★ 銀幕市の住人たち ★


●ムービーファン

夢の神オネイロスは、銀幕市の住民たちに、娘リオネの魔法から生じたトラブルは自分たちで解決してほしいと言いました。神さまはなにかと多忙で、わが子の不始末の結果ながら、彼がいちいち対応していられないのです。そのかわり、オネイロスは銀幕市の住人の中で、特に強い「夢みる力」を持つ人々に、騒動を解決するための力を与えてくれました。それが不思議な魔法生物「バッキー」であり、バッキーの飼い主に選ばれた人を「ムービーファン」と呼びます。

かれらはバッキーの飼い主となってしまったことを除けばまったく普通の人間ですが、潜在的に強い「夢みる力」を持っています。ムービーファンは映画フリークや映画関係者に特に多いようです。かれらは自分の意志とは関係なく、ムービーファンになってしまったわけですが、銀幕市の騒動を解決できる力(=バッキー)を持っているため、いやおうなしに、事件に巻き込まれたり、それに立ち向かわねばならないはめになったのです。

●バッキー

バッキー 「バッキー」は魔法によって生み出された生物で、ムービーファンは一人につき一匹ずつのバッキーを飼育しなければなりません。バッキーはバクに似た姿をした、体長15〜20センチ程度の動物です。体色にはいくつかの種類があり、おもにパステルカラー+白です。毛は生えておらず、皮膚はやわらかいゴムのような触感です。言葉を話したりはしませんが、人語は解しているような節があります。鳴き声もほとんど聞かれませんが、強く押すとヘンな声を出すようです。

かれらは、「夢を食べる」生き物です。すなわち、夢が現実になることで存在している「ムービースター」や「ムービーハザード」を食べてしまうことができるのです。一匹のバッキーは、一度に「ムービースターひとりぶん」かそれに相当するだけの「ムービーハザードひとつぶん」の夢を食べてしまうことができます。満腹になるとお腹がぽっこりふくらみ、24時間経たないとそれ以上の食事はできません。ムービースターや映画の中の出来事を消化すると、バッキーはそれを「プレミアフィルム」にして吐き出します。このバッキーの性質を利用することが、普通の人間がムービースターやムービーハザードに立ち向かう唯一の方法なのです。

バッキーは、物理的な衝撃にはとても弱く、ちょっとした打撃で、すぐにころんと気絶してしまいます。そのため、ムービーファンは、バッキーが確実に食事ができるタイミングまでは、バッキーを守ってやらなければなりません。

ムービースターや映画の中の出来事を食べていないあいだ、バッキーは夜眠っている飼い主の見る夢を食べて生きているようです。バッキーは夢以外のものは口にしません。それ以外に、特に世話をする必要はないようで、その生態については謎に包まれています。

●ハングリーモンスター

バッキーは特にエサをやらなくても、勝手に飼い主の夢を摂取して生きています。しかし、なんらかの事情で、長期間、饑餓状態におかれたバッキーは、かれらを存在させている魔法が暴走して、まったく別の存在――危険な「ハングリーモンスター」に変質してしまうのです。一度モンスターになってしまったバッキーを元に戻すことはできません。

ハングリーモンスターは元のバッキーの原型をとどめておらず、サイズも巨大(バッキーに比べての巨大ですから、だいたい人間大くらいです)で、醜悪な怪物の姿をしています(形状はさまざまです)。かれらは衝動の赴くままに、ムービースターを補食する、いわば「ムービースターの天敵」です。ハングリーモンスターがあらわれると、ムービースターたちから、退治の依頼があるかもしれません。

●ムービースター

銀幕市の住人の、新たな隣人「ムービースター」は映画の中の登場人物が実体化した存在です。元の映画の設定に準じた姿と能力を持ち、なおかつ、普通の人間と同じく人格や感情を持っています。

ムービースターは、1日に1度だけ、自身から直径500メートル以内の空間を、最大30分間、自身の「ロケーションエリア」に変えることができます。ロケーションエリアでは、区域内の風景や人々の服装が「ムービースターの元となる映画の世界」と同じものになります。時代劇のムービースターのロケーションエリアは江戸風の町並に、SF映画のムービースターのロケーションエリアはどこかの惑星風に見えてしまうのです。またムービースターは望むなら、エリア内の人やものにエリアの設定に準じた能力を与えることもできます。西部劇のムービースターのロケーションエリア内では、仲間のムービーファンたちもガンマンとして活躍することができるでしょう。

複数のムービースターが同じ地域にロケーションエリアを展開した場合は、おのおのが混じりあった奇妙な世界になります。

●その他の住人

銀幕市には、もちろん、ムービースターでもムービーファンでもない人々もたくさん暮らしています。そうした人々を、特に区別して「エキストラ」と呼ぶこともあります。また、神さまの娘であるリオネのような、特殊な存在が、他にもこの町にいるかもしれません。




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