★ 銀幕市の歩き方〜シナリオ編〜 ★




うーん……。



どうした。何か悩み事かね。



あ、マルパスさん。実は……『映画館』で募集されてるシナリオに参加してみようと思うんだけど、自信がなくて。あの「プレイング」っていうやつ、難しいですよね?



そうかね? たしかに、初めてだと戸惑うかもしれないな。しかし基本を理解し、ちょっとしたコツをおさえれば何も恐れることはない。プレイングを考えることはPBWのいちばんの楽しみでもあるのだぞ。



マルパスさん、それじゃあ、俺にうまいプレイングの書き方を教えてくれませんか?


ふむ。うまく書けるかどうかはキミしだいだが、基本的なことをレクチャーすることはできる。よし、飲み物を用意して、そこのベンチに座りたまえ。


CONTENTS
1:オープニングを読もう
2:動機・目的・手段を考えてみよう
3:プレイングの文章を書いてみよう






★ マルパス閣下のプレイング基本講座 ★

<1:オープニングを読もう>

まず、プレイングの書き方以前に、シナリオ参加に一番大切なことがある。それはOP(オープニング)をよく読み、その内容を理解することだ。『映画館』に提示されるシナリオのオープニングには、銀幕市で起こるさまざまな出来事の発端が描かれているが、諸君らはそこから、次の2つのことを読み取らねばならない。

(1)何が起こっているのか(5W1H)
(2)何が求められているのか

まず「何が起こっているのか」――、シナリオの多くは、銀幕市で起きるなんらかの事件を扱っている。突発的に巻き込まれるにせよ、対策課を通じて依頼として解決を引き受けるにせよ、自分がかかわり、直面することになるのはいったいどんなシチュエーションなのか、OPから情報を読み取ることが、シナリオ参加の第一歩だ。

情報は、「5W1H」で整理してみるとわかりやすい。「5W1H」とは的確に情報を伝えるさいに必須の要素とされているもので、「いつ(When)」「どこで(Where)」「誰が(Who)」「何を(What)」「どうして(Why)」「どのように(How)」という6つのことを指す。

たとえば……
・いつ(When)……………ある晴れた日に
・どこで(Where) ………銀幕銀行で
・誰が(Who) ……………ギャング映画からあらわれたヴィランズが
・何を(What)……………銀行を
・どうして(Why) ………金を手に入れるために
・どのように(How) ……銃を持ち、客を人質にとりつつ(襲撃した)

といったふうに、OPの内容を分解してみれば、より理解しやすくなるはずだ。

※OPによっては、シナリオ構成・演出上の都合や担当ライターのスタイルによって、5W1Hの要素がすべては書かれていないこともある。だがその場合、書かれていない要素はあまり重要でないので略されているか、意図があって伏せられているものと理解しよう。

次に、それらの情報から、そのシナリオでは「何が求められているのか」を考えてみるとよい。内容が依頼の形式をとっているときは、おのずと、依頼人(対策課の植村くん等だ)のセリフとして書かれていることも多いし、場合によってはクリエイターコメントにライターからのメッセージがあることもあるだろう。

上記のOPの場合は
・銀行強盗のヴィランズをなんとかしてほしい

ということが、そのシナリオの目的であると読み取れる。この、「シナリオの目的を理解する」ことが、シナリオ参加にあたってのもっとも重要な点であるので、シナリオのOPを読んだときは、「このシナリオに参加するとしたら、自分は何をすればいいのかな?」ということを考えるクセをつけてみるといいだろう。

●応用問題:ストーリーの目的とゲームの目的

シナリオを、ゲームとして見た場合、表面的に読み取れる目的とは別の目的が存在していることもあるぞ。これはちょっと難しい話だがPCの視点とPLの視点が異なることから発生する。たとえば……

SF映画からあらわれたモンスターが街で暴れているので退治してほしい。このモンスターが目から出すビームを浴びると、なぜか「心にもないウソを言ってしまう」ようになる。敵はこの能力でこちらを混乱させてくるようだ。注意してくれ!

というシナリオは、「モンスターを退治すること」が「PCの目的」だが、「『心にもないウソを言ってしまう』ことで混乱した状況を楽しむ」のが「PLの目的」(のひとつとして考えられるもの)だ。この「PCの目的とPLの目的」は、「ストーリーの目的とゲームの目的」と言い換えることもできる。

この例では、「ゲームの目的」を理解して、「敵の攻撃を受け、どんな『心にもないウソ』を言ってしまうか、それによってどんな混乱や騒動が起きるか、他人の『心にもないウソ』にどう反応するか」といったことをプレイングに含めることで、より、シナリオの意図に沿った、効果的なプレイングを書くことができるだろう。

※これはちょっと難しい話だから、わからなければ気にしなくてOKだ。


<2:動機・目的・手段を考えてみよう>

シナリオの内容を理解したら、いよいよプレイングを考えてみよう。プレイングとは、基本的には、そのシナリオの状況において

・キャラクターがどんなことを思い、どんな行動をとったか

ということを、ライターに伝えるための文章だと理解してくれ。それをもとにライターはノベルを書くのだが、大事な点は、上記のことが正しくライターに伝わるかどうかということだ。そのためには、キャラクターの、そのシナリオにおける「動機・目的・手段」をプレイングに含めるのがいいとされている。

すこし難しいかもしれないので、ひとつずつ解説してゆくぞ。

●動機とは?

シナリオのOPに書かれている状況をよく想像してみよう。そして、自分のキャラクターなら、それに対して、どう思うか、どんなことを感じるか、ということを考えてみてほしい。PBWはロールプレイングゲームなのだから、そのキャラクターの気持ちになりきってみることだ。



浦安くん、キミなら、上記のOPについて、どう思うかね?



えっ、そうだな……。銀行強盗はやっぱいけないことでしょ。特に人質をとるなんて、ひどいヤツらだ! 早く、なんとかしないと……。



そう、それがキミの動機だ。そのシナリオに参加する理由と言い換えてもいいだろう。


●目的とは?

次に、その動機をもとに、キャラクターが、そのシナリオの中でなしとげたいことを考えてみる。それが目的だ。……OPを読んだ時点で、「そのシナリオの目的」はわかっているはずだ。だから最初のうちは、それをそのまま目的と考えてよい。この場合は「銀行強盗をなんとかする」だったな。

すこし余裕があれば、「シナリオの目的」を分解して考えてみるのもいいだろう。たとえば、「銀行強盗をなんとかする」という目的は、

・ヴィランズをやっつける
・人質にされた人を助ける
・銀行員がケガをしないようにする
・お金が奪われないようにする
・事件を解決して対策課から報酬をもらう

といういくつかの要素に分解できる。キャラクターの目的を、この段階のものにすることで、より具体性のあるプレイングを書けるようになることもあるぞ。



さあ、キミの目的はどこにある、浦安くん?



ええと……、悪いヤツらをぶっとばしてやりたいけど……、でもやっぱ、人質の救出が最優先かな?


●手段とは?

それでは、その目的を実現するための手段を考えてみよう。「OPから読み取れる状況」と「自分のキャラクターの状況(能力など)」をもとに、あとはアイデア次第だ。イマジネーションをゆたかにして、どんな行動がとれそうか、あるいは、とるべきか、考えてみてほしい。考え方のポイントとしては、

・キャラクターはどんな能力を持っているか(この状況下で活かせそうなのは?)
・キャラクターはどんな性格か(どういう手段を好むだろうか?)

といったことが挙げられるだろう。

また、OPの状況から、それに続くストーリー展開を想像してみるのもいい手がかりになる。たとえば、銀行強盗の例で言えば、銀行強盗は「金を手に入れたら車で逃走する」といったことが予測(想像)できる。車の運転ができるというキャラクターなら、カーチェイスを想定してもいいかもしれない。

ほかに、公式サイトなどから手に入る情報(設定)を役立てることもできる。舞台となる銀行が「聖林通り」に面しているとしたら、その設定を利用できる(銀幕市に関するいろいろな設定は『雑誌社』で調べることができるぞ)。「聖林通り」にはヤシの木が植えられているとわかれば、これを銃撃戦の盾にしたり、ロケーションエリアの能力で有効な他のものに変えるといった行動を思いつけるかもしれない。



上記が、手段を考える手順だ。さあ、浦安くんはどうするかね?



そうだな、俺はムービーファンなんだから、バッキーやファングッズを活用するのがよさそうだ。でも目的は人質の救出だし、真正面から特攻するわけにもいかないよな。そうだ、銀行の裏口からこっそり忍び込んだらどうだろう。俺はけっこう映画に詳しいってことになってるから、昔見た映画で参考になりそうなシーンを思い出せるかも……


<3:プレイングの文章を書いてみよう>



ありがとう、マルパスさん! なんとかプレイングが書けそうです。



そうかね。では、書いてみるといい。



はい! じゃあさっそく……
「人質をとるなんて卑怯なやつらだな!」そう考えて、捕まっている人を助けるために行動します。表玄関から駆けこんで犯人に突撃――したりはせずに、裏口に回り、ドアをドーン!と蹴り開けて登場!してやりたいがそれはやめておく。こそっと忍びこんで……バックヤードは埃っぽいからお約束のハックション、なんてしないぞ。




………………。



……だ、だめですか……?



いいかね、浦安くん。プレイングは、ライターに伝えるための文章だ。一番大切なのは、わかりやすいこと。このプレイングで問題なのは、否定文だね。「〜したりはせずに」「〜やりたいがそれはやめておく」「〜なんてしないぞ」といった否定部分を、万一、ライターが見落としたら、意味がまったく変わってしまうだろう?



そ、そうか……。



プレイングの文章は一読して難なく文意が通ることが何より大切だ。慣れないうちは箇条書きにしたり、ムリにキャラ口調にしないでもいいだろう。



わかりました!



上記のプレイングにはもうひとつ違う問題がある。それは、「やらないこと」のほうをたくさん書いているということだ。それもプレイングのひとつではあるが、どちらかといえば「やりたいこと」のほうを多く書いたほうがいい。これは特に、パーティーシナリオやイベント時の集合ノベルのように、プレイング字数が少ない場合は重要なポイントになるぞ。

同じような理由で、「〜だったら、○○する」「〜なときは、○○する」という仮定にもとづく行動は、その仮定が成立しない場合、採用できない行動になってしまうので、よく考えて書かないとプレイングの字数がもったいないな。



自分がやりたいことをわかりやすく書く、ですね。セリフ形式じゃなくてもいいんですか?



うむ。キャラクター口調でプレイングを書くというのは、PBWでは習慣的に行われることだが絶対のルールではない。そうすることでキャラクターの普段の口調や性格が伝わりやすいという利点はあるが、まずはライターにプレイングの意図が正しく伝わることを優先したほうがいいだろう。



えーと……、だいたいわかったような気がするんで、とりあえず、やってみたいと思います。



そうだな。今は難しいと思っても、やってみれば慣れてくることはたくさんあるだろう。……さあ、あそこに新しい依頼の情報が貼り出されているのではないかね。さっそく、挑戦してみるといい。



はい!




どうかな。すこしは参考になっただろうか?
限られた字数のなかで、自分のキャラクターを思い切り表現する、そんなプレイングを考えることにはPBWの楽しさが集約されている。
これからも、『銀幕★輪舞曲』のシナリオを楽しんでくれ。
では『映画館』で会おう!


→→→『映画館』へ向かう!





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