★ 妖しき美女の屋敷 ★
<オープニング>

「ここ1週間、行方不明者が相次いでいるのです」
 植村直紀が話を聞きに来た者たちを前に、そう切り出した。
「古びた洋館に1人住み着き、通りかかる者たちを魅了し、洋館の中へ誘い込む女性……が登場する映画があるのです。その女性がどうやら現れたようでして……郊外の古びた洋館に住み着いてしまったようなのですよ。行方不明者たちの最後の目撃情報もその洋館の辺りのようですから、誘い込まれたのでしょうね。確か、その女性は自分に害する者が現れた場合、魅了した者たちを操り、排除しようとするのです。魅了されないよう気をつけながら、囚われてしまった人たちを助けてきてください」

種別名シナリオ 管理番号397
クリエイター暁ゆか(wrds2873)
クリエイターコメント 銀幕★輪舞曲の世界の皆様、お初にお目にかかります。暁ゆかと申します。

 初シナリオをお届けさせてもらいます。
 依頼内容はオープニングに書いたとおりです。
 女性に魅了されないように気をつけながら、行方不明者(十数名)を助け出してきてください。

 皆さんの参加、お待ちしております。

参加者
李 白月(cnum4379) ムービースター 男 20歳 半人狼
シャノン・ヴォルムス(chnc2161) ムービースター 男 24歳 ヴァンパイアハンター
パイロ(cfht2570) ムービースター 男 26歳 ギャリック海賊団
Virgo(chxb3182) ムービースター 男 29歳 流浪人
花咲 杏(cyxr4526) ムービースター 女 15歳 猫又
アーネスト・クロイツァー(carn7391) ムービースター 男 18歳 魔術師
<ノベル>

●説得に行こう?
 映画が既に判明していることから、アーネスト・クロイツァー(carn7391)は美女がどうやって魅了しているのか、調べていた。
 精神支配のような能力だということが分かり、自分の能力などで、上書きすることは出来るだろうかと考える。
 時を同じくして、昼間は鳥の姿であるのをいいことに、パイロ(cfht2570)はこそりと屋敷に侵入を試みていた。2階の窓が一つ開いており、そこから入り込む。
 どうやら1階のロビーと吹き抜けで繋がっている場所の窓であったようで、屋敷の中を見て回ることが出来そうだ。
 目に留まった扉が開いている部屋を覗いてみると、三面鏡のついた化粧台を中心に、部屋中に化粧やアクセサリーが並ぶ部屋であった。人の気配がないことを確認して、パイロは中へと入ってみる。
 特に何もないことを確認し、他の部屋を見て回ることにした。
 囚われている人たちは何処なのか探していると、廊下の先からヒールらしき靴音が近付いてきた。パイロは慌てて、廊下の端に飾られた壷の淵に止まり、自称キュートな置物の振りをした。
 廊下を靴音を立てて歩いてきたのは、1人の女性と2人の男性であった。目を引く妖艶な姿の女性に付き従うような位置に立ち歩いている2人の男性の瞳は何処となく虚ろだ。
「……? こんなところに、鳥の置物なんて、置いてたかしら?」
 女性は、パイロをじっと眺めて、そう言葉を口にした。
 2人の男性は何も言わない。
 パイロは、バレやしないかと内心ひやひやしながら、女性たちが立ち去るのを待っていた。あまりに見られているのが長いと、短期な彼は攻撃をしてしまうかもしれない。
「……まあ、いいわ。そろそろお昼の時間ね」
 暫く見てからパイロから視線を外し、女性たちは階段から1階へと降りていく。降りた先の右側の扉を開けると、ふぅわりと食欲をそそる匂いが漂ってきた。どうやら、そちらに食堂でもあるようだ。
 パイロは見つからないようにそっと扉の隙間から、その食堂らしき部屋の中を覗く。数人の男性が、奥の厨房側で、食事の用意をしているようであった。
 囚われた者たちは、何処か一箇所に囚われているのではなく、女性に遣われているようだ。
 屋敷内のいたるところで男性たちを確認し、パイロは屋敷を後にした。
 夕方。
 散歩中に面白そうな話を耳にした花咲 杏(cyxr4526)は猫の姿のまま、一行に着いていった。何処にでも居そうな、ただの猫の振りをして。
 屋敷に着くと、杏は1人――いや、1匹ふらふらと、面白そうなところを探して回る。
 ふらふらしているうちに、一行と逸れてしまったけれど、それはそれで気にしない。むしろ、自分から離れようと思っていたところなので、好都合だ。
 屋敷内をふらふらして周り、行方不明者たちを探して回る。
 いろいろな部屋を覗き込むと、掃除をしている男性や料理を作っている男性などが居た。
(「閉じ込められている……わけではないんね」)
 行方不明になっている人数とそれぞれ家事をこなしている男性たちの人数が合うのを確認し、杏はそろそろ仲間たちが屋敷の主人と出会っている頃だろうかと思いながら、一行に合流するために歩いてきた廊下を後戻りした。
 一方、李 白月(cnum4379)は屋敷へと侵入すると、数分としないうちに、妖艶な姿をした女性とばったり出くわした。
「あら、こんなところまで入ってきちゃったの? 貴方も私の僕になる……?」
 女性は白月に向かって、そう訊ねた。それと同時に、白月は女性の瞳の奥から発せられた網のようなものに囚われた感覚になる。慌てて、気付かれない程度に女性から視線を外し、完全に魅了されてしまわないようにした。
「……仰せのままに」
 魅了された振りをして、その女性に対して、白月は一礼した。
「そうね。じゃあ、貴方は2階の掃除をして頂戴。あまり使ってない所為か、埃っぽいったらありゃしない」
 そう告げて、女性は、付き従う男性2人を伴ったまま、その場を後にした。
「……さあ、囚われた奴らは何処だ?」
 白月はぽつりと呟くと、2階の掃除へと向かう振りをしながら、行方不明者を探し始めた。
 2階に上がってみると他にも何人かの男性が掃除をしていた。どうやら、白月以外にも掃除を任されている者が居るようだ。
「お前ら、そんなことしてないで、逃げ出すぞ!」
 そう言い聞かせてみるけれど、掃除をする男性たちの目は虚ろで、彼の言葉が届いているのかどうかも妖しい。
「くそ、あの女を説得しないからには、魅了は解けないのか?」
 ただ掃除を続け、反応のない男性たちに、白月は呟き、仲間たちと合流すべく、階下へと降りていった。

●早速、説得してみよう!
「説得が通じる相手なら穏便にしたいものだな。女に手をあげるのは俺の趣味じゃない」
 見つからないように潜入したものの、魅了され、囚われた行方不明者たちは屋敷の主人である女性に遣われ、助けに来たシャノン・ヴォルムス(chnc2161)たちの声は届かないようであった。
 そのため、女性を探し出し、説得を試みようということになった。
 丁度、夕食の時間だったのか、食堂らしき扉を開けると、大きなテーブルの向こう側に女性が1人座り、男性たちに給仕させていた。
「あらぁ、今日はお客様が多いのね」
 入ってきた一行の姿をみて、女性は驚きつつ、嬉しそうな声を上げた。
「……こんな真似迷惑になるだけだ……洗脳して操ったって本当の愛や絆は得られない……引き篭もってなくてももっと楽しい事、あるんじゃねぇか?」
 Virgo(chxb3182)が一歩前に出て、女性へと告げた。
「別に、愛や絆は要らないわ。ただ、一緒に居てくれる人が欲しいだけよ」
 女性はそう答える。
「共に居て欲しいと思うなら、魅了して操るんじゃなく、きちんと同意の上で共に居ればいいじゃないか」
 女性の言葉を受け、白月も説得を試みるため、そう進言した。
 いつの間にやら合流してきた杏が彼の肩に乗っかっており、やる気なさそうに欠伸したりしている。
「しょうがないじゃない。向こうから言い寄ってくる男たちは皆、この屋敷が目当てな者ばかり。そんな男たちを相手にするのは、つまらなくなってきたの。だったら、傍に居てくれるのなら、何も言わないお人形さんたちでも構わないのよ?」
 女性はそう言うと、傍に控えていた男たちに何やら囁きかけた。
 男たちは「御意」と短く返事をしながら頷くと、一行たちに向かってくる。
「おっと!」
 前に踏み出していた白月とVirgoに向かって、体当たりをしてこようとする男たち。2人がそれぞれを交わすと、後方からも別の男たちがやって来ていた。
「シャノさん!」
「ん? あぁ……!」
 白月がシャノンに向かって、注意を促す。後方からやってくる男たちに気付いたシャノンは、その男たちに逆に当身を喰らわせた。
「上書きはできないものか……!」
 アーネストは左目の魔眼の封印を解いた。ワインレッドだった瞳が、金色に輝く。白月やVirgoへと向かったものの、交わされバランスを崩した男たちに向かって、その力を行使した。
 男たちへ幻影を見せることで、女性からの魅了を振り解けないものか、と。
「う……あぁぁ……」
 アーネストの力で幻影を見せられた男が、小さく呻く。
「そのまま、正気に戻るんだ!」
 男は呻きながら、頭を抑えた。そして、呻くのをやめたかと思うと、ふっと顔を上げる。
 先ほどまで、虚ろだった瞳に、光が宿っている。
「……こ、こは……?」
「き、貴様……っ!」
 女性は、従えた男たちに、アーネストに向かうように指示を出す。
「邪魔する者は、許さないわよっ!」

●だが、目を覚ますことはなく
「今晩わぁ、姐はん美人やねぇ。せやけどなぁ姐はん、人に迷惑かけたらあかんよ。でないと……狩られてしまうで?」
 叫んだ女性に対して、いつの間にか猫の姿から人の姿へと変化した、杏が声をかけた。
「貴方たち、お行きなさいっ!」
 折角、杏が忠告したというのに、女性は聞く耳持たずで、いつの間にやら食堂へと集まってきていた男たちに指示を出す。
「そして、貴方たちも私の言うことを聞きなさい……?」
 女性の身体から、何やら淡い光の波のようなものが溢れ出た。
(「……正直、魅了されない自信はねぇや……」)
 そんなことを考えていたVirgoは、その波に包まれ、正気を失いそうになる。
「そこも! 簡単に操られんように!」
 杏は、目ざとく、Virgoの瞳が虚ろになりそうなところを見つけ、両の手の鋭い爪で引っかいた。
「……っ! あ、あぁ……すまんな……」
 謝るVirgoは向かってくる男たちにナイフを投げつけ、怯ませた。
 その隙に白月が体当たりをし、取り押さえたところをアーネストが魔眼で幻影を見せ、正気にさせる。
 魔眼で幻影を見せようとしているところを襲われそうになったアーネストは、風を巻き起こし、その風で男たちを吹き飛ばすことで、襲われるのを回避する。
「テメェらとっとと目ぇ覚ましな!」
 パイロも男たちを正気に戻そうと、体当たりをして回る。それでも正気を取り戻さない男たちは、仲間たちに任せ、女性へと向かった。
「美しさと、その何だか妖しい光の波の力で、魅了だか何だかしらねぇが、俺の方が美しいんだからなっ!!」
 自分のことをかっこいいと思っているパイロは女性に向かって、そう声を上げた。美しさで以って、勝負をする気らしい。
「貴方が、美しい? 笑わせてくれるわね」
 女性も負けじと自身の見た目の美しさをアピールしようとする。
「何だとっ!? 目を覚ましやがれっ! 俺達ギャリック海賊団だぜ!」
 美しさ勝負では、決着が付きそうにないと判断したパイロは叫んだ。
 彼の背後に、大きな津波が現れ、女性を飲み込み、波で攫っていった。
 波が去った後、食堂は波が持って来たごみだらけになる。
 けれど、一行に襲いかかっていた男たちは次々と動きを止め、虚ろだった瞳に光が戻っていった。
「……あ、あれ? 俺、何してたんだ?」
「誰かに……何かさせられていた、ような……」
 男たちは口々に、捕らえられていた間の記憶を取り戻そうとする。
「一件落着、か? 男たちを送ろう」
 シャノンは呟き、表に車を止めてあると言って、正気に戻った男たちを案内する。
 杏もいつの間にか猫の姿に戻り、ふらりと去っていった。

 捕まっていた男たちを送り届けると、家族たちは皆喜び、一行に感謝の言葉を告げるのであった。


終。

クリエイターコメント初のノベルに参加してくださった皆様、ありがとうございました。
口調、設定等に違いなどありましたら、指摘してやってください。
また、感想なんかいただけると嬉しいです。
それではまた、何処かで。
公開日時2008-02-22(金) 00:00
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