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<ノベル>
晴天の中、次なる種目は『我が子を守れバッキー騎馬戦』となった。
数十のムービーファンと、そのムービーファンを担ぎ上げる為の、ムービースターやエキストラ達が、競技場に集まり紅白に分かれていく。
そんな中、紅組陣営では、
「キャー☆バニラかっわいい〜☆」
と、桃崎 玖路江が自分の掌に乗せた、愛バッキー、『バニラ』の愛らしさに、悲鳴をあげている。
玖路江は、ピュアスノー色で真っ白のバニラが自分の元に来てから、凝り出した、裁縫の技術を活かして、今日のバニラの装いを作り出した。
まずは、紅組である証の鉢巻きは、スカーフにし、周りをレースで飾り、その上に小さな薔薇のコサージュを付けてある。
そして、両手両足にはいつも玖路江が付けているリボンを巻いている。
「いやーん☆あたしもバニラとお揃いにしたかった〜☆」
玖路江の私服は、ゴスロリ服。
流石に、運動会には不向きである。
それでも、ゴスロリの心は捨てきれず、赤い鉢巻きに大きめの薔薇のコサージュを付けている。
運動着は、黒のTシャツに大きな赤い薔薇を銀色の蔓が覆っている。
まさに、紅組に咲く大輪の薔薇。
「けど、あたしって、運動全然駄目なのよね〜」
そういうと、掌のバニラに向かって、
「でも、大丈夫よ。バニラ。走ったりは出来ないけど、頭の上のバニラだけは、絶対守り抜いてみせるから☆だって、あたしの大事なバニラだもん☆」
と、玖路江は、笑顔の中にも大好きな友達を守り抜くという意気込みを込めていた。
所変わって、白組陣営。
「ようし、絶対負けないんだからね! あたしはガンガンバッキー奪いに行くから、キー、アンタは自分の身は自分で守ること。いいね?」
新倉 アオイが自分の愛バッキー、ボイルドエッグのキーに結構無茶な事を言っていた。
「キー!キー!」
キーが、何か抗議めいた声をアオイに出すが、
「キーね。あたしには、相手のバッキーを取るって仕事があるの、自分の身くらい自分で守りなさい。対等でしょ?」
「キー」
仕方が無いなあという感じでキーが鳴くと、アオイはキーに白い鉢巻きを巻くのだった。
巻きながらアオイは、真剣な顔でキーに、
「キー、絶対奪われちゃ駄目よ!勝つのはマジであたし達なんだから!」
「キー!」
アオイの声に頷くようにキーも一声鳴くのだった。
紅白分かれて、数十の騎馬が対峙する。
玖路江とアオイもそれぞれの騎馬に乗る。
『バンッ!』
秋空に試合開始の轟音が鳴り響く。
開始当初、場は膠着状態だった。
攻めるべきか、守るべきか、お互いに迷っていた。
そんな膠着状態を破ったのは、アオイだった。
「攻めなきゃ始まらないよ!」
そう言って、紅組のバッキー達を背中に担いだ籠に入れていく。
しかしそうっとだ。
バッキーは飼い主にとってとても大事なものだから。
キーは、相手に自分が奪われないように、頭の上で避ける避ける。
アオイの後頭部にへばりついたり、耳元に移動したり。
それでも、アオイは動じない。
いっつもキーは、アオイの体中へばりついているので気にならない。
バッキーを奪われた選手は、2種類に分かれ始めた。
バッキーを奪われた事で戦意を喪失する者。
バッキーを奪われた事でより一層戦意が上がる者である。
そして、そう言う騎馬が狙う騎馬は、弱そうな騎馬である。
例えば女子高生の乗っているような騎馬。
一組の騎馬が玖路江の騎馬に狙いを定めた。
自分には、も何も守るものはない。
なら、一匹でもバッキーを奪うんだ!
そんな想いで、目を血走らせ一組の騎馬が玖路江の騎馬に迫る。
「うわ!うわ!来ちゃうよ〜!」
一方、玖路江は開始当初から防戦一方でバニラを守るのに必死だった。
「あ!そうだ!ねえ、ムービースターさん?」
玖路江は騎馬のムービースターに話しかける。
「あなた、煙幕吐けましたよね☆ちょっとだけ吐いて欲しいななんて☆」
一対一では分が悪いと逃げる作戦だ。
玖路江に頼まれたムービースターは半径5メートルに煙幕を吐き出した。
辺り一面が真っ白になる。
「ありがとぉ☆これなら、逃げられるわ☆腕力じゃ男の子に勝てないしね☆」
そう言いつつ、煙の外を目指す。
「バニラは、あたしの命!絶対守るんだからぁ☆」
少女は、苦手な運動で初めて勝利を目指そうと誓っていた。
「な、何?この煙?誰かの能力、誰が敵で誰が味方か分からないじゃない?マジでありえなくない?そうだ!キー!居るー?」
自分のバッキーがこの隙に奪われていないかと確認するアオイ。
「キー!キー!」
「大丈夫みたいね。そうね……。あなた、確か突風を起こす能力を持っていたわよね?ちょっとこの煙、一直線上でいいから、消しちゃってくれない?」
言われたムービースターは、風の力をその身に集め、一筋の突風を起こす。
その先には、戦線離脱しようとしていた玖路江達の姿が見て取れた。
「よっし!紅組の騎馬!綺羅星学園の生徒かな?」
一瞬考えたが、
「あの騎馬、狙うよ!ゴメンネ。勝負だから、手加減はしないよ?」
一陣の風が吹いた。
しかも自分達の方向に。
自分達の騎馬を隠していた、煙が晴れ、自分達の姿が丸見えになっている。
しかも、自分達の方へ迫ってくる騎馬がある。
最悪な事に白組だ。
「どうしよ〜。逃げられると思ったのに〜」
そして相手を観察する玖路江。
相手は、自分と同じくらいの女の子だ。
逃げ切れるとも限らない。
奪い合うしかないかもしれない。
「あたしは、運動は苦手だけど、バニラだけは渡せない!騎馬のみんな!力を貸してね☆」
玖路江は、愛するバニラの為に闘う道を選んだ。
「あら、逃げないみたいね。そう来なくっちゃ♪キー、絶対捕まるんじゃないよ!私があの子のバッキー、奪うから」
アオイも楽しそうに、キーに呼びかけ、玖路江の騎馬に突貫して行った。
そうして二人の少女の騎馬は対峙することになった。
「あなたも綺羅星学園の生徒?」
と、アオイ。
「そうだけどぉ………」
と、玖路江。
「運動会っていいわよね」
アオイが言う。
「あたしってさあ、自分で言うのも何だけど人見知りでさぁ。なかなか、人と上手く接するの難しいなあって思ってるの」
「うん☆運動会っていいよね。……本当はねあたし、運動会って嫌いだった。あたし、運動音痴で走ったらびりっけつ、力もないから、この騎馬戦が凄く楽しいの☆運動会の楽しさを教えてくれたの。このバニラが……」
玖路江も心の内を吐き出す。
「あなたとなら、友達になれそうだけど、今は敵。その、バニラだっけ。あたしの籠に入れさせてもらうね♪」
そう言って、アオイが微笑む。
「そうだね。敵同士だもんね。バニラは渡さないんだから!」
アオイが玖路江の頭の上のバニラを積極的に取りに行くなか、玖路江は防戦一方である一瞬を待っていた。
そしてその時が来た。
「今!」
アオイの脇が開き、キーが丸見えになったのだ。
そうして玖路江は、身体をのけぞらせて、アオイからキーを奪った。
「やった……あ!」
「相打ちみたいだよ」
アオイを見ると、アオイの手にはバニラが抱かれている。
「バニラ!」
「大丈夫だよ。この子は、勝負が終わるまで大事に預かっておくし、ちゃんと返すから。けどあたしから、キーを奪い取るなんて運動音痴なんて嘘じゃない?」
「そんな事無いよぉ。だけどバニラは大事に扱ってね」
「分かったわ、じゃ、あたし、まだバッキー奪ってくるから………あなたも体力があったら行ったら」
そう言って、アオイの騎馬は、また戦場へ戻っていく。
「こんなに悔しいの初めて。バニラを奪われちゃうなんて。バニラは私の命なのに。バニラ怒ってないかしら」
そんな事を玖路江が考えていると終了の号砲が鳴った。
『残り騎馬数。白組5対紅組2で『我が子を守れバッキー騎馬戦!』は、白組の勝ちです』
白組勝利のアナウンスが流れる。
紅白共に拍手が響き渡る。
そんな中、アオイと玖路江は、それぞれのバッキーを交換していた。
「バニラ、ごめんね。でも、頑張ったよね?あたし達」
バニラに問いかけると、玖路江の頬に軽くバニラがキスをした。
「バニラ……愛してるぅ☆」
「勝ったからいいけど不甲斐ないなあ、超情けない。キー」
アオイの厳しい言葉に、
「キーキーキー!」
と抗議の声を上げるキー。
そんな中。
『最大捕獲数は新倉アオイさんの7匹です』
今度は、アオイに拍手が向けられる。
「や、やったあ!マッジでアリエナイ!キー!」
アオイがキーを両手で抱え上げる。
こうして『我が子を守れバッキー騎馬戦!』は、アオイを最優秀選手賞に、白組勝利で終わった。
競技場に一つ風が吹いた。
最後に勝つのは、紅白どちらのチームとなるのだろうか?
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クリエイターコメント | はい、こんにちは。 冴原です。 この度は、御参加有り難うございました。 やっぱり銀幕には、バッキーはかかせないなあとか思った次第です。 お二人のプレイングを見て、愛の形って色々あるんだなあと思いましたね(何)。
誤字脱字、感想、ご要望等ありましたらメール下さると嬉しいです。
それでは、また銀幕の世界でお会いしましょう。 |
公開日時 | 2008-10-20(月) 21:50 |
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