オープニング

 ナラゴニアの白永城の女主人である白百合からお茶会への招待が世界図書館に届いた。
 彼女が奇妙なお茶会を開いて、ロストナンバーを招くことはわりと有名だ。しかし、今回の招待カードにはたった一言だけ

『ミダスよ、お前の耳はなんの耳? 問われたとき、口を噤ませる賢者をテーブルに求めます』

 ロストナンバーたちが不審がるのにリベルは淡々と助言を与えた。
「ミダスとはすべてを黄金に変えてしまう王のことです。あまり知られていませんが、ミダスはその能力をアポロンに授けてもらう際、耳がロバになってしまったんです」
 それでようやくロストナンバーの何人かは童話のことを思い出した。
「王様の耳はロバの耳……だれにも秘密がある、その秘密を信頼するゆえに教えるならば、必ず守りとおさなくてはいけない。言えばその行いは己に返ってくる、そういうお話だったはずです。……つまり、今回の茶会にはなにか含みがあるが、他言無用。それを守れる方のみ茶会に来てほしいとのことでしょう」

 ★

 白一色の白永城の、百合が咲く庭で白百合はロストナンバーたちを歓迎した。
ロストナンバーたちが気になったのはその席にユリエスがいることだ。ユリエスは俯きがちにロストナンバーを一瞥したあと顔を伏せた。
 振舞われる美味な紅茶と御菓子。
 つつかなくお茶会は進む。
 ロストナンバーたちは白百合がいつ何を言い出すかを待っていたが、彼女は一向にしゃべる気配はない。
「……今回のお茶会は、私が白百合さまに頼んだんです」
 不意にユリエスが口を開いた。
「あなたたちに、頼むのは不本意ですが……白百合さまには、これ以上の手もないと……私も、そう思います」
 深刻な顔でユリエスは俯きがちに言葉を紡ぐ。このお茶会の目的がようやく語られるのにロストナンバーたちは静かに耳を傾けた。
「この場を借りて、私はあなたたちに依頼したいことがあります。受けていただけるでしょうか? ……ひとつ、先に条件をあげるとこの依頼中は、調査する相手、そしてリオードルにはばれないように、隠密な行動をお願いします」
 依頼って――ロストナンバーが顔をしかめるのにユリエスもまた苦い顔だ。
 くすっと白百合が笑って小首を傾げた。
「つまりね、誰にもばれないように動いてほしいのよ。本当はね、こういうお願いってリオードルちゃんにするべきなんだけど……ユリエスちゃんがわざわざ私を頼って、あなたたちをこういう形でお招きして、お願いしている理由、わかるかしら? 王様の耳はなんの耳だったかしら? それを口にしない賢明な方がここに集まっていると思うわ」
 ナラゴニアの有権者同士、いろいろと複雑な関係にあるらしい。とくにユリエスとリオードルの関係は世界図書館の者から見てもあまり良好とはいいがたい。
 つまり、これはお茶会という名目の非公式なユリエスからの依頼ということになる。
「調べてほしいのは、かつての私の部下だった、ルシフェル。黒髪に美しい目をした、黒翼を背に持つ男です。彼とともにあと二人、エルとルミナという二人の女性なんですが、ここ最近の行動に不審なところが見られるんです」
 ユリエスはロストナンバーたちが沈黙を守るのに、頭のなかである程度まとめていた説明をすらすらと口にする。
「ちょくちょく住まいを出て大量の食料品を持って樹海に行く姿が目撃されています。とくにルシフェルはナラゴニアの商人通りでふらふらしているのが、そこでロキと男と接触しているという証言がありました」
 とたんに白百合の顔色が変わった。
「あの男、まだ生きていたのね。久々にその名を聞いたけど、本当に、名前すら虫唾の走る!」
「知っているんですか? 白百合さま」
「むかしの、古い知り合いよ。……彼についてなら多少語れるわ。見た目こそ紳士だけど、中身はろくでなし! 能力についてはそうね、使い魔がいるわ。名前はフェンリル・ヘル・ヨルムンガンド、狼の肉体に蛇の胴、姿を隠す能力があるのよ。彼自身も、同調透過能力――自分と触れているものは自分が感覚すればなんでもすり抜けられるの。性格は退屈嫌いの妄想家だけど大変な狡猾な面もあるわ」
「つまり、かなり危険だということですか? 出来れば、調査の結果、黒だとわかればそのアジトは潰して、証拠類、犯人は引き渡しをしていただきたいのですが」
「大人しく捕まる人たちはこそこそと企んだりはしないわよね? 捕まえるとき、ちょっと大変かもしれないわよ。それに樹海に行っているのがひっかかるのよね」
 白百合は憂いをこめた目を眇めて小さく頷いた。ユリエスも、そしてこの場にいるロストナンバーたちも目に見えない危険が、真後ろにまで迫っているのを感じとっていた。
「……危険な、依頼になると思います。ですが、お願いします。犯人は出来れば捕獲してください。そして、彼らが何をしようとしているのか、もし危険であるとわかれば確実に潰した上で、証拠を持ってきてください」


「……出来れば、私は世界図書館の方には頼りたくなかった」
 ぽつりとユリエスは口にする。
 その瞳に浮かぶ苦悩の影は、ナラゴニアと世界図書館が和解し、話し合いをしたときからずっと存在しているものだ。
 話し合いの席で、ユリエスは組織が人質のような扱いを受けること、園丁を殺したことに対する謝罪もなければ、むしろ、挑発されたことに対する蟠りはまだ残っていた。
 一時は住まいに引きこもっていたが、それもつい最近、世界図書館でも、彼のことを気にしている者たちの働きによってまだ複雑な感情が抱えているとはいえ、こうして表に出るようにまではなかったのだが――やはりユリエスにとって園丁は神そのもの。そしてそれを奪って世界図書館は許し難い存在だ。恨むな、というほうが無理なことだ。たとえ時間がいくら進み、自分のことを気にかけてくれる者がいたとしても、すぐに切り替えるなど出来るはずもない。
「ユリエスちゃん」
「ルシフェルがなにを企んでいるのかはわかりませんが、私には、少し、彼の気持ちがわかる気がします……白百合さま、あなたがお茶会を私のために開いてくださったとき、ずっと、部屋のなかに閉じこもってはいないとおっしゃいました。……ただ、この気持ちはどうしようもないのです……私に、リオードルのような力があれば、私はきっと何かしていたでしょう。この気持ちのままに振る舞うことだって……」
 ユリエスの口から漏れる苦悩に白百合はため息をついた。
「心は自由よ。まるで花みたいにね。虫をひきつけ、惑わし、勝手に散っていく。ただね、わたくしがこうして茶会を開いて、あなたに彼らに依頼するように進めた理由をちょっとだけ考えてごらんなさい」
「……白百合さま」
「ノラちゃんは時間がすべてを解決するといっていたけれど、ユリエスちゃんや今回の事にかかわっている翠の侍従団にとっては、そうではなかったようね」

 ★

 深い木々の囁き。
 湿りとじめついた暗闇の奥。
 その場にいささか不似合な黒タキシードにシルクハット姿の紳士と目麗しい若者がいた。

 ああああ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぅうううううううううう

 悲鳴のような雄叫びをあげた白い、それは不満と憤怒をこめて鉄に体当たりを食らわせる。何度も軋むのに耐えきれず、天井の小石がぱらぱらと落ちる。
「ずいぶんと大きくなりましたね。捕まえたときは、一メートルほど……針がないため、操作できないという欠点はありますが、この凶暴さなら、あともう少し育てば」
「三メートルではまだ幼いくらいですよ? せめて十メートルはないと」
 紳士は微笑んだ。
「しかし、それまで檻が持つかどうか」
「ご安心なさい。そのためにも、私と私の友人がいるのですから。しかし、この姿、実にすばらしいと思いませんか? 額には角、その姿はまさに白馬……穢れを嫌い、すべてを正す聖なる姿。それが、あなたの手にあるということは、ルシフェル、あなたたちの行動は正しいといっているようなものだ」
 紳士の言葉に若者が励まされたように笑う。その瞳に浮かぶのはたった一つの執念。
「そうだ。園丁さまがなくなったのは、世界図書館があまりにも卑劣だったからだ! 戦争とはいえ謝罪もなく、むしろ、我々を、そして園丁を侮辱した! あの言葉、あの態度、忘れはしない! くくく、復讐してもいいというなら、ぜひ、お前たち全員を殺してやるっ」
「……園丁さまね、」
 紳士は含むように呟いたあと目を細めて傍らにいる友人の頭を撫でた。
「あなたたちのエリーニュースに幸福を。本来持たらざる者にこそメガイラは微笑むのですから」

品目シナリオ 管理番号2853
クリエイター北野東眞(wdpb9025)
クリエイターコメント ユリエスさんからの、内緒のお茶会を通してのご依頼です。
 今回の前半のメインは調査になると思います。ただし、これは隠密がつきます。
 ナラゴニアを出歩くのは自由です。基本的にターミナルで同じなのでみなさんが自分から「世界図書館」だと名乗らなければ、住人だと思われるでしょう。
 ただし調査にいくつかの行動を起こす必要があります。今回の調査対象であるルシフェル、リオードルにばれないように工夫してください。
 具体的に街のどこを探したいか、どのように調査するか、ばれないための工夫など具体的にプレイングにはお書きください。

ロキについては白百合が多少ならば答えてくれるかもしれません。基本的なことはOPで語っております。
ルシフェルについてはユリエスに聞けばある程度は応えれると思います。

 調査結果上、捕獲してほしいまでが依頼が依頼ですが、大人しく捕まることはないと予想されます。
戦闘にたいしての備えもしておいてください。
翠の侍従団についてはたいした能力はありませんが、それに協力していると思われるロキについては同調透過能力(自分プラス触れているものにたいして感覚した物質を通り抜ける) 使い魔は姿を隠す能力がありますのでくれぐれも注意ください。
OPでちらりと出てますが、それ以外にもなにかいるようですね。そいつも注意したほうがいいです。

参加者
村崎 神無(cwfx8355)ツーリスト 女 19歳 世界園丁の右腕
ファルファレロ・ロッソ(cntx1799)コンダクター 男 27歳 マフィア
榊(cdym2725)ツーリスト 男 27歳 賞金稼ぎ/賞金首
ルン(cxrf9613)ツーリスト 女 20歳 バーバリアンの狩人
黄金の魔女(chen4602)ツーリスト 女 21歳 魔女
百田 十三(cnxf4836)ツーリスト 男 38歳 符術師(退魔師)兼鍼灸師

ノベル

「お前ら馬鹿か」
 着崩したスーツに癖のないさらさらの髪は動くたびに緩く波打つ、銀縁眼鏡越しに鋭利な刃物のような鋭い目をしたファルファレロ・ロッソはユリエスを睨んで吐き捨てた。
「館長殺しに刺客を送り込んだのは旅団だ。それが成功したとして詰られて詫びるのか。殺される覚悟もねえのに殺しにかかってんじゃねえよ」
 ロッソの言葉に同じテーブル席に腰かける、名の通りに眩い金色が目を引く黄金の魔女がはじめに反応した。
「待ってちょうだい。私達がそちらにしてきた事、貴方がたがこちらにしてきた事、それらに関して私は口出しする気は無いし、口出しする資格も無い。ただ、信頼されているからにはその信頼には必ず応えるわ。ミダスの名に掛けて。……ねぇ、ファレロさん?」
「あぁん? 俺は俺のしたいようにするだけだ」
 ハッとロッソは傲慢に笑う。
 ロッソの横に腰かけている着崩したスーツ姿に、一束に髪の毛をくくした姿の涼しげな目元が印象的な榊は口にこそ出さないが、同意の意味を込めて微かに笑った。
 戦争で相手のトップの狙うのは基本中の基本。互いにそれをやっただけのこと。謝罪など必要は感じない。その点ではロッソの意見は正しい。
 ユリエスを見ると下唇を噛んで視線を落としている。
「ユリエス」
 村崎神無が気遣わしげに見つめる。
 すっとそこに白い腕が伸びた。見ると白百合の部下である白鶫が礼儀正しい笑みを浮かべてケーキと紅茶のおかわりをテーブルに置く。
 野生獣のような無駄のない肢体を持つルンは甘くふわふわのケーキに心が動かされてぱくぱくと食べる。険しい顔の百田十三はあえて沈黙を守った。
「原初の園丁を殺った事は後悔してねえ。けどお前が俺を憎むのは勝手だ。気が済むまで憎め 殴りたきゃ殴れ」
 何も言わないユリエスにロッソが小馬鹿にした笑みをこぼした。
「俺は開き直ってるんじゃなくこれが地だ。自分の意志で引き金を引いた。だから詫びる気はない。悪いと思ってねえのに口先で詫びたら殺した奴に失礼だろ」
「あら、あなたにはお会いしたいと思っていたの。こうしてお茶会にきてくれてとっても嬉しいわ。あなたはとっても潔いと思います」
 甘い笑みを浮かべる白百合をロッソが睨みつけた。
「あぁん、なんだよ。てめぇが答えてくれるっていうのか?」 
「あなたは、とても酷なことを口にしたわ。殴れというけど、それは力がある人の、強者の言葉よね……ユリエスちゃんたち翠の待従団は、特殊な力や秀でた力が一切ないの。たぶん、あなたよりも弱いでしょうね。力がないものが、ある人にどうやって戦いを挑めというのかしら?」
「……なあ、原初の園丁ってどんな奴だったんだ。どこにンな心酔してんだよ。本当に疑問なんだ。他人を信じるとか崇めるとか俺には無縁の感情だからな、あんたもそのクチか?」
「わたくしは神を信仰しないわ。けれどユリエスちゃんはね、神様を崇めることが当たり前の世界で、生きてきたの。……あの人は……あなたは張り合いがなくてがっかりだと笑ったシルウァヌスはこの世界を作った方よ。その意味がお分かり? あの人は、このナラゴニアを作り、護り、導いた。命に差なんてないというけれど、実際はあるの。あなたにナラゴニアを見てほしいと思うわ。もちろん、今回のことだけではわからないというならば、いくらだって知ってもらうために協力します」
 白百合は鈴のような声が笑う。
「ファルファレロ・ロッソ、あなたの知らないと口に出来るのは尊いことよ、誇りにしなさい。ですから、簡単に聞いて終わりにしないで、自分でお知りなさい。わたくしはあなたを歓迎します。あなたが知った上で、どういう感想を抱くか、聞かせてちょうだい」
 ロッソの自慢の透明色の眼鏡のレンズとの奥にある瞳はとても無垢だ。何も知らない子どものように。
「わたくしはナラゴニアが大好きよ。だから観光にきてくれると嬉しいわ。さぁ、おいしい紅茶と御菓子があるわ。うんと食べてね」
「甘い菓子はもう十分だ。まぁ、復讐はな、よくある話ちっちゃ話だ。別に、ロッソのことだけ責めてるわけじゃないんだろう? 世界図書館全体に対してあいつらは恨んでる、そりゃ、理屈とかじゃないだろ」
 皿の上にあった狐色のスコーンをきれいに食べつくした榊は本題を切り出した。
「ルシフェルの住まいは? どんな性格なんだ?」
「住まいは私と同じ、ロドン宮殿に、翠の待従団はそこで園丁さまとともに生活して、身の回りのことをさせていただいています。ルシフェルはそうですね、最近は髪の毛を染めて、どこか雰囲気が変わりましたがとても繊細で、気遣いの出来る男です。ただ、園丁さまの死からときどき思いつめることもあったようです。私もあのころは、荒んで」
「私が以前、ルシフェルに会ったときと容姿が変わっているのは、そのせいなの?」
 神無は以前、ルシフェルと会っているが、ユリエスが説明したものと若干の違いを感じてひっかかっていた。
「ええ。染めたようです。それから少しずつですが、ルシフェルは塞いでいたのが落ち着いてきて、むしろ、明るく積極的になったようなので」
「内心のもんが姿の変化にもあらわれたってことか」
 榊は目を細めた。
「ルシフェル、以前、会ったときは優しい人だったけど」
「俺は驚かねぇな。むしろ、黒翼いったな? それ、たぶん、矢部のときに見てる」
 全員の視線が榊に向いた。矢部というのは以前、樹海に隠れて世界図書館に挑んだ好戦的な旅団の残党で、榊が倒した相手だ。
「その話、詳しく話してくれないか」
 十三の言葉に榊はかいつまんで矢部のときのことをすべて説明した。戦いの末にちらりと見た黒翼、視線を思えばあれはルシフェルだった可能性はある。
「協力者だった可能性もあるよな、復讐したけりゃ使えるもんは何だって使うだろーし」
「あの、白百合、教えてほしいの。ロキって人はどんな人なの? 何者で、どういう立場の人なの? ルシフェルに近づく目的ってなに?」
「それは気になるな。先の説明を聞くかぎりじゃ暇でしょうがねーから退屈凌ぎに手を貸したとかか?」
 榊の言葉に白百合は思案深く笑って紅茶に口つけた。
「そうね、榊ちゃんの推測はあたっていると思うわ。立場ね、そんなものはないわよ。ただ彼は「世界の敵であること」を宿命としている、閉ざす者、終わらせる者、そんな意味が名にあるの」
「閉ざす者、終わらせる者」
 不吉な言葉は口にしたとたんに肌がちりちりと痛むのを感じて神無は拳を握りしめた。
「ま、調査がどうなるかわからんが努力はしてみるよ」
 榊のそっけない言葉がこの場の全員の言葉だった。

「私は、行かないほうがいいと思うの。以前、ルシフェルに会って、顔がばれているから」
 白百合に頼まれてユリエスに会いに行った際に協力してくれたのがルシフェルだ。そんな自分がナラゴニアをふらふらしていては目立ちすぎる。
「何かあればノートで連絡して。すぐに応じるわ。あと、カノン、ルイ、ローゼってルシフェルと親しかったと思う」
 以前のとき知り合った三人についても神無は出来るだけ思い出して、彼らの容貌を伝える。探索にあまりかかわれないぶん、ここで仲間たちの役に立ちたい。
「話を聞けるかもしれない、もしよかったらここに来るように言ってほしいの。話を聞くなら、人目につかないほうがいいでしょ? えっと、いいかしら?」
 神無が恐る恐る確認すると白百合は微笑んだ。
「あなたたちに依頼したのだから、出来る限りの協力と支援は惜しまないわ」
「けど、それいうと俺もな。樹海で見てるのがルシフェルだったら面がばれてんだろなぁ」
 ぼりぼりと榊は頭をかいた。
「俺も、これだと目立つな」
 ロッソが自分の上着を、かるく見下ろすのを見ていて黄金の魔女も自分の姿を気にし始めた。金は不用意に人の目を引いてしまう。
「あら、じゃあ」
 百合がマタタビを与えられた猫のようににまっと笑った。
「変装ね! まぁ、本物のスパイみたい!」
 白百合は両手を祈るように組むと、眼をきらきらさせる。
「やだわ、とっても楽しそう! 白鷺、白鶫、いらっしゃい、この人たちをお部屋に用意して!、衣装はドレス、いるかしら?」
「白百合、あんた、ちょっとずれてるな」
 榊が噴出したのに白百合が首を傾げた。
「え、違うの? ロッソちゃん、ドレス着る?」
「俺はてめぇの着せ替え人形じゃねぇぞ。用意してるから部屋だけか借りるぜ」
「あら、残念ね。みんな、着ればいいのに」
 なんとなく不吉な白百合の好意をきっぱりと御断りして、それぞれ変装を開始した。
 百田とルンはナラゴニアにほとんどきたことがないので普通に出歩いていれば問題はない。
 黄金の魔女は両手の籠手を外して、煙管もパスのなかにしまった。そうすると自分の手が物に触れて大変なことになる可能性はあるが、人目を避けろとの要望には出来るだけ応えたい。細めた紅茶色の瞳で、じっと自分の手を睨みつけて己に対して気合いをいれる。
 榊の場合は、簡単だ。もともと変化している状態なのを少しだけ変えてやればいい。いつものよれた洋服から着物に変更した。ささいなことだが、樹海のときはちらりとしか見られていないならこれだけで印象は全然違うはずだ。
 ロッソは、徹底していた。もってきたシャツとジーンズに着替え、髪の毛もスプレーで金色に染めて、チンピラになる。
 そうして支度をしている間にルンは改めて白百合とユリエスに尋ねた。
「ルシフェルの物、あるか。匂い、覚える」
「それは、さすがに、警戒していても彼の部屋に勝手に入るわけにはいきませんから」
「そうか」
 嗅覚が発達しているルンは、出来ればそれでルシフェルの追跡をしたいと考えていただけにしゅんと俯くが、すぐに顔をあげてにっと笑った。
「調査、出来る。匂い、追える。連絡……狼煙か? 字……って何だ?」
「文字がわからないのか」
 百田が顔をしかめて、腕組みをする。ノートで連絡が出来ると考えてそれ以外の通信機具は持ってきていない。
「一緒に行動したいが、あまり多いとばれる危険性もあるな。それぞれの調査方針もあるからな。よかったら俺が式神を飛ばそう」
「本当か? 助かる!」
「あと、これを渡しておく。いらないなら捨ててくれてもいい。俺の、まぁお節介だ」
 百田が差し出したのは待ち時間の間にテーブルを借りて用意した護法符だ。急だってので人数分しかないが、これがあれば一度だけは持っている者を守れる。
「ありがとー!」
 ルンは嬉しそうに符を受け取る。
 百田の符はその場の全員、調査には関わらない神無にもくばられた。
「一応、もらっとくよ」
「フン、ま、いいぜ」
「ありがとうございます」
 問題は者に触れない黄金の魔女だ。
「気持ちは嬉しいけれど、今の私はものに触れれないのよ」
「そうなると」
 百田に黄金の魔女はにっと唇を釣り上げた。
「私に触れることを許してあげてもいいわよ? 触れた瞬間に黄金になってしまうけれど、どうかしら」
「からかっているのか、挑発しているのか?」
「とんでもないわ。誘っているのよ。……そんな顔しないでちょうだい、あなたの好意、喜んで受け取るわ。パスの中にいれるわ。のせて、ちょうだい。そっと」
 そうして全員の準備が済んだのに街に出向くのを留守番の神無は城の入り口まで見送った。
「神無ちゃん」
「は、はい」
「お茶会の続き、しましょうか」
「けど」 
「時間は進むわ。なにもしないままぼーとしているのもなんでしょう? ユリエスちゃんには紅茶を淹れるようにお願い」
「はい。じゃあ、白百合も」
「わたくしは、疲れてしまったから席を外すわ」
「大丈夫なんですか?」
 白百合は日に当たると肌を焼かれてしまう、先ほどの庭でのお茶会は相当に負担だったのだろうかと神無が心配するとふふと悪戯っ子めいた笑みを浮かべた。
「彼と話したいのでしょ? 後悔しないために、今、いっぱい話してあげて、迷っているから。あなたの声はきっと届くわ。がんばって、神無ちゃん」
 楽しそうに白百合は背を向ける、その横に白鶫が近づいて体を支える。その様子を見つめて神無は拳を握りしめた。
 ユリエスに、最後の言葉を告げたい。

 庭に行くと、白い百合が揺れて甘い匂いがした。ユリエスは慣れたような動きで紅茶を淹れて待っていた。風が吹く。神無の髪を揺らす、ユリエスの髪も。そのなかで二人は視線を交わした。
「白百合さまは?」
「疲れたから、部屋に帰ったわ」
「あの方は、本当に気まぐれですね」
 ユリエスは手持無沙汰に立ち尽すのに神無は思い切って前に歩み寄る。
「ユリエス、聞きたいの」
「はい?」
「私が、憎い……?」
 震える声、けれど視線だけは外さずに。ユリエスは動揺したように肩を大きく震わせた。
「なにを、おっしゃっているんですか。あなたを、どうして憎むんですか。園丁さまを殺したのはあなたではない……私が、私が許せないのは、世界図書館という組織です」
「じゃあ、あなたが私、ううん……あなたの大切な人を直接手に掛けたあの人を殺したら、それで気は済む? 私は何があっても、あなたに手を汚して欲しくない」
 ユリエスは黙っている。それでもじっと神無を見続ける。
「あなたに、闇の側に堕ちて欲しくないの」
 喉がひきつって、痛む。けれど言葉を、無駄であっても重ねたい。
 私もそうだったから、悲しくて、辛いとき、そうだったから――引きこもっていた彼に会いに行った。そのあと、お茶会で話したときユリエスは確かに少しだけふっきった顔をした。けれどやっぱり断ち切れないものがあるのかもしれない。重ねてきた時間があるから、けど、ここから先にも時間がある
「ターミナルにも、心の隙間に付け込んで人を悪魔のように変えてしまう者がいる」
 最近ターミナルで起こった鉄仮面の事件、あれを思うと胸が痛い。
「ユリエス、あなたは彼や……私みたいにならないで」
 神無の言葉は優しく、切実で、折れない剣のように真っ直ぐに突き刺さる。ユリエスは苦しげに俯いて胸を搔き毟る。苦しいと言いたげに。
「私は、なにもできません。私には力がない……何もできなかった……けれど、あなたの言葉はいつも、そんな私に真っ直ぐに届くんですね」
「ユリエス」
 ユリエスは泣きそうな顔をして神無を見つめた。
「そんなこと、ない。あなたは、おいしい紅茶をいれれる、組織の人にも慕われてる……ここに、いてもいい?」
「紅茶が冷めました。淹れなおしましょう」
 ユリエスが背を向ける。神無はゆっくりと椅子に向かった。

 調査を開始した一向はまず街に向かった。
「コソコソと行動している方が余計に目立つわ。別に何もやましい事はないんだし、堂々としてればいいんじゃない?」
「しかしだ、黄金の魔女、俺の幻虎である透明化能力を使ったほうがいいのではないか?」
「そうね。けど、姿を消すことができてもばれてしまう可能性もあるけれど」
「ま、かたく考えず、その場その場で臨機応変にいこうぜ?」
 榊が仲間たちを促す。
「おい、連絡はノートでな。俺には俺で気になることもあるしよ」
 ロッソは手をひらひらとふると一人で調査に向かってしまった。
 また
「高い建物か樹、あれば。バザール一望できる場所。建物なら伏せる。樹なら樹上に隠れる。ルン、狩人。獣を隠れて待つ。任せろ」
 ルンは樹海で生活をしている利点とともに自分の身体能力を駆使して見張り役を買って出た、そのフォローに百田の式神がまわる。
「樹海、水ない。樹海の木は記憶、水要らない。だから前、図書館、樹海の中まで水、引いた。台車で樽、運ばないかぎり、向こうの拠点水不足。匂い以外も跡追える、思う」
「しかし、一人で樹海を移動するのは危険だ。まずはナラゴニアの街での行動を追うほうがいいだろう、俺の式神はルンと行動を共にする、頼むぞ」
 ナラゴニアもターミナルと同じで、何者かの使い魔でない限りは生き物は存在しない。そのなかで式神がうろついていれば誰のものかと気にされてしまうことを百田は気にかけていた。何より飛鼠と飛囀をルンのフォローにまわすことでより効率的に調査が進められると考えた。
 まずはルシフェルをルンと百田の式神が探すところからはじまった。


 ロッソは人狼公リオードルについて調べることにした。核心はないがなにあかるのではないかと思ったのだ。ふらふらと歩いて噂を聞きまわり、目的の相手――人狼公の城にいる女中を見つけ出した。
「おい、あんた、リオードルさまの城にご奉仕しているメイドだろ?」
 女中は怪訝な顔でロッソを一瞥する。
「俺、あの人に憧れてんだよ。なあ、最近どうなんだ? 城に人を招いたりとか、なにかするとかさ、ちょっとでも知りたいんだよ」
 馴れ馴れしく肩に手を伸ばした瞬間、ぱんっと跳ねのけられた。
「気安く女性に触るのはマナー違反です、ミスタ。私はあの城にお仕えすることを誇りとしております」
 それだけいうと女中はさっさと立ち去った。
 リオードルは傲慢だがどこまでも冷静な一面を持ち合わせ、生まれながらの群れのリーダーとしての風格も存在する。そんな彼は己の使用人もよく躾ているものだ。よく知らない相手に簡単に内情を話すことなどありえない。
 なによりロッソは白百合に「リオードルにはばれないように」と言われているにもかかわらず、危険にもリオードルの関係者に接近したのだ。白百合たちのことがばれていた可能性もあることを思えば、今回はまったく相手にされなかったことで秘密を守れた幸運に感謝する必要があった。

 ルンは百田の式神の協力を得て、ナラゴニアの商人通りを一望できる木の上でルシフェルを探した。
 百田の式神たちはルンの指示に従い、空高く、舞い上がってさらに多くの目からの情報を得ると百田は惜しみなく仲間たちに教えた。
 尾行となれば榊は探偵業を営んでいたので人ごみに紛れることは慣れている。
 ルシフェルは街のなかを歩き、小さな店のなかに入った。そこですでに待っていたエルとルミナたちと何か話しているのが店の窓越しにちらりと見える。
「式を使うか?」
 百田の発言に榊は首を横に振った。
「近づいたらばれるぜ? ここからでも多少なら読めるわ。樹海の、なか……買い物のリスト?」
 目を細めて彼らの会話を榊は読み取る。
「あら、じゃあ、ロキっていうのは出てこないのね。この際だわ、私にいい案があるのだけど、どうかしら」
「どうするつもりだ、黄金の魔女」
「黄金に、手を伸ばすのよ」
 百田の問いに魔女は唇をつりあげた。

 エル、ルミナと別れたルシフェルは一人で店を出ると、すっとその前に黄金の魔女が姿を現す。突然のことにルシフェルはぎょっとした顔をした。
「恐れなくてもいいわ。私は貴方の味方よ」上等のウィスキーのような瞳で魔女は囁いた。「貴方を不審に思った世界図書館の連中が貴方の周りを嗅ぎ回っている。注意した方が良い」
 それだけいって黄金の魔女は立ち去った。ルシフェルは振り返ったが、そのときには魔女の姿は消えていた。
 ルシフェルは思いつめた顔で駆けだしていったのに、立ち去ったはずの魔女はすぐそばの建物から姿を現してにぃと笑った。
 百田の幻虎で姿を消していたのだ。
「成功ね」
「危険ではないのか」
 自分たちの情報を与えるのは危険であると同時にルシフェルがクロか、シロかをはっきりさせるには非常に良い手だ。そのためはじめは百田と榊は渋ったが、実行に移すことにしたのだ。
「あら、あれくらいしなくちゃいけないわ。魔女はね、いいえ、女はね、危険が高ければ高いけどその道に進むのよ」


 ルンは樹海からじっと観察して、何かの店に入ったこと、そのあと、ルシフェルは急いで樹海に向かったと百田の式神を通して仲間たちに伝えた。
「店じゃなくて、樹海が本命のようだな」
「罠にかかったようね。そちらに行きましょう。ファレロさんと神無さんに連絡をしてちょうだい」
「樹海か。なんぞ、きばっていかんと、危ないかもな」
樹海の入り口で全員が落ち合った。
「しっかしよ、樹海のなかだと迷うんじゃねぇのか」
 ロッソが思うような成果がなかったのに不機嫌な顔で尋ねる。
「式でルシフェルの位置はだいたい把握しているので大丈夫だろう」
 百田とともに匂いを追うルンが先行するのに全員が覚悟を決めて樹海へと踏み込んだ。


「どうしたらいいと思う!」
 ルシフェルがすがりついてきたのにロキは眉根を寄せたあと、すぐに何かに気が付いたようにため息をついた。
「見事に踊らされましたね」
「なに?」
「六人、か。ちょっと早いが仕方ない。フェン、悪いが、頼む」
 ロキの声にその背後にいたそれは小さく唸り、姿を消した。


 ナラゴニアの街から一キロ以上の離れた樹海の奥まで進むと、エルとルミナの姿があったのにロッソは迷わず発砲した。
「覚悟しろ!」
 すべてを凍てつかせる銃弾は二人の周囲を氷で固め、閉じ込める。二人が怒りと恐怖に顔を歪めるのにロッソはふんと鼻を鳴らす。
「これでいいんだろう? 残りのやつらもとっとと捕まえちまうぜ」
「ま、生かして連れ帰れっていわれたからな。けど、これ……危ない!」
 不意打ちを警戒していた榊は声をあげた。
ロッソの背後の木が破壊された。折れる丸太が落ちてくるのに百田がロッソを庇った。

 神無は目を見開いた。
「あれ、ワームなの?」
 それは白い馬だった。荒々しい息を吐きだし、額には角がある――ユニコーンが嘶いて襲い掛かる。
「お前たちなど、死んでしまえ!」
 ワームの背後に隠れていたルシフェルが高らかに笑った。
 黄金の魔女は揺さぶりには成功したが追いつめられたルシフェルは仲間を囮に使い、待ち伏せていたのだ。
「くっ! 魔女、頼む」
「仕方ないわね」
 魔女は小石を掴むとそれを金にして投げた。きらりと輝く金にワームの動きが散漫となったのに百田の手から針が飛ばされる。
 ルシフェルの体をついた針は彼の自由を容易く奪い取った。
「点穴を衝いた。物理的に封じた人体を動かせると思うなよ」

「燃えちまえっ!」
 ロッソは迷わず火炎弾を発砲するのに百田は炎王、雹王、幻虎を呼び出してフォローにまわる。
「大丈夫。皆強い。3m以下、楽勝……望みに時間、関係ない。戦うが望む? なら、受けて立つ」
 ルンが弓を引こうとしたとき、背後から襲われた。なんと獣の足がルンを地面に叩き付けたのだ。
「お前は!」
 黄金の魔女が叫ぶと狼らしきそれは地面を蹴って高く飛び、樹海のなかに消えた。
「チッ! そっちか! ご主人様と一緒にお陀仏しろ! 俺はロキってやつを狙う。ワームはてめぇらがやれ!」
 ロッソが声をあげ、狼が逃げた場所を的確に狙って火炎弾であぶる。姿を消せても呼吸が出来なければ死ぬだけだと判断したのだ、それに百田の式神の炎も味方をして、楽勝である、はずだった。
 しかし。
 ロキの能力は同調透過能力――それは認識したものと同じ性質となることで、すり抜けることができる上、己と触れたものに関して有効という非常に厄介な能力なのだ。
 たとえば周りが炎であぶれたところで、地面のなかにロキは逃げる事も、

「なっ!」
 気が付いたときロッソの首に冷たい手があった。そして刃が。ざしゅっと迷いなく斬られた。紅蓮が吹きだす。
「ロッソ! くっ! 護法招来急急如律令!」
 百田が声をあげるのに地面から使い魔と共に現れたロキは微笑む。
「フェン、GO!」
 炎が周囲を包むためにその悪臭でルンの嗅覚も役に立たない。そのなかで狼は百田を背後から襲って喉に噛みつき、ルンの胴体を蛇の尾に巻きつけ、地面に叩き付けた。符がなければとても耐えられないほどの攻撃に悲鳴があがる。
その間も荒ぶるワームが迫ってくるのを神無と榊がギアで防御するがじりじりと追いつめられていく。
 倒れた百田、ルン、さらにロッソを庇った黄金の魔女は三人が回復する時間を稼ぐためにも立ちはだかる。
「面白い使い魔ね。魔女の私としては少し羨ましいわ。……ひとつ、謝っておかなければならないわね。その使い魔を、これから置物に変えてしまうんだから」
「そんなことを言われて、わざわざ可愛いわが子を近づける愚か者はいませんよ、美しいお嬢さん。それよりは、あちらの方を狙ったほうがいいでしょう、ねぇ」
 ロキの声に見えない狼は神無を狙う。攻撃する瞬間のみ姿を現す狼の前に出たのは榊だった。
「はぁ!」
 切迫の気合いとともに頭上に掲げた刀を落とすと危機一髪で致命傷は避けたが左目を切られた狼が声をあげて血を流し、慌てて消える。姿は消せても傷までは消せないと狙ったのだ。
「これなら居場所がわかる!」
 血の香りを頼りにルンが立ちあがり矢を引くのに狼が悲鳴をあげる。さらに
「炎王招来急急如律令、雹王招来急急如律令、敵のワームと使役獣を倒せ!」
 炎の上に氷が狼を襲い、凍てつかせて確保した――それは姿は上半身は狼、下半身は蛇という異様の姿の化け物であった。
「ルン、矢を放て!」
 榊と同時にルンはロキを攻撃する。ロキの目は両方の攻撃を認識した――同調能力であるロキにとって二つの攻撃を受けることは出来ない。更にロキは背後からの攻撃におざなりになっていたのに榊の狙い――葉を刃化したものが背中に突き刺さるのに予想外だったのだろう、ロキがその場に崩れる。素早く立ち上がろうとしたロキの頭にロッソが銃口をあてる。
「てめぇの負けだ」
 ロキは迷うことなく両手をあげた。 
「せっかく、楽しんでいたのに……残念」

 ワームは炎のなかで嘶きあげる。
「きゃあ!」
 必死に一人で抑えこんでいた神無は突き飛ばされ、地面に倒される。それにワームは興奮して何度も地面を蹴って、地鳴らす。
「させない!」
 ルンが矢を放つ。
一撃目は外れることを予測しての連続の攻撃で、二撃目がワームの胸に突き刺さる。神無はその隙に立ち上がると距離をとった。
ワームは怒り狂って吼えるとルンに狙いを定めての突撃をする。
ルンはぎりぎりまでその場にとどまり、あたる瞬間に素早く体を横へと飛びのき、ワームはルンの背後にあった木に激突した
「いま!」
 ルンは地面に転げた状態でも矢を連続で放ち、ワームの背を打つ。ロッソの火炎弾と百田の式神たちも加勢して炎を放つ。
 紅蓮。
 燃える
 紅蓮
 燃える

 ぐぁああああああああああああああああああ

 ワームは雄叫びをあげ、あかあかと燃える炎は一部の樹海とともにワームを燃やし消した。

クリエイターコメント 参加、ありがとうございます。

 無事にみなさんは依頼を達成しました。おつかれさまでした。本当にお疲れ様でした。
 ロッソさまへ、白百合がいつでもナラゴニアにいらっしゃいですって……怖くないよ!


 誤字脱字・口調がおかしいその他ありましたらお手数ですが事務局経由でお知らせください
公開日時2013-08-28(水) 19:00

 

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