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<ノベル>
すでに銀幕信用金庫の東海岸支店は多くの野次馬とマスコミ、そして地元警察によって幾重にも取り囲まれていた。確かにここから逃げるには犯人の持つ飛行型機械鎧が適していると言えよう。純たちが乗る特殊車両は銀行に近づけないどころか、地元警察官の交通整理を受けてとんでもなく遠い場所に駐車させられた。アンテナが何本も伸びている車だから、警察無線を傍受・妨害されると厄介だと思われたらしい。チームは江戸時代の処罰である『島流し』を思い出しながら、仕方なくその場所から情報収拾を開始した。
協力を要請した市民やムービースターは、この車両のことを知っている。この車両のカタログをそのまま情報として流したからだ。純がエンジンを切ると同時にスライドドアがゆっくりと開く……そこには小さな動物を肩に乗せた青年が立っていた。彼は「協力要請の情報を見たよ」と言うと、手の空いた隊長代理がお相手する。
「連絡はもらってる。白と黒のバッキーが目印だってな。銀星と呼べばいいか?」
「オッケー。オレはキミのこと、隊長って呼ぶから。ちなみにバッキーの名前は『パンダ』ね」
「かわいー! ギンセー、これ飼ってんの? この珍獣っぽさがサイコー!」
いつの間にやら、得体の知れない少女が約一名紛れ込んでいた。さすがに周囲の人間はあ然とする。ショートボブで猫目、スパッツに青いミニスカ風の忍び服……どうやら彼女はくのいちらしい。彼女は「タイチョー」だの「アスカさん」だの独特の感性を振り撒きながらマシンガントークを続ける。その間、美咲は彼女の詳細について検索。そして結果をすぐにプリントアウトし、本人以外に配った。それは映画のパンフレットである。
「あ、知ってる。『宇宙忍者☆ひわ』でムチャクチャやってるつぐみって娘だよね」
「明らかにコメディー向きの性格だもんな、こいつ」
「タイチョーのその断定口調、もんのすごくムカつくーっ!」
「オレなんかアクション映画だと思って見に行ったんですよ。そしたらこの設定でスペースオペラなんですよ」
「フザケンな! これでもあたしは忍者組織『白鳥』の一員だ! バカがいるっていうから助けに来てやったんじゃん!」
バカ……美咲と明日香はその言葉で本来の任務を思い出し、再びキーボードを叩き始めた。それでもつぐみは「ミサキさん、遊ぼうよぉ〜」ととにかく絡みまくる。さすがの銀星もこれには閉口した。
「営業妨害……だよね、隊長。これって」
「うちは営利企業じゃないけど、そんな感じだな」
「隊長、銀行内でのロケーションエリア発動を確認しました!」
「純クン、なんか桜吹雪が舞ってるらしいんだけど。誰か、潜入捜査させちゃう?」
「ハーーーイ! アスカさん、あたしが行く〜! ほらほらギンセー、置いてくよ!」
「はいはい。そのために来たとはいえ……なんか気が重いなぁ」
つぐみと一緒にいるだけで大騒ぎの大混乱なのに、野次馬をかき分けてロケーションエリア展開中の銀行内に突入……今の銀幕市では一般市民の立場も決して楽ではない。ムービースターのつぐみはさっさと人波を軽く避けて銀行の正面から潜入。同じことがムービーファンの銀星にできるはずがない。「すみません」「ごめんなさい」と連呼しながら、もみくちゃにされながらもなんとか野次馬の最前列までやってきた。しかしここからは現実の警察官が透明な盾を持ってずらりと並んでいる。突破するのはとても無理だ。現場指揮をしているのは安っぽいスーツから褐色のコートを羽織ったいかにもな雰囲気の刑事である。この時代には似合わない古臭〜い拡声器を持っているところを見ると、どうやらこの人もつぐみと同じ系列の人らしい。
「あー! そこの犯人! おまえは完全に包囲されている! おとなしく自首すればよし、さもなくばここにずらりと並ぶ警察官や市民が本気になっておまえに襲い掛かるぞ!」
なんと性格までつぐみそっくりなこのムチャクチャ親父は犬神警部と呼ばれていた。ちなみに銀星が彼の名前を知ったのは、現実の警察官の愚痴からである。そんな悪評を持つ彼がなぜ現場指揮を担当しているのか……それは映画の設定が原因だった。地方の警察が警視庁捜査一課の警部と接する機会があるのはかなりの重大事件であり、つい警察特有の体質で署長が彼をムービースターとも知らずに全権を委任しちゃったのである。彼の出演映画を知る末端の刑事は上層部に直訴したが、時すでに遅し。犬神警部はさっさと全体を指揮して現場に陣取ってしまったのだ。
しかし彼もバカではない。ちゃんと策があった。情報提供者である火取と連携して犯人を逮捕しようと考えていたが、その思惑がまったく下に伝わっていなかったのである。正確には誰もマトモに彼の話を聞いていなかったのだ。その結果、ピースフォースの特殊車両をとんでもないところにまで遠ざけてしまった。犬神警部は『連中はまだか!』と心の中で思いつつも、独自路線で説得を続ける。
それを呆れて見ているのは銀星や警官、そして野次馬だけではなかった。『レンタル・スキール』という映画に出演した神野 鏡示もそのひとりである。とあるカードを手にして警部を見ていたが、いともあっさりとそれをポケットに片付けた。
「あ、あの能力はちょっと……どうでしょうねぇ」
「キミもムービースター? もしかして火取さんたちの情報提供を見て、銀行強盗を捕らえに来たとか?」
「貴方は……ああ、バッキーをお持ちですね。犯人をプレミアフィルムにするために参加された、と考えればよろしいのでしょうか。私は鏡示……貴方のおっしゃる通りです。ここに来たのはいいんですが、銀行の中に入るのは無理ですね。ま、警察が出動しているのだから、そんなに大騒ぎする必要もないと思い」
「さっきから暴動準備前の一般市民が最前列で何をごちゃごちゃ言っとるか! さては真犯人は……おまえらだな?!」
鏡示も銀星もレトロな装置から響き渡る怒号のする方向へ顔を向け、ゆっくりと自分を指差すと首をブンブンと横に振る。
「貴方は民間からの情報提供で現場指揮をしているんでしょう? 私たちも同じです!」
「オレは銀星、彼は鏡示。目的は一緒のはずだろ?!」
「自分の目はごまかせんぞ……共謀して仲間を逃がす作戦だな? ええっ?!」
「何を無茶なこと、ってあれ? なんでオレたち、こんな立派な館の中にいるんだ?!」
「しかも肌寒い……あっ、外は雪が降ってますね。猛吹雪です。これが彼の出演映画なんでしょう」
なんとも呑気な鏡示だが、こうなっては仕方がない。警官はおろか野次馬まで全員参加の『犬神警部のダメ推理ショー』に付き合わされるハメになってしまった。いつの間にか並んでいた警察官は雪中を強行軍でやってきたことに、野次馬は館で行われていたパーティーの参加者に仕立て上げられている。よりによってこの設定はつじつまが合っているから下手な言い逃れはできない。さしずめ鏡示と銀星は、この映画の主要な役柄といったところか。なんと真犯人不在のまま、この推理ドラマは進むのだ。これは新手の拷問だ。突如現れた天井を見つめながら、ふたりの青年は溜め息を漏らした。
銀行内では猛吹雪ならぬ、桜吹雪が舞い散る。澄んだ夜空に舞う花びらがとても美しい。思わず人質となっている行員たちもその風景に魅入っていた。そんなロケーションエリアを発動しているのは仁義を重んずる剣士・榊 漣二朗である。長い髪を結い、袴姿で犯人と対峙する姿は誰の目にも凛々しく映った。犯人の平沢も最初は女性行員を盾にしていたが、榊は「目的のために手段を選ばぬのなら、誰も貴方に同情はしないでしょう」と諭す。すると犯人は思うところがあってか、すぐざま束縛を解いた。剣士は一礼をすると、今度は人の道を説く。
「貴方はか弱き民を人質にすることを恥じた。ならば見栄を捨て、働いて銭を稼げばよいのです」
「俺ぁ、月で賞金稼ぎやってたんだ。この街でもそんなのをやってりゃ、こんなことせずに済んだんだよ!」
「それは私とて同じこと。この地に参りしときは一文も持たず、妙な格好に耐えながらも『しつじきっさ』とやらであるばいとを……!」
「ちょっと待てよ。お前……男だよな?」
「軽々しくおなごと接するのは不得手、だがそれをしなくては銭はもらえぬ。貴方にもその辛さを知ってもらいたい!」
犯人も行員もいつの間にか愚痴っぽくなってきた榊の説得で頭がいっぱいになっていた。確かに彼は若く見えるし、男装の麗人と呼ばれてもいいくらいの美貌を持っている。だが、彼は就職先をド派手に間違えてはいないか。もっとお似合いの職はあるはずだ。「自分の生きる道はそれしかない」と思ったわけでもないだろう。それを証拠に、榊は目の前で愚痴っている。本人も知らず知らずのうちに愚痴っている。だったら転職したらどうなのだろうか……なぜだかわからないが、夜桜の風情もだんだんと薄れてきた。
そんなところにつぐみが突貫。犯人がボーっとしているうちにロケーションエリアを発動し、自らの姿も戦闘モードに変えた。そして裏口を自慢の怪力で強引にこじ開けると、行員たちをさっさと逃がしてしまう。そして犯人の捕縛を考えたが……おバカなつぐみにはどっちが犯人かわからない。そう、彼女は犯人の名前しか知らないのだ。しかし彼女の判断は早かった。もっと正確に言うなら「決断が早かった」である。早い話が、考えることを放棄したのだ。
「どっちが犯人かわかんない時は〜、どっちもドッカーンするもんだ〜っ!」
「な……あの娘、なんという無茶を!」
「ホントに無茶すんな、あの娘! ま、俺はここの人間に用はない。金さえ手に入ったらそれでいいんだよ!」
「バカにしたな、このヤロウ! ということはお前が平沢だな? 金がないから強盗する方がバッカじゃないの? ところで後生大事に持ってるそのカバン、さっさと捨てた方がいいんじゃない?」
平沢はつぐみに指摘された通り、隣に置いていた膨れ上がらんばかりのカバンを見る。少女はその動作を見てニヤリと笑うと、さっさと外へ逃げた。なんとさっきのドサクサに紛れて爆弾だらけの風呂敷包みとすりかえたのだ! 榊は最初からそのことを口にしており、すでに建物の外へと逃げている!
「な、なあぁぁぁぁぁ! お、俺様の生活費が! 俺様の明日が爆」
ドッカーーーーーーーーーーーン!!
雪山に建つ館の窓ガラスが派手に割れた瞬間、警部のロケーションエリアが解除される。状況の進展がなかった銀行に動きがあったからだ。館のガラスは銀行のショーウインドウ……そう、つぐみのおみやげが派手に爆発したのである。強化ガラスも粉々に砕け、すっかり風通しのよくなった東海岸支店……これにはさすがの犬神警部も呆れた。しかしすぐに気を取り直し「確保ぉ〜!」と叫ぶと、さっきまでやる気のなかった警官が景気よく突入していく。軽い身のこなしで逃げたつぐみも、なんとか難を逃れた榊も「まるで戦のようだ」とこの状況を見守った。
ところが、警官隊のうち数人が勢いよく吹き飛ばされた! 黒い煙の中から、機械鎧・ファティルードを装着した平沢が現れる!
「こうなったら……別の銀行から金を奪ってやる!」
「鏡示さん! あれ……!」
「爆発の瞬間にエアロマスターとかいう鎧を装着したのか」
ダメダメ推理映画を十二分に堪能したふたりもようやく今の状況を飲み込んだ。さすがの野次馬も爆発の瞬間から蜂の巣をつついたかのような大騒ぎを演じている。その合間を縫って、ようやく特殊車両がふたりの元へと接近。中から火取が飛び出した!
「俺たちは月に住んでいるが、この街と風景は大差ない。だが望むなら……誰もがファティルードを装着することができる!」
「ロケーションエリアを発動したってことですね。了解しました。オレ、自分が望む姿になります!」
「あ、申し訳ないんですけど……火取さんは出番なしです。あなたのバトルマニア、カードにしましたから。シェイプチェンジするのは私ってことで、よろしくお願いします」
鏡示はなんとも抜け目のない男である。エアロマスターの高性能振りを一発で見抜くと、同じ映画から出現したであろう火取の能力をカードに焼き付けしたのだ。彼の狙いはスキルカードの収拾であるが、この場は変身せざるを得ないと判断。銀星は彼の動作にあわせて決め台詞を叫ぶ!
「「シェイプチェンジャー!」」
鏡示は隊長が装着するはずの『バトルマニア』を、銀星は漆黒の鎧と大きな盾を有した『ブラックフィールド』で敵と対峙する。その姿を見たつぐみもすぐさまシェイプチェンジ……したが、彼女の身体には似合わない無骨で頑丈そうなフォルムの鎧が装着された!
「えっ! まだピッチピチの少女なのにー! 何よ、この美しさのないデザインはっ!!」
『ファースト、えっとこちら美咲です。こちらでサーチしたコードネームは「バーサーカ」です。これ今後はこの名称で呼びますね』
通信は全員が共有している。思わず全員が同じタイミングで「ぷっ」と笑ってしまった。そしてもうひとり、榊がいる。天に向かって手をかざすと、瞬時に一振りの刀が出現した。それを手にすると、彼だけは別の変身を行う!
「郷に入っては郷に従え! ふぁてぃるーど装着! ふぉーむちぇんじゃー!」
「オ、オレたちと変身方法が違うのか?!」
『セカンドの明日香よ。次元圧縮装置を自分の持ち物に搭載して、そこから装着データを抜き出す「フォームチェンジ方式」の変身もあるわ。ま、普通は持ち歩きが面倒だから、みんなシェイプチェンジにしてるけどね。彼のは鞘に次元圧縮装置が装填されてるバージョンよ』
「変身方法が違うだけだ。ファティルード各機に告ぐ。これ以降はファースト、セカンドがアシストを行う。戦闘の指揮はこの俺」
「おまえだな! ヘンテコロボットの中身が真犯人の平沢だな?!」
思いっきり話の腰を折る犬神警部に一同あ然。誰がどう見ても、破壊された銀行から出てきたのが真犯人としか考えようがない。それを今さら威勢よく言われても……周囲の空気をまったく読まない警部はまだまだ拡声器でがんばっちゃう。
「聞けば、なんでも金に困っているそうじゃないか。なら当座の生活費を自分が立て替えてやってもいいぞー!」
「じゃあこの銀行の修理費も出してくれるってのか、オッサン! ヘンなところで人情味出すんじゃねぇよ!」
「話し合いは決裂だ! 各機、奴を撃破せよ! 行け行けー! 人の厚意を無にすると天罰が下るもんだ!」
「なんで警部が指示出してんのよ! しっかりしてよ、タイチョーっ!」
『つぐみさんのおっしゃる通りです』
誰もが今の話の流れに割って入れないことを知っていながらも厳しいお叱りを頂戴した火取は、半ばヤケクソ気味に「全機稼動!」と指示。激しい戦闘の幕が切って落とされた。
鈍く銀色に光る甲冑に身を包んだ榊の機体は刀で、名実ともに『バーサーカ』となったつぐみは強化されたナックルで接敵状態を保ったまま戦い、ブラックフィールドとバトルマニアはそれぞれの装備を構えて中盤で待機。遥か後方に特殊車両が状況把握を行う陣形を組んだ。エアロマスター1体には十分すぎる布陣だが、この機体が得意なのは『ヒットアンドアウェイ』。エアロマスター最高の魅力である高機動力を駆使し、前衛の二機との距離を置きつつも隙を突いて加速。腕に装着されたカッターですれ違いざまに攻撃を仕掛けるのだ!
ガキィィィーーーン!!
「痛ったぁぁっ! フザケンな、このヤロウ! ちょろちょろ逃げやがって!」
「しかしあれでは攻撃もままならない……私はどうすれば!」
「ピースフォースもその辺の連中を集めただけか。楽に逃げれそうだな……じゃあな、あばよ」
エアロマスターが初心者を手玉に取ったところでさっさと逃げようとブースターを最高出力にまで上げた。しかし彼は甘かった。いくら戦う人間が素人でも、オペレーターが超一流なら話は別。瞬時に美咲がバトルマニアに通信を送る!
『バトルマニアに通信。エアロマスター、逃亡の恐れあり。高濃度エネルギーを射出するブライトガンで頭上に威嚇射撃をお願いします!』
「腰に装着してるこれだな。よし、物は試しだ」
鏡示は何にも知らずに銃を抜いて指示通りに撃った。わずかな反動が身体を揺らしたが、射撃には成功している。ところがトリガーを引きっ放しにしていたため、連射モードになってしまった!
ガガガガガガーーーン!!
「うおあっ! あ、危ねぇ! う、浮いてれば……やられていた」
『セカンドからバトルマニアへ通信よ。今の結果オーライね。相手がビビっちゃったみたいだから』
「敵の独り言まで傍受までしてるのか。敵にはしたくない連中だな」
能力のせいか少し火取の影響を受けている鏡示。それでもしっかりと自分の意志で動ける。もしかしたら犬神警部が「行けー!」だの「やれー!」だの言ってるのが気になっているからかもしれない……彼は心の中でそう思っていた。
容易に逃げられないことを悟ったエアロマスターは同じ攻撃を繰り返す。しかしワンパターンな攻撃を見切れぬほど、前衛のふたりもバカではない。バーサーカはすれ違いざまに高速で背後を突き、動力源に見える場所に思いっきりパンチを食らわせた!
ドムッ! ブシャアアァァァァーーーーーッ!!
「手ごたえあり……なんちゃって! これ、楽しー!」
「うおっ! かっ、片方のブースターをやられた! だ、だが目の前には敵はいない! 今なら逃げれ……ぶっ!」
「黒くて見えなかったのかな? それとも周囲が見えないほどパニクってた? オレの盾に真正面からぶつかるなんてバカだね〜」
銀星のブラックフィールドは攻撃手段をまったく所持していなかったが、完璧の言葉通りの防御力を誇っていた。それをすでに知っていたオペレーターがバーサーカの大金星を見届けた際に布陣の変更を指示したのである。そして最後にはバトルマニアと榊の機体が待ち受けていた!
「どけ、デカブツ……う、うお……なんで思った通りの出力が出ないんだ! お、おかしいぞ?!」
「オレのブラックフィールド、ちょっとだけど重力を操れるんだ。そのせいなんじゃないかな?」
「こ、このままじゃ的になっちま……うわああぁぁぁぁっ!!」
「今度は連射モードで構わないよな。一発は当たるだろ、この距離なら」
ついにその時がやってきた。鏡示はエネルギー弾をありったけ打ち込み、エアロマスターをよろめかせる。そして状況を見極めた榊が一気に間合いを詰め、利き脚を前に出すと強く踏ん張って渾身の力で奥義を繰り出す!
「先ほどの言葉、攻撃できないとは……この技を的確に当てられないという意味なのです。だが、今なら決められる! 桜花の一枝っ!!」
強靭な足腰をバネに繰り出される突きは相手の喉もとを的確に狙い撃ち、満身創痍のエアロマスターの動作を停止させた。そして鎧が自動で解除され、傷ついた平沢の姿があらわになる。それを見た犬神警部が「今こそ確保だー!」と自らが指揮して犯人逮捕へと至った。これといって味方に大きな損傷もないうちに勝負を決し、胸を撫で下ろすチームの面々。隊長の火取がロケーションエリアを解除すると、全員の姿は元に戻る。しかし鏡示のスキルカードだけは手元に残った。火取は「記念に持っていけばいい」とそれを容認。本人も「コレクションが増えた」と満足げだった。
ただひとつ不満を持っているのが犬神警部だった。そりゃそうだ、警察主導で犯人確保をやっていたのにどこの馬の骨かもわからぬ少女が大破壊をやらかしたのだから。しかも確保したはずの犯人は銀星が飼っているパンダがぱっくりと食べてしまい、プレミアフィルムの一部にしてしまったのだ。次々と舞い込む情報に怒り心頭の警部を残して、火取は自分の判断で他の全員を乗せてさっさと基地へと逃げたのである。
「せっかくレンさんとかね、キョウちゃんとかギンセーたちと協力してがんばったのに……なんで警部は怒ってるんだろ?」
「確かに大らかな心を持つのも、人間の成長に必要だと思います」
「でもキミの大活躍はちょっと……ねぇ。あれ、すりかえるだけなら爆弾じゃなくてもよかったんじゃない?」
「その発想にまで行かないですよね。『あ、爆弾にすりかえよう』なんて」
「あ、警部が追っかけてくるよ! 自力で走ってるけど、車に追いつくわけないじゃん」
つぐみは何の反省もないまま、そして周囲の人間も呆れて説教する気にもならないまま。火取はバックミラーに映る警部の姿に向かって「お疲れ様です」とだけ言い残し、アクセル全開でぶっちぎったのである。
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クリエイターコメント | 今回ご参加下さいました皆様、本当にありがとうございました。市川智彦です。 皆さんがお持ちになっているキャラクターさんのイメージを存分に膨らませたつもりです。今後の活躍を心から楽しみにしております。 今回は本当に楽しいプレイングをありがとうございました! |
公開日時 | 2006-10-16(月) 11:10 |
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