★ 本当の夢 ★
<オープニング>

●僕のお庭がジャングルで
 その日は、やけに騒がしい朝だった。
 俺達が奇妙な『騒音』たたき起こされた時は、いつもの馬鹿騒ぎからようやくまどろみに落ちて間も無くの頃だった。
「一体、何の音?」
 工事の音とは違う、ズシリとした重たいものが地面を叩く音や、動物の泣き声に似た音が絶え間無く響いている。
「窓の外から聞こえるよ」
「誰か見てきてよ」
「「「…………」」」
 だが疲れのせいもあって、騒音に不快感を示しながらも誰一人動こうとはしない。
「僕が行くよ……」
「頼むー…」
 ついにこの状況に耐え切れなくなった僕は床から起き上がると、重たい身体を引き摺るように窓辺へと向かう。
 窓の前まで来て、僕はふと、妙な事に気が付いた。
 朝と言えどもまだ夜明け前だというのに、カーテン越しに窓の形が分かるほど外が明るいのだ。 
 不思議に思いつつ僕はカーテンを開け放った。
 するとそこには……本でしか見たことが無い恐竜が闊歩する、見た事も無い大自然が広がっていた。

「トワイライト・ナイトへようこそ」
 少年の声にあわせて、暗闇に一点のスポットライトがともる。
 ライトの下には声の持ち主と思われる一人の少年が立っていた。
「初めての方もそうでない方もこんにちは。僕の名前はコウキ。この番組の進行を勤めさせて頂いております。今宵ご案内させていただくお話は、突如太古の世界に迷い込んでしまった人々が元の世界に戻るまでのお話」
 視点が移り、用意された画面に先程の部屋が映し出される。
 異常事態を前に、人々は状況を飲み込めず半ばパニック状態に陥っているようだ。
 部屋の状景を移し続ける画面の前にコウキが現れ、言葉を続ける。
「さて、彼等は一体何故太古の世界に来てしまったのでしょう? ……やはり大きな要因はこの銀幕市にかけられた魔法にあると思われますが、もう一つの要因は一人の青年の心残りにあるようです。さて、その心残りとは? ふふふ……それでは、順を追ってお話の世界へと入って行って頂きましょうか」

●心残り
 事件が起こる前日、僕は長年温め続けてきた『考古学者になる』と言う夢を諦めると決めたばかりだった。
 友人達にその話をすると、口を揃えて諦めるにはまだ早いのでは無いかと言ってくれた。
 でも……僕はもう、諦めるって決めたんだ。だって僕には才能が無いって分かったから……そうさ、僕には……。
「キミはそれで良いの?」
「……え?」
 不意に声をかけられて振り向くと、頭から爪先まで黒いスーツに身を包んだ少年が僕を見詰めていた。
 少年は蒸し暑い夏の真っ只中だというのに、汗一つかいてはいない。
 そして冷めた眼で口元だけが微笑むと、もう一度訊ねてくる。
「キミはその夢、諦めて良いの?」
 異様な雰囲気に飲まれてしまった僕は、逃げるのを忘れて訊き返した。
「何のお話でしょうか?」
「子供の頃からの夢だったんでしょ? 諦められるの?」
「!」
 まるで心の内を全て見抜いているかのような口振りに、僕は思わず息を呑んだ。
「おーい」
 別の声に呼ばれ、振り返る。
 その背後で少年は言った。
「夢にはね、二種類があるんだよ。現実にするために認識するものと非現実として認識するもの。キミのは、どっちなのかな?」
 再び振り向くと、黒衣の少年の姿は消えていた。
 少年の姿は消えてしまったが、少年の言葉はそれからずっと僕の中で燻っている。
「諦め切れてないってことなのか? こんな幻を見るって事は……」
 しかし、本当に幻なのか?
 僕以外の人間もここに居る。
 それとも、それを含めて僕の夢なのか?
――夢には二種類がある。現実にするために認識するものと非現実として認識するもの。キミのは、どっち?
 そんな少年の言葉を、窓越しに広がる古代世界を見ながら思い出していた。

種別名シナリオ 管理番号710
クリエイター烏丸はるか(wrcs6506)
クリエイターコメントはじめまして、烏丸です。
銀幕市に来て初めてのシナリオなのでちょっと緊張しています。
元ネタは子供の頃一度は歌った事がある(と思われる)あの歌です。
殆ど原形とどめてませんが。

このお話では、『僕』と一緒に夢とも現実とも付かない古代世界から抜け出す方法を考えて頂きます。
現実に起きた、タイムスリップなどの超常現象だと思うなら、元の時代に戻る方法を。
夢だと思うなら夢の出口を探してください。
どちらにせよ、世界の中心は『僕』にあります。

皆様のご参加お待ちしております。

参加者
小式 望美(cvfv2382) ムービースター 女 14歳 フェアリーナイト
<ノベル>

 窓越しに広がるジャングル。そして図鑑でしか見たことが無い巨大生物が間近を通り過ぎて行く。
「ナオト、あれって恐竜だろ?」
「ぼ、僕にもそう見えるけど……」
「もしかして、俺達タイムスリップでもしちまったのか?」
 首長竜――多分ブラキオサウルスと思われる生き物を目の当りにして青ざめているアツシ。
 普段は落ち着いたリーダー格の彼も、異世界に飛ばされるという事態には対応し切れなかったようだ。
「イヤーー。お家に帰るぅーーー!!」
「カナコさん、今外に出るのは危険よ!」
 思わず部屋を飛び出そうとするカナコを小式 望美(コシキ ノゾミ)が引き止める。
 予想できるはずもない事態に混乱する一同をよそに、僕――ナオトは窓から見える光景に釘付けになる。
 恐竜が闊歩する原始的世界。
 それは、ナオトが焦がれていた世界そのもので……。
(何で今更こんな世界に飛ばされなくちゃならないんだ。ぼくはもう、全部忘れるつもりでいたのに!)
 世界から目を背けるように後ずさると、背中に本棚がぶつかった。
 振り返ると捨てるはずだった歴史関連の本がぎっしりと詰まっているのが視界に映った。
「みんなとにかく落ち着いて。常識的に考えて、これはきっとムービーハザードよ。きっとどこかに原因があるはずだから」
 望美に諌められ、静まり返る室内。
「そうか。ムービーハザードか……そうだよな。銀幕市じゃ良くある事なのに……ちょっとびっくりしちまった」
「ちょっとどころか大分驚いてたじゃないの」
「へへ……」
 漸く落ち着いたアツシ。カナコもそんなアツシを見て苦笑する。
「それにしても望美さんは良く落ち着いてられるわね。私はムービーハザードだって分かっても怖くてしょうがないのに」
「まあ、フェアリーナイトやってると色んなことあるし……」
「望美自身も色々起こすしねー」
「キーノは一言余計!」
「「「あははは」」」
 二人のやり取りにようやく朗らか雰囲気が部屋に満ちていく。
「取り合えずあたしはキーノと外に偵察に行って来ようと思うけど、みんなはどうする?」
「私はここで待ってるわ。怖いもの」
 窓の外を一瞥し、ブルブルと身体を振るわせるカナコ。
「俺は行くぜ。折角だから探検と決め込むか」
「付いてきても良いけど、遊びじゃないってのは良く憶えておいてね」
「分かってるって。後はナオトだけど、お前も来るだろ? 大好きな恐竜が間近で見れるぜ」
 アツシに声を掛けられ、心臓が跳ね上がるナオト。
 何て魅惑的な誘いだろう。
(でも……今間近で恐竜なんか見たら、諦められなくなるような気がする)
 迷うナオト。行きたいのは確かだが、夢を捨てる覚悟が揺らぎそうで怖かった。
「ええと……」
「え、二人とも行っちゃったら私一人になっちゃうじゃないの。どっちか残ってよ」
 カナコは心細そうにアツシとナオトを見比べる。
(そうだな、カナコのそばにでも居よう。本の整理しながらでも。そしたら、諦めがつく……)
「じゃあ、僕は……」
 ここに残る、と言おうとしてアツシに言葉を遮られる。
「確かにカナコ一人にするのは不安だな。良し分かった。ナオト。俺が残ってやるからお前は存分に堪能してこいよ。夢だったんだろ? 生で恐竜見るの」
「ちょっと待ってよ。夕べの僕の話聞いてなかったの? 僕はもう、考古学の事は諦めるって言っただろ」
「良いから行けよ。……いや、行っておいた方が良いぞ。諦めるにしても、きっとその方が心残りが無いと思う」
「アツシ……」
 そう言ってアツシはナオトの背中を押した。
「決まりだね。それじゃ、行こうか」
 望美はナオトの手を引くと、フェアリーナイトに変身して窓から飛び出した。
「「行ってらっしゃーい」」
 アツシとカナコに見送られ、望美とナオトは空へと舞い上がる。
「うわっ……わわわっ……!」
「しっかり掴まって! 地面に降りるから。キーノは上空からお願いね」
「分かった!」
 飛び去っていくキーノと別れて、二人は地面へと舞い降りた。
「さあ、行くよ!」
「別に窓からじゃなくても良かったのになぁ……」
 意気揚々と進み始める望美の後ろを、ナオトは既にヘロヘロになりながら追って行くのだった。

 ジャングルの中へと入っていく二人。
 ナオトは植物や生き物を手に取ると望美にそれが何なのかを丁寧に説明してゆく。
 その姿は望美の眼から見てもまさに水を得た魚のようだと思った。
(こんなに楽しそうなのに、何でナオトは考古学者の夢を諦めたいのかな?)
 望美は思い切って聞いてみる事にする。
「ねえナオトさん」
「ん……?」
 呼ばれるのと同時に、ナオトの指にとまっていた昔トンボが飛び立った。
「ナオトさんはどうして夢を諦めようと思ったの?」
「…………」
「この世界の事を話してるナオトさんはとっても楽しそうだよ? ナオトさんの説明は分かりやすいし、きっと良い先生になれると思うんだけど……」
 望美の質問にふと表情を消すナオト。
 その悲しげな表情に望美の胸にも寂しげなものが過ぎる。
「……僕には、資格が無いんだよ。僕は、やってはいけない事をやってしまったんだ」
「それって、どういう意味――……って、危ない!」
 咄嗟にナオトを抱えて横に飛ぶ望美。
 二人が居た場所に巨大な足がめり込んでいた。
 あと少し遅ければ踏み潰されていただろう。
「アロサウラスだ!」
 獣脚亜目アロサウラス科の肉食恐竜。
 どうやらアロサウルスは望美とナオトを餌として狙っているようだ。
「グルルルル……ガアア!」
 巨大な口を開けて二人に襲い掛かる!
「ナオトさん下がって!」
 望美はナオトを木陰に隠すと、ナオトの家から拝借した一口コンロをアロサウルスに向けて叫んだ。
「妖精王の命により、汝と契約する……ガスコンロ!」
 ピンクの妖精衣装が空を舞い、コンロから青い炎の渦が放たれ、アロサウルスを包む。
「ギャーーーン」
 悲鳴を上げて去ってゆくアロサウルス。
 危機は一先ず去ったようだ。
「ふう、何とかなったようだね……」
「望美ーーーーー!!」
「キーノ! 偵察どうだった?」
 偵察を終えたキーノが立ち去るアロサウルスと入れ替わりにやって来る。
「やっぱりこれ、ロケーションエリアだよ。一定の場所を境に銀幕市に出ちゃったよ!」
「それじゃ、どこかにこの世界を作ってる人が居るはずだね。探し出してお仕置きしなくちゃ。こんなイタズラ酷すぎるよ!」
「そうだね。ところでナオトの姿が見えないけど、何処に隠れてるの?」
「あ、ナオトはね……って、あそこに居ない!」
 木陰に隠れていたはずのナオトの姿はいつの間にか消えていた。
 一体何処に行ったのだろうか?

 望美がナオトを見失う少し前の事。
 木陰で望美とアロサウルスの戦いを見守っていたナオトは、背後に再び『あの』気配を感じて振り向いた。
「君は……あの時の……」
 昨日の夕方、謎の問いかけをしてきた少年がそこに立っていた。
「こんにちは」
 黒衣の少年コウキは形だけの笑みを浮かべてナオトに挨拶をする。
「君がこのムービーハザードを起こしたの?」
「さあ……それはどうだろう?」
 コウキは肩を竦めると、曖昧な表情を浮かべた。
「僕達を元に戻せ」
「うーん。僕に言われても困るんだよね。ねえ、そんな事より僕の質問に答えて欲しいな」
「君のロケーションエリアじゃないの? 本体は何処なんだよ?」
「まあまあ落ち着いて。それで、君にとって夢って何? さあ答えて」
「また夢……その質問に何の意味があるって言うんだ!」
 ナオトはコウキに駆け寄るも、ヒラリと避けられてしまう。
「さあ答えて。君にとって夢とは?」
「く……僕にとっての夢……」
 あいつの顔が脳裏に過ぎる。
(僕があいつのすべてを奪ってしまったんだ)
「夢は……所詮夢なんだよーーーーー!」
(あいつのすべてを奪った僕に夢を叶える資格なんか無いんだ!)
「そう……それが君の答えなんだね……」
 ナオトの叫びに対し、少年は少し悲しげな表情をしたような気がした。
「ナオトさん!!」
 背後から望美がナオトを呼び止める声が聞こえた。
「望美さん」
「大丈夫?! 一体何があったの?」
 ナオトの叫びを聞いて駆けつけてきたのだろう。
 望美は心配そうな眼差しでナオトを見ていた。
「今、あいつが……」
「あいつ?」
 ナオトはコウキが居た場所を指差すも、そこには誰も居ない。
「あれ? さっきまで居たんだけど……」
「どんな奴だったの? もしかしてこのロケーションエリアの持ち主?」
「……多分違う。そんな気がする」
 そう言ってガックリと肩を落とし、地に膝を突くナオト。
 コウキに「ただの夢」だと言った瞬間、大事な何かを失った気がするのは何故だろう?
 膝を突いたまま呆然としているナオト。
 望美はそんなナオトをただ戸惑いがちに見詰めるしかなかった。
「ハロー! 誕生日おめでとう。ジュラシックランドは楽しんでもらえたかな?」
 不意に日本人離れした発音をした声が二人を呼び止め、茂みの中から冒険者風の青年が姿を現した。
「あなたは……『ジュラシックアイランド』のアイザックさん!」
「ジュラシックアイランド?」
 状況がサッパリ飲み込めない望美は聞き覚えの無い単語に首を傾げる。
『ジュラシックアイランド』――数年前に世間を一斉風靡した恐竜映画。それと同時にナオトを考古学の世界へ導いた作品だ。
 アイザックは『ジュラシックアイランド』の主人公で、世界をまたに駆けて活躍する若き考古学者だ。
「あれ? ナオトならこういうの喜ぶってヒロトから聞いてたんだけど……」
「一体何が起こってるの?」
 予想外の展開にポカンとしている二人を見て、アイザックは困ったように頭を掻いた。
「まあ、そうだね。えーと……ナオト? 今日のハプニングはヒロトからのプレゼントだったんだけど、その様子だとちょっと驚かせすぎちゃったみたいだね」
「……驚かせすぎですよ。それで、今回の事は本当にヒロトが、あなたに頼んだんですか?」
「そうさ。りっぱな学者になって欲しいってヒロトは言ってたよ。そう言えばヒロトは何処に行ったんだい? 姿が見えないけど」
『ヒロト』を探して辺りを見回すアイザック。
「ヒロトなら居ませんよ。……三日前、交通事故で死んでしまったんだ」
「「「ええっ?!」」」
 ナオトの言葉にアイザックだけでなく望美とキーノも驚きの声を上げる。
「僕が悪いんです。僕が……忘れ物を取ってきてなんて頼まなければ……」
 堪らず嗚咽を漏らすナオト。望美とアイザックは思わず顔を見合わせた。

 その日もナオトとヒロトは図書館で受験に向けて勉強をしていた。
「将来は考古学者として一緒に世界を巡ろう」それが二人の合言葉。その手元にはすっかり読み古した『ジュラシックアイランド』のパンフレット。
 二人が考古学者を目指すきっかけとなった映画作品だ。
 夕暮れの合図と同時に勉強を切り上げた帰り道も二人は絶える事無く古代や『ジュラシックアイランド』の話題に花を咲かせていた。
 そんな時、ふとナオトが気が付いた。
 大切な『ジュラシックアイランド』のパンフレットを図書館に忘れてしまった事を思い出したのだ。
 ヒロトはナオトからその話を聞くと、自分が取って来ると言い出した。
「それじゃ、頼むよ」
 道端の塀に背中を預けて図書館に戻るヒロトの背中を見送るナオト。
 図書館に忘れ物を取りに行く。ただそれだけのことだったのだが、ナオトがヒロトの無事な姿を見たのはそれが最後となってしまった。
 不意に近くの交差点で車がスリップし、激しくぶつかる音が聞こえた。
 ナオトは何気なく工事現場に向かうと、電柱にぶつかった車の下に見覚えのあるものを見つけてしまった。
 真っ赤な血にまみれた、ヒロトの足が、鉄の塊と化した車の下からはみ出ていた。
 ナオトは目の前が暗くなるのを感じた。
 
「車は飲酒運転だった。ヒロトはその巻き添えになって死んでしまった。偶然かもしれないけど、僕が忘れ物をしなければヒロトは死ななかった。ヒロトは僕より勉強も出来たし、僕は、ヒロト無しで考古学者になるなんて考えられない」
 ナオトの話を聞いた三人は顔を見合わせて俯く。
 しばらくの間誰も口を開くことが出来なかったが、望美が沈黙を破った。
「だったらそれは、君がヒロトさんの夢を継ぐべきだと思うよ。事故もあなたのせいじゃない。ナオトさんは夢を捨てるべきじゃないよ」
「そうだね。君が夢を諦めてしまったら、私がこのロケーションエリアを作ったのも無駄になってしまうよ。ヒロトは本気で君と夢を叶える気でいたみたいだからね。子供達の未来を思えばこそ、私も今回の仕事を無償で請け負ったんだよ」
「でも、ちょっとやりすぎだったと思うけど」
「キーノは黙ってて」
 やっぱり一言多いキーノを黙らせるように望美はキーノの口を塞いだ。
「望美さん、アイザックさん……有難うございます。その事に付いては、良く考えてみたいと思います。今は……まだそこまで考えられそうにありません」
「……そうかい。まあ、それは仕方が無い事だって私も思うよ。それだけ大切な友だったんだね」
 アイザックはナオトの頭を優しく撫でた。
「うーん。私も望美を失うなんて考えられない。もし望美に何かあったら……」
「縁起が悪いこと言わないでよ。あたしだって、キーノが居なくなったらいやだな。ナオトさん、いつか立ち直れると良いな……」
「きっと立ち直れるさ。なあナオト。気が向いたら私をいつでも呼んでくれよ。いつだって私は夢を追うものの味方だからね」
「……ありがとうございます」
 アイザックのロケーションエリアが消えうせ、ジャングルは元の町並みの姿を取り戻す。一同が居たのは意外にもナオトの家の庭の中だった。
「時間が解決してくれると良いわね……」
 銀幕市の町の向こうから朝日が昇って来るのが見ながら、望美がポツリと呟いた。
 ナオトがこの先どんな道を選ぶのか分からないが、望美とキーノとアイザックは友の夢を継いで世界をまたに駆ける学者になった彼の姿を想像せずにはいられなかった。

 再びスポットライトが点る暗いスタジオでコウキは一人、朝日を見詰める彼等の姿を画面越しに見詰めていた。
 基本的に表情に乏しいコウキだが、今回ばかりはどこか哀愁を漂わせているような気がした。
「さて、今回の事件。結局彼は夢を選択し切れなかったようですが、まだ若い彼の事。可能性はまだ幾らでもあるでしょう……彼が最終的にどんな選択をするのか? 今回の場合、それは皆様の想像にお任せするしかなさそうですね」
 画面が消え、スポットライトの中で一人、コウキが恭しくお辞儀をするとスポットライトは徐々に明度を落としていく。
「それでは、次の機会にお会いしましょう」
 スタジオは完全に暗闇に包まれた。

クリエイターコメント愛らしいフェアリーナイトを描く事が出来、とても楽しかったです。
初めてのシナリオでとても緊張しました。
個人的な事情ではありますが、途中で体調を崩して納品を遅らせてしまったことを改めてお詫び申し上げます。
公開日時2008-09-20(土) 11:10
感想メールはこちらから