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[87] 愛しのきみへ
・・・どうしよう
ハーデ・ビラール(cfpn7524) 2014-04-30(水) 21:23
始まりがあれば終わりの時間も来る。
ロストナンバーが不老でも、病や怪我を得ればやはり終わりの時間はやって来る。
それが分かっていたから、最後の時までタルヴィンと2人だけで過ごしたかった。

引きこもってから1年と数カ月が過ぎた。
自分でも2年くらいだろうと思っていたから、それほど感慨は湧かなかった。
猫は家に付くという。
死期を悟ると死体を見せぬために出ていくのだと言う。
猫の彼よりも、自分の方が猫のような行動をしているのがおかしかった。

湖に向かってのんびりと歩く。
そう言えばこの前、チェンバーの中に雨が降った。

虫の声と鳥の声がする。
水があって、緑がある。
今なら彼1人でも、ここで生活できるかもしれない。

いや、それは只のつまらない私の夢想だ。
彼1人で世捨て人のように生きてほしくはない。
私の腕の中の彼はとても温かかった。
彼がまた誰かの温かい腕の中で憩う事を、私は切に願っている。

体内のシリンダーの駆動音が煩い。
頭の中が金属でガンガン殴られているように痛む。
ふと鼻の下に手を当てたら鼻血が出ていた。
何となく笑いたくなった。

湖のほとりで、考えながら手紙を書いた。


どうやら終わりの刻が来たらしい。
今まで本当に楽しかった。
一緒に居てくれたことに、とても感謝している。
私の事は探さなくていい。
いつも心は君の傍に居るから。

ありがとう。
愛している、愛している、愛している…これからの君の生に幸が多からんことを。


トラベラーズノートを閉じて立ち上がり、そのまま湖に倒れ込んだ。

機械の身体は湖底に沈む。
湖面に煌めく光が、とても綺麗だと思った。

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