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<ノベル>
鋼鉄の体躯は駆動音を激しく鳴らし、逆三角形に装置された三つの赤い光学レンズが鈍く光った。
ぶぅんっ――!
二メートルはあろう身長に似合った腕を大きく振り上げると、ニールロイドユニットEB0015は敵を捕捉して叩き落そうとした。しかし、目標は素早く地を蹴って0015の体躯を飛び越す。なんとも俊敏な動きである。
目標より振動を確認。0015は振り下ろした右腕をそのままに、全方位稼動の腰を後方に回転させた。だが、既に遅かった。黒い色彩の影――シャノンの右手に握られた自動拳銃〈FN-Five-seveN〉は銃口より咆哮を上げた。狂いなく機体の関節を撃ち抜かれ、ニールロイドユニットEB0015は放電に苦しんでいるようだ。
だが、もはや戦闘力のない塊に、シャノンは鉄槌の手を緩めなかった。SS190――シャノンが腰に装備する〈FN-P90〉との共有を許された、まるで針を思わせる弾丸。低跳躍したシャノンは、0015を足蹴にし見下ろすように銃口を当てた。
「終わりだ、木偶の坊」
灯火を消し去る最後の一発が、0015の頭部を粉砕した。
「ンー! さすがはシャノンクン! 惚れ惚れするネ」
傍らより声をかけたのは、一人の不気味な男であった。何より、外見と風体が不気味以外の何ものでもない。
痛々しい縫合痕や傷痕が双眸にまで達しているのは、まだ容認できるかもしれないが、その肌の色は男が人間ではないことを証明している。白衣の包まれる鮮やかなほどの緑の肌に、赤い瞳、そして雪のような白髪。ホラー映画「Crazy Teacher」より実体化している彼は、クレイジー・ティーチャー(以下ティーチャー)――蘇った殺人鬼なのだ。
周囲に散らばる幾体のニールロイド――この場合無機的機械人形に属される――の残骸を眺めて、ティーチャーは溜息を吐かざる得なかった。
「でも、これは退屈だネェ……。壊すならやっぱり生身だよ」
「それは言えているな。人形如き、壊したところで何ら感慨を抱かん」
絶対的自信。二人を結ぶのはそんな共通の意識だった。
金色に映える長髪を後頭部で纏め直し、シャノンは後方のとある若者に眼を向けた。
「これが機械の実力というわけか? あれだけの事を豪語していたというものを……」
「いや、多分、まだ何かがあるさ。だからこそ、僕は君達のような存在にこの場を任せたし、他の彼らにも期待してるんだ」
クロネコ――猫耳付きの黒いニット帽を目深く被っているこの若者は、決してその瞳を見せることはなかった。
少年のように小柄な若者を一瞥し、シャノンは腰の〈FN-P90〉を抜き出す。ティーチャーはそれに倣い、手馴れた手つきで金槌を振り回していた。例えどれだけ性格に何があろうと、彼らの実力はまさに一流だ。
「例え貴様が俺に依頼をしなくとも、奴らに易々と命をくれてやるつもりはない。俺の命を奪えるのは、……俺だけだ」
「……そうですね」
クロネコの言葉を切りに、ティーチャーとシャノンは先へと歩みを進めた。
◆ ◆ ◆
まるで透明な清涼感を漂わせる要塞は、ある意味で無骨とも感じ取れた。
黒い壁に、光学の光、見渡す限りが流鏑馬明日(ヤブサメメイヒ)の住む世界とかけ離れていた。長髪の黒髪を靡かせ、明日は自動拳銃〈ジグザウアーP230〉を撃ち続けていた。シグ社が開発した小型拳銃の中でもスリムな銃身は、銃把感、重心バランス共に性能が高い。小型とはいえ九ミリ弾丸を使用されている拳銃に、明日は信頼を置いていた。
シャン――風を切る音と共に彼女、いや、彼女の後方にいる者に襲い掛かってきたのは鋼鉄の塊――ニールロイドだ。
鋼の腕を振り下ろした機械兵より先に、彼女は拳を突き出した。赤い光学レンズを粉砕した際に、自信の拳にも傷を負ったが、まるで顔色を変えない。明日は素早く怯んだニールロイドのコード部分を撃ち抜き、更に次の敵へと構えを取った。
そんな彼女に守られるようにして、後方の男――レイは無数の接続端末と接続コードを壁に犇かせていた。
「まだ繋がらないのッ! 早くしてくれないと、こっちだっていつまで持つか判らないのよ!」
「分かってんだよそんなこたぁ! もう少しで良いから何とか保ってくれ!」
明日の苛立つ声に金髪の男は焦燥感を感じた。
――クソッ! これでも駄目か!
接続端末から伸びたコードは、彼の項に繋がっていた。宙に現れている入力端末を使用し、キーを打つ姿は他人を超越していた。意識によって動かす己の両腕をオートにセット。プログラム――白姫(しらひめ)にレイはコンタクトを取り始めた。
現在、彼らはセブンスコア要塞のシステムへ介入を行っている途中であった。電脳空間(サイバースペース)――仮想空間でもある――に白姫を侵入させたレイは、介入行動を素早く起こしたのだ。
しかし――ダミースペースだけではなく、無数の階層システムを持つ要塞は、レイ一人で掌握するには規模があまりにも大きい。
白姫の能力は強大だが、それにはまず取っ掛かりがなくてはならない。森の中で獲物のいる領域を探し出す、そんな取っ掛かりだ。だが、今の状態では厳しい。どこの領域を探せばいいのかさえ、いまは判らないのだ。
「早くッ!」
既に息を切らし始めた明日は、それでも懸命に襲い掛かってくるニールロイドと戦っていた。空中にて彼女の華麗なる蹴りが放たれたのと同時、レイはある入出力装置を思い出した。
――あれがあったか……!
サングラスが光に反射し、灰色のコートから彼は一つの装置を取り出した。――データグローブ。自身の義体化した肉体だからこそ使用可能な装置を、レイは早々に項へと繋げた。
そして、両手に嵌めたグローブを意識互換した時、彼の意識は電脳世界へと移り行く。
まるで色鮮やかな油絵の具を撒き散らしたような世界で、レイは白姫の両腕と共有≠開始した。
赤、青、黄色、白――世界は美しく彩られており、レイ――いや、白姫は佇んでいる。純白の雪さえも色あせてしまう髪には、装飾が施されており、白を基調とした和%チ有の着物を着込んでいる。日本人形、それこそが彼女を表す言葉であった。
「レイ様、私(わたくし)はどのように……?」
「おまえはそのままでいてくれ。俺が直接お前の腕を使わせてもらうからよ。そっちのほうが手っ取り早いもんでな」
レイのそんな言葉を切りに、彼女の両腕は動き始めた。
プログラム内、操作起動。宙に浮かんだ三つの空間モニタを同時に把握し、白姫の掌は領域へ足を踏み入れた。それはニールロイド情報の起動部分。
白姫の腕に大きなリングのようなものが巻き付いたかと思われた。否、それはリングではない干渉≠フ視覚化である。
鮮やかに透き通ったリングが一部の青白く光る箇所を覆う。瞬間――データグローブ外したレイは声を張り上げた。
「やりぃ! これで何とか……!」
「ちょっと、これ……」
レイに呆けた様子で声をかけた明日は、自分の目の前を指で示した。
そこには、まるで糸が切れた人形のように稼動しなくなった機械兵の姿。光学レンズの光、そして無機質な駆動音さえ聞こえなくなった鋼鉄の塊に、明日は勢いが空回りしそうであった。
「ああ、これである程度のニールロイドはもう動かねぇ。ちょっと時間がかかったが、まぁ、上出来だろ?」
「……凄いわね。こういう器用なことは理解できないわ」
「器用って言うのかどうかはわかんねぇけどな」
明日のヒップバックに隠れていたピュアスノーのバッキー――パルがひょこりと顔を出した。それを確認した明日は、そのままバックの中から弾倉(まマガジン)を取り出した。手馴れた動作で装填を完了し、自動拳銃をホルスターへと戻す。丁度、時を同じくしてレイも電子機器や接続端末を自身のコートに戻している最中であった。
「白姫のことはどうするつもり?」
「あいつにはまだあっち≠ノいてもらわないとな。連中に伝達しねぇといけねぇし、それにまだやることはある」
不敵な笑みを浮かべたレイは、サングラスの奥の瞳を光らせた気がした。
それは明日の気のせいだったのだのかもしれない。しかし、彼の義体化された姿を見れば、それも大して外れていない気がした。
相も変わらずに柔軟かつ動揺を見せず、明日はレイと共に先へ歩みを進めた。目的は――未だレイから聞かされていなかった。
◆ ◆ ◆
急速に形を伴っていく青白い物質は、次第に人の姿を模ってきた。着物に身を包んだ幼い少女の姿――白姫の物質コピーがシャノン達の目の前に舞い降りる。時折砂のようにさらさらと端が欠けるのは、要塞内の制御で彼女の能力が完全を成さないからだった。
「一部ニールロイドの支配干渉を完了いたしました」
白姫の唇から、機械的な淡々とした声が発せられた。外見に合わせた声帯素子(せいたいデバイス)とその口調は、妙なバランスを持っていた。
「一部……? 干渉は失敗したのか?」
「OH! それじゃあ、困りますネ!」
一瞬、大げさに身振りを加えたティーチャーを目を向けると、白姫はすぐさまシャノンへ向き直った。どうやら、彼女は話の出来る人間を分かっているようだ。
「いえ……。確かに困難を極めておりますが、現在、私本体とレイ様、そして明日様が中枢制御に介入を試みております」
「なるほどな。だとしたら、俺達はこのままセブンスコアまで行けばいいということか」
「その通りです。要塞内における構造はデータを手に入れております。私はナビゲートを命じられておりますので」
白姫は落ち着いた様子で自分の胸を示した。どうやら、彼女はそのためだけのコピーらしい。
白姫――ウィルスプログラムとして存在する、SF映画から実体化した少女型人形。彼女にとって言えば、厳密には実体は存在しない。自身の体を構成し、姿≠作り出している彼女にとっては、身体は器のようなものだった。
「了解だ。無様な姿を晒してやろう」
「ンー! 早く終わらせないとネ! このままじゃ退屈で死にそうだヨー! あ、ボクはもう死んでるんだったね、アッハッハッハッハ!」
笑いながら金槌を振り回し、ティーチャーは一人猛進していった。
案ずることはないだろう。吸血鬼でさえ目を見張るほどの不死身の身体だ。ティーチャーのことを理解しているシャノンは、悠然と自身の銃器を構えた。〈FN-P90〉――彼の右手に持つ〈FN-Five-seveN〉と兄弟とも称される短機関銃は、滑らかな四角を思わせる銃身をしていた。利き手を選ばない左右両対応、50弾ハイキャパシティ、複列装弾の回転装弾。幾重もの画期的な特徴を持つ短機関銃は、今シャノンの左手に収められていた。
「突撃銃(アサルトライフル)じゃあないんですね」
「要塞内ではああいったものは使い勝手が悪くてな。それに、一度57の兄弟を使ってみたくてな」
クロネコの言葉に、シャノンは不敵な笑みを見せた。衝動に駆られる吸血鬼の姿は、どこか悲しげながらに楽しそうだ。相反する何かを、男は一生背負っているのだろう。
「では、クレイジー・ティーチャー様のもとへ急ぎましょう」
シャノンとクロネコは、先へ歩みだし、いや、先へ浮遊している白姫の背中を追った。
◆ ◆ ◆
「闘争、そして選択か。……物騒な話ね」
「そう思うか?」
ふと漏らした黒づくめの女――明日の声に、、隣のレイは訝しげな顔を見せた。
だが、逆に明日はそんなレイを訝しげに思う。お互いの考えが違うことはそんな奇妙な空気を作り出した。周りの機械的な黒い壁に反響する足音が、――カツカツと鳴り響く中、レイは口を開いた。
「まぁ、この世界の人間じゃあそう思っても不思議じゃないかもしれねぇな」
「この世界の人間じゃあ……?」
「俺や白姫、それにこのセブンスコアもだけどな、遠い未来のような世界から実体化したムービースターにとっちゃ、あまりこういったことは驚かないのさ。何故かって聞かれるなら、それは答えにくいんだけどな。一言で言うなら、それが当たり前の世界だからなんだよ」
と、そう説明されるならば、明日のような人間にとっては当たり前でないと言うことだ。
それは彼女が案じていたこと、銀幕市における現象≠フ影響を表していた。そう、彼らにとって、銀幕市はなんと言われようと異世界≠ネのだ。異世界の人間が別の世界で生きることは、ある意味で秤に乗せられた重石と言えよう。バランスを保っていた幾多もの常識から行動まで、変化の兆しを見せてしまう。
現在ではまだその段階ではないようだが、いずれ彼女の思惑が当たってしまう。そんな予感がしてならないのだ。
「当たり前……。そうよね、貴方たちにとっては、この世界のほうがむしろ不思議な場所。違和感の付きまとう異世界なんだものね」
「俺は案外この自然世界は気に入ってるぜ。何せ今までは体験したことのない場所だ。興味が付きねぇ。でも、ま……そういったことに戸惑いや不安、そして悲しみを覚える奴ってのも、少なからずいる。こいつも、同じなんだよ」
レイの言葉には感傷がなかった。
ただ事実を述べている。という風でもあったが、何とはなしに隠れた感情を見た気がした。それは、彼が人間である証拠なのかもしれない。
「……よし、見つけたか白姫。オーケーだ、そのまま待機しといてくれ」
「どうしたの?」
「制御中枢に近い場所を白姫が見つけてきた。ここからそう遠くないぜ」
走り出したレイに、明日は慌てて付いていった。彼の頭の中には要塞内の構図が入っているようで、迷う様子は微塵もない。狂いなく進んで行く道だったが、次第に明日は鼻につく何かを感じ始めていた。
「これ、何の匂い……?」
「匂い? そう言えば確かに――」
レイの嗅覚機器にも反応が出始めたところで、二人は目的の場所に着いた。だが――待ち構えていたのは、決してただの部屋ではなかった。
それは、血の密集した濃密な匂いと、肉の嫌な新鮮味。血肉と飛び散った赤黒い液体は、部屋の床や壁だけでなく、佇む機械にまで達していた。
その惨劇に一瞬怯んだ二人の隙を、まるで蟷螂の刃を連想させる機器が襲い掛かった。奥の四本の指のような鋼の柱から、機器は伸びている。柱の中心でぼんやりと光るのは、まるで何かの心≠具現化したような素子であった。
「こ、のぉ……!」
隙を突かれたとはいえ、肩を切り裂かれた明日はそれを左手で抑える。激痛は走るが……問題ない!
自動拳銃を片手に、明日は地を蹴った。刃の死角を狙い、身体を自力で旋回させる。自動拳銃を胴体に狙い定め、射撃の後に蹴りを放つと言う荒業をやってのけた。それに身体の一部を破壊された刃は、放電を放ち軋みだした。
「よし、そのまま頼むぜ!」
その瞬間――開けて道を走り、レイは柱へと辿り着いた。歪な形をしているが、逆にそれが中心となっていることを確信させる。内部コードを引っ張り、半ば無理やりに接続端末を繋げたレイは自身の項にも同じくコードを引っ張った。
集中の証なのだろうか、再びサングラスの奥の瞳が光り、男は空間モニタと向き合った。
それは彼にとって、最悪の睨めっこの始まりだった。
◆ ◆ ◆
セブンスコア――第七の核の名を持つ彼女にとって、世界とは、命とは何なのだろうか。
人は良い。考え、意思を持ち、己の進むべき道をただひたすらに歩む。それは臨機応変だ。自分の状況、意識、気分、他者との交流、様々な具象によって変化する。何と便利な生き物なのだろうか。
彼女は自分の問いに答えを持たない。それは初めからありはしない。機械とはそんな決まったもの≠フ集合体だ。己の存在理由さえ、己の生きる目的さえ、決まっている。
セブンスコアは涙を流したい。だけど、流れはしない。セブンスコアは歩きたい。だけど、歩けはしない。
「いつか君に、空を見せてあげるよ」
どこかで聴こえてくる声は穏やかだが力強い声だった。
かつて彼が言った言葉を、今でもセブンスコアは覚えていた。それはただ記憶領域に入っているだけの情報でしかないのかもしれない。しかし、それでも彼女にとって彼は特別だった、そう思いたかった。
「空は、見えましたよ、ベイレル」
純白のベールを思わせる、神秘的な布に身を包んだ女性。彼女の声を伝えたかった相手は、もう、存在しなかった。
白姫が空間に視覚として生み出す情報は、セブンスコアのことを詳細に調べ上げていた。
映画『SevensCore』にて人類を滅ぼそうとするセブンスコアは、どうやら最終的に破壊される運命らしい。所謂、親玉のような役どころなのだろう。あらすじにあるベイレルという人間が何らかに彼女に関与しているようだが、それは実際に映画を見てみないと判りはしない。
「こちらはレイ様が調べ上げたもので、事件関与前に情報を落としたそうです」
「そ、れはッ! ごくろうな、ことだなっ! だがな、それをこんな、場所で! 言わなくてもいいと思うが!」
無数の粒子光線――レーザーを放つ無視のような物体達は、シャノンに一点集中して猛攻を続けていた。
高い身体能力を生かし、壁を蹴って跳ねるようにレーザーの間を縫っていく。短機関銃から連続して射出される弾丸は、ピンポイントに虫達を破壊していっていた。だが、何分数が多い。
数え切れないほどに群がる虫達は――
「アンギャア!! レイチェル、危ないヨー! シンディ、駄目じゃないかそっちに入ったら!」
ティーチャーにもその猛威を振るっていた。彼にしか見えない人魂の生徒を守ろうと、必死に庇っているようだ。容赦なく受けるレーザーに肉片を飛び散らせながらも、彼は元気そうであった。
「この先の最下層だったな、セブンスコアは」
「その通りです。セブンスコアはどういう心理なのか理解できませんが、一歩も動いておりません」
抑揚のない声を傍らに、シャノンはティーチャーの頭上を越えていった。
虫達の嫌な機械音が大きくなり、彼を追いかけてくるが……、それはティーチャーに任せることにする。シャノンは勝手にそんなことを頭で計画していた。
「ジャックー!? ……テメェら、よくもボクの大切な生徒を傷つけやがったナ。分かってんだろうな、この落とし前は……倍にして返してやるゼ!」
どうやら一人の生徒が傷ついたらしい。ティーチャーの般若のような形相に、シャノンは不覚にも恐怖を一瞬感じてしまった。彼の生徒は一生傷付けまい……。そう誓った瞬間でもあった。
◆ ◆ ◆
渦巻く雲のように不安定な世界で、白姫の本体はコア≠ノ近づけないでいた。
レイの互換操作によって干渉、介入に成功した白姫は、最奥にある一つの青白い光を見つけたのだ。それこそが『NTNO-NC7-1905』――セブンスコアの中核とも言える機能であった。おそらく、銀幕市の宙に現れたあの姿はただの現像、もしくは自分と同じく構成された物質像でしかないのだろう。全ての詰まった氷のようなコア≠ヘ、ぼんやりとひたすらに光を放ち続ける。
「あなたは、何をしたいの?」
白姫は近づくことの出来ないセブンスコアに穏やかな問いをかけた。
触れることは出来なくとも、話すことは出来る。見えない壁に最も近づいた場所で、白姫はコア≠見つめた。
「……何が出来るというのだ?」
暫くの間の後、セブンスコアはゆっくりとだが応えた。白姫の赤い双眸を見つめているようであった。それは……彼女がセブンスコアとある意味で同種だからこそ感じたものなのかもしれない。
「我は汝がなぜ我を阻むのか、それが理解できぬ。我は人間との闘争を望んでいるだけなのだ。我と同じ作られた者≠ナあるはずの汝が、なぜ我を阻むのか……?」
「人間は私達以外にもここに進入したようですね。先ほど虫に殺された人間などを見かけました、あなたの近くでは刃状の密集機器に殺された者も」
「彼奴らは我に及ばなかった。それだけのことだ。脆弱な者は死に誘われる。それこそが真理であり摂理だ」
「……なるほど。しかし、私はあなたをどうしても止めなければならないのです。それは、決して私の正義や意識ではありません。そう、使命とも言うのでしょうか。……私のマスターは世界を愛してらした。争いを厭い、桜を愛で、甘味を好むマスターに、この世界の終焉をお見せするわけには参りません」
白姫の確固たる意志を持つ瞳は、他人を透かしているようだ。
セブンスコアは何も答えなかった。ただ、白姫と対峙している。そして、一刻の時を待ち、セブンスコアは周囲の青白い光を収集させた。それはコア≠フ前で次第に形を成していき、人型を生み出した瞬間に割れた。
氷のように弾けた光のもとには、一人の女性の姿。純白のベールに身を包んだ、銀色の長髪。装飾の施された髪は床にまで垂れており、どこか水のような印象を思わせた。
「あなたは、良いマスターに愛されているのだな」
「愛されていた……ということです。マスターがこの世界にいるのかどうかは判りませんが、私はそれを探し続けます。そして、マスターの言葉を実行することが、私の意味です」
「我……、いや、私には一人の愛すべき男がいた。彼は六人の私の姉とも言うべき人工知能を作り、最後の作品として私を生み出した。穏やかで、幸福で、素敵な日々だった。私は他のコア≠ニは違っていたのだ。感情、とも呼べるのかもしれない何かを持ち、いつしか彼との日々を愛しく思い始めていた。思えば――あれが最初で最後の私らしかったときだったのかもしれないな」
セブンスコアは自分の髪を撫で、かつての日々を取り出しているようだった。そこにいたのはセブンスコアと言う名の――一人の女だったのだろう。白姫には判らない。彼女はセブンスコアでなく、またセブンスコアも彼女ではないからだ。しかし、判ろうとすることは出来た。
白姫にとってマスターは、彼女の愛しい人に似ているのかも……しれない。
「機械とは悲しいものだな。私はいつしか人の兵器として運用され、それを意味とされた。人間との闘争。それだけが私の起動する可能性だったのだ。彼は何を思っているのだろう? もはや何十年も前の話だが、私は彼に思いを伝えたことがある。そのとき、何を言ったと思う?」
白姫は、自分に問いかけたセブンスコアが、俯く姿を見て微笑んだような気がした。
ただの掻き集められた器が、こんな顔をするのには白姫も内心驚きを隠せない。もはや、そこにいるのは機械なのか、人間なのか……?
「いつか君に、空を見せてあげるよ」
セブンスコアの顔は、白姫ではない遠くを見ているようであった。
◆ ◆ ◆
刃状の兵器は止(とど)まることを知らなかった。
シャッ!――風を切って変則的な動きを見せた刃は、明日の足元を狙う。だが、伊達に幾度も戦ってきたわけではない。刃の軌道を見切り、軽く横に流れるように避けた明日は、ヒップバックよりパルを跳び出させた。
「お願い、パル!」
床に猛突した刃は動きが鈍っている。反応が間に合わない刃は、そのまま大きく口を開いたパルの中に吸い込まれていった。もぐもぐと美味しそうに食べるパルは、満足そうであった。
「はぁ……やっと終わったわ」
「またかよッ!」
明日の言葉に苛立ちのレイが張り上げた声を上塗った。
目を見張る速さで空中のキーを叩いていくレイは、そのまま空間モニタの白姫を確認する。どうやら彼にもセブンスコアと白姫の会話が聞こえていたようだ。支配したデータを圧縮消去していきながら、肝心の部分がどうにもならないことにレイは頭を掻き毟った。
「あぁ、もう……このコードはどうなってんだ! 何重も鍵かけやがって、これじゃわかんねぇだろ!」
「怒鳴るのが癖なのかしら? 少しは落ち着いたらどう?」
「……落ち着いてあと十分の岩盤装置が止まるならここまで言わねぇよ」
「十分……!?」
明日はレイの何気ない一言に驚きを隠せなかった。
まさかそこまで迫っていたとは考えも至らない。普段冷静かつ気丈な彼女も、少々動揺してしまう。
「なんでまた……!」
「元々俺たちが来るギリギリだったんだ。コードさえ判れば何とかできるんだが、これがまた何のヒントもない状態でな」
「コード……か。ちょっとこれを調べてくれる?」
「なんだこりゃ?」
明日が手渡したのは一つのFDであった。前時代的なメモリ端末であるが、それ故に応用性が利くといって良い。彼女はヒップバックにパルを戻しながら口を開いた。
「いいから開いてみて。多分……ヒントがあるはずよ」
不敵な笑みを見せる明日に、レイはどこか確信めいたものを感じていた。
◆ ◆ ◆
セブンスコアと白姫の会話は、クロネコとシャノンにも聞こえていた。彼らは白姫コピーの視覚モニタが常に見えるように措置されている。人の会話を聞くのはあまり良い趣味とはいえないが、シャノンは割り切っていた。なぜなら、彼女達は人≠ナないのだから。
「我のもとに辿り着くものがいたとはな。銀幕市特有のムービースターというわけか」
「悪いな……、話している暇はない。苦しむ間もなく殺してやろう」
セブンスコアのいる最奥に辿り着いた瞬間、シャノンは地を蹴った。俊敏な動きで純白の女に近づいた男は、次いで短機関銃〈FN-P90〉の咆哮を放つ。射出された弾丸がセブンスコアに撃ち込まれた――と思われたのは先刻のこと。
「なに……!」
木の葉のように揺らぐセブンスコアは姿を一瞬で消し、シャノンの目の前に現れた。空圧を集めた右手が胸に添えられた時、シャノンは圧迫感を感じる。その時にはすでに遅く、彼は壁にめり込むまでに吹き飛ばされていた。吐血を吐くことはないが、呻きを漏らしたシャノンにクロネコ達は駆け寄った。
「シャノンさん……。大丈夫かい?」
「油断なさらぬよう。あれは物質構成によって生み出しているただの器。その能力如何によっては、瞬時の消去、及び再構成も容易いことでしょう」
白姫の言葉に舌打ちを鳴らしたシャノンに、呑気な声が近づいてきた。
「シャノンクン、大丈夫かナー? ボクはもうあのロボット達にてんてこ舞いだったヨ! ハハハハ!」
それを見たとき、シャノンの頭にとある策が浮かんだ。それは自分にとってはあまり本意的ではないものだったが、仕方あるまい。無邪気に金槌を持つ教師に、シャノンは耳打ちをすることにした。だが、それを始めた時には――
「行くがいい。NTNO-BAG-77、そしてNR-1024」
大量の虫のような機械群とニールロイドが床より出撃を開始した。轟音をかき鳴らし現れた機械兵達はそれぞれが標的に向けて疾走を開始する。一足の差であった。ティーチャーはシャノンの耳打ちに頷くと、まるで機械兵を阻むように猪突猛進する。
砕かれた骨や千切れた肉をものともせず、金槌で敵の機関部を破壊していく姿は、やはり怪物だけあったというべきだろう。そして、その間にシャノンはセブンスコアへと疾風のように跳躍した。自動拳銃から銃弾を放ち、弾の起動が直線を描くようセブンスコアへと突き進む。しかしやはり――着弾することはなかった。映像が消えるように散々したセブンスコアは、自身を再構成しシャノンの後方に出現する。
「貴様は俺をただの吸血鬼か何かだと思っているらしいな」
「何だと……!」
しかし、驚愕に目を見開いたのはシャノンではなくセブンスコアであった。
黒い。包み込むような闇が浸透し、シャノンの身体はまるで夜となった。闇の支配者、血の眷属、そして永久不滅の夜の不死者。それこそがシャノン=ヴォルムスそのものだ。黒き霧が充満し、セブンスコアを取り巻き始めた。内部より見えるは蝙蝠の羽。響く羽音は聴覚を支配し、いつしかシャノンは歪な姿の者となった。
「これが始祖。我が吸血鬼王たる覇者の姿だ。……最も、俺は美しくないこの姿など、好ましく思ってはいないがな」
「……制御開始。岩盤振動装置、効果領域確認――最大インプット」
シャノンから素早く離れたセブンスコアはそんな言葉を呟いた。それには皆、恐怖と共に焦燥を感じた。そう、彼女の言葉には一つの単語――岩盤振動という名前が含まれていたのだ。
「何とか止めないといけないネ!」
「分かっているッ!」
霧状となっているシャノンは、セブンスコアの動きを止めようと宙を飛行した。焦りと不安が皆を支配するが、出来ることをやるしかない。
次第に天井も岩盤が崩れかかってきているようで、振動が起こり始めた。ニールロイドや虫はそんなものにも気を配さず、ティーチャーに襲い掛かっている。金槌の高音が鳴ったと同時、シャノンはセブンスコアに辿り着いた――
「全ては終わる。これが我の選択だ」
――が、セブンスコアの声が終焉を告げる。例え何があったとしても、死ぬことは許されるのがシャノンだ。他人に殺されるなどは問題外であり、ましてそれが機械人形とされたからには、彼にとって奮起するには十分な理由。それが、どんな理由があり、どんな人形であり、どんな世界に生きた者でも……。
「選ばれし者がいるとするならば、それは俺様だけだ!」
霧は収束し、形を急速に成した。人型となったシャノンの右手に、〈FN-Five-seveN〉、そして左手に〈FN-P90〉が握られている。
動じることはない。セブンスコアにとってただの銃撃など何ら意味を成さない。彼女はこの要塞の主であり、またただの器。消去と創造を自由に操る彼女にとって弾丸とは恐怖の対象ではなかった。
しかし、
「……!」
無数の弾丸が貫いたのは、セブンスコアの身体であった。
消去活動が行われない。制御下にあったはずの要塞はまるで石のように動かなくなり、次第に振動も収まってきていた。血ではなく、情報の流出。物質構成はそのバランスを崩し、崩壊の道を進み始めた。
割れていく不要情報の姿――シャノンとティーチャーはそんなセブンスコアを一瞥し、ただその身を翻した。彼らにとって、セブンスコアはそんな存在だ。ただ、自分達を阻む不必要な存在。言葉など、かける必要はなかった。
◆ ◆ ◆
「プロテクトコード……The sky is shown to you some time,By Barel. いつか君に空を見せる……か」
「いい情報だったでしょ?」
「確かにな。でも、こんなもんどこで見つけたんだ?」
柱の中心にある素子の前で、二人は話していた。明日の見せたFDの中には、いくつかの言葉がインプットされており、レイはそれを一通りすべて入力してみることにした。彼女の確信めいた言葉通り、FD内のデータに収められていた文の中から一つが見事に当てはまった。
それが、ベイレルという男の言葉である。映画の情報を調べたときはこのようなものを見つけられなかったのだが、明日は何処で見つけたのだろう。
「どうせレビューサイトやネット上の情報だけなんでしょ? あなた達って言うのは、そういうものに対してだけはスムーズに事を運ぶのに……」
「じゃあこれは……?」
「それはあたしが実際に映画を見たときに書き留めたベイレルの台詞よ。映画の中でセブンスコアのことは何となくだけど理解してたから、多分この中にあると思ったわ」
そんな明日の声を切りとし、白姫からの互換操作が始まった。レイの脳内に直接響き渡る声には帰還の意が込められており、これからナノマシン構築を開始するようであった。
一刻の後、フォン――周囲の機器の一部を借りた白姫は、自身の構築を開始し、現実空間へと帰還した。明日にとっては多少非現実めいた光景ではあるが、銀幕市に住んでいる限りこの後も慣れていくのだろう。
「只今帰還しました」
「セブンスコアの様子はどうだ?」
空間モニタに映るコア≠見つめて、レイは穏やかに発した。
白姫は思案するような素振りを一瞬見せると、ゆっくりとだが唇を開いた。
「自然崩壊が、始まりました。どうやら岩盤装置の停止は彼女の機能停止も兼ねていたようです」
「……なんですって」
明日の声には怒気にも似た気配が漂っていた。彼女の考えをレイは想像できる。おそらく、出来ることならばセブンスコアを生かせたかったのであろう。刑事として銀幕市に住む明日にとって、命とは、生きることとは、何よりも尊いものだ。
だが、それはもしかしたらある意味でエゴなのかもしれない。セブンスコアにとって、命とは無いにも等しいものなのだから。
「まぁ、だろうとは思ってたぜ。お前には理解できねぇかもしれねぇが、それがこいつらの生き方なんだ。もちろん、それを否定することも肯定することも好きにすれば良い。だけどな、何をどう足掻いたとしても、こいつらと俺達は違うんだよ」
「違う……か」
明日の呟きにはどこか哀しみと理解が浮かんでいた。
人は言う。理解は出来たとしても納得は出来ないと。明日にとって、それは今現在だ。しかし、理解できることが歯がゆい。そして、理解できてしまういまの銀幕市と自分が、時折哀しみに包まれるのだった。
「任務、及び命令遂行完了いたしました。この要塞もあと少しで拡散するようです。早々の脱出を」
「おう、行くぜ明日」
「分ってるわ」
セブンスコア≠フ薄ぼんやりであった青白い光はすでに消え去り、後に残ったのは、静寂の廻廊だけだった。
◆ ◆ ◆
エピローグ『クッキーとただ生き続ける者』
ティーチャーは銀幕広場にてそわそわと待ち遠しそうにしており、シャノンはそれを悠然と眺めながら銃の解体を行っていた。
銃身から遊底(スライド)や弾倉を外していき、最終的に芯にまで達した自動拳銃の部品を、丁寧に一つ一つ拭っていく。今回の戦闘においても世話になったことを相棒に伝えるように、拭いながらシャノンは部品に手を添えた。
「クレイジーさん、買ってきましたよ」
そんな中で紙袋を持ってきたクロネコに、ティーチャーは意気揚々と走り寄った。
どうやら後で知ったことなのだが、ティーチャーが戦いに参加した理由は「お菓子」のためだけだったらしい。
「オー! これはあの有名なカフェでしか売ってないクッキーだネ! サンクスだよー!」
「シャノンさんもお一つどうかな。結構これがおいしいものなんだよ」
クロネコの顔には事件が終わったことに対する安堵が見て取れた。銀幕市内の住民も落ち着きを取り戻し始めてきたらしく、失った地下要塞の様子に安心したようであった。
「クッキーか……。一つだけもらっておこう」
クロネコの紙袋から茶色のクッキーを一つ。シャノンはそれを頬張り始めながら、整備を終えた銃を元に組み立てた。
腰のホルスターに銃器を戻し、クッキーを食べる吸血鬼の姿は少々滑稽とも思える。ふと、彼はこんなことを思い始めた。
――セブンスコアはこいつを食べたり出来たのか?
何のことは無い、ただの疑問だろう。しかし、シャノンはそんなことを考えたとき、どこかセブンスコアに対して悲観が生まれていることに気づき始めていた。
くだらない。全くもってくだらない感情。自ら死の選択を選ぶしかない者など、自分には理解できない。
「シャノンクン、これとっても美味しいネ! ベリーベリーだヨ! え、シンディ食べたいのかい? でもこれは先生のだからあげないヨー! アハハハハハ」
人魂の生徒と戯れるティーチャーを一瞥し、シャノンは宙を眺める。
ティーチャーは生き続ける者だ。そして、自分もまた然り。生き続ける者にとって生とは何を意味するのだろう。そしてまた、生きる意味を初めから定められた者にとって、生とは――。
「何にせよ、死ぬのは愚かと言うことか。俺は、いつまで生きるのだろうな……」
お気楽そうに笑みを浮かべるティーチャーの傍で、シャノンは呟いていた。
エピローグ『そして機械と銀幕市は……』
地下要塞騒動が終わった後のこと、明日はレイにこんな言葉を投げかけた。
「レイ、彼女にとって、この世界は何だったのかしら?」
その声には不安が入り混じっていた。どこか自分に悲愁めいたものを感じているのだろう。
明日の言う彼女と言うのが誰なのか、レイには分かっていた。しかし、自分がそれを答えられるかどうか、それは彼には判らない。自分の傍らにいる白姫に目を落とし、レイは再び明日に目を向けた。
「セブンスコアにとってこの世界が何だったのかは、俺にも分からねぇよ」
「そうよね。誰にも、分かるはずないのよね」
夕凪の風が吹き、明日の美しい黒髪を揺らした。
白姫は二人の会話を聞き取ってはいるのだろうが、顔色を示さない。抑揚のない人形は、ただ漂う木の葉のように二人の傍にいた。
レイの答えは終わったかのように思えたのだが、そんな中、彼は再び言葉を紡いだ。
「でも、少なくとも信じることは出来るんだぜ。俺は人間だからよ、選択が俺達かあいつらなんかじゃなくて、別の答えがあると信じてる。それは、明日、お前にだって同じだろ?」
明日はレイの姿を視界に収めていたが、口を閉ざしていた。
夕焼けに栄える空は焼けた小麦色に眩しく、明日とレイと白姫は、それぞれがそんな空を見ていた。ふと――白姫が何かを見つけたように指を指し示した。しかし、それは空の何かを示しているわけではなかった。ひたすらに天空を指してた白姫は、その桃色の小さな唇を開いた。
「The sky is shown to you some time」
それは、彼女の好きだった言葉だった。自分を止める鍵となってほしいほど、どうしても忘れたくなかった言葉。愛しき人の、愛しき声が紡いだ言の葉。
レイと明日は、白姫の何も浮かんでいない顔を見つめた。いや、きっと、白姫にも何か感ずるところがあるのだろう。ただ、彼女はそれを浮かべる術を知らないだけだ。
「The sky is shown to you some time」
二人は白姫に続くよう呟いた。そう、きっと、こんな空も見せたかったのだろう。
それはいつもと違う夕焼けの空。いつもと違う美しき空。
いつか君に、空を見せる。一見、白姫の顔が哀しげに見えるのは、きっと気のせいではなかった。
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クリエイターコメント | まずはご参加くださった皆様、真にありがとうございます。当シナリオを担当させていただきましたWR、能登屋敷と申します。
生きること、選択、そして機械と人間。 当作品を言葉で表すとしたら、それは「問いかけ」という一つの言葉に尽きるでしょう。 答えがあるのかも分からないのに問いかけたシナリオは、何とか終結を迎えることが出来てちょっとごまかしているような気がしないでもありません。 当シナリオはタッチ少なめシリアスな作品でありますが、読者を楽しませると言う本質は全く同じでございます。(実力はどうか分かりませんが……) 参加者様、そして読者の方々が読んで良かったと言われるような作品を目指し、日々精進を重ねる未熟なWRの作品ですが、最後までお読みいただけるとこれ幸いであります。
各参加者様のキャラクターは全てが魅力的であり、どうやってそれら全てを生かすことが出来るのかということに力を費やしました。 結果、このような作品が出来上がったわけですが、それぞれのキャラクターに当方独自の解釈が混ざっているかもしれません。 しかし、それはそれで「能登屋敷版○○なんだな」というように納得していただけると当方は感謝の極み、感涙ものです。
叱責・感想・ご意見等があった場合は気軽にご連絡ください。
それでは、再び別シナリオでお会いできることを祈りつつ、今回はこれにて失礼させていただきます。
【追記】:セブンスコアに関しては感想しだいでシリーズものにしようかと模索中であります。もし、シリーズ化のご要望があった際にはお気軽にご連絡ください。前向きに検討させていただきます。
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公開日時 | 2007-08-05(日) 21:20 |
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