★ Delicious Panic!? ★
<オープニング>

いらっしゃいませ、映画実体化問題対策課にようこそ。何かご用ですか? ……ああ、もしかして、あなたも依頼を探しにおいでになった?

では……そうですね、こんなのはどうでしょう。
『天獄聖大戦』という映画はご存知ですか? ええそうです、あの、世界中の神話の登場人物を詰め込んだ、ごった煮と言われるシリーズ作品です。マニアには大受けしているらしいですね。あなたもお好きですか? なら、あれの、地獄と天国双方が住民ともども実体化したことはご存知ですよね。

今回は地獄の方からなんですが、門番さんから依頼がまわってきまして。ええ、あの身の丈二メートルの。

何でも、もうじき地獄を統べる魔王陛下のお誕生日らしくて、地獄の方々はそのお祝いパーティーのためにたくさんのご馳走を準備していたらしいんですが、その中でも一番の目玉、もっとも貴重でもっとも美味と言われる、魔王陛下の大好物だという食材が逃げ出したらしいんですよ。食べられちゃたまらないと思ったんですかね。

それで、せっかくのおめでたい日に魔王陛下ががっかりされる顔を見たくないと、逃げた食材を捕まえに行ってくださる方を探しているそうなんです。番人さんも愛犬のケルベロス君も門の守護で精一杯らしくてね。

お手伝いいただける方には、番人さんからささやかなお礼があるそうですので、もしよければあなたもどうですか?

え、どんな食材なのか? ……さあ、私もそこまでは。でも……地獄で一番美味しいといわれている食べ物でしょう? そりゃ、我々が日頃慣れ親しんでいるものとは違うと思いますよ。

そんなわけですので、興味がおありでしたら是非お手伝いをお願いします。

種別名シナリオ 管理番号19
クリエイター犬井ハク(wrht8172)
クリエイターコメント『Doggy Panic!?』に続く地獄シリーズ(?)第二弾です。今回はとことんコメディに行こうと思っています。魔王陛下のお誕生祝いがつつがなく執り行えるように、逃げた食材を追跡・捕獲してください。ツッコミ体質の方には特に楽しんでいただけるかと思います。つまりそんな『食材』です。

そして番人からの『お礼』ですが、NPC『ゲートルード』で検索していただくと、能力の欄に品物が書いてあります。お好きなアイテムをお選びになり、プレイング内に使用方法を書いていただければノベルに反映させて頂きます。
なお、アイテムに関しましては、今回使っていただいても結構ですし、『天獄聖大戦』の関わる事件内でしたらいつでも使っていただけますので、次回用にストックしていただいても結構です。

それでは、皆さんのご参加をお待ちしております。

参加者
烏丸 つぐみ(czrh9431) ムービースター 女 17歳 宇宙忍者
幻燈坊(cpxa5534) ムービーファン 男 30歳 拝み屋
<ノベル>

 地獄の門番ゲートルードは、感激のあまりふたりの協力者に全身全霊で抱きつきかけたほどだ。
 『天獄聖大戦』からこの銀幕市に実体化して数ヶ月、生きた、本物の人間たちと接するにつけ、人間とは素晴らしい生き物だと思う。
 それゆえに抱擁という名の突撃をかけそうになったのだが、今回の協力者の片方、烏丸つぐみに、
「番サンにハグされたら死ぬから勘弁!」
 と、電光石火の勢いで逃げられた時点で諦めた。
 しかしこの感激を是非とも伝えたいと、次に、もうひとりの協力者、幻燈坊に向き直ると、身の丈二メートル近い、怪異な要望の偉丈夫は、
「うむ、わしも遠慮させていただきたい。男に抱きつかれて喜ぶ趣味はないのでな」
 そう言って一歩退いた。
 やや顔色が悪かったような気がするのは、きっと目の錯覚だろう。
『そうですか、それは残念です』
「何が残念なのかちょっと気になるんだけど、まぁいいや。でさ、番サン。結局、何を探してくればいいの? その、逃げた食材ってどんなもの?」
「おお、そうであった。地獄一の美味という話だが、それは我々も口に出来るような代物なのか?」
『ああ……そうですね、ご説明します。本当に美味しいものなんですよ。魔王陛下など、あれが食卓に上るとご機嫌が二割増でよくなられるほどです。せっかくですから、おふたりも召し上がりますか?』
「えっ、いいの!? 気になってたんだー」
「ほほう。それは、探す方にも力が入るというものだな」
『はい、では、お礼も兼ねて、魔王陛下のお誕生パーティーにご招待いたしましょう。地獄は美味しいものが多い場所でもあるのです、きっとお二方も気に入られますよ』
「へええー。あ、で、どんな食材? 逃げるからには、やっぱ肉系?」
「地獄の肉とはどのようなものなのであろうな。興味深いぞ」
「なんか、ものすごい体力つきそうだよね」
 口々に言うつぐみと幻燈坊に、しかしゲートルードは首を横に振った。
 ふたりが「え?」という表情をする。
『いえ、今回逃げ出したのはキノコでして』
「キノコ!? って、逃げるもんだっけ!?」
『はい、名を爆殺人喰い茸(バクサツヒトクイタケ)と申しまして、地獄の三大珍味に数えられている超高級品です』
「爆殺っ!?」
「人喰いとな!?」
 ゲートルードがキノコの名を挙げた瞬間、つぐみと幻燈坊から素っ頓狂な声が上がった。
「で、でもキノコなんだよね?」
『はい、魔王陛下は菜食主義者であらせられますから』
「魔王なのになんで菜食主義者なのかとか、そもそも動き回るキノコを植物と呼んでいいのかとか、色々突っ込みたいんだけど……」
『ああ、はい、植物ですよ。地獄菌類の中でも特別な希少種として、地獄大図典にも掲載されています』
「地獄菌類……聴くだに恐ろしい響きだ……」
「き、気を取り直して……ええと、じゃあ、どんな形してんの? 大きさは?」
『そうですね、形としては、あなたがた人間が食されるキノコとほとんど同じです。今回献上されたものは、まだ小型でしたから、全長で三メートルといったところでしょうか。大きいものなら五メートルに達するのですが、なかなかそこまでの逸品は』
「三メートル……ちょっとしたモンスター並の大きさじゃん……」
「だが、言い換えれば探しやすいということでもあるな」
「ああ、うん、それは確かに。坊サン、いいこと言うじゃん」
「門番殿、その他、何か特徴はないか。すぐにそれと判るような」
『ああ、とてもよい匂いがしますよ。直径百メートルの円内全域で、うっとりするほどよい香りが立ち込めます』
「へええ。あたし、そういうのの中心探すの得意だよ」
「おお、それはちょうどよいな。他には何かあるか?」
『口がついておりますね』
「……はい?」
「済まぬ、今なんと?」
『はい、ですから、軸の部分に口がついております。これがまたチャーミングで、我々などその様子を見るだけで和むものですが』
「えーと……それって、本当にキノコ?」
「というか、それは本当に食い物か?」
『ええ、『瞬殺鬼喰い茸(シュンサツオニクイダケ)』『滅殺竜狩り茸(メッサツリュウガリダケ)』と並ぶ希少種ですから。地獄の住民たちはこれらが採集されると歓喜のあまり涙するほどです』
「どんなすげー世界だよ、それ……」
 呆れ顔のつぐみがぼそりとつぶやく。
 しかし、やるべきことは理解しているようで、
「うし、んじゃまぁ、頑張って探してみるか。魔王陛下の誕生祝いも気になるし」
 そう言って、時代の最先端を行くとでも表現すればいいのか、先進的なデザインの忍び服を確かめた。幻燈坊もまた、錫杖や数珠を確認している。
「うむ、面白い札もいただいたことだしな。烏丸、おぬしは何をもらったのだ?」
「あたし? ダメージなくす飴。番サンってすごいよな、こんなもん作れちゃうんだから」
「まったくだ。では門番殿、行って参るぞ。朗報を期待されよ」
『はい、ありがとうございます、幻燈坊さん、つぐみさん。このご恩、不肖ゲートルード、生涯忘れません』
「大げさだなー、番サンは。いいっていいって、あたしたちも好きでやってんだしさ。な、坊サン」
「うむ、持ちつ持たれつというヤツだ。では行こうか」
 豪快に笑った巨漢拝み屋と、悪童のような闊達な表情で笑った少女忍者とが、肩を並べて歩いてゆくのを、ゲートルードはずっと見送り続けていたが、その姿がやがて見えなくなると、
『では、お誕生パーティーのお客様席を作るよう係の者に通達しなくては。飲み物は、髑髏林檎酒と人面葡萄のジュース辺り、かな』
 そうつぶやいて、黒々と輝く門の中へ姿を消した。



 手がかりは案外あっさり見つかった。
 『天獄聖大戦』の地獄門があるのは銀幕市の南端の山際だが、そこから町へ降りた途端、なんともいえぬよい香りがふたりを包んだからだ。
「あー、これかな、番サンが言ってたの」
「うむ……松茸の香りを強くして、更なる上品さと優雅さを付け加えたような匂いだな。これだけきついのに、少しも不快ではない」
「うん、すっげ美味しそう。えーと……匂いの元はこっち、かな」
「うむ、わしの霊感もそう告げておるぞ」
 鼻をヒクつかせてつぐみがいい、頷いた幻燈坊が歩き出す。
「なんか、あんまりいい匂いすぎて名前のインパクトが薄れてきちゃったなぁ」
「それは確かにな」
 ふたりが言うとおり、あまりのよい香り、どこか神秘的ですらあるそれに、町行く人々もうっとりしている。うっとりしすぎて、道の真ん中で正面衝突する歩行者がいたほどだ。
「あ、こっちだ。匂い、強くなったね」
「うむ。だが、ますますよい香りだ」
「やっぱ焼いて食べるのかなー。すっげ楽しみー」
 言いつつ、二十分ほど歩いた辺りだろうか。
 たどり着いたのは、大人の上腕ほどもある太さの大きな竹があちこちから生える、荒れた竹やぶだった。恐らく、手入れをする人間がいないのだろう、無造作に生えた竹の群れは、まるで牢獄のようにも見える。
「……この奥のようだな。わしの第六感、心の目に伝わってくる」
 もっともらしく言った幻燈坊が、竹を掻き分けて中へ入る。
 つぐみは、幻燈坊の大きな身体に竹が薙ぎ倒されたあとの安全な空間を、用心しながら通る。
 あまりのいい匂いに忘れそうになるが、キノコには口がついているというのだ。口が何のためについているかといえば物を食うためで、そしてキノコの名前は爆殺人喰い茸。
 警戒した方がいいだろう。
「むむむ……奥の方からなんぞ妖しげな気配を感じるような気がしないでもないぞ。多分、恐らく」
「ホント? 坊サン喧嘩はあんま得意じゃないんだっけ? 危ないようならあたしが出るから」
「おう、任せる。わしは祈祷によっておぬしに助力するゆえな」
「へえ、坊サンもすごいことができるんだなぁ」
「ん? う、うむ、当然だ、わしは腕利きの拝み屋だからな」
 などと言いつつ注意深く進むこと数分。
 不意に前方から、ばきり、ぐちゃり、べしょっ、とかいう、生々しく不吉な水音が聞こえてきた。
 それは決して雨水が地面に滴る音ではなく、ましてや誰かが竹やぶに水をやっている音でもなく、心持ち何かの弱々しい呻き声まで聞こえるような気さえして、つぐみの眦が厳しくなる。
「……血の匂いが混じってる」
「な、なんだとっ。き、危険なようなら、わしはその、この辺りで待っておるぞ。その、なんだ、おぬしの邪魔になってもいかんからな」
「そうだね。でも……こっちに敵意が向いてる様子はないから、多分大丈夫だと思うよ、まだ」
「まだ、というのが気になるのだが……」
 戦々恐々、というのが相応しい幻燈坊とは対照的に、つぐみの闊達な黒瞳には楽しげな光が輝いていた。
「大丈夫だって、あたしがなんとかするから。まさか、キノコを探しにきて暴れられるなんてラッキ……っと、役に立ててよかった、ってとこかな」
 やがて前方に、太い竹が何本も折れた所為で出来た広場が見えた。広場は、自然に出来たものではなかった。
 広場が出来た原因、地面にわだかまるものを目にして、つぐみが眉根を寄せる。幻燈坊は小さく悲鳴を上げかけたが、ぐっと堪えて平静を保っているふりをした。
「……あいつか」
 ばきばきばきっ。
 何かが砕ける音がした。あの芳香がひときわ強くなる。
 広場の真ん中には、血のような毒々しい――しかしどこか官能的な色艶を持った――カサと、滑らかな乳白色の軸を持った、全長三メートル前後の巨大なキノコがいた。
 形としては、恐らく、エリンギというキノコが一番近いだろう。
 しかし。
「……今、真剣に、あれをモリモリ食ってる魔王陛下のベジタリアンとしての資質ってどうよと思った」
「わしはあんな菌類がうようよいる地獄の将来を真剣に憂慮するぞ」
「あと、あれをチャーミングって言っちゃう番サンの美的感覚とか」
「それで和む地獄の住民たちの感性もだな」
 真顔でふたりが突っ込むとおり、地獄エリンギのカサ寄りの軸には、ホオジロザメでもこうは行くまいというような、明らかに肉食と思しき凄まじい牙がのぞく口がついていた。
 おまけにキノコにはごつい太い脚までついていて、キノコはその脚で何とも知れぬ生き物をふみつけ、その肉を喰らっているのだった。
 食われているのは、サイズや色、形からして、どこかのムービーハザードで発現したモンスターの一種かもしれないが、巨大な口を血まみれにしながら食事に精を出すキノコの姿は、とてもではないが植物とは思えない。
「ええと……コモド大蜥蜴だっけ、この世界最大の肉食トカゲって。あれの脚に似てるよね」
「少なくともあれに踏まれるのだけは勘弁してほしいものだ」
 嘆息した幻燈坊が一歩踏み出した瞬間、彼の足元で、枯れた細い竹がぱきっ、という音を立てた。
「――あ」
「うっ」
 その音は、ひどく大きく周囲に響いた。
 がふがふと、ものすごい勢いでモンスターを喰らっていたキノコがぴたりと動きを止め、顔を上げる。否、それを顔といっていいものなのかはふたりにも判然としなかったが。
 その『顔』には口しかついていなかったはずなのだが、つぐみと幻燈坊は、ふたりの姿を認めたルビーのように真赤な目が、殺意と歓喜と食欲とを含んでぎらぎらと輝いたような錯覚を覚えていた。

『しゃしゃしゃしゃしゃっ』

 キノコの口から、空気が漏れるような音がした。
 つぐみが眉を寄せ、幻燈坊が一歩退く。
 いまやキノコはつぐみと幻燈坊のいる方向へと身体の向きを変え、蜥蜴を髣髴とさせる足を踏ん張って、こちらを睥睨していた。
 その口が更に大きく開く。

『しゃげええええええええっ!!』

 それがキノコの咆哮だと気づくよりも早く、キノコが大きく跳躍した。
 ふわり、と、食欲を刺激する芳香が立ちのぼる。
「ははっ、やっぱそうこなくっちゃな!」
 笑ったつぐみがロケーションエリアを展開させる。少女忍者の身体を、薄く軽い金属製の帷子、手甲、脛当て肘当てが覆った。
「烏丸、おぬしに任せるぞ! わしは向こうで祈祷を行うゆえな!」
 顔を引き攣らせた幻燈坊が、転がるようにその場から逃げ、やや離れた場所に身を潜ませると、もっともらしく刀印を結び、
「臨兵闘者皆陣裂在前(りんぴょうとうしゃかいじんれつざいぜん)!」
 格子をなぞるように九字を切った。次に、顔の前で手を合わせるような仕草で不動明王印を結ぶと、
「ナウマクサマンダ・バサラダンセン・ダマカラシャダソワタヤ・ウンタラタカンマン!」
 そう高らかに唱えた。
 怪異な巨躯から放たれる堂々とした――妖しげな呪文は、竹林に朗々と響き渡り、その声に打たれたかのようにキノコがびくりと飛び上がる。
 つぐみはその隙を見逃さなかった。
「坊サン、やるじゃんっ!」
 賛辞の言葉とともに地面を蹴り、一瞬でキノコの懐へと入り込むと、
「ま、運が悪かったと思うといいよ!」
 そう言って、キノコが牙だらけの口でつぐみを齧るよりも早く、固めた拳でキノコを強打した。
 ごみょっ、とでも表現すればいいのだろうか、どこかしっとりしたやわらかそうな手触りとともにキノコが吹っ飛ぶ。
 何せロケーションエリアを展開したつぐみの怪力及び身体能力には定評がある。全長三メートルとはいえ、全体的に密度の低い植物(推測)など、ひとたまりもない。

『ぐしゃっ、しゃしゃしゃしゃっ、しゃげげげげげっ!』

 地面に引っ繰り返り、バタバタと脚を動かして、妖しげな、この世のものとも思えない声でキノコが鳴く。牙だらけの口がぱくぱくと動いた。
 つぐみは軽く跳躍し、その傍に降り立つと、
「はい、これでおしまい!」
 晴れやかな笑顔でキノコを蹴飛ばした。
 ごきょっ、とまたしても奇妙な音がして、盛大に吹っ飛んだキノコは、太い竹を何本も巻き添えにしながら地面を転がり、そのまま動かなくなった。脚がぴくぴく動いているところを見ると、目を回したらしい。
 近づいて確認すると、ホオジロザメのような口から泡を吹いていた。
 少年のようにからりと笑ったつぐみがガッツポーズを取る。
「よし、完了。坊サン、お疲れさん」
「うむ、ご苦労であったな。おぬしの働き、みごとであったぞ」
「坊サンもね。カッコよかったよ、あの呪文。あ、そだ。なんか縄みたいなの持ってない? 目が醒めても――って、キノコに使う表現じゃないかもしんないけど、暴れられないようぐるぐる巻きにして持っていこう」
「ふむ……少なくとも、あの口には猿轡を噛ませるべきだろうな、確かに。おおそうだ、この手拭いとたすきを使うがよい」
「うん、ありがと。あ、これでなんとかなりそう。じゃ、あたしのロケーションエリアが消える前にちゃっちゃと番サンとこに戻ろう」
 引き裂いた手拭いで口を塞ぎ、二つに切ったたすきで手足を縛ったキノコを、少女らしからぬ怪力で持ち上げたつぐみが言う。
 幻燈坊は頷き、手にした錫杖で、大荷物を抱えたつぐみが通りやすいよう、竹の枝や葉を叩き落した。
「戻ったら魔王サンのお誕生祝いかな?」
「おお、相伴に預かれるのだったな、楽しみだ」
「うん、ホントたまらんいい匂い。でもこれ……どうやって食べるんだろ。口の部分が当たらないよう祈ろう」
「案外、脚は美味やも知れぬがな」
「あ、確かに。蜥蜴って鶏肉みたいな味がするらしいし」
「もっとも、この脚がなんという物質で出来ておるのかは永遠の謎だが」
「うーん、脚も菌類なのかなぁ?」
 などと、他愛ないおしゃべりに興じつつ、時折痙攣する巨大なキノコを引っさげて、ふたりは依頼主のもとへと戻ったのだった。

 ――その後催された魔王陛下の誕生祝いパーティーで、見事に調理された『爆殺人喰い茸の丸焼き、インフェルノバターと悪魔ハーブソースがけ』にふたりが舌鼓を打ち、あまつさえお土産までもらって意気揚々と帰宅したことは、公式の記録には残されていない。

クリエイターコメントDoggy Panic!? に続く地獄シリーズ(?)第二弾、いかがでしたでしょうか。ライターとしては楽しく書けたのですが、少しでも皆さんに笑っていただければ幸いです。

参加してくださった方々、どうもありがとうございました。今回はアイテムを使用しませんでしたので、もしよろしかったら、今後地獄シリーズ関連のシナリオに参加される際にでもお使いくださいませ。

それでは、また機会がありましたらどうぞよろしくお願いします。
公開日時2006-11-17(金) 11:40
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