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[86] 冬城◎時刻表
冬城カナエ(wdab2518) 2012-05-30(水) 16:29
こんにちわ冬城カナエです。

予告が出来る時に、こちらに掲示させていただきます。
シナリオのオープン日時、プラノベの窓開けなどを予告できますが、企画シナリオの受託については言及できませんのでご了承ください。
[240] 予告ノベル+お知らせ
冬城カナエ(wdab2518) 2013-06-17(月) 19:48
~シナリオ「発・火・点」のその後~

 インヤンガイのホンサイ地区にはランパオロンというカジノがある。天へと昇ろうとする龍のモニュメントが目を引く建物だ。
 オーナーのジェンチンは元探偵で、底辺から成り上がったインヤンガイの成功者の一人である。ロストナンバーたちとも多大な関係を持つ彼の一味は「ランパン(藍幇)」と呼称され、同じ地区に存在する数多の犯罪組織の連合体「虹連総會」の中でも一目置かれている。
 昨日、総會の名だたるメンバーが揃い大きな葬儀が執り行われた。彼らの跡取りであった幼い少年や少女たちが無残に殺されたからだ。敵はリィ=フォ率いる武装組織フォドウ。数日後、その報復としてのフォドウ掃討作戦が始まるという。
 総會の中でも若手であるジェンチンは、悲嘆にくれる“先輩がた”の代わりに葬儀を取り仕切った後だった。
 彼は疲れていた。
 彼の娘リウリーは難を逃れていたが、ジェンチンは疲れきっていた。

 その夜、彼は明かりを落としたカジノフロアに居た。今日は営業日ではないのか、他には誰もいない。
 ジェンチンは窓に最も近いテーブルに陣取り、独りで酒を飲んでいた。ショットグラスの中身は透明な白酒だ。飲みながら、右手は花瓶型の機器に触れている。それはホログラム装置で、黒髪の女性や幼い少女の様々な姿が現れては消えていく。
 ホログラムをぼんやり眺めていた彼は、ふと人の気配に気付きスイッチを切ろうとした。が、間に合わず、諦めて来訪者を見る。
 奥の闇から現れたのはツァイレンだ。彼が数回、手を借りたロストナンバーである。
 失礼する、と武道家は歩いてきて、テーブルを挟んだ向こう側のスツールに腰掛けた。
 先日の作戦で負傷した傷はまだ癒えていないはずなのに、彼の所作はそれを微塵も感じさせない。
 ジェンチンは相手の目を見、その冷たさに苦笑いした。今まで、彼らはお互い友情のようなものを感じていたはずだった。二人は不思議と気が合ったのだ。
 しかしツァイレンの目は、もうすでに友人を見るものでは無かった。
「もう傷は平気なのか」
「ああ」
「飲むか」
 断られるだろうと思えば、ツァイレンは無言でうなづいた。ジェンチンはもう一つショットグラスを持ってくると、白酒を注いで相手の方へ押しやった。自分のグラスにも注ぐ。
 そうしている間、ツァイレンはホログラムの少女に視線をやっている。言うまでもなく、ジェンチンの娘リウリーの姿だ。
「彼女に怪我がなくて良かったな」
 ああ、と静かに答えるジェンチン。
「ひとつ聞きたいことがある」
 とはいえ、ツァイレンの声は冷たかった。彼はいきなり本題を切り出した。
「君は、食肉工場の作戦の前、すでにリィ=フォの居場所を知っていたのか」
 ジェンチンは苦笑し、グラスの中の白酒を一口で呷った。
「直球だな」
「質問に答えてくれ」
「知ってどうする?」
「君が、彼に捕まっていた女子供を助ける気があったのか知りたい」
何しろ、とツァイレンは続ける。「私がフォドゥに潜入し、敵であるダーヨウを守ったのは、彼ら虹連総會の子女たちを助けるためだったのだから」
「──知ることができる立場だったよ」
 ジェンチンは諦めたように言う。
「あっちの女子供たちも助けてやりたかったが時間が無かった。俺たちは食肉工場の方にかかりきりだったからな」
「なるほど」
 ツァイレンは頷いた。
「そういう論旨で弁明をするわけか。虹連総會の連中も納得するだろうな。リウリーはリィ=フォの元には送られず、“たまたま”あの工場にいただけ、か?」
 ジェンチンは視線を白酒の杯に落とすだけで、何も答えない。
「君はダーヨウと取引をした。リウリーひとりを助け出すために」
 静かに弾劾を始めるツァイレン。
「狡猾なダーヨウはリィ=フォと反目し、フォドウから離脱したがっていた。私には分かる。そこへ、君がつけ込んだ」
「ずいぶんな言い方だな」
「君は、あの時ダーヨウを助け、暗闇から我々ロストナンバーを撃ったんだ」
 淡々と続けるツァイレン。
「大方、リウリーの閉じ込められていた冷蔵庫の開錠コードを聞き出した後、ダーヨウを殺したんだろう。口封じのためだ。そして、君は何食わぬ顔でヌマブチにコールした」
 ジェンチンは、つと目を上げツァイレンを見た。そこには避難の色も何も無い。ただ、強い光が宿っているだけだ。
「この世界で生き残るのは大変なことだ。君が非情にならざるを得ないのも分かる。しかし私は君の裏切りを許せない。君が我々ロストナンバーを騙し、成し遂げたのは自分の娘を助けたことだけだ。他に捕まっていた女子供を救える立場にいながら、君がそれを見殺しにしたことが許せない」
「救える立場だと?」
ジェンチンがようやく割って入る。「あの状況を見ただろう? リィ=フォは最初から虹連総會の跡取りたちを殺すつもりだった。俺が何もしなければ当然、リウリーも殺されてた」
「ダーヨウと取引する時間があれば、リィ=フォを討てたはずだ。君は──」
一呼吸置いて、ツァイレン。「虹連総會の他のマフィアたちの跡取りが消えるのは好都合だと思ったんじゃないのか? 他の組織が弱体化すれば君のランパンは安泰だ。後はリウリーだけ助け出せばいい──」
 レン、とジェンチンは低い声で断罪者の名を口にする。
「俺を怒らせるな」
 ツァイレンは微動だにせず、じっと相手の目を見据えた。
 ジェンチンも視線を外さない。
 虎を三本の指で殺す男と、天に昇ろうとする青い龍を持つ男は、お互いに全く譲らず強い視線を戦わせる。
 数秒後、沈黙を破ったのはジェンチンだ。
「──あの子は俺の全てだ。俺はリウリーが殺されるかもしれない状況で、最善を尽くしただけだ」
「リィ=フォはたぶん生きてるだろうな」
 しかし、ツァイレンはがらりと話題を変えた。
「掃討作戦は3日後に始まると聞いた。今度はフォドウに属する女子供たちが殺される番だ。それが終わるまでに君はリウリーを誰かに託すといい」
「どういう意味だ?」

「作戦が終わるまでに、私が君を殺すからだ」

 目を見開くジェンチン。言葉も出ない彼を見、ツァイレンは音もさせずに立ち上がった。
 そして別れの挨拶も無しに彼は静かに立ち去っていった。
 ジェンチンも立ち上がったが、何も声をかけることも出来ずその背中を見送る。
 武道家の姿は闇に溶けて消え、後にはテーブル上の白酒の杯だけが残った。
 力無く、スツールに腰を落とすジェンチン。手を付けられていないグラスをじっと見つめる。
 ツァイレンは、これを飲む気があったのだろうか──。
 ジェンチンは自問自答する。ツァイレンは自分と話すことで、今後の衝突を避ける道があると思ったのかもしれない。どこか、このランパンのジェンチンの良心に期待を抱いていたのかもしれない。
 そこまで考えて、何度目かの苦笑が漏れる。良心? そんなものどこに仕舞い込んでしまったか、自分でも思い出せない。
 もうツァイレンと酒を酌み交わす日は来ないだろう。永遠に。
「残念だな」
 ぼつりと呟いて、ジェンチンは相手の白酒のグラスを掴み、一気に飲み干したのだった。
 

 * * *


(WR冬城より)

次回、インヤンガイにおける通常または長編シナリオを予定しています。

内容は、マフィア連合体である「虹連総會」が、武装勢力である「フォドゥ(過斗)」の拠点を叩く作戦に関わる物語です。

虹連総會の大物たちは、自らの跡取り息子や娘を殺されており、フォドゥの者と見れば非戦闘員であろうとも一人残らず殲滅する作戦を組んでいます。

今までロストナンバーの皆さんに関わってきた、カジノ・ランパオロンのオーナーであるジェンチンも掃討作戦に加わります。
(経緯は企画シナリオ「発・火・点」に)

このフォドゥ殲滅作戦に平行して、NPCの武道家ツァイレンは、この状況を作り出す一翼を担ったという主な理由で、ジェンチンを殺害しようとしています。

いかにフォドウの虐殺を防ぐかというストーリーがひとつ。
そしてジェンチンの暗殺を阻止するのか、あるいはツァイレンを手伝うというストーリーもひとつ。
解決の難しい困難な話になりますが、ご興味のある方のご参加をお待ちしております。

また、より良いご提案があれば、お声掛けください。
物語上は3日後ですが、シナリオをリリースするまでに、ひと月ほど間を開けさせていただきます。
[255] 予告
冬城カナエ(wdab2518) 2013-07-29(月) 21:05
通常シナリオを2本、7/31または8/1にリリースいたします。

【烟・火】龍を殺す君子
【烟・火】瑠璃色の氷
 +α

以上。詳細は公開後に。

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螺旋特急ロストレイル

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