「こんなに雪が積もっているのに、寒くないんですね♪」
もこもこのダウンジャケットを着こんで現れた梨奈は、雪をすくいあげてぱあっと空中に投げ上げてみたり、ぱふっと雪の上に倒れこんで顔型を作ったりと、子供にかえったようにはしゃいでいる。
植村の……つまりは銀幕市役所からの要請でかけつけ、雪だるまを鋭意制作中の貴方は、そんな彼女の様子を苦笑まじりに見守る。
クリスマスの森でぽつねんと一人待つスノウマン1号のためにも、早く仲間を作ってやらなくてはと、貴方は熱心に手を動かしていた。
なにしろスノウマン1号が、貴方の手元を期待をこめて見つめているので、貴方としては手放しではしゃぐわけにはいかない。
だが、ここにいるだけでなんとなく心がうきうきしてくるのは否めない。
クリスマスツリーの森は、皆の心に不思議な作用をもたらすのかもしれなかった。
「ああ、いい感じです! こんな仲間がほしかったんです」
スノウマン1号は、やがて、貴方の手元で完成しつつある雪だるまを見てそう叫んだ。
「やっぱり、どことなく似ていますねえ」
スノウマン1号は、ほわんほわんとした足取りで近づき、貴方と雪だるまを見比べてそういう。
スノウマン1号の話によれば、命を吹き込まれた雪だるまは、性格もどこか作り主に似るのだという。
−−−−マジっすか。
やがて……銀幕市民によって作られた個性的な雪だるまたちが、ずらりと森の中心に並んだ。
けだし、壮観である。
「誰だ網タイツにマスカレードの女王様雪だるまなんて作ったヤツはぁ!?」
「……こっちのぁ、えらくマッチョだな、おい」
おどろに乱れた長い髪を振り乱したホラーな雪だるま、三度笠に道中合羽の渡世人風雪だるま等々、個性あふれる雪だるまも見受けられ、銀幕市民たちは、思い思いの感想を述べる。もちろん一番この森にふさわしい、普通の可愛らしい雪だるまもたくさん。
そして祈る。
雪だるまたちに命が吹き込まれ、もうスノウマン1号がさびしくないように囲んでやってくれと……
そして。
きらきらと、ビッグツリーの木から輝く光の粒が、皆の上に降り注いだように見えた。
次の瞬間、雪だるまたちは陽気な声をあげ、動き始めた。
「わちきはスノウマン●●号でありんす。ぬしさん、末永くよろしゅう」
「オッス、オラ、スノウマン●●号! オラなんだかワクワクしてきたぞ!」
「ミーはスノウマン●●●号ネ〜♪ トレビアーン」
森の中は急ににぎやかになる。
しかし、雪だるまたちが作り主たちの性格に似るというのは本当らしく、早くも回りの女性をナンパしまくってる雪だるまやら、プロレスに興じるマッチョ雪だるまやらもいたりして、いいのかアレは。
「よかったぁスノウマン1号さん♪ これでもうさびしくないですねっ」
梨奈はぴょんと雪の上で跳ねた。
……ま、まあ、さびしくないことは確かだな、うん。
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