★ とある孤児院の一日 ★
<オープニング>

 寒くなるにつれてせっかちになった夕日も沈んだ銀幕市の夜。そこはある孤児院。一人の男が、受話器を片手に話していた。
「そ、そんな。困りますよ。僕だってこれないんですから」
 心底困ったような声で話す男。返される言葉に真顔で聞き入る。
「え。でも、そんな、大丈夫でしょうか一般からなんて」
 不安そうな声でそういった後、ええ。ええ。と頷きながら相槌をうっている。
「……はあ」
 受話器を置いて溜め息を一つ。
「…………ど、したの?」
 かけられた消え入りそうな声に、男は振り返って声の主を探す。
 電気代節約の為に暗い廊下を順に視線で辿っていくと、一点だけ明るい床。ドアのない部屋から漏れた明かりだ。その部屋から身体半分出した子供が、心配そうな顔で男を見ていた。
「ん。何でもないよ。あ、そうだ楓君。ちょっと大事な話があるから、みんなを集めておいてくれないかな? 頼んでもいい?」
 心配させないように微笑んで、男は言う。
「……うん。平気」
「それじゃ、お願いね」
 ひょこっと部屋に顔を引っ込めた子供を見送ってから、男は小さく溜息をついてからもう一度受話器を手に取った。


「なーなー。楓。大事な話ってなんだよ」
 部屋には既に子供たちが集まっていた。
 本来ならばもうすぐ消灯の時間なのに、こうして集まれるということ、そして大事な話という二つのことが、それぞれ子供たちの不安や好奇心をかきたてる。
「僕……知らない」
 小さく、少年が呟く。しかしそんなことは意に介さず、もう一人の少年は何度も問い詰める。
「なんだよぉ。隠してるだろ、教えろよー」
「ちょっと! 楓は知らないって言ってるでしょ」
「喧嘩、だめだよ〜」
 割って入る少女に、止めようとする少女。大騒ぎである。
 そこへ、先ほど電話していた男が入ってくる。いつもはそんなことで静まらない子供たちも、今回はぴたりと静まって各々に男を見る。
「えーっと……」
 反応に驚きつつも、話し出す男。ごくりと、神妙な空気が流れる。
「院長が今、遠くに出てるの知ってるよね?」
 男はまず、現在孤児院の院長が出払っていることを説明する。その話は子供たちも知っている事だったので、子供たちは頷いて返す。
「シスターが風邪で休んでいる事も知ってるよね?」
 こちらも子供たちには既知の事だ。
「実は……僕も、明日はどうしても外せない用事があって、来れないんだ」
 男のその言葉に、子供たちははてな顔で返す。わざわざ大事な話と言ってみんなを集めての話しが、この程度のことだと予想していなかったのだろう。
「それだけ……? なーんだ。オレはてっきり……」
「閉鎖。とかでも思ったの? そんなわけないじゃない」
 子供たちが少し安心したように話し出す。
「……? 閉鎖? あぁ、まさか。違うよ。ごめん、心配させちゃったね」
 気がついて、男が笑う。が、すぐに真面目な顔に戻って付け加える。
「でも、明日一日。誰もいないことになっちゃうんだ」
 この孤児院は、普段は院長とシスターが一人、それとこの男の三人の職員で運営しているのだが、それぞれの都合が重なって、明日一日、大人が誰も居ないことになってしまうのだった。
「だから、外部の人に頼む事にした」
「誰ー?」
 男の言葉に、子供たちが返す。
「どんな人が来るかはまだ分からないけど、みんな、きちんと言う事を聞いて迷惑掛けないようにするんだよ?」
 やや不安そうに、男が釘を刺す。そして子供たちの中で一番年長の女の子にお願い。と確認を取る。
「は〜い」
 のんびりとした返事に、本当に大丈夫かなあと思いつつも、男は話を終わらせる。
「それじゃあ。今日はもう寝よう。みんな、おやすみ」
「おやすみなさーい」

種別名シナリオ 管理番号835
クリエイター依戒 アキラ(wmcm6125)
クリエイターコメントこんにちは。依戒です。
シナリオのお誘いにやってまいりました。

今回のシナリオは、
日常ノベル。
のほほんと平和な孤児院の一日です。


では、シナリオの説明を。

OPにでてきますとある孤児院。職員たちの都合により、丸一日。子供たちの面倒を見る人が誰もいない日が出来てしまうみたいです。
そこで、ボランティアの力を借りる方法を取りました。
依頼としてはこうです。
○月○日。○○孤児院にて子供たちの世話をしてくださる方の募集。

ええ。ですが勿論。どのようなプレイングでもOKですので、好きにお話しを彩ってみてくださいませ。

あ、そう。キャッチコピーには、「一日シスター募集」と書きましたが、勿論、男性の方もOKです。その他にも、世話をする意外でのご参加も勿論OKです。
語呂的に、一日シスターと書いただけですので。


さて。それでは、孤児院にいる子供たちのご紹介を。

・楓(かえで):9歳。小さな声でおどおどと話す男の子。自己主張はあまりしないが、頼み事などは素直にきいてくれる。

・紅葉(もみじ):9歳。楓とは双子。姉と弟。紅葉が姉。楓とはほぼ正反対の性格の女の子。かなりわがまま。
楓のことをとても心配。

・優(ゆう):13歳。のんびりとした口調で、いつもぽけぽけとしている女の子。マイペース。一応リーダー的役割。

・隆也(たかや):11歳。常に何かをしていないと落ち着かないわんぱく男の子。紅葉とは日ごろから口げんか。


この四人が、現在孤児院にいる子供たちです。

それでは、興味が沸きましたら、是非にご参加くださいませ。

最後となりましたが、プレイヤーのみなさまに、ほんの一瞬でも幸せな気持ちを感じていただけるように精一杯執筆しますので、素敵なプレイングを心よりお待ちしております。

参加者
ジョシュア・フォルシウス(cymp2796) エキストラ 男 25歳 俳優
秋山 真之(cmny8909) ムービーファン 男 15歳 高校生
ギルバート・クリストフ(cfzs4443) ムービースター 男 25歳 青の騎士
梛織(czne7359) ムービースター 男 19歳 万事屋
<ノベル>

 せっかちになった夕日に反して悠長な朝日が顔を覗かせる前。孤児院の前では三人の話し声が響いていた。
「本当に助かります。それでは、よろしくお願いします」
 先ほどから早口に何度もお礼を言うのは孤児院の男性職員だ。どうしても外せない用事を抱えている男、時間も押してきているのだ。
「騎士として、困っている人がいたのならば手助けするのは当然です。後のことは私達に任せてください」
 男性職員がその声に見上げると、そこには金髪碧眼の男。見るからに実直そうで、きりっと背筋の伸びたその立ち姿は元々高い身長を更に大きく見せる。服の上からでも分かるくらいに鍛え抜かれた身体に携えたバスタードソードは、先ほどの男の言葉に出てきた騎士という単語をこれ以上ないくらいに頷かせる。
 ギルバート・クリストフだ。
「有難うございます。ええと、あと説明してないのは……」
 やはり早口に、男性職員は言った事とまだ言っていないことを頭の中で整理しながら話を進める。が、その様子を見ていたもう一人の男が口を開く。
「ふふ、あとのことは子供たちに聞きますので大丈夫ですよ。貴方の時間の方も押しているのでしょう」
 柔らかく微笑んで言ったのは、ジョシュア・フォルシウスだ。まだ薄暗いというのにはっきりと分かる綺麗な金髪は腰まで伸びていて、その流れるように綺麗な髪にとてもよく似合う穏やかな笑み。声を掛けられた男性職員は、思わずほんの一瞬。時間を忘れて見惚れてしまう。
「……あ。あ、すいません。それでは僕はこの辺で。よろしくお願いします」
 目が合って、さらににこりと笑って見せたジョシュアに男性職員が我にかえり、慌てて時間を確かめ、去っていく。
 職員を見送ったギルバートとジョシュア。お互いに顔を合わせ、会釈をする。
「改めまして。ジョシュアと申します。今日は宜しくお願いしますね」
「これはどうも。私はギルバート。さて。それではまず、子供たちを起こしましょうか」
 僅かに明るみの出てきた空を見た後、二人はまだ寝ている子供たちを起こす為に孤児院の中へと入っていった。


 孤児院に入ったギルバートとジョシュアは、あらかじめ聞いていた寝室へと向かう。
 部屋を覗けば、右と左にそれぞれ二段のベッドが一組。現在孤児院にいる子供は四人なので、丁度数と合う。
 どう起こそうか。二人は一瞬だけ顔を見合わせた後、ギルバートがすうと息を吸い込み。
「みなさん。朝ですよ」
 とりあえず一度。声に出してみる。大きすぎる訳ではない。が、良く通る声。
「……ん」
 むくりと。右のベッドの下側から一人の少年が上半身を起こす。とろんとした目を小さく擦り、何度か瞬かせる。そうして数秒間過ごしたあと、掛かっている布団を除ける。するとそこには少年と同じくらいの年の少女が丸くなって寝ていた。見ると左側の下のベッドには半分捲ってある布団だけ。恐らくはここに寝ていた少女だろう。
「紅葉お姉ちゃん。起きて」
 ゆさゆさと少年が少女の肩を揺らす。しかし少女の方はあまり起きる気配がない。
「う〜」
 気の抜けた声にギルバートとジョシュアの二人は左の上段のベッドにが顔を向ける。そこには身体を起こしたまま止まっている少女が一人。まだ半分眠っているのか、目は閉じたままでふらふらと頭は揺れている。
「あーーー!」
 そして唐突に、今度は右の上段のベッドから。がばりと布団を蹴り上げて跳ね起き、入り口にいるギルバートとジョシュアの二人を見て少年が叫ぶ。
「クッソー。寝過ごした! 罠仕掛けて待ってようと思ったのに!! って、まだこんな時間じゃんかよ!!」
 時計を見て、さらに少年。
「んも〜。五月蝿いなぁ。あ、楓。おはよ」
 肩を揺さぶられていた少女も起き、左上段の少女も目を閉じながらふらふらと二段ベッドの梯子を降りてくる。
「楽しい一日になりそうですね」
 ジョシュアがギルバートに小さく呟き、二人して微笑む。
「おはよう。さぁ、顔を洗っておいで」
 ギルバートが子供たちに言い、その後にジョシュアに続ける。
「私達は、朝食の準備に掛かりましょうか」
「なーなー」
 その後ろから、先ほど叫んでいた少年が二人に話しかける。
「今日来る人って、にーちゃん達だけ?」
「いえ、確かあと二人ほどくると言っていましたね」
 男性職員の説明を思い出してジョシュア。それを聞いた少年は、口元をニヤリとさせて嬉しそうに部屋を出て行く。
「顔洗ってきまーす」
 そんな言葉を残して。


 子供たちが顔を洗っている間に、ギルバートは簡単なスープを作り、ジョシュアは野菜を洗って盛り付ける。それが終わる頃には丁度パンが焼き上がり、香ばしい匂いが辺りに漂う。こんがりとキツネ色に焼けたパンをスープ、サラダと一緒に並べ、朝食の完成。タイミングよく子供たちが戻ってくる。
「あ、いい匂い〜」
 匂いにつられる様に入ってくるのは、先ほどまでは目を閉じたままぼんやりとしていた少女。顔を洗って眠気は覚めたようだ。
 続いて入ってくる子供たち。が、入ってきたのは全部で三人。一人足りない。
「元気ですねえ」
 微笑んで、ジョシュア。
「少し待ちましょうか。残りの二人もそろそろ来るでしょう」
 ある程度予想していた二人は、そう言って席に着いた。


「えーっ、と」
 黒い短髪に黒い目。様々な人の住む銀幕市の中では、おおよそ普通の青年とも言える青年が、地図を見ながら歩いていた。
「あそこかな?」
 視線の先には小さな孤児院。青年は地図をポケットに仕舞い、孤児院へ向かって歩く。やがて入り口へと着こうというとき、入り口の前にハンカチが落ちていることに気がついた。
 ここに住んでいる誰かが落としていったのだろうか。青年が何気なくハンカチを拾い上げた時、何かを引っ張る違和感が青年の手に伝わった。
 ――ガラッ。
 瞬間に、青年の上から大量の薪が降り注ぐ。
「え!?」
 慌てたように青年。確かに青年の頭上に降り注いだ大量の薪。しかし、その薪が地面に落ちるまで、青年に当たることはなかった。
 おおよそ普通の学生のような青年だったが、その青年が一般の学生とは明らかに違う部分が二つほどあった。
 一つは。降り注いだ全ての薪を叩き落した日本刀。手にしていた日本刀で、鞘から抜くことなく青年は全ての薪を振り払ったのだった。
「大丈夫だった? そら」
 そして二つ目は。青年の肩に乗っているサニーデイのバッキー。青年は肩に乗っているバッキーに話しかけ、無事を確認する。
 そう。その青年は、ムービーファン。秋山 真之(あきやま さねゆき)だった。
「すっ……すっげぇーー! にーちゃんムービースター?」
 隠れてみていた少年だったが、真之の鮮やかな手並みに感動して駆け寄る。
「あ、おはよう。孤児院の、人?」
「そうだよ。にーちゃんは、手伝いに来てくれた人だよね?」
 目をキラキラさせて少年。
「うん。秋山真之。スターじゃなくて、ムービーファン。こっちのバッキーは、そら。よろしくね」
「オレは隆也。なぁ真之にーちゃん。後でオレに剣を教えてよ」
 真之に纏わりついて隆也。途中、お腹を押さえて続ける。
「あぁー……腹減った。そうだ、ご飯! ご飯食べにいこ」
 そのまま真之の手を引っ張って孤児院へと入っていく。
「これ、片付けないと」
 転がった薪を見て真之。しかし隆也はいーのいーのと軽く答え、二人は食卓へと向かった。


 遠巻きに、梛織(なお)は孤児院を眺めていた。
 確かに、それは梛織だ。愛用の黒ジャケットに左右で長さの違う淡いもえぎ色のチノパン。そして流れるような黒髪。
 けれど。
 梛織を知るものが見れば一目で分かる。その違和感に。
 いつもの笑顔が、まるで無かったのだ。
 数日前から張ってあった募集の紙を見て、ボランティアを志願した梛織。しかし、その約束の日を待たずして、一つの大きな事件が起こった。その大きな事件で、梛織は自らの手で知人たちを傷つけてしまった。それ以来、梛織は笑えなくなっていたのだ。
「マズイなぁ……」
 漏れる呟き。
 子供たちを前に、自分は違和感なく振舞えるだろうか。
 子供というのはそういうのを敏感に察知する。心配をかけたり、不快にさせてしまうかもしれない。
 けれど、一度受けた依頼を断る事なんてしたくないし。何より、孤児院の人々は本気で困っているのだ。力になりたいと思う。
「くっ」
 小さく毒づき、梛織は思い切り頭を振る。
「……よし!」
 言い聞かせるようにわざとに声に出し、梛織は孤児院へと歩いていく。悩んでいたって仕方がない。自分の知る自分ならば、きっとこんな場面でもこう動くだろう。大丈夫。今まで映画の中でだって銀幕市でだってこういう依頼は沢山こなしてきた。
 やがて孤児院のすぐ前まで着く梛織。ばら撒かれている薪を見て、とりあえず片付ける。そして片付けた後にノックする。
 しかし何の反応もない。仕方なくお邪魔しますと言って入る梛織。すぐに明かりの漏れる部屋が目に入り、そこへと向かう。
 梛織がその部屋を覗くと、そこにはギルバート、ジョシュア、真之。そして四人の子供たちが椅子に座って待っていた。テーブルに並べられた朝食と一つだけ空いた席を見て、自分待ちだったのだと気がついた梛織。
「あ、ごめん。少し遅れ……た?」
「いえ、僕もたった今来たところです」
 真之がそう言い、梛織を椅子に勧める。
「それでは、全員揃ったところで。食事……といきたいところですが、先に軽く自己紹介にしましょうか」
 ジョシュアの提案で、一人ずつ自己紹介することになる。
 子供たちのほうは小さい方から9歳の少年、楓(かえで)。9歳の少女、紅葉(もみじ)。11歳の少年、隆也(たかや)。13歳の少女、優(ゆう)。
 子供たちの自己紹介を終え、ジョシュア、ギルバート、真之と軽く挨拶をし、梛織の順番が回ってくる。
「次は俺かな、っ、と。初めまして。万事屋をやってる梛織です。よろしく」
 どちらかというと子供たちに向ける自己紹介なので、少し砕けた感じで梛織は言う。そして最後に、にっと笑う。
 ――つもりだった。
 けれども、梛織は笑う事が出来なかった。瞬間的に浮かんだのは、傷つけてしまった知人たちの顔。ボンヤリと憶えている。苦痛にゆがむ顔。そして悲痛な叫び。
 ――やばい。俺……笑えない。
 まるで笑い方を忘れてしまったかのように。立ちすくんだ梛織は呆然と下を見る。
 その場にいたどれだけの人間がその空気に気がついたかは分からない。けれど、その空気が長く続く事は無かった。
「よし! みんな終わった。もう食べていーの? オレ、腹へっちゃったよ」
 隆也が大声でそう言い、フルーツジャムに手を伸ばす。
「そうですね。では、いただきましょうか。けれど、お祈りがまだです。こうして食事を食べられる事への、感謝の祈りを」
 ギルバートのその言葉に、隆也が苦い顔をして返す。
「げ。折角みんないないのに、ギルにーちゃんも院長みたいな事言うのかー」
 と、文句を言いつつも素直にお祈りを済ませ、みんなで食べ始める。
「…………」
 食事に手が伸びない梛織。思っていた以上にどうにもならなかった事。浮かんだあの時の光景。色々な事が頭の中で渦巻いていた。
 ――コト。
 不意に目の前を遮った何かに、梛織ははっとして横を見る。目の前に置かれたのはフルーツジャムの瓶で、置いたのは優だった。
「ここで作ったジャム。美味しいよ〜」
「……」
 梛織が優を見ると、優はのほほんと笑って見せた。
「…………へぇ」
 恐らく、それはひどくぎこちないものだったろう。
 笑うというよりは、口元の筋肉を動かした。そんな表現の方が適正だろう。
「ジャムなんて作るんだ。それじゃ、少し貰おうかな」
 けれども梛織は、無理にでもそうして見せたのだった。


 その後、食べながらギルバートが本日の予定を大まかに話し、食べ終わった子供たちは次の予定に入っている野菜収穫の準備をする。ギルバートと真之が菜園に向かう準備をし、ジョシュアと梛織は朝食の後片付けに入る。
「大丈夫、ですか?」
 カチャカチャと並んで食器を洗っている途中、ジョシュアが梛織に訊ねる。
 何が? と梛織は返さなかった。
「辛かったら、後は私達に任せても、大丈夫ですよ」
「いえ」
 ありがとう。そして梛織は続ける。
「大丈夫。に、します」
 そう言って洗い終わった食器を拭きはじめる梛織。
「そうですか」
 ジョシュアもそう答え、一緒に拭きはじめた。


 準備が終わり、向かった先は孤児院関係者の家庭菜園だった。ここは孤児院に寄与する為の野菜をボランティアの人々で手入れしている菜園だ。
 そこへ子供たちを連れて行き、今日の夕食に必要な分を子供たち自らの手で野菜を収穫させてくれないかと頼んでその許可を貰ったのだ。
菜園に着くと、子供たちはまずその規模の大きさに驚いていた。自分たちの孤児院だけではない。他の施設などにも寄与しているその菜園は、とても規模の大きいものだった。
「それでは、二人一組になってメモにあるものを取ってきてください。取りすぎはいけませんよ。必ず、メモにある分量どおりに――」
 ギルバートが説明を終えると、楓、紅葉のペアと優、隆也のペアに別れて収穫を開始する。楓、紅葉ペアにはギルバートと梛織が。優、隆也ペアにはジョシュアと真之がそれぞれ同行した。
「おお。すっげー。カボチャってこんな風になってるんだ。よし、一番大きいのとろーぜ!」
「あ、隆也くん。足元、気をつけないと危ないよ〜」
 走っていく隆也を追いかける優。けれど、言ったそばから蔓に足を取られてバランスを崩してしまう。
「あ……」
 そのまま倒れこむ優だったが、地面に落ちる前にジョシュアがその腕を取って支える。
「大丈夫ですか? ふふ、気をつけてくださいね」
 柔らかく微笑むジョシュアに優はお礼を言い、今度はより慎重な仕草で歩いていく。
「これが一番でかい。これにしようぜ」
 借りたハサミで蔓から切り離し、持ち上げる隆也。重そうに持ち上げたところで優も加わり、二人で台車まで運ぶ。
「うん。このサイズならOKだね。次に行こうか」
 台車を押して次の場所へ向かう真之。隆也がその横を走り抜けて先に進んでいく。
「結構楽しいな、これ」
 振り向いて笑う隆也に、みんなで笑い返した。

「なんで私が、こんな事しなくちゃいけないのよ」
 ぶつぶつと文句を口にしながら歩いているのは、紅葉だった。
「あ……僕がやるよ」
「楓はいいの。怪我とかしたら大変だから。こんなのは隆也にやらせればいいのよ。あいつなら喜んでやるし」
「これこれ、そんなこと言うものじゃないですよ。普段自分たちが口にするものがどうやって収穫されているか。そういう事を知るのも、大切なことです」
 ギルバートが嗜めると、紅葉ははーいと返事をする。やがてある畑に着き、収穫を始める。
「梛織殿」
「……え、あ、うん?」
 突然のギルバートの声に、ぼんやりとしていた梛織は驚いて答える。そしてすぐに、ギルバートの視線を追って言おうとしていたことに気がつき、畑に入っていった紅葉を追う。
「適当に何個か抜いて、早く終わらせるわ」
 そう言って畑から出た葉を引っこ抜く紅葉。が、すぐに小さな悲鳴をあげて引っこ抜いたものを放り投げる。慌ててキャッチする梛織。虫でもついていたかな、と。手にしたにんじんを見る。
「に、にんじんじゃないの……! 私、それ嫌い。梛織が抜いて」
「なるほど。でも、ま。葉っぱの方なら平気だろ? 抜いたのは俺が持つからさ」
 その言葉に渋々ながら紅葉は作業を続ける。葉っぱを持って引っこ抜いたにんじんをすぐに梛織に差し出している。
 一方、ギルバートと楓は、たまねぎの畑にいた。
「たまねぎは、丸々として重いものが食べごろです」
「……うん」
 ギルバートの言葉を念頭にじっくり選ぶ楓。やがてお気に召すのが見つかったのか、指を指す。
「これ」
「うん。美味しそうなたまねぎですね。では、これを取ってください」
 そういわれて葉っぱを引っ張ってみるが、すぐにやめて困ったような顔を見せる楓。手ごたえから、葉っぱの方が抜けてしまうと思ったのだ。すぐに思いついたように台車に向かった楓は、台車からシャベルと持ってきてそれでたまねぎの周りを少し掘って取り出す。そして取り出した後、ギルバートの顔を見ると、ギルバートがにこりと笑って頷いたのを見て、安心したように次のたまねぎを選び始めた。

 昼近くになり、菜園のスタッフがお昼はどうするのかと聞いてきた。簡単なおにぎり程度なら作りますよ。と。
「あ、それじゃあ俺、手伝います」
 任せっきりも悪いと、梛織が申し出る。
 使う分の収穫を終えた子供たちは、今度はどんなものを育てているのかをみんなで見て回ることにした。
「あぁ、もう。疲れた。楓、だいじょうぶ?」
「うん。平気」
「ここって、オレ達みたいな孤児院に送る食料を作ってるんだろ? こんなに沢山作るほど、そういうところってあるの?」
 隆也の質問に、ジョシュアが頷いて答える。
「ええ、そうですね。ここでは孤児院、その他施設に、あとは身寄りなどのないムービースターの方々にも支援しているようですね」
「そうなんだぁ〜」
「普段。自分たちが何気なく口にしている食べ物も、今日みなさんが労働した、それ以上の苦労から成り立っているのですよ。それを知って、感謝をすることを心に留めておきましょう」
 ギルバートの言葉に子供たちは素直に頷く。それは実際に収穫の大変さを経験したからであり、この大きな菜園を見たからである。
「昼食の準備が出来たみたい。向こうで梛織さんが手招きしてます」
 少し離れた所で梛織が呼んでいたのに真之が気が付き、みんなで戻る。戻ってみると、おにぎりと味噌汁が出来ていて、それぞれ受け取って席につく。
 みんなでお祈りをした後、いただきますと子供たちが菜園の職員に言って食べ始める。
「はい。これは紅葉嬢に」
「……?」
 ほのかに色のついたおにぎりを紅葉の皿に置く梛織。どうして自分だけに持ってきたのかが気になった紅葉、不思議そうに梛織を見る。
「にんじんライスで作ったおにぎり。別ににんじんアレルギー? そんなのあるのかな? とかじゃないよな? にんじんの味もそんなにしないから、少しだけ食べてみて」
 見るとおにぎりのご飯が淡いオレンジに染まっている。一見おむらいすのような色合いだが、トマトケチャップではなくてにんじんをすりおろしたものをコンソメで味を調えて混ぜ込んである。
「にんじん……嫌いって言わなかった?」
「あぁ、聞いたよ。無理そうならさ、後はいいから。一口だけ食べてみて? 自信作なんだ」
 やはりぎこちなく口元を動かして見せて、梛織が言う。
 少し迷った紅葉だったが、みんなが自分に注目しているのが気恥ずかしくなって早口で言う。
「別に、どうしても食べれない訳じゃないし」
 そう言って一口。何度か咀嚼して、飲み込む。注目が集まる。
「美味しくなくは……ない」
 照れからか、そんな風に返す紅葉に、おぉ〜だとか偉い。だとかの声が掛かる。紅葉はそれが余計に恥ずかしくって、怒るように言う。
「なによ……! ただにんじんを食べただけじゃない!」
「なーなー。そのおにぎり、もうないの?」
 紅葉がそのおにぎりを食べ終えると、隆也が自分も食べてみたいと言い出す。それを聞いた梛織が、待ってましたとばかりににんじんおにぎりの皿を取り出すと、あっという間に売切れたのだった。


 午後になり、孤児院に戻った子供たちは勉強の時間だ。年齢に合わせた勉強をそれぞれ教える。
 ある程度の時間を集中して勉強した後、天気もいいし外で遊ぼうかという話題になり、みんなで何をして遊ぶかを決める。
「普段は、どんなことをしているのですか?」
 ジョシュアがそう訊ね、思い思いに子供たちが答える。鬼ごっこ、かくれんぼ、ドッジボール、読書、スケッチなど。日によって様々だ。
 そして色々話し合った結果、折角だから人数の関係で普段はなかなか出来ないサッカーをしようということになった。
 チーム分けはくじ引き。紅葉、優、真之、梛織のチームと。隆也、楓、ジョシュア、ギルバートのチームに分かれる。孤児院の小さなグラウンドで、キーパーは無し。
 出来るだけ子供たちにボールを回し、大人組みは補助程度に参加する。
 キーパーがいないということで、ドンドンと点数が入り、最後の方になると敵味方関係なく子供たち対大人組みになっていた。
「疲れたぁ」
 十分に遊んで疲れたのか、優が木陰に入って休む。
「ふふ。沢山走りましたものね。どうぞ、タオルと水です」
 ありがとう。と優が受け取り、そのまま雑談に入る。
「久しぶりです。こんな風に沢山身体動かしたの。普段はあまり沢山身体を動かせる人がいないから」
「そうですか。楽しめたのなら、良かったのですが」
「はい。勿論ー。楓くんも紅葉ちゃんも隆也くんも、ほら。みんな楽しそうに笑ってる」
 まだ走り回っているみんなをみて、優が微笑む。そんな優を見てジョシュアも微笑む。
「さて。次は何をして過ごしましょうね」
 言いかけたジョシュア。そこでふと降ってくるもみじの葉に気がついた。
「そうですね。しおり、なんて作ってみませんか?」
「……しおり?」
 ハテナ顔で返す優。ジョシュアは落ちてくるもみじの葉を手のひらで受け、人差し指と親指で摘んで見せる。
「ほら。綺麗な色じゃないですか?」
 穏やかに微笑んでいるジョシュアを見て、優は今まで気にもしなかった落ち葉に、途端に色がついたのを感じる。
「ほんとうだぁ」
 近くに落ちていたもみじの葉を拾って、優は続ける。
「そうだ。楓くん呼んでくる。楓くん、そういうの好きだから。きっと凄く喜ぶとおもうの」
 サッカーの方も一段落ついたみたいで、みんなで固まって休んでいる。優がそこにいってしおり作りの話を持ちかける。
「……楽しそう」
 興味を見せた楓に、紅葉が言っておいでと送り出す。そして優と楓が行ったところで、隆也が真之を見て言う。
「な、な。剣を教えてくれよ!」
「剣?」
 ギルバートと顔を見合わせる真之。
「うーん……、確かに剣術には少し自信あるけど、人に教えれる程かっていうと……」
「えー。いいじゃんか。さっきの凄かったし」
 困って言う真之に、隆也は近くの枝を拾ってぶんぶんと振り回してみせる。
「そうですね。こんな街ですから、誰かを守るための力というのも必要になる場面もあるでしょう。秋山殿。基礎だけでもどうでしょうか」
 ギルバートの応援を得て得意顔で隆也が真之を見る。真之は困ったようにはははと笑った後、それじゃあと続ける。
「僕に出来る事なら」
「やったーー!」
 喜ぶ隆也。紅葉も移動しようとしないところを見ると、こちらのほうに興味があるのだろう。
「んじゃ、俺は向こうを手伝ってくるよ」
 そう言って立ち上がる梛織。こっちは丁度2−2だし、手伝いが必要ならば向こうのほうだろうと考えたのだ。

「……」
 ジョシュア達を追って孤児院の中へと入った梛織。途中、洗面所に寄り、頭から水を被る。
 秋の終わりの水は凍えるほどに冷たい。けれど、そんなことは今の梛織には感じる事すらできていなかった。
 なんとかなるかなと。いや違う。なんとかしようと、梛織は思っていた。
 けれど実際はどうだろう? どうにもならない。
「……くそっ!」
 小さく毒づく梛織。飛び跳ねた水がピチャリと音を立てて床に落ちる。
 笑うべきか笑わざるべきか。笑えるのか笑えないのかが、まるで分からない。
 不自然な笑顔は色々な人に心配を掛けるだろう。しかし、知人たちを傷つけた自分が、へらへらと笑っていて許されるのだろうか。その時、自分は自分を許す事が出来るのだろうか。
 ――キュ。
 水を止める梛織。が、その顔はまだ上がらない。ポタポタと濡れた髪を伝って落ちる水の間隔が、次第に長くなる。
 やがて梛織は顔を上げて鏡を見る。そして右手の人差し指と親指を口元に持っていき、その指で無理やりぐにゃりと口元に笑みを作る。
 梛織には鏡に映るその顔が、とてもよく知っている誰かの顔に見えた。

「はっ!」
「……はっ!」
「ほっ!」
「……ほっ!」
 外では素振りの練習が行われていた。
 ギルバートと真之が最初に剣を振り、一呼吸置いて紅葉と隆也が同じように竹刀を振る。
 基本をギルバートが紅葉。真之が隆也にマンツーマンで付き、体勢などの乱れを正していく。
 サッカーで引いた汗が再び浮き出てくるくらいに素振りをした後、ギルバートが真之を指名して演舞を見せると言った。いきなりの言葉に驚いた真之だったが、実を言うと素振りを見ていただけでもギルバートの腕がいいのは見て取れていたので、どんな形であれ一度打ち合ってみたいと考えていたのだ。だから断ることはせずに了承する。
 即興の演舞。演舞ということでお互いに真剣を用いる。
 向かい合ってすらりと剣を抜く二人。
 ギルバートはライト・ブリンガーというバスタードソード。本来はこの剣にギルバートの持つ魔力を込める事で様々な効果を生み出すものだが、今回は魔力は込めない。
 対する真之は綺麗に磨かれた打刀。それが業物なのかは分からないが、しっくりと真之の手に馴染んでいるそれは使い込まれたものだということを物語っている。
 剣を構え、間合いを計る二人。紅葉も隆也もこれ以上ないくらいの期待の眼差しで魅入っている。
 先に動いたのはギルバートだ。流れるように自然な動きで真之に打ち込んでいく。
 ――ガギィン。
 爆ぜるように響く剣戟音。何度も、何度も場所を変えてぶつかり合う剣は火花を散らす。
 勿論打ち合わせなどあった訳ではない。けれど、二人ともまさに真剣勝負のような集中力で、全力で打ち合ってもその軌道を目で捉えていた。
「……」
 言葉が出ないとは、まさにこの事。紅葉も隆也も声を忘れたかのように黙って演舞を見ている。
 風切り音を鳴らしながら一際大きく剣を振る真之。ギルバートは受けた剣をやわらかく逸らして真之の剣を受け流す。そしてすぐに勢いのまま後ろを向いた真之に切りかかるギルバート。しかし真之は後ろを向いたままにギルバートの剣を弾き、そのまま一回転して再び攻撃に転じる。
 ――ギィン。
 勢いを乗せた攻撃は一際大きな音を立て、弾かれた二人は距離を取って息を整える。そしてお互いに剣を納める。緊迫していた空気の余韻に、しばらくは静まったままだった。
「おぉぉぉぉぉ」
 そして次の瞬間には隆也の叫び声。すげぇぇと飛び跳ねて喜んでいる。
「お見事ですね」
 ギルバートが真之に歩み寄って握手を求める。
「ギルバートさんこそ」
 手を握り返して、真之も答えた。

 室内では、ジョシュアが楓、優と一緒にしおり作りを始めていた。
 各自拾ってきた落ち葉の中から気に入った形のものを選ぶ。
「これか……これ。悩むよ〜」
 吟味していった二つのどちらかを決めかねている優をよそに、楓は悩むことなく決めたようだ。レイアウトを決めて台紙に重ね、ジョシュアに見せる。
 それは同じくらいの大きさの葉が二枚。連なるように重なったものだった。
「これは……ふふ」
 それを見たジョシュア。嬉しそうに微笑み、楓の台紙を預かる。そして上下に透明なフィルムを被せ、ラミネーターの代わりにアイロンで固定していく。
 ぴったりと張り付いたのを確認して、上の部分に小さな穴を開けて細長い布ヒモを通す。
「出来ましたよ」
 きちんとしたしおりになったそれを受け取り、楓の表情が少し緩む。
 手に持ったしおりの中では、二つの葉っぱが仲良さそうに寄り添っていた。


 夕日が見えはじめ、孤児院の人々は夕食の準備に入る時間となる。
 夕食はバーベキューにカレーということになっていた。ワイワイ食べれるというのと、孤児院の職員が戻ってきたときに子供たちの作った料理を食べれるようにという事だった。
 役割分担を決め、それぞれが決まった役割をこなしていく。
 隆也と真之は火をおこす為にバーベキューコンロを倉庫から引っ張り出しての準備を始める。
 新聞紙や落ち葉を敷き詰め、その上に炭を並べる。そうして火を点け、団扇で空気を送る。
「なーなー。オレも毎日素振りしてたら、真之にーちゃんみたいに強くなれるかな?」
 コンロに風を送りながら隆也が真之に言う。ん? と、真之は隆也の方を向いて答える。
「そうだねぇ。隆也くんはまだ若いし、毎日続けてれば、きっとなれるよ」
 ほんと? そう返した隆也に、真之は続ける。
「うん。毎日何かを頑張れば、前の日の自分よりは確実に成長していくから。頑張って続ける事が、大切だと思うよ」
「そっか……うん。なら毎日続ける!」
 よし。と気合を入れるポーズで隆也。
「隆也くんは、どうして強くなりたいの?」
 いつになく真面目な調子の隆也だったから、真之はついそんなことを聞いた。真之にーちゃんになら教えてあげる。と、隆也は続けた。
「さっき、ギルにーちゃんが言った事なんだけど。色々な事が起こるこの街だからさ。いざっていう時に力がないと、誰も助けれないかもしれない」
 そこまで言った後、隆也は照れくさそうにへへっと笑って続ける。
「血は繋がってないけどさ。この孤児院にいるみんなのこと、家族だって、思ってるからさ」
 コンロの炭には大分火が回り、二人は扇ぐのをやめてその炭をじっと見ている。
 ときおり吹き抜ける寒風。炭はそのたびに身体を赤々とさせて寒さに抵抗している。
「これ、ナイショね。恥ずかしいからさ」
 やっぱりへへっと照れくさそうに笑って見せた隆也を、真之は幸せそうに微笑んで見ていた。

 楓はギルバートと一緒に椅子やテーブルの準備をしていた。必要なものを倉庫から引っ張り出す作業だ。今は長椅子の両端を二人で持って運んでいる。楓の歩幅に合わせて少しずつ進む為、なかなか進まない。
 本来ならばギルバート一人でやったほうが何倍も早い作業だったが、ギルバートはそうはしなかった。こういった小さな部分でも子供たちが責任を持って取り組めるという事に、意味があると考えたのだ。
「……ん」
 何往復かして長椅子を運び終え、次は大きな木のテーブルだった。が、それは大人が数人掛りで移動させるような大きなものだった為、ギルバートは楓に持たせるのは危険と判断した。
「これは少し大きいから、私が持ちますので。先に行って邪魔になりそうなものを避けておいてもらえませんか」
 ギルバートの言葉に、うん。と返して楓が先に行ってギルバートの通る道の邪魔になりそうなものを避けていく。
「よっ」
 それを途中まで目で確認したギルバートは、大きく息を吸い込んでテーブルを持ち上げ、そのまま担ぐ。テーブルは結構重いもので、ギルバートが歩くたびにぎしりと土が音を立てる。そしてそれを長椅子の場所まで持っていき、静かに下ろす。
「この辺りですか」
「うん」
 真ん中を持ってテーブルを降ろすと両端が見えないので、テーブルの足元が平気かどうかを楓が答える。
 そして最後に、テーブルの周りに長椅子を並べて準備は完了だ。二人は別の場所へ手伝いに行こうとその場を離れた。

 優と梛織は、商店街への買出しに帰り道だった。
 野菜関連は菜園から貰って来たので平気だったのだが、野菜だけでのバーベキューとカレーはかなり寂しい。タイムセールで評判の店を何件か回り、安くていい品を買いこんでの帰宅だ。
「お肉〜お肉〜」
 買い物袋をぶら下げて変なダンスをしながら歩く優。そしてその少し後ろを歩く梛織。
 いつもだったら自然と笑いがこみ上げて、その意味の分からないダンスにツッコミも入れるところだろう。けれど、その度に頭は別のことを考えてしまう。
「お肉は美味しいよ〜」
 クルクルと回って優。そこで何かに気が付き、ピタリと止まって梛織に言う。
「少し公園に寄ってもいいですかー?」
「うん? あぁ、いいよ」
 疲れたのかな? と、梛織は優の後に続いて公園内へと入る。優は一直線にブランコへ進み、買い物袋を横に置いてブランコに座る。同じように梛織も隣のブランコに腰を降ろす。早速優が勢い良くブランコを漕いでいる。
「……ふぅ」
 優に聞こえないように小さく息を漏らす梛織。あの日から、暇があれば、いや。暇が無くても考えている。自分はこれからどうすればいいのか。
 きっと答えは決まっているのだろう。
 けれど――。
「……ん?」
 不意に何か温かいものを感じた梛織は、はっとして顔を上げる。
 いつの間にか優は梛織の前に立っていて、その右手は梛織の頭を撫でていた。
 ほんの一瞬。梛織はぽかんと優を見上げていていた。すぐに気がついて何かを言おうとしたとき、優の言葉がそれを遮った。
「楓くんも紅葉ちゃんも隆也くんも。こうすると泣き止むの」
 もしかすると、優の目には梛織が泣いているように見えたのかもしれない。
「…………さんきゅ」
 小さな声で、梛織は言った。

 台所では紅葉とジョシュアが下ごしらえを担当していた。
 野菜を適当な大きさに切り、皿に盛っていく。
「普段は、当番制とかですか? 料理は」
 手馴れているというわけではないが、不慣れでもない紅葉の手つきを見てジョシュアが訊ねる。
「……? うん。子供たちは二人一組で、それに大人が一人ついて」
「なるほど。紅葉は楓と組んでですか?」
 仲のいい姉弟だし、紅葉が何度も楓の心配をしているのを見てきたジョシュア。そう思って訊ねる。
「本当はずっとそうしたいんだけど、ちゃんとみんなと組めって。優はトロいし、隆也はうるさいし」
「ふふ。みんないい子じゃないですか」
 小さく笑ってそう言ったジョシュアを、紅葉はちらちと除き見てから、答える。
「嫌いじゃないけどね」
 野菜の方が終わると、丁度いいタイミングで優と梛織が戻ってくる。さらに同じタイミングで楓とギルバートも来たので、続きの作業は外に出てみんなでやることになった。
 串物とカレーだ。途中、使うお肉を間違えたり固形ルーの分量を間違えたりといくつか小さなハプニングがあったが、おおよそスムーズに準備は整った。
「いただきます」
 きちんとお祈りを済ませてから、みんなでいただきますをする。
 一日色々動いた所為か、みんなどんどんと食が進む。
「あーーーっ! 紅葉、おまえオレが楽しみに焼いてた肉、取ったなー!」
「別に誰のでもないでしょ。何食べたって私の勝手よ」
 そして突然に始まる口喧嘩。梛織を挟んだ両隣で始まった喧嘩に、間に挟まれた梛織はおろおろしている。
「ほんと、いやしいのな」
「いやしいのはどっちよ。たかだか肉一つで文句つけて」
「あのー……喧嘩はよくな――」
「梛織は黙っててっっ!」
「梛織にーちゃんは黙っててっっ!」
 言いかけた梛織の言葉を遮って二人の言葉ははもる。しゅんとして小さくなる梛織。
「だいたい、おまえは少しわがまますぎるんだよ」
「だったら何よ。迷惑掛けるっていう問題ならあんたの方が酷いわよ」
 じゃれる程度ならよかったのだが、次第にエスカレートしていくその状況を見て誰もがそろそろ止めようかと思った。
「ちょっといいですか」
 ジョシュアが二人の前にやってきてしゃがみ込み、話し出す。
「二人とも。喧嘩をしたいと思っていますか?」
 そんなことを聞かれ、紅葉も隆也もいや……と言葉を濁す。別に二人とも喧嘩をしたくてしているという訳ではないのだ。売り言葉に買い言葉。どちらも引き際を読めずに、どんどんと発展してしまうのだった。
「紅葉」
 紅葉を向いてジョシュア。自分だけが怒られると思った紅葉。ちょっとふてたような顔でジョシュアを見る。
「紅葉が食べたお肉。隆也が食べようと楽しみに焼いていたの、気がついていましたよね?」
「……うん」
 穏やかに話すジョシュアに、嘘なんてつけなくて紅葉は答える。
「楽しみを奪われるのは、紅葉だって嫌でしょう? たかだか、と紅葉は言いましたけど、どんなことだって楽しみは楽しみです」
「……うん」
 先ほどと同じように。でもしっかりと聞いているというのは見て取れた。だからジョシュアは紅葉のはそこまでにして次は隆也に向き直る。
「隆也」
 紅葉の方を向いてべー、と舌を出していた隆也。ジョシュアに見られて急に背筋を正す。
「そうやって挑発するものではありません。嫌な事されたり言われたりしたら、隆也だって嫌な気持ちになるでしょう?」
「うん。だけど」
 だけど向こうが先に。隆也の言おうとしていたこともジョシュアには分かっていた。ジョシュアは、ええ。と頷き、更に続ける。
「隆也も。紅葉も。好きな人が怒ったり泣いたりしているより、幸せそうに笑っていたほうが嬉しいでしょう?」
 二人を見て、ジョシュアが言う。
「そりゃ、そうだけど……」
「別に好きっていう訳じゃ」
 と、隆也と紅葉。
「でも、ふふ。嫌いじゃないんでしょう?」
 何かを含めて、ジョシュアは言う。思い出した紅葉は照れたようにそっぽを向く。
 もう大丈夫だろう。そうジョシュアは、二人の頭を軽く撫でてから立ち上がって席に戻る。
「……紅葉」
 ジョシュアが席に戻った後、小さな声で隆也が言う。
「……」
 顔だけで返事をする紅葉。
「……許してやる」
「…………私も」
 そんな二人の遣り取りは、とても微笑ましいものだった。


 食事が終わって後片付けが済むと、空には完全に日が落ちていた。
 子供たちは二度目の勉強タイム。昼と同じようにそれぞれがついて勉強に励み、それが終わると広間に集まってみんなで話をする。
「へぇー。なんか不思議だなぁ」
「何も考えてなさそうな顔よね」
「う〜ん。だけど幸せそうにしてるね」
「なんだか、かわいいね」
 話題となっているのは真之のバッキー、そらの事だ。触られたり突付かれたり。そらは機嫌がいいのか眠たいのか、されるがままになっている。
「そらはすごく気まぐれでね。ちょっと目を離したら急にふらっと何処かに行っちゃう事が結構あるんだ」
 そんな風に聞かれるままに、そらとのエピソードを真之は話す。
「言葉って、通じるの?」
「うーん、どうなんだろう。通じてるなって思える行動をすることは多いけど。無視されることも多いし。あ、人間の言葉は喋れない、と思うよ?」
「喋れたら、それはそれで少し不気味な気もするね」
 そんな言葉にみんなで笑う。渦中にいるそらは、そんな周りはお構いなしにテーブルに置いてあった手毬に抱きついて遊んでいた。
「なーなー。梛織にーちゃんは万事屋なんだろ? 万事屋って何でも屋だよな? どんなことするの?」
「そうだなぁ……猫探しとかかな」
 突然にそんなことを聞かれた梛織。思わず返す。が、予想外の答えだったのか子供たちはぽかんとしている。
「あ。はいはーい。あたしも猫探すの得意だよ〜」
 優を除いて。
「うん。優嬢は得意そうだ。今度やり手の猫がいたら手伝ってもらおうかな」
 任せて〜。と、間延びした返事をする優。
 かわりにさ。梛織が言う。
「こっちで何か困ったことがあったら、俺が手伝うからさ」
 ぽん。と、優の頭にそっと手をのせて。梛織は言った。
 深まる夜。沢山話をして子供たちに話疲れが見え始めると、ギルバートがジョシュアに持ちかけて芝居混ざりの絵本の読み聞かせをすることになった。
 ストーリーはこうだ。

 それは恐竜の母と子の物語。
 子供を生んで幸せに暮らしていた草食恐竜の親子。しかしある日、餌を探しに行った戻ってこないお父さん恐竜を探しに行ったお母さん恐竜は、ティラノサウルスに食べられたお父さん恐竜の亡骸を見つけてしまいます。
 悲しみに暮れたお母さん恐竜。それでも子供だけは一人でもしっかり育てようと戻りますが、お母さん恐竜が戻った時には子供を隠してきた場所は何かに荒らされていて、一匹たりとも子供の姿は見えませんでした。
 泣く事さえ出来ずに無気力に過ごすお母さん恐竜。そんなある日、お母さん恐竜は今までに見たこともない大きな卵を見つけました。
 やってきた動物に聞いてみると、それはティラノサウルスの卵だそうで、卵を食べれない草食恐竜のお母さん恐竜に代わり、その動物が卵を食べようとします。
 しかしそれを見たお母さん恐竜は、誰かのおなかにおさまってしまったであろう自分の子供たちを思い出し、動物から卵を取りあげ、自分が育てる決意をします。
 来る日も来る日も卵を温め、やがてティラノサウルスの赤ちゃんが生まれます。
 そうして母と子は、仲良く暮らし始めます。
「あの子は優しい子よ。なかまを食べるなんて、とんでもない」
 かぶりを振って、ジョシュアが言う。これは成長したティラノサウルスを見て、食べられてしまわないかと心配した群れの仲間に対するお母さん恐竜の台詞だ。
「このままずっとお母さんのそばにいられれば、他には何もいらないなぁ」
 今度はギルバート。誰よりも優しい子に育ったティラノサウルスの台詞。ティラノサウルスは、そんな平和な毎日が続けばいいと思っていました。
 けれども、ある日。山ほどもある隕石が大量に降ってきます。色々な生き物がそれに巻き込まれて死んでしまいます。辛うじて生き延びたものたちも、その後に続いた寒さに、次々と倒れていってしまいます。
「おまえに、お願いがあるの」
 どうにか生き延びてきた母子。しかし弱り果てたお母さん恐竜が、ある日ティラノサウルスに言います。
「お母さんが死んだら、お母さんの身体を食べて欲しいの」
 辺りは食料すらも少なくなった世界。自分の身体で我が子の命を繋げようと、お母さん恐竜は言います。
「できるわけないだろ! そんなこと!」
 勿論。ティラノサウルスは言います。が、やがてお母さんは、息絶えてしまいます。
「わあぁぁぁぁぁ」
 咽び泣くティラノサウルス。
 ジョシュアとギルバートの演技に、子供たちもすっかりと感情移入している。涙を流しているのは楓だ。
 絵本の方はもうすこし続き。ティラノサウスルは結局、お母さん恐竜の身体を食べれないまま、隣で過ごしていました。
 やがて他の肉食恐竜がお母さん恐竜の肉を食べようと、群がってきます。けれどティラノサウルスは、傷だらけになりながらも、来る日も来る日もお母さん恐竜を守り続けるのです。
 そうして最後までお母さん恐竜を守り続けたティラノサウルス。いつの間にかあたり一面には雪が降り積もっていて、いつしか地上には敵はおろか動いているものすらいなくなります。
「あぁ、これでやっとゆっくり眠れる……」
 ティラノサウルスはお母さん恐竜の隣に大きな身体を横たえて、まぶたをそっと閉じます。にっこりと。満ち足りていて、優しい笑顔。
 雪は、二人を包み込むように、ひっそりと降り積もっていきました。

 絵本を読み終えると、楓だけでなく他の子供たちも目を潤ませていた。
 その後少し余韻に浸り、そろそろ就寝時間となったとき、孤児院の男性職員が帰って来た。
 泊まっていくという話も出たが、明日の用事などもあるだろうし、みんな戻ることにする。
「なーなー。また剣、教えてくれる?」
 廊下を歩く真之の腕を掴み、隆也が言う。
「勿論。次見るときを楽しみにしてるよ」
 よっしゃーと喜んで素振りの真似をしてみせる隆也。
「あ……」
 外に出ようとしていたジョシュアの服の袖を引っ張って止めたのは楓だった。
「これ……ありがとう」
 そういった楓の手には、大事そうにあの時作ったしおりが握られていた。
 ええ。と、ジョシュアは柔らかく微笑んで続ける。
「いつまでも仲良く、ね」
 そっと目配せして、そう言うのだった。
「また遊びに来てね」
 外に出てうーんと伸びをしていた梛織の背中に、優が声を掛ける。
「あぁ、また来るよ」
 にへらと笑って見せたそれは、やっぱりぎこちなかったけれど。今までで一番自然な笑顔だった。
「ありがとうございます。とても助かりました」
 子供たちを並ばせてお礼を言う男性職員。楓、隆也、優もそれぞれにありがとうと言う。
 一人だけ言おうとしない紅葉に、男性職員が気がついて、ほら、言ってしまうぞ。と急かす。ビクリとした紅葉が小さく口を開く。
「……ありがと」
「どういたしまして」
 にこりと笑って、ギルバートはそう返した。
「それじゃあ、またね」
 そうして、とある孤児院の一日は過ぎていった。



 孤児院から離れ、帰り道を歩くギルバートとジョシュア。
「いい子たちばかりでしたね」
 今回のボランティア。困っている人を助けるという理由は勿論だが、この街に住む子供たちをよく見ることや、教育の一環を担う為という理由もあったギルバート。
 しかし、至らない部分は確かにあったが、しっかりとしたいい子供たちだ、と。今日一日を子供たちと共に過ごしたギルバートは感じていた。
「そうですね。優しくて、素直で。置かれた境遇は決して軽いものじゃないはずですが、それを露ほども感じさせませんね」
 孤児院にいるということは、少なからず肉親との別れを経験しているという事になる。どんな形であれ、まだ幼い子供にとって、それは辛いことである可能性はとても大きい。そしてそれを知っている職員側も、だからこそ誰も大人のいない日など作りたくはないだろうと。そう思ったからこそ、ジョシュアはボランティアに参加したのだ。
 せめて自分たちが、寂しさを感じない為の力になれればと。
「袖振り合うも多生の縁」
 ジョシュアの口にした言葉に、ギルバートが疑問の返事を返す。
「この国の人間ではない私、別の世界から来たギルバート、この国の子供たち。まるで接点の見出せない私達がこうして共に一日を過ごすというのは、やはりそういうことなのでしょうね。この出会いが私達にとって良き物になるきっかけになればと、そう思いますね」
 ふむ。と、頷いてギルバートは返す。
「そうですね。この出会いに、感謝を」
 そうして神に感謝をするギルバート。そんなギルバートに、ジョシュアが少しだけ雰囲気を変えて言う。
「ところで」
 はい? と、ギルバート。
「朝から気になっていたのですが……」
「なにがですか?」
「ギルバートが、私の知り合いの同居人に、良く似ている気がするのです」
「……?」
 ジョシュアの言葉の意味を少し考えてみるギルバート。そこであることが頭に浮かぶ。この街に来てからというもの、通りを歩いているとひそひそと囁かれている気がするのだ。もしかしたら何か関係があるのかもしれない、と。
「すみません、ジョシュア殿。その話、もう少し詳しく聞かせてもらえませんか」
「ええ、いいですよ」
 深刻そうなギルバートの表情に、ふふと微笑んでジョシュアは答えたのだった。


「楽しかったね、そら」
 帰る道すがら、真之は肩に乗っているそらに話しかける。
 子供は好きなほうである真之。今日一日見てきた沢山の笑顔を思い出して小さく含み笑いをする。
「ちょくちょく顔を出さないとね」
 隆也と約束したことを思い出してそう呟く真之。真剣に強くなろうと頑張っている姿に、自分に手伝えるならと思ったのだ。
 そうして歩いているうちに、急に風が強まってくる。
 寒い。真之は小さく呟いて掛けていたマフラーをほどくと。
 大きく肩に回して、そらにも掛かるように掛け直した。
「ぐちゃぐちゃにしないでね?」
 掛けられたマフラーに興味を持ったのか、それを手に持ったそらに、真之は笑いながら言った。


 結局自分は、巧く出来たのだろうか?
 万事屋の事務所に戻った梛織は思う。
 今までのように笑う事は、一度も出来なかった。笑おうとするたびに、戸惑ってしまう。
 取り付けられた鏡に、梛織は右手を使ってあの時のように無理に笑顔を作ってみる。見えたものはやはり同じだった。
 その男は、人を傷つけながら平気で笑う。勿論、その男のいい部分だって考えれ詰めればば少しくらいはあるのかもしれないし、その男自体は嫌いじゃなかった。けれど、そういう部分に置いては、あの男はそうだった。
 そしてその姿が、自分と重なる。
 今までは絶対に違うと自身を持てた。自分とあの男が同じだというそれのこと。
 しかし今は、揺らぐ。
「同じじゃ……ねぇよ」
 振り絞った言葉は、辛うじてそれだけを紡いだ。

クリエイターコメントこんにちは。依戒です。
シナリオのお届けにあがりました。


今回のシナリオ。テーマは日常ノベルとしていました。
別段、大きな事件というわけでもない。ありふれた一日。
でも、楽しい一日。

さて。例の如く長くなる語りは後ほどブログにてあとがきという形で語らせていただくとして、ここでは少し。

今回。色々な理由からプレイング採用率が今までよりも少し低いものになってしまったかもしれません。
みなさまにとって、良い流れになっているといいのですが。

もう一つ。
ちょっと色々やりすぎた感がなきにしもあらず。
こちらも、的をはずしていなければよいのですが……。

さて。それではこの辺で。

最後になりましたが、参加してくださったPLさま。読んでくださったみなさまが。ほんの少しでも幸せな時間と感じてくださったのならば。
私はなによりも嬉しく思います。
公開日時2008-12-06(土) 21:40
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