★ 銀幕市で起こる事件と冒険 ★


●銀幕市の魔法

リオネ 夢をつかさどる神オネイロスの娘であるリオネが、銀幕市にかけてしまった未熟な魔法。それは「夢や願いを現実にする魔法」でした。それがどこでどう間違ったのか、「映画の中の出来事や登場人物が現実に実体化する」結果を生んだのです。映画は、いろいろな意味で「人々の夢や願い」が反映した存在です。その部分に魔法が作用したのかもしれません。

リオネの魔法の効力は、銀幕市全域を覆っています。しかし、この範囲から一歩でも先には、魔法は何の効力も及ぼしてはいません。また、魔法によってあらわれた存在は、この範囲より先に出ることはできず、範囲外に影響を与えることもできません。したがって、この魔法の被害と迷惑を被っているのは銀幕市のみであり、それゆえ外部の地方自治体や国は、銀幕市の窮状に何の助けも行ってはいないようです。

この魔法は、未熟な子どもがかけたものであるので、いずれ消え去るであろうと言われています(オネイロス談)。しかし、それがいつのことになるのかは定かではありません。魔法が失われたときには、映画からあらわれた登場人物たちも、姿を消すと思われているのですが……?

●現実になった映画たち

魔法の効果として、銀幕市では「映画の中で起こった出来事」が現実にあらわれるようになってしまいました。このうち、特に、市民の日常生活に悪影響を与えたり、危険であったりするものを「ムービーハザード」と呼びます。

「ムービーハザード」には、「高層ビルでの火災」や「巨大な竜巻の襲来」「人間をゾンビ化させるウィルスの蔓延」などの致命的なものもあります。しかもそれらは、現実の火災や竜巻などよりも強力で、通常の対策では抗し切れないことがほとんどです。なぜならそれは――「映画になるほどの」災厄であるからです。

また、映画の登場人物が現実に実体化するという事態も発生しています。かれらは「ムービースター」と呼ばれ、今や、銀幕市の新たな住人たちです。ファンタジー映画からあらわれた剣士や魔法使い、特撮映画からあらわれたマッドサイエンティスト、カンフーアクション映画からあらわれた格闘家……さまざまなムービースターがいます。かれらは元となった映画における設定に準じた能力を持ち、現実の風景の一部を、自分の映画と同じものに変えてしまうという力を持っています。

●対策課とプレミアフィルム

銀幕市では、外部からの救援があてにできないとわかると、市役所内に「映画実体化問題対策課」(通称:対策課)を設置しました。

ムービースターやムービーハザードは、それを存在させている魔法の力を失うと、「一巻のフィルム」になってしまいます。これは「プレミアフィルム」と呼ばれ、映写機にかけると、元のムービースターやムービーハザードの軌跡が収録されているのがわかります。これはすなわち「映画が実体化することから起こった騒動が収まった証」です。「対策課」はこのフィルムを買い取ることを告示しています。この事態を収拾するには役所の力だけでは間に合いませんので、そうすることで市民の協力を広く募ることにしたのです。回収されたプレミアフィルムは対策課で厳重に管理されています。

対策課は、町で起きる事件について情報を集め、また、市民に提供しています。夢の神の娘リオネは、今は市長の親戚の女の子という触れ込みで、市で暮らしていますが、彼女はムービースターやムービーハザードが関連した事件の発生を予知する能力を持っています。リオネが事件の発生を予告すると、対策課を通じて事件解決のための依頼が出されます。

●ムービースターの自治組織とヴィランズたち

ムービースターたちは、魔法によって生み出された存在であるため、銀幕市の外に出ることはできません。かれらがいつまで存在し続けられるのかも定かではありませんが、その日まで、ムービースターたちはかれらなりに、銀幕市のよき住人であろうとしています。現在、市では、人間に混じってムービースターたちが一緒に働いたり、学んだり、暮らしたりする姿が普通に見られます。

しかし、あくまでも人間とは違う存在のムービースターです。ムービースター同士も、互いにまったく異なっています。そんな中で、ムービースター同士や人間との間にトラブルが生じることもあります。そんな問題を処理するために、ムービースターたちが自治組織のようなものをつくっていることがあります。ムービースターの中で人望のあるもの(または、そういう設定であるもの)が、そうした組織の世話役となって、なにか困ったことが起きると解決にあたります。ヤクザ映画の親分役のムービースターである竹川導次などはそのよい例でしょう。かれらから、他のムービースターやムービーファンに、問題解決のための依頼が出されることがあります。

一方で、ムービースターの中にはその本能や設定のおもむくままに、悪事をはたらく「悪のムービースター」もいます。かれらは「ヴィランズ」(悪役の意)などとも呼ばれ、銀幕市に害をなす存在であるため、かれらが事件を起こすと、対策課やムービースターの自治組織から事態収拾のための依頼が出されます。ギャングやマフィア、モンスター、エイリアンなどが代表的なヴィランズです。




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