―――3月、出会い、別れ、新生活への準備の月…と、いうのは日本だけで、日々新たな境遇に立たされる羽目になったものや、あるいは新たな世界での生活をはじめるものが入れ替わり出入りする世界図書館ではそういう季節感などは関係ないだろう …とはいえ、銀猫伯爵との会談も終わり、ターミナルにも新たな風が吹こうとしている中…やはりこの店は無関係で 『……と、いいますか、2月は短かった気がしますわね光子様』 「あー、そりゃまあ、下旬の下旬にスレッド立てたからねぇ」 『い、いえ、そういうメタ話をしたわけではなかったのですが…』 些か気まずい雰囲気ながらも、従業員の使い魔シャーロットと、店主の魔女瀬尾光子は優雅にティータイムを楽しんでいた 『…しかしあいも変わらず家計は火の車ですわ…こんな激動の時期にまで仕事をサボれるだなんてほんと神経どーかしてますわね光子様』 「いやいや仕事こなしてへまやらかす奴に入られたって邪魔なだけだろ、第一組織に属しているが組織の犬になったつもりはないんだよあたしは」 …この不遜さ、主より紹介され1,2年ほどにはなるが、この女が誰かの為に働いている所などまるでみたことはナイ、全てが自分の利益に繋がらないと彼女がその重い腰をあげることはナイのだ、そんなことはとうの昔に分かりきっているものの… 『…はぁ、人間のクセにどうしてこうも情が薄いんでしょうこの人は…もう少し情に厚い人ならまだ働かせやすかったものなのに…』 使い魔は使われることが本分…確かに蹴っ飛ばされたりぶん殴られたりしながらこき使われてはいるが、それもやりがいとは程遠いものだ、というか別に私でなくとも、と、考えたことは一度や二度ではない、どうせならもう少しやりがいのある…そう、冒険がしたいのだ、しかしそんな彼女の意志を一度だって理解しない光子はやはりというか… 「……あー、そうだ、そろそろ商品しまいこむスペースも減ってきたから、いくらか倉庫に放り込んどいとくれ、あたしは店番しとくからよ」 …やる気のかけらもなく、魔術書を読み始めるのだ、しかも意識だけはしっかり向けてるのか、サボっていたら、アレコレされる…結局彼女には従うほかないのだ、それが使い魔の宿命であるが故 『……はぁ、どこか私を強引に連れ去ってくれる素敵な王子様的な魔導師の方が現れないかしら…』 …故に、こんな悪魔らしからぬ夢を見てしまうのも無理はないのだ、というのが彼女の言い分なのであった |