★ 即席戦闘員はじめました ★
<オープニング>

 
 薄暗い室内。
 豪華な装飾の施された椅子にゆったりと腰を下ろし、ワイングラスを揺らす人影。
 その人物はゆれる赤い液体を遠くをみるように眺める。
 何度かまわしたとき、静寂の室内に声が生まれた。
 人影がそちらに目を向けると、そこにはディスプレイがあり。研究員が写っていた。
『総帥、例の薬品が完成しました』
「そうか、ではひっそりと口コミやネットで広げるようにな」
『はっ、我らが組織のために』
「我らが組織のために……」
 グラスを軽く掲げる乾杯を人影はした。
 人影はワインを飲むと立ち上がった。
 白人にしては小柄な背でありながらも、漂う雰囲気はその体格を何倍にも膨らまさせている。
「立ち上がるときは来た。意思のある悪役などいらない。必要なのは有益な駒だけだ」
 光に写る人影の顔。
 それは、マルパス・ダライェルその人に瓜二つであった。
 彼の名前は”総帥”それ以上でも、それ以下でもない。
 
「えー、その、早速事件です」
 少し困惑した顔で、話を切り出したのは植村だ。
「……最近、奇妙な薬物がでまわってまして。それを飲むとムービースターになれるそうです」
 ざわざわと声があがる。
「携帯電話でサイトを開いてまして、タイトルが『即席戦闘員はじめました』というものです。特撮ヒーローのようになれる……とのことで」
「本当になれるのか?」
「ええ、なれるようですが……なるのはヤラレ役の戦闘員のようでして」
 沈黙が流れる。
「姿は戦闘員でも中身は一般人である可能性が高いです。気をつけてことにあたってください」
 やれやれという呟きが漏れ出す。
 集まった人々はお互いの顔を見合わせたりしていた。
「市役所としても、このようなものは排除していただきたい。販売主を突き止めて、できれば製品の回収もよろしくお願いします」

種別名シナリオ 管理番号213
クリエイター橘真斗(wzad3355)
クリエイターコメント意味不明なキャッチでごめんなさい。
暑さでちょっとやられているかもしれません。

携帯サイトで注文できる謎の薬。
受け取り場所などはメールで届けられるため、実際に注文してみないことにはわからないです。

また、すでに使用者が戦闘員にかえられている恐れもあります。
戦うときは要注意です。

変身するのは一般人のみで、ムービースター、ムービーファンには効かないようです。

参加者
ミリオル(cwyy4752) ムービースター 男 15歳 亜人種
兎田 樹(cphz7902) ムービースター 男 21歳 幹部
狼牙(ceth5272) ムービースター 女 5歳 学生? ペット?
<ノベル>

【即席戦闘員はじめました】

〜仕方がないので注文してみた〜

「とりあえず、ぼくがメールするけど……」
 集まったメンバーをみてミリオルはため息をついた。
 足元にいるのはシベリアンハスキーの狼牙と兎姿の兎田 樹の二人(二匹?)だ。
「おれケッタイもってないし、つかえないから頼むんだぜ!」
 方や応援し、方やもしゃもしゃもしゃとレタスを食べている。
 ミリオル自身も普通の人間とはいえないが、こういうメンバーで依頼を受けるというのも銀幕市ならではだと感じる。
 ピピピポッと噂のアドレスへメールを送る。
 返事はすぐに来た。
「おお、すげぇ、最先端の雅楽だな」
「それをいうなら科学だよ」
「そうだったか?」
 はたはたと尻尾を振って興奮する狼牙に突っ込みを入れておくミリオル。
(暗黒大明神さま大変です、他の結社はかなり優秀だよぉ)
 もしゃもしゃとレタスを食べつつ、兎田は自らの首領に涙ながらに祈った。
 秘密結社Bは開発担当のビルビット兎田ただ一人しか銀幕市にしかいない。
「さて、受け取り場所は……市街地の外れと」
「さすがにぼくはこの体で目立つし、狼牙ちゃんは狼だからなぁ……」
「そんなときこそ僕、兎田の出番なんだよぉ」
 いつの間にやらぽっちゃりした人間姿になった兎田樹が答えた。
 モノクル姿の紳士服。
 シルクハットとステッキも欠かせない。
「料金がこんなところなんだけれど、大丈夫?」
 ミリオルがメールにでてきた表示を兎田に見せる。
 兎田は頷きながらも涙を流した。
 大儀をなすためには犠牲が必要。
 それが暗黒大明神様の教えである。

〜テイクアウトでお願いします〜

 兎田がベニヤで作った携帯をもちつつ、待ち合わせの路地裏へ向かった。
 時間がくると、路地の影からぬっと黒服で顔の見えない男がでてくる。
『冷やし中華をやっているところをしっているか?』
「今はもう秋なんだよぉ」
 合言葉が成立したことに黒服はうなずき、お金と受け取るとビタミン剤のような錠剤を渡した。
『これで君もヒーローだ。このことは私と君だけの秘密だ。ヒーローは多くいてもつまらないだろう? 秘密を守ってこそ。ヒーローやスターともいえるからね』
「その意見には賛成なんだよぉ。このクスリも大切にさせてもらうんだよぉ」
 ぽっちゃりした紳士の目が優しい微笑みを浮かべた。
 それに満足したのか、黒服の男は影に吸い込まれるかのように消えていった。
「ふぅ、秘密結社の人らしいだよ。僕の秘密結社Bも負けてられないんだよ」
 ぐっと拳を握って気合をいれている兎田の目の前に触覚の生えてミリオルの顔がにゅっと現れた。
「無事、取引はできたようだね」
「うわぁ、びっくりしたんだよ」
 それもそのはずミリオルは路地のビルに足をつけてさかさまに宙にういた状態だったのだ。
「そのクスリ、少しわけてもらえませんか? 興味があって……」
「だ、だめなんだよっ。僕の全財産なんだよ」
 と兎姿に戻りトテテテとビルの陰にある穴に入っりこんでいった。
 その姿はまるで童話のできごとのようである。
「仕方ないか、解析がおわって連絡が来るまで待ちましょう」
 くるりと背中から生えている足をつかって上下をいれかえるとビルをクモのように登っていった。

〜さて、さて、それからどうした〜

 しばらくして、対策課に兎田がくるとのことで再び今回のメンバーが集まった。
「それで、どんなクスリだったんだい?」
 ミリオルは興味津々に聞き出した。
「うむ、うさだラボで調査した結果。ムービースターの能力でできたものだということが判明したんだよ」
「ムービースターを倒さないと直らないってことなのか?」
 狼牙が首をかしげながら兎田に訪ねた。
「そういうことなんだよ。でも、同じようにクスリをつくれるムービースターの能力で上書きできるかもしれないんだよ。僕はそのクスリをこれから作るつもりだよ」
「となると、ぼくたちはアジトを突き止めて被害を減らす方がよさそうだね」
「それなら、おれががんばるぜ、ばっちゃんの鼻にかけて!」
「名にかけてだよ。それをいうなら」
 ミリオルと狼牙は捜査に向かうこととなった。
「欠片を渡すんだよ。この匂いをたどれば少しはわかるかもしれないんだよ」
 兎田からクスリの欠片をうけとると狼牙はその匂いをかぎ、対策課から飛び出していった。
「それじゃあ、ぼくもいきますね。兎田さんは頼みましたよ」
「任せるんだよ」
 それぞれが謎の結社に対して作戦を開始するのだった。

〜匂いのたどり着くところ〜

 クンクンと匂い嗅ぎ、クスリの作られたと思われる場所を探し出す狼牙とミリオル。
 しかし、銀幕市街の路地ばかりがたどり着く。
「受け渡し場所みたいのようですね……結構、広範囲で活動しているのかも?」
「ヒーローになれるっつっといてヤラレ役になるなんてひっでぇ薬だなー、クーリング護符すればいいのに」
「それをいうなら、クーリングオフ。しかし、頭も戦闘員になってしまってはそれも無理だろうね」
 触覚をぴこぴこさせてミリオルは考える。
 その触覚に何者かのけはいが感じとられた。
「どうやら、探られているのがばれたようだね」
「どういうことだ?」
 首をかしげる狼牙とミリオルをイーイーと声をだす戦闘員が大勢現われ路地ではさみうちを仕掛けてきた。
「とにかく、倒して抜け出すしかないね」
 どこかこういう展開が嬉しそうにわらうミリオル。
「この事件はおれが完結するんだ。それまでは、つかまらないぜ」
 足を広げ尻尾をたてて攻撃態勢をとる狼牙。
「それは解決っていうの」
「オゥッ、それそれ!」
 突っ込みとどうじにミリオルが動く。背中に生えている脚が戦闘員をなぎ払った。
 ボーリングのピンのように激しく飛ばされる戦闘員。
「おうおう、こいつら一般市民かもしれないんだから手加減しなきゃだめだぜ?」
「そういえば、そうだったね」
 狼牙がミリオルによって開かれたところへ躍り出て体当たりをして突き進む。
(この人達もぼくのような実験体……か)
 自分の映画での過去を思い出しながらミリオルは戦闘員たちのい人垣を分けて広い道路へとでる。
「とにかく逃げようぜ」
「逃げながらも匂いはおってね」
「まかせろ!」
 ミリオルと狼牙は波のように迫る戦闘員たちから逃げ出した。

〜たどり着いた研究所〜

 戦闘員達から逃げつつも匂いを探ると、強い反応を狼牙が示した。
「あのビルの地下から強いにおいがするぜ!」
「行こう、兎田さんには僕が対策課のほうへ連絡いれる」
 携帯で連絡して、ビルの地下へと進む二人。
 寂れた雑居ビルの地下はムービーハザードなのか、広い研究所のようになっていた。
 足音を立てずにゆっくりと中へ入る二人。
 物陰に隠れつつ、中の様子を探る。
 緑色の液体がたまった大きな試験のようなもの。
 古臭いコンピューターなどがおいてある。
 そのなかで白衣をきた老人が戦闘員たちをつかってクスリを作らせていた。
「ここらしいね」
「ようし、一気に捕まえてやるぜ!」
 ばっと狼牙が飛び出し。大きな声で叫んだ。
「お前達、天狗の収めどきだぜ!」
 人語をはなすシベリアンハスキーをみて一瞬動きが止まる。
「ここがばれるとは……お前達やってしまえ!」
 白衣の老人が悪役らしい台詞をはくと、作業していた戦闘員は手をとめ、狼牙の方へ駆け寄ってきた。
「天狗ではなくて、年貢!」
 戦闘員を横から軽く脚払いしたのはミリオルだ。
「あなたの悪行もここまでだよ」
「そうだぜ」
「わしの研究はまだ終わらんぞ戦闘員だってまだおるのじゃからな。銀幕市の一般人はだましやすい」
 無線機か何かで呼び出すと、二人がはいってきたドアから押し寄せるように戦闘員達がやってきた。
「ひどいヤツだぜ、そんなことをしていると閻魔さまにおへそをとられるとばっちゃがいってた」
 研究所の奥へ逃げるように走り、狼牙はいう。
 しかし、戦闘員の数がおおくすぐにミリオルと共に囲まれてしまった。
「ひょひょひょ、ムービースターといえどもこれだけの戦闘員相手ではどうしようもできまい」
 笑う白衣の老人。
「そこまでなんだよ〜」
 再び、入り口から別の人物が現われた。
「イーと泣く戦闘員なんて、だめなんだよぉ。び〜ってなくものなんだよ〜」
 何故か半べそをかきつつでてきたのは兎田だった。
「お前は何者じゃ!」
「秘密結社Bのビルビット兎田なんだよ。そして、これが僕の発明品『改良型即席戦闘員スプレー(一時間で体内でも完全分解エコ版)』なんだよ〜」
 と、そのスプレーを戦闘員達にかけだす。
 すると、兎や猫、犬などの『けもみみ』が生えて、外見も可愛らしいものに変わった。
「な、なんじゃと!?」
「大分時間がかかったけど、解析できたんだよ! さぁ、やってしまうんだよ」
 形勢逆転かに見えた。
 しかし、老人は笑みを浮かべだした。
「このようなもの達がおるとはな、この街も面白いのぅ。わしの名前はドクタードクドク。人はDDD(スリーディ)と呼ぶぞ。諸君、また会おう」
 サングラスをかけ、ボールを地面にぶつけると眩しい光が辺りを包む。
 思わず目をつぶる3人。
 目を開けたときにはすでに老人の姿はなかった。
「逃げられたんだな」
「ここにあるクスリの回収と、機械の破壊をしよう」
 がっくりする兎田に対して、ミリオルは冷静に指示をだす。
 今は、それしかできない。

〜報告、そして……〜

「ご苦労様です、これで被害がなくなりそうなら安心ですね。携帯サイトの方も閉鎖されているようですし、皆さんの活躍に感謝しています」
 植村が礼をいいながら、報告書をまとめている。
「DDDといえば、特撮映画に何本もでている悪の科学者です。何度やられても復活するような人ですから、厄介な相手が出てきてしまったのかもしれませんね……」
 ふぅと思いため息を植村はつくのであった。

クリエイターコメント遅くなって申し訳ないです。

各人のキャラクターを美味く表現できていれば幸いです。

ご意見などはブログやファンレターでお待ちしておりますので、どしどしとお寄せください。
公開日時2007-09-24(月) 21:00
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