこまでも深い水色が、遠く、遠く広がっているのをじっと、ただ二人は、眺めていた。
 ああ――、そうなのだ、と柘榴はムラクの言葉を思い返しながら、ひとり胸の奥で呟いた。
 ムラクは子供かもしれないが、いや、例え子供だって、残酷なまでに現実を知ることは出来るのだ。
 きっと、ムラクは全てを分かっているに違いない。
 けれども。柘榴は、その言葉を述べずには、いられなかった。
「――きっと、クレナイさんは、ただ、幸せを願っていたんですよ。あなたの」
 幾つもの罪を重ねて、沢山の業を背負ったクレナイの心の内が、柘榴の心に、水のように沁み込んできていたから。
 クレナイと、紅と、そして自分と違って、どこまでも無邪気なこの少年が――、今、柘榴が見上げている空のように、とても眩しく感じられる。
 そして、それを告げて、柘榴はふ、と小さく息を吐いた。
 自分は呪い屋なのだ。
 人を苦しめる事を愉悦とし、生業とする自分がこんな事を言うなんて、何だか滑稽にも感じられる。胸の奥に沸き起こる、自分を嘲笑う気持ち。
 そのとき、それを打ち消すかのように、たんっ、と小さな音がした。
 視線をムラクに戻して――そして、彼女は、その決定的な瞬間を視界に収めていた。

 ムラクが、そのジャングルジムの頂上から、軽やかに、地面へと飛び降りるのを。

 彼の体は宙に浮き上がり、一瞬、空に溶け込んでいるかのように見えた。そうして、彼の体はゆっくりと空から町へとその姿を移していく。こげ茶色の屋根と重なり、そして公園の緑と重なった。
 ひらり、とベランダに干してある洗濯物が、風に揺れる。
 そうして、ムラクは、危なげない動作で、柘榴が立つ地面へと着地する。
 そうして、彼はぽつりと呟くのだ。

「――ありがとう」

 その言葉は、ゆらり、と風に乗って、柘榴の耳へと届いていった。


クリエイターコメント大変お待たせ致しました。ノベルをお届けさせて頂きます。
今回は、シンプルに、ワンシーンずつ切り取るような形で描かせて頂きました。そして、クレナイ、ムラクへこのように心を砕いていただき、ありがとうございました(ぺこり)。
また、出来るだけ心理描写に重点を置かせて頂きました。柘榴さんの複雑な想いが少しでも描けていれば、幸いです。
それでは、この度はオファー、誠にありがとうございました!
公開日時2009-06-29(月) 18:10
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