★ 紅蓮の悪魔 ★
クリエイター相羽まお(wwrn5995)
管理番号484-6240 オファー日2009-01-07(水) 22:52
オファーPC ファレル・クロス(czcs1395) ムービースター 男 21歳 特殊能力者
ゲストPC1 コレット・アイロニー(cdcn5103) ムービーファン 女 18歳 綺羅星学園大学生
<ノベル>

 何の変哲もない超高層ビルが突如業火に包まれた。
 中には高いお金を出して食事に来ていたカップル、ビルのオフィスで働いていたサラリーマン、ただ単にビルからの夜景を見に来た子供……などが沢山いた。
 それらの一般市民が火災に巻き込まれたのだ。ビルの内部は地獄と化した。
「誰か……助けて!」
「何が起こったんだ、誰か答えてくれ!」
「熱いよ……お母さん!」
 パニックと化した市民は、無秩序に我先に逃げようとして、逆に身動きが取れなくなってしまっている。
「落ち着いてください! 係員の指示に従って、冷静に避難してください!」
 現場で指揮を取っていた対策課の職員がそう市民に指示をする。その凛とした声が周囲へ伝わり、次第にパニックは収まっていく。
「さすがです。これで何とかなりそうですね……」
 部下の男性が感嘆とした声で、上司の手並みを褒める。
 それでも上司の職員は不満そうに首を振る。
「しかし……またこうして犠牲者を出してしまいました。これは私の失態です。植村さんに何と報告すればいいんでしょう……」
「そんな! 全てはあの“紅蓮の悪魔”がいけないんです! おのれ……化け物め……」
「応援は間に合いません。あとは……あの2人に託すだけです……」
「そうですね……」
 対策課の二人は“紅蓮の悪魔”を追っていったコンビがどうなったか心配し、無事を祈った。

 銀幕市という都市にある闇の一角を、3つの影が駆ける。……いや、小さいのも含めると、全部で4つの影が闇を疾駆していた。
 先頭を行く人影を、残りが追走している形だ。
 先頭の人影は、一目で人間でない、と分かる。のっぺらとした感じの、機械的な感じの漂う赤い人形みたいな形をしていた。“紅蓮の悪魔”――人々からそう呼ばれている存在だ。一連の超高層ビル放火事件の犯人のムービースターである。
 追走しているのは、若い男女とバッキーが一匹。対策課より事件解決の依頼をされた、ファレル・クロスとスチルショットを抱えたコレット・アイロニー、それにコレットのバッキーのトトだ。
 人形は路地へ飛び込み、姿を一瞬、コレット達の視界から隠す。その後を追って迷わずファレルも路地へ飛び込む。路地に入った直ぐ目の前にはゴミ箱が無造作に置いてあった。
 危ない、ぶつかる! と思ったときには、ファレルは咄嗟にそのゴミ箱を飛び越えていた。
 このままじゃゴミ箱にコレットがぶつかる、と心配し、ファレルは手を貸そうと後ろを振り返った。しかし、意外にも反射神経がよかったのか、コレットもファレルの後に続いてゴミ箱を飛び越えていた。
 着地。反動で、ふわっとコレットのスカートが持ち上がり、その中身が見えそうになる。慌ててファレルは視線を逸らす。
 その隙を逃さず、人形はくるんとファレルの方へ振り返る。
 思わずコレットは叫ぶ。
「危ないわ、ファレルさん!」
 人形はごーっと炎を吹きかけてきた。
 その炎はファレルは慌てて避けるが、炎は背後のゴミ箱を直撃した。ゴミ箱が轟轟と燃え上がる。
「きゃっ!?」
 悲鳴を上げるコレットを庇うため、慌ててファレルはコレットを抱き寄せる。
 人形はひょいと空中へジャンプする。向った先は、正面にそびえる、超高層ビルだ。再び火の海へと、あのビルを導こうとしているのだろう。
「いけない……止めないと! このままだと、また皆が!」
「しっかり、捕まっていてください」
 ファレルはそう言って、コレットを抱き上げた。そのままコレットをお姫様だっこする。
「え、え……?」
 ファレルの顔が近い。コレットはちょっとパニくる。思わず手に持っていたスチルショットをぎゅむと抱き締める。
「ファレルさん!?」
 そんなコレットを宥めるように、トトが鳴き声を上げる。まるで、それどころではない、と言ってるような気がした。
 コレットがそれで少し落ち着いて、よくファレルを見ると、ファレルも微妙に視線を逸らし、照れているような感じがする。きっと気のせいかもしれないけど、そう考えることで、照れているのは自分だけでない、と安心した。
「いこう! ファレルさん!」
「そうですね……はい!」
 ファレルは自らの能力で足元の空気分子を固めると、コレットさんを抱えたまま宙を駆ける。トトも器用にその後をついてきた。

 ファレルは人形の追って、超高層ビルの屋上に降り立つ。
 既に空中には炎の玉が無数に浮かび、ムービーハザードが起こる気配が充満していた。このままだと、このビルもさっきのビルの二の舞である。
 人形は追ってきたファレルを見ると、身体を軋ませながら振り返り、ファレルの方へ向き直る。
 ファレルはそっと大切なものを取り扱うように、コレットを下ろす。コレットは直ぐにファレルから離れて、スチルショットを構えた。しかし人形はそれに反応し、コレット目掛けて飛び掛ってくる。
 人形は炎をコレットへ吐き掛けた。
「きゃぁ!?」
 思わず悲鳴を上げて、コレットは腕で顔を庇う。しかし……熱くない。
 腕をどけて正面を見ると、ファレルの背中が目の前にあった。ファレルが空気を壁にして、コレットを庇ってくれたみたいである。
「ファレルさん! 有難うね!」
「油断しないでください! 来ます!」
 そのままの勢いで人形は飛び掛ってくる。空気の盾でそれをはじき返すと、ファレルは攻撃に転じる。人形とファレルの戦闘が始まる。
 攻守が目まぐるしく入れ替わり、動きが早すぎて、スチルショットを構えたもののコレットはそれを撃つことができなかった。
 トトも激しく戦うファレルと人形を心配そうに見守っている。
 ファレルは明らかにこの人形相手に苦戦していた。
 助けたい……ファレルを助けてあげたい。でも、自分にはファレルの援護を出来る実力もない。それがコレットはもどかしかった。
 ファレルは次第に追い詰められ、ついには屋上の角へ追い込まれる。もう後がない。
「ギギギィィィ……」
 人形が指示すると、一斉に炎の玉がファレルへ降り注いだ。真昼よりも明るい爆発的な光が辺りを包み込む。そしてファレルのいた辺りには燃え盛る炎しかなかった。
「いやーっ!? ファレルさん!?」
 コレットは錯乱しつつも、スチルショットを、コレットに対して背中を見せている人形へ向ける。しかし、まるで背中に目があるように、人形はその射線からずれて逃げる。そして人形は振り返り、そののっぺらとした顔をコレットへ向ける。
 トトがコレットを庇うように前に出るものの、その身体があまりに小さい。コレットはそれでも諦めないで、震える手でスチルショットの狙いを人形へ、今度は何とかしっかり定める。
 あとは引き金を引くだけだ。
 スチルショットを発射しようとしたそのとき、炎の中から人影が飛び出し、一気に人形へ迫った。人影は人形へ一撃を与える。その一瞬後、人形の両腕がぽとん……と落ちた。
「ファレルさん!」
 コレットは歓喜の声をあげる。ファレルは生きていたのだ!
「ギギギ……」
 人形はコレットの方へ飛びずさり、ファレルから遠ざかる。そのまま逃げるのかと思いきや、コレット目掛けて向ってきた。
「いやっ、当たって!」
 コレットは咄嗟にスチルショットを発射した。しかしそのエネルギー弾を人形は軽々とかわし、コレットに体当たりする。
 ふわっとした浮遊感をコレットを感じる。そして人形と共にコレットは超高層ビルの屋上から地上へと落下した。
 もう駄目!?
 コレットは死を覚悟し、恐怖のあまり目を閉じた。

 しかし落下の途中で再び身体が浮かびあがるような浮遊感を感じる。コレットは閉じていた目を開けた。
 目の前にはファレルの顔があった。落下した彼女を、ファレルが抱き止めてくれたみたいだ。
 本当に凄く怖かったので、ファレルに助けてもらったことに安心し、思わずファレルの首根っこにぎゅむとコレットは抱きつく。
 ファレルはコレットから微妙に眼を逸らし、殊更無愛想な声で言う。
「まだ、“紅蓮の悪魔”は生きています。あんまりくっつかないでください」
「あ、ごめんなさい……」
 ちょっと大胆な行動すぎたかな、と照れて、コレットはファレルから腕を放した。
 地面には、落ちた弾みに手を離してしまったので、スチルショットがバラバラに壊れていた。その近くには人形が倒れている。両腕がなくなってしまったので、直ぐには立ち上がれなかったみたいである。
 地面に降り立ったあと、ファレルはコレットを下ろして、ゆっくりと人形に近寄る。その頃になってようやく人形は立ち上がり、ファレルたちから逃げようとする。しかし、ファレルはすかさず人形に組み付き、動きを止める。
「今です!」
 コレットはトトの姿を探す。トトはファレルの作った空気のブロックを起用に降りてきて、コレットの近くにいた。
 トトは人形へ向けて大きく口をあける。人形はトトに一呑みにされる。しばらくして、トトは一枚のフィルムを口から吐き出した。
 こうして“紅蓮の悪魔”は元のフィルムへと戻った。

 そのフィルムを見て、ようやくコレットの緊張が解ける。と同時にそれまで夢中で感じる余裕のなかった恐怖を、今更ながら感じた。
「怖かった……」
 コレットは震える自分の身体をぎゅっと抱き締める。ファレルは心配そうにコレットの方を見る。
「大丈夫ですか? 屋上から落ちたんですもんね、怖くて当然ですよ」
「ううん、そうじゃないの。ファレルさんが心配で……ファレルさんがどうにかなっちゃうんじゃないかと凄く心配で……怖かった……」
「私は大丈夫です。何があっても、コレットさんを一人残して、死んだりしません」
「本当に……約束よ?」
「はい」
 ファレルはコレットへ微笑みを浮かべてみせた。コレットはその微笑を見て、思わずびっくりしてしまう。その微笑みは、コレットを心から思いやるように、暖かく、優しかった。
 驚いているコレットに近寄り、そっとコレットを背負うと、ファレルは歩き出す。もうコレットからはファレルの表情は見えない。そうしているとさっきの微笑みは見間違いだったのかな、という気になってくる。
 いつもの無愛想な声で、ファレルは言う。
「さあ、このフィルムを、市役所へ届けにいきましょう」
「うん……そうね、そうしよう」
 ファレルに背負われるのは何か照れくさかったけど、今だけはファレルの好意に甘えることにした。
 こうして、二人はフィルムを回収して、市役所へ向った。

クリエイターコメント 今回、オファーしていただいて、有難うございました。
 今回も楽しく執筆させていただきました。
 ちょっとファレルさんの格好良さ、コレットさんの可愛らしさがしっかり表現できているかな、と不安ですけど……でも、誠心誠意頑張って書きました。
 お二人がどうか幸せになることを願って、このプライベートノベルを捧げますね。
公開日時2009-01-11(日) 11:20
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