オープニング

 外見上は穏やかなようにも見える、“万象の果実”シャンヴァラーラである。
 ロストナンバーたちの活躍により、『電気羊の欠伸』内黒の領域における茨封獄の暴走は解除され、至厳帝国皇帝の側近でありながら行方をくらませていた――正確には囚われていた――ロウ・アルジェントは救出された。
 しかし、心を得たがゆえに己が責務を拒否し、本体でもある黒羊によって茨塔へ封じられた黒の夢守は未だ戻らず、世界計のかけらをその身に呑み、悲痛なまでの大願を抱くカイエ・ハイマートは未だ帝国軍部の最高司令部に在って、各【箱庭】を血に染めるべく暗躍を続けている。
 責務を果たせぬ夢守を、黒羊プールガートーリウムは再度『白紙』へと戻すことを決めた。
 シャンヴァラーラ内に現存する【箱庭】の大半の、その深部――トコヨとも称される、この世ならざる場所――に潜む《異神理(ベリタス)》。密やかに育ち、発芽し、【箱庭】を砕いてしまうそれの活動を鈍らせるには、たくさんの血を――ヒトの命を大地に吸わせるしかないという。
 シャンヴァラーラは今日も、静かに、悠々と、訪れるものたちを受け入れる。
 しかし、それがいつまでも続くものではないことを、ロストナンバーたちは肌で感じ取っている。
 それが滅びの絶望となるか、新しい世界を構築するために乗り越えるべき壁となるかは、まだ判らない。

 *

 その日も、『電気羊の欠伸』にはさまざまなロストナンバーが訪れていた。
 理不尽ですらある不思議を孕んだ景色を楽しみに来るものもいれば、不可思議な性質と成り立ちを持つ、根本は違えども社会性を有した現地民との交流のために来るものもいたし、夢守と呼ばれる神の化身たちに、不思議な効力を有したアイテムをつくってもらいにくるものもいた。
 無論、未だ茨塔に綴じ込められたまま、黒い茨に絡み付かれ身体の要所を貫かれて、意識――という概念があれに存在するのかは微妙だが――を失ったままわずかな身じろぎすらしない、黒の夢守を案じて訪れているものも少なくはなかった。
 明佩鋼(アケハガネ)=ゾラ=スカーレットもそのひとりで、彼は今日も、夢守が封じ込められた黒茨の塔の傍らで、そびえ立つそれをぼんやりと見つめていた。
「……もどかしいな」
 ゾラにとって黒の夢守一衛(イチエ)は恩人である。
 あの夢守にその意識があったかどうかは判らないが、一衛は、記憶と行き場を失って途方に暮れていた彼を、黒の領域に――記憶の果実がみのる森に受け入れ、寄る辺を与えてくれた。
 わずかに記憶を取り戻し、足元がほんの少し、固まったような安心感を覚えるようになった今も、ゾラはそれを感謝している。
 それだけに、一衛の記憶をすべて消し去ろうという黒羊の決定には、恐怖めいたものを感じずにはいられない。
 しかし、ゾラは結局のところヒトである。
 機神化という特殊能力を持ち、戦うことを得意とするにしても、それは物質の世界でのことだ。
 精神や魂、概念の世界において、彼の力がどこまで有効かは、判らない。
 きっと、同じようなもどかしさを抱いているロストナンバーも、いるだろう。いったい自分に何ができるのか、と、重苦しい気持ちで息をひとつ、吐いた時のことだった。
 唐突に、周囲の空気が重たくなった……ような気がした。
 物理的なものではないと気づいたところで、
「プールガートーリウム……?」
 誰かがつぶやくのが聴こえて、ゾラはこうべを巡らせる。
 そして、黒茨の塔の天辺に浮かぶ、黒羊を見つけた。
 相変わらず何を考えているのか判然としない、ただ無意識に膝を折りそうになる神威だけをたたえたそれが、己が夢守を、そして周辺を行き来する住民やロストナンバーたちを見下ろしている。
 黒茨の塔が、どくんと脈打った、ような気がした。
 同時に、彫像の如くに固まっていた夢守の背がびくりと跳ねる。
「……まさか」
 『白紙化』を行うつもりなのか、と、複数のロストナンバーたちが塔へと駆け寄る。
「待ってくれ!」
 どうにかして黒羊を思いとどまらせねば、と声を上げたら、プールガートーリウムが、茫洋とした眼差しを彼らに向けた。
 とたん、辺りが暗くなった。
 周囲が闇に閉ざされ、感覚が切り離される。
「……黒羊の力、か……?」
 では、これから何かが起きるのだ。
 黒羊の真意がどこにあるのかは判らない。
 ただ、邪魔者を排除しようというだけのことなのかもしれない。
 しかし、それならば、仮にもひとつの【箱庭】を支配する神が、わざわざこんなまどろっこしい方法を取る必要があっただろうか?
 不可解さを胸に抱きつつ、周囲を伺っていたゾラは、不意に現れた人物を目の当たりにして目を瞠った。
「お前、は」
 それは、不吉な朱眼を憎悪と怒りに燃え立たせ、ゾラを睨み据えている。
 『彼』の手には、ゾラにも見慣れた――扱い慣れたものである、武骨な剣があって、禍々しい光を放っている。
「お前が憎い。お前を、この世から消さずにはいられないほど」
 聞き慣れた――発し慣れた調子の声が、憎しみを吐き出す。
 ゾラは、眉をひそめた。
「なぜ。お前に憎まれる理由など、俺にはない」
 だいたいにして、と言葉を継ごうとしたところで、『彼』が地面を蹴った。手の中の剣が閃き、正確にゾラの急所を狙って突き入れられる。
「ッ!」
 ゾラは息を飲み、どうにかそれを躱した。追撃を避けるため後方へ跳躍し、距離を稼ぐ。しかし、同じタイミングで再度踏み込んだ『彼』が更に剣を揮い、ゾラは肝を冷やしながらも、細かな足さばきで何とかそれを躱す。避けきれなかった切っ先が頬をかすめ、血を流させたが、その程度のことを気にしていられる状況でもない。
 ――強い。
 間違いなく、今の自分よりも。
 直感的に悟り、ゾラは慎重に『彼』と対峙する。
「なぜだ。なぜ俺を憎む、明佩鋼=ゾラ=スカーレット。お前は俺だし、俺はお前だ。それが、なぜ」
 そう、『彼』はゾラ自身だった。
 寸分たがわぬ造作の、しかし、何かが決定的に違ったゾラだ。
「――判らないのか。判らないなら、お前は死ぬしかない」
 冷ややかな声が、断罪めいて告げる。
 おそらく、巻き込まれた他のロストナンバーたちも、同じような事態に陥っている。そして、これこそが黒羊の思惑、真意なのだ。
 そんな確信があって、ゾラは深呼吸とともに腰の剣を抜いた。
 『彼』に勝利すれば、茨塔へ行ける。
 逆に言えば、『彼』との戦い、ないしは問答に勝利できなければ、この領域から抜け出すことはできない。
「思い知れ。お前自身の罪を」
 自己との対話。
 自分を憎む、自分よりも確実に強い自分との戦い。
 それは、ひどく骨の折れる仕事になるに違いない。
 しかし、この戦いに勝利できねば、黒の夢守は彼の知る夢守ではなくなる。黒の夢守が失われれば何か悪いことが起きる気がする、と言っていた火城を思い出す。
 ゾラとて、自分に何の罪もないなどとは思わない。
 生きるために犯す罪、知らず知らず重ねてきた罪を、あっけらかんと否定することはできない。
 だから、ゾラは、唇を引き結び、身構える。
「――なら、向き合おう。それが、必要な通過儀礼だというのなら」
 自分と同じく、己を憎み罪を糾弾する自分自身と対峙しているであろう、ロストナンバーたちに思いを馳せながらも。
 そうして、自分自身との戦いが始まる。



* *大切なお願い* *
『【電気羊の欠伸】Love and Will Symphony』と『【至厳帝国ムンドゥス・ア・ノービレ】聖骸の反逆者 三ノ幕』は同時系列のできごとを扱っております。同一PCさんでの、双方への同時エントリーはご遠慮いただけますようお願いいたします(万が一エントリーされ、当選された場合は、どちらかもしくは双方の描写が極端に少なくなる可能性がありますので、重ね重ねご注意くださいませ)。

また、なるべくたくさんの方に入っていただければという思いから、人数枠を多めに設定しておりますので、エントリーは1PLさんにつき1PCさんでお願いできればたいへんうれしいです。
わがままを申しますが、どうぞご配慮のほどをよろしくお願いします。

品目シナリオ 管理番号3111
クリエイター黒洲カラ(wnip7890)
クリエイターコメント皆さんこんばんは。
ずいぶんと時間があいてしまいましたが、心というものを得たがゆえに殺すことを放棄した夢守に関する、最後の依頼のお誘いに上がりました。

シャンヴァラーラという異世界での物語がクライマックスを迎えるまで、残すところあと四話(二話が並行しているので回数で言えば三回)となっております。どうぞ、おつきあいのほどをお願いいたします。

なお、シリーズものとして運営しておりますが、ご新規のかたに参加していただいてもまったく問題ありません。

さて、今回のコンセプトは、『自分よりも確実に強い自分、しかも強烈に自分を憎悪し殺意を向けてくるもうひとりの自分とどう向き合いどう戦うか』です。
一定の『是』とされる答え、一定の通過ポイントはありますが、アプローチの方法はすべて皆さんにお任せいたします(もちろん、アプローチによっては自身に敗北することとなり、領域から抜けることもできません)。
なお、ヒントのようなものは、前作『Pain and Nostargia Sonata』にもありますので、一読されてもいいかもしれません。

プレイングには、もうひとりの自分が向けてくる憎悪の意味や、それに対する心情、自分自身とどう戦うか、力量が上の相手をどう倒すのかなどをお書きいただければと思います(特に、心情は重視されます)。
また、領域を抜けられた場合は、そこに一衛がいます。黒の夢守に伝えたいこと、黒羊の真意に関するあれこれなど、何でも結構ですので、ありましたらお書きください。
黒の夢守に関する一連の物語自体は今回が最終となりますので、その他、思いの丈を、あるだけぶつけていただければと思います。

基本的に、1PCさんにつき一見せ場を想定しておりますが、プレイングによっては登場率に著しい偏りが出る場合もありますので、ご納得の上でのご参加をお願いします。

こまごまと書かせていただきましたが、基本的には、皆さんの立ち位置や想い、行動をPCさんらしく描かせていただこうと思っておりますので、興味を持たれましたらどうぞよろしくお願いいたします。

※なお、プレイング期間がたいへん短くなっておりますのでご注意くださいませ。


それでは、お前が憎いと刃を向ける己自身が眼光鋭く睨み据える不思議の領域にて、皆さんのお越しをお待ちしております。

参加者
テリガン・ウルグナズ(cdnb2275)ツーリスト 男 16歳 悪魔(堕天使)
蓮見沢 理比古(cuup5491)コンダクター 男 35歳 第二十六代蓮見沢家当主
歪(ceuc9913)ツーリスト 男 29歳 鋼の護り人
祇十(csnd8512)ツーリスト 男 25歳 書道師
ロウ ユエ(cfmp6626)ツーリスト 男 23歳 レジスタンス
玖郎(cfmr9797)ツーリスト 男 30歳 天狗(あまきつね)
オゾ・ウトウ(crce4304)ツーリスト 男 27歳 元メンテナンス作業員

ノベル

 1.『もしも』の鏡

 オゾ・ウトウは『電気羊の欠伸』に来ることが嫌いではなかった。
 この地へ足を踏み入れると、自分がとんでもないうすのろの木偶の坊になったような気持ちになる。しかし、それが不思議と心地よいのだ。
 ここでは、誰の、何の背景も問題にはされない。何も必要とはされず、義務にはならない。誰もが平等に全であり無でもある場所、それがこの『電気羊の欠伸』だった。
「黒羊と、夢守……」
 唐突に暗闇に巻かれて数メートル先も見えなくなる、などというできごとにはもうすっかり慣れてしまって、特に動じていないオゾだが、黒羊の、やけに回りくどくも思えるやりかたは、彼を深い思考の渦へといざなってゆく。
「いったい、何が試されているというんだろう……?」
 ひとまず、茨塔があったと思しき方向へと歩く。
 黒羊や夢守に、どんな言葉をかけるのが相応しいのか、正しいのかを考えながら歩いていたら、唐突に誰かとぶつかった。
「あ、すみませ、」
 この領域に迷い込んだロストナンバーの誰かだろうと、それならば道行きをともに出来る、と、むしろ少しホッとしながら見上げ、次の瞬間オゾは凍りついた。ほぼ同時に相手が手を伸ばし、オゾを荒々しく突き飛ばす。
 思考が一瞬止まった。
「あ、貴方は……」
 おののくオゾの胸ぐらをつかみ、身体を引き起こす。
 爛々と輝く双眸は、明白な憎悪を糧として燃えていた。
「なぜ、貴方は生きているんですか。こんな無様をさらしてまで?」
 冷ややかさと激情、双方をまとった声が言い、同時にオゾは殴り飛ばされる。
「ッ!」
 戦いの心得など皆無に等しいオゾであるから、悲鳴も上げられずに吹っ飛んで、地面を転がる羽目になった。
「うう……」
 呻きながら身を起こすオゾのもとへ、彼――自分とそっくり同じ、しかし黒々とわだかまる憎悪を宿した顔の持ち主――がゆっくりと歩み寄る。そこに激烈な殺意を感じ、オゾは目を瞠る。
「この、領域の力……ですか」
 彼はただ、肌がぴりぴりするほどの憎悪をオゾへと向けてくるだけだ。
 彼の手に鋭利な刃物を認め、オゾは息を飲む。
 しかし、驚きはない。
 彼が自分よりも強いことが感覚的に判る。
 そういう存在を生み出すのがこの闇黒の領域だと、納得もした。
 そして、何より、オゾ自身が、それを当然だとも思っている。
「貴方は死ぬべきだ」
 憎悪にぎらぎらと光る彼の眼は、オゾには持ち得ない感情の色を有している。
 なじられ、糾弾されて、オゾは奥歯にぐっと力を入れた。
(知っています)
 言葉は、声にする以前に、彼の拳が強かにオゾの腹を打ち据えたことで、空気の塊になって消えた。息がつまり、胃の中のものが逆流する、気色の悪い感覚に、地面を転がりながらのたうつ。
 それでも、オゾの内面は凪いでいた。
 なぜなら、彼の胸の内に、その憎悪は存在するからだ。密やかに、しかし確かに、自分など死んでしまえばいい、死ぬべきだ、そう思う気持ちが存在しているからだ。
(罪悪感を持つことで、むしろ己の罪から逃れようとしているさもしさへの……真摯に物事に向き合う人々から、遠慮というかたちで逃げる狡さへの。償う方法を見つけられないまま、ただ生きている怠慢への)
 あれだけの罪を犯しておきながら、まだ何もできていない自分自身への、絶大な憎悪を、オゾは理解し自覚することができる。
「貴方は」
 咳き込みつつも身体を起こし、彼と対峙する。
「僕、なんですね」
 呼びかけると、彼の片眉が跳ねあがった。
 彼は、もうひとりの自分などではなく、紛れもない自分自身なのだ。
 だから、逃げる気にはなれない。恐怖もない。
 同じく、このまま討たれることは、もっと卑怯だ、とも思う。
「なら……向き合わなくては」
 戦いのすべなど知らぬに等しいオゾであるから、何ができるのかも判らない。しかし、ここで、死を受け入れるという逃げを選択することは、どうしてもできなかった。

 *

 玖郎とそっくりの姿かたちをしたそれは、玖郎の在りかた、ありさまを罪だと糾弾した。
 己が頭上に浮かびかけた真理数に、本来ならば彼の心にはないたぐいの揺れを感じ、その整理をつけるため、想彼幻森を訪れようとしていた矢先のことだった。
「おのれの罪をしらぬ、おまえのような罪深いものを、おれはしらぬ」
 言葉は朴訥だが、そこには激烈な感情の色が込められている。それは、憤怒の極光の様相を呈していた。
 玖郎が何と答えるより早く、もうひとりの己は彼めがけて飛び込んできた。
 なにせ、玖郎と同じ姿かたちをして、同じ能力を有しているとなれば、互いに風も雷も効かぬ。となれば、我が身ひとつ、拳や爪や牙だけがものをいう戦いとなる。
「罪……か」
 相手のほうが、力も速さも上だった。
 突っ込んできたそれを受け止めようとしたところで吹き飛ばされた。地面に叩きつけられるより早く翼を動かし、上空へ逃れたが、すぐに追撃を受け、
「つぐなえ。死をもって」
 底冷えのする声音とともに、後脚にあちこちを裂かれる。
 血がしぶき、ちりちりとした痛みを伝えてくるが、玖郎は特に頓着せず、翼を羽ばたかせて距離を取った。
「……やはり、おれとはちがう」
 罪とは、群れの秩序を維持する規範を犯すことの定義である。
 つまるところそれは、ひとの概念だ。
 群れなさぬ種の言ではないのだ。
 玖郎たち天狗にも一定の律はあるが、それは摂理に根差すものだ。そこに、感情の介在する余地はない。
「ならば」
 鋭い爪が眼前へ迫る。
 後方へ飛べば追撃を受ける。
 ゆえに玖郎は、あえて羽ばたきを止め、落下することで避けた。すぐに舞い上がり、再び対峙する。
「おまえは、おれの姿をした、ひとなのだろう」
 言うと、玖郎の姿をしたそれがぴたりと動きを止めた。
「おれを組成するひとの部分、あるいは……我が種をかたどった、ひとのこころか」
 かつて、皇の軍に故国を焼かれた巫者は、無念の死に瀕し、己が身を鷲に食わせた。呪いは鷲を化生へと転じさせ、結果、玖郎たち天狗が生まれた。彼ら、天狗の祖はひとであり、また、ひとの狂おしい情念でもある。
 ならばこそ、と、波の立たぬ静かな意識で思う。
「にくむも、道理か」
 ひとの玖郎は、天狗の玖郎を睨めつけている。
 何もかも同じかたちでありながら、その、ゆらゆらと立ちのぼる激烈な感情だけが決定的に違う。おかしなものだ、と思いはする。理解に至ることは難しいが、それもまた、どこかで分岐していたかもしれない道理のひとつなのかもしれない。
「己が国の守護をねがい、それを奪った皇の国をのろい、我が身をささげ、投じた呪の果てが、このありさまでは」
 淡々と言えば、ひとの玖郎は猛々しく嗤った。
 それもまた、天狗の玖郎には持ち得ぬものだ。
「……そうか」
 頷き、玖郎は翼に力を込める。
「ならば……喰らおう」
 力量の差など、どうとも思わない。
 否、それすら喰らうしか、玖郎にすべはないのだ。
「おまえがひとであるのなら、ひとがなさぬをなすまで」
 そう、かつて鷲に食ませた其の身のごとく。
 ――鷲の本能に呑まれてしまった、人としての祖の無念ごと。

 *

 ロウ ユエは一衛の様子を見に来ていた。
 そして、『彼』と行き逢った。
「……なるほど、俺を殺したい俺か」
 自分と寸分たがわぬ造作の、しかし激烈な憎悪と殺意を宿した『彼』は、いっさいの躊躇いなくユエを葬りにかかった。
 剣の腕も異能も、明らかに向こうのほうが上だ。
 数合撃ち合った手はびりびりとした衝撃を伝えてくるし、放った異能はすべて、向こうの異能によって打ち消された。それどころか、自分を上回る強さの風だの炎だのを差し向けられ、ユエはすでに傷を負っていた。
「判らないでもない」
 しかし、ユエ当人は冷静だった。
「『次の一衛になるかもしれない可能性』が現れたとも聞くからな」
 戦いつつ、ユエはずっと、思案していた。
 自分の内部にある憎しみを、ユエとて理解していないわけではない。むしろ、自覚も納得もある。己が無力を嘆く声なら、自分を呑みこむほどではないが、確かに存在する。
 しかし、ユエは、目の前にいる自分が『ソレ』だとは思わなかったのだ。
「お前は、俺だったかもしれない可能性なのか」
 答えは、憎しみにぎらつく双眸と、剣の一閃、そしてユエごと押し潰そうという空間の揺らぎだけだったが、少なくともユエと彼にとって、それは正しい回答だった。
 黒羊の思惑によるものと思しきこの領域で、すべてが画一であるとも思わないが、ユエと彼の場合は、己に巣食った憎悪が実態を得たというよりは、
「俺という自我があることで、表に出ることのできない多様な俺のひとり……なのかな」
 かの夢守もそうであったような、可能性のひとつが実体化したと考えるほうが、しっくりくるのだ。
「それを知ってどうする。お前の先にあるのは死だけだというのに」
 もうひとりのユエの言葉は冷え冷えとしている。そのくせ、そこには獄炎を思わせる熱がじわじわと顔を覗かせるのだ。
 ユエ自身、その憎しみならば理解して余りある。
 それは、己の不甲斐なさを見ていることしか出来ないもどかしさが産む憎悪だ。そして、もしかしたら逆だったかもしれない立場を思うこともせず、可能性という存在に気づきもしないことへの憎悪と、断罪だ。
「……そうだな。なら、戦うしかない、か」
 相手は自分自身である。お互い、手の内は当然把握済みだが、しかし、相手のほうが身体能力も異能も上手である。となると、我が身を削るやり方で突破口を開くしかない。
 そんな場面であるというのに、ユエに悲壮感はない。
「何を笑っている」
「うん? いや……俺が執念深いことくらい、お前だって知っているだろう」
 目的がある。約束がある。
 だから、ユエの、“表に出ることのできた最初の可能性”たる彼は、折れることなく戦うのだ。

 *

 祇十は、視界の悪い領域の中、雑多な早書きでしたためた書を片っ端から発動させていた。
 炎、風、雷、光、闇、刃、矢、たくさんの攻撃的な力が、強靭にして勇壮、それでいて典雅な文字によって生み出され、解き放たれる。解き放たれたそれは、同じくひたすらに早書きし発動させる『彼』の書によって粉々に打ち砕かれる。
「効かねェよ。おめぇじゃ俺には勝てやしねェんだ、諦めな」
 『彼』が憎々しげに嗤う。
 何をしても敵わないと知れば、普通は絶望し折れてしまうものなのだろうか。
 しかし、祇十は違った。
「ははッ」
 背筋をぞくぞくとした興奮、歓びが這い上がってゆく。
 眼には隠し切れない期待の色がある。
「諦める? 何腑抜けたこと言ってやがんでぇ、こいつを喜ばずして、他に何を喜べってんだ?」
 力で上の相手なら、工夫も策略も不要で無用。
 ただひたすら、己が書をもって、相手を上回るために対峙するのみ。
「偶然の賜物ってか……何ともまァ、運のいいこった」
 『電気羊の欠伸』を訪れたのはほんの気まぐれだった。
 書を生業とする祇十にとって、すべての事象は糧足り得る。
 不条理ではあるが非常に美しいと言われる『電気羊の欠伸』の、さまざまな光景を目にしてみようと思い立ち、訪れたところでこの闇黒に巻かれ、そして憎悪に双眸を燃え立たせた己と邂逅したのだ。
 直前、聞いた話では、この領域の夢守とやらが消える消えないの瀬戸際であるらしい。直後に皆を飲み込んだ闇黒が、その件と無関係であるとは到底思えない。
 祇十がここにいるのはまさに偶然だが、何かが起きているらしいことは理解できる。そしてその『何か』を、そ知らぬふりで素通りしてやるほど腑抜けでもない。
「おめぇは……いつもいつも、いつだって、そうだ!」
 憎悪の呼気とともに、自分とまったく同じ顔をした、しかしまったく違う感情を貼り付けた『彼』が吼える。
 『彼』の手が、目も眩むほど美しい文字を書き出すのと同時に、光る柱が顕現し、祇十へと殺到する。それはちぢに砕けて光の刃となり、彼の身体を散々に裂いた。血があふれ、痛みが意識を灼くが、祇十はやはり、楽しげに笑うばかりだ。
 そして、その笑みを目にするごと、『彼』の憎悪は深さを増してゆく。
「おめぇみてぇな罪人を生かしておくことが罪だ。俺がこの手で息の根を止めてやるよ!」
 祇十はそれを、どこ吹く風とばかりに受け止め、自分もまた書をしたためる。
 人から憎まれることならば、慣れている。
 しかし、そういう感情があることにいちいち気づき、気にかける意識など、祇十は持っていなかった。否、そんな意識が湧かぬほど、彼は自らの進む道の先だけを見て生きてきたのだ。
 そして、己の罪というのはまさにそれであると、以前訪れた想彼幻森で知った。彼の、ある種の傲慢が、人に道を過たせ、未来や運命を変えた。それは否定することのできない罪だ。
 だが、祇十にはそれを改めるつもりがない。
 それを改める祇十は、もはや祇十ではないからだ。
 何より、今、己より技量に秀でた存在が目前に現れ、己に、激烈な殺意を伴った憎悪をぶつけていてもなお、湧いてくるのは、己よりさらに上がいるという喜びと、その、更に上をいってやりたいという魂の高ぶり、尽きせぬ渇望ばかりなのだ。
 だから祇十は、猛々しく、晴れやかに笑い、筆を滑らせる。
「罪は罪で構いやしねぇ。でもな、これが俺なんだ。俺は、結局のところ、俺でしかいられねぇ」
 祇十の言葉に、『彼』が顔をゆがめる。
 それは、これから繰り広げられる戦いの激しさを高らかに謳うようでもあった。

 *

 歪は、どうにかして一衛を救いたいと、この領域に通い詰めているひとりだった。
 歪にとっての一衛は、世界を超えて巡り会った“見知らぬ友人”、“懐かしい他人”である。このまま、無邪気な感情や願望のようなものを習得しつつあった夢守が失われてしまうことは、ひどくつらいことだった。
 それゆえ、何か手段がないものかと頻繁にやってきては、他の夢守と話したり、一衛の様子を見たりしていた。
 そんなとき、周辺空間の質感が変わった気がして――なにせ、彼の世界はすでに、ひとつの色で塗りつぶされているもので――訝しんでいたところ、歪の目の前に現れたのが、もうひとりの歪だった。
 光を失っている彼に、『もうひとり』の姿は判らない。
 しかし、不思議と、それが誰で、何なのか、歪には理解できた。
 天を負い、それを繕う、悲壮な決意と孤独をまとう『修羅』。
 ――覚醒する前、光と記憶を代償に差し出す前の、『そう』であっただろうと思われる自分の姿だ。
 彼は終始無言だった。
 言葉も、気合の言葉もなく、ただ剣を揮い、命を刈り取ろうとした。
 無言だからこそ、彼が、もうひとりの己をひたすら亡き者にしようという思いがひしひしと感じられ、以前、コロッセオで、仮想敵としてあいまみえたときと酷似したそれに、視覚というハンデを負う歪には、厳しい戦いとなっていた。
「お前の思うことが、俺には判る」
 歪はしかし、落ち着いている。
 彼の内心なら、記憶を失った今ですら、痛いほどに理解できた。
 あれは、彼が記憶とともに差し出した、諦めと自己嫌悪の顕現、『そうなっていたかもしれない』分身だ。
 ――自分がここにいては悲劇を招く。
 ――だから、誰も傷つけないうちに消し去らねば。
 ―― 一刻も早く。
 情の深さゆえに神を殺し、天を砕いた孤独な修羅は、今もまだひとり、償いの旅を続けている。願いを、望みを、自己犠牲の中に押し込めて、たったひとり。
 そのむねのうちが、歪には判る。
 修羅が、歪を殺さねばならないと思い詰めるわけも。
 しかし、歪にとて、戦う理由がある。
「――だが、もう俺もひとりじゃない」
 大切な友人たちが待っている。背を預けて悔いない相棒がいる。自分がいなければならない意味、必要とされる喜びを見つけた。それだけの理由が揃っていて、どうして敗北することが許されるだろうか?
「自らの在り処を見失ったお前に、負けるはずがない」
 修羅の一撃は、まるで天からの鉄槌のようだ。
 それは重たく、激烈で、容赦がない。
 しかし、歪は絶望しない。
 彼の中には静かな戦意と、決意が満ちている。
「来い……お前の真実望むものを、見せてやる」
 静かに、しかし強靭な意志とともに宣言し、歪は剣を握る。
 刃鐘が涼やかな音を立て、空へと展開されるのは、そのすぐ後のことだ。

 *

 理比古もまた、一衛を案じて足しげく通い詰めるうち、闇黒の領域に巻かれたたぐいだった。
 理比古にとって一衛は恩人だし、『電気羊の欠伸』は救いの場所だ。あの朴訥な夢守がいなかったら、理比古はきっと、今のように安らいではいられなかった。だからこそ、自分たちとの触れ合いによって獲得した感情というもののために責務を放棄し、結果、白紙化という、死に均しい運命に直面している一衛を、どうしても助けたいと思うのだ。
 茨塔へ出かけては一衛に呼びかけ、反応がないことにもめげずに話しかけ続けていたところで、理比古は『彼』との邂逅を果たすことになった。
 自分と寸分違わぬ造作の、しかし、自分は持ち得ないほど強い憎悪を宿した眼差しの青年。彼は、家宝の小太刀を非常に正しい姿勢で構え、理比古を睨み据えている。
「どうして君はそんなにのんきにいられるの。すべては、君自身の不甲斐なさ、無能ぶりが招いたことなのに」
 言葉はまるで斬りつけるかのようだ。
 常の理比古ならば、他人に向かってこんな言葉は絶対に使わない。
 蓮見沢という大きな塊の頂点に立ち、たくさんの人々を統率する立場にあっても、理比古の本領は『人を想い、その心に寄り添う』ことにある。他者の立場を慮ることなく断罪めいた言葉を口にするような真似は決してしない。
 しかし、同時に、思うのだ。
「判るよ。君が俺を憎む気持ち、よく判る。俺自身、ずっと、自分のことを憎んでいたもの」
 自分が自分に向ける言葉としては、これほど相応しいものもないのではないか、と。
 自分自身の不甲斐なさのために、どれだけ努力を積み重ねたところで義兄たちの期待には応えられず、それゆえに愛してはもらえない自分。必死に、我が身を削ってまで、求められるだけ果たそうとつとめ、結局報いられはしなかった部分。
 そういう、ままならないものすべてへの憎しみが、もうひとりの自分を創り出していると推測することは、困難ではなかった。
「壮大な自傷行為だね。俺は、君の憎しみに寄り添いたい」
「何を、のんきな」
「だって、君は俺なんだから。たまには自分のことも、労わりたいじゃない」
「判ったような口を、利くな」
「そうだね。本当は判らないのかもしれない。だって今の俺は、自分への憎悪より大切な感情を、たくさん持っているもの」
 微笑み、言うと、もうひとりの己は奥歯が鳴るほどに噛みしめ、理比古めがけて踏み込んだ。理比古自身、蓮見沢男子のつとめとして一般以上に鍛錬を積んではいるが、彼のそれは理比古を凌駕するほど速く、そして攻撃は重かった。
 揮われた小太刀をギアで受け止め、力を流す。
 距離を取ろうと跳んだら追撃され、突き入れられた切っ先をすんでのところで躱した。頬をかすめたそれに、赤い筋がひとつ、刻まれる。
「終わらせよう、全部。君にはそれが相応しいよ」
「そうだね、何でも話してみてほしいな。それを受け止めようって思うから」
 噛み合わぬ会話に苛立ち、もうひとりの自分が歯噛みする。
 しかし、理比古は微笑んだままだ。
 ――今さら、自分の憎悪に同じ感情を返すほど、理比古は絶望してはいないのだ。

 *

 テリガン・ウルグナズは微苦笑を浮かべていた。
 眼前には、自分とまったく同じ姿をした何者かが、激烈な憎しみの感情をテリガンに叩きつけるように発散させながら、佇んでいる。
 彼の手には銃がある。
 しばらくやりあって、彼が、自分より強いことを、テリガンは思い知らされていた。
「……まあ、その」
 テリガンは頬を掻いた。
 力量の差を突きつけられても、今の彼に恐れはない。絶望も、諦めもない。
「憎しみってのは、簡単には捨てられないってコト、かな?」
 テリガンの姿をした、彼ではないもうひとりは、ひたすら憎しみを叫んでいる。言葉だけではなく、その全身から憎悪が叩きつけられる。
 しかし、それを向けられる当人は、どこか静かな心持でそれを受けていた。
 ――《迷宮》の炎に焼かれて、自分自身の傲慢に気づいた。
 誰もが咎人で、罪を負い、それゆえに誰かを裁く権利などないのだと知った。
 知って、彼は許されたのだ。
「いや。知ったからこそ、許されたからこそ、なんだろうな」
 想い人を奪った神を、その所業を恨み、憎むことで、テリガンの中の黒い魂はバランスを取っていた。しかし、今や、その憎しみはかたちを変え、姿を転じつつある。
 白い翼への偏見、いわれのない悪感情も消えた。
 その結果、テリガンの中の憎しみは行き場を失い、テリガン自身へ向かって溢れ出したのだ。
 憎むあて、対象が失われたからこそ、『彼』はテリガンを許せないのだ。
 力の矛先を失ったこの現状、テリガン自身の無力を。
「力の行き先を失ったお前が、オイラに敵うはずがない」
 『彼』は銃を構え、狙いをつけながら嗤う。
 テリガンもまた、少し笑ったが、そこに嘲りの色はなかった。
「……そうかな」
 『彼』の言葉は、おそらく間違いではない。
 力だけなら、今のテリガンに、『彼』を凌駕するすべはない。
「でも、オイラには、どうしてもそうは思えないんだ」
 トラベルギアを手に、身構える。
 力の差異も、テリガンから戦意を喪失させる理由にはなり得ない。逃げることも、戦わずに斃されることも、テリガン自身、許すつもりもない。
「強がりはやめときな。命乞いは無駄だって、判ってるんだろうけどさ」
 『彼』が酷薄に嗤う。
 テリガンは苦笑しつつ、
「だったら。掴み掛けてる可能性ってヤツを、試してやるよ。このまま終わりなんて、オイラ自身が許さない」
 宣言とともに、地を蹴った。
 すぐに、鋭い銃声が響き渡る。

 ――それぞれが、それぞれの憎しみの声と向き合いながら、戦っている。
 否定の声は、そこにはなかった。
 そこにある感情を受け入れ、受け止めつつ、立ち向かおうという意識だけがある。
 それを、黒羊は、あの、感情の伺えない眼で、じっと見つめている。



 2.解の声

「うわあッ!」
 吹っ飛んだ先で、オゾは、同じように吹き飛ばされてきたと思しき青年、ユエとぶつかり、いっしょに転がる羽目になった。
「す……すみません」
 ユエは、返事よりも先に得物を掲げ、振り下ろされた剣を受け止めている。
 がぢん、という鈍い音とともに衝撃が来る。
「ぐ……ッ」
 腕ごとへし折られそうな重さに呻いたら、
「ぅおらぁッ、まだまだ、どんどんきやがれってんだ!」
 威勢のいい掛け声とともにまぶしい光が周囲を照らし、同時にユエの『もうひとり』を吹き飛ばしていた。
「んあ? 悪ィ、そっちに手出しするつもりはなかったんでぃ、すまねぇな!」
 祇十は猛々しい喜色を隠しもせず、『もうひとり』と書による戦いを繰り広げている。彼が放った『突風』に煽られて、オゾもユエも、彼らの『もうひとり』もいっしょに吹き飛ぶ。
「……加減をしてくれ」
 跳ね起き、同時に振り下ろされた剣を咄嗟に左腕で受け止めつつユエがこぼす。
「ユエさん!」
 ぎちぎちと肉に食い込んでゆく刃を目にしてオゾが顔色を変えた。
 しかし、彼が、ユエを助けようと手を伸ばすより、おそろしい勢いの水が皆を押し流すほうが早かった。
「!?」
 水流に飲み込まれて窒息しそうになり、慌てて水面へ浮かび上がろうとしたら、水が消えた。いったいなんだったのかとへたり込むオゾの前を、
「巻き込んでごめんね、取り込み中だからあとで謝る!」
 頬や手、首筋などあちこちから血を流した理比古が全力で駆け抜けてゆく。その後ろを、彼と同じ顔をした、しかし理比古にはありえない憎悪をほとばしらせた『もうひとり』が追いかけてゆく。
 彼らが通り過ぎた直後、『もうひとり』に吹き飛ばされた玖郎が落下し、地面へ叩きつけられ、すぐに飛び起きて、翼を掻き毟られでもしたのか、羽毛を散らしながら再度飛び上がる。
 空中で、硬くて大きなもの同士がぶつかる音が聞こえる。
 力負けし、吹き飛ばされた玖郎に追い縋ろうとした『もうひとり』を、空中に展開された刃鐘――それは、無数に煌めく、鋭利な金属片の姿をしている――が阻む。歪の『もうひとり』、孤独な修羅は、刃鐘にあちこちを斬り裂かれつつ、憎悪というより悲壮な決意を歪に向け、己が傷つくことさえ厭わず彼へと突っ込んでゆく。
 振り切り、薙いだ剣が歪へ届くかと思われた時、
「どいたどいた、危ないぞーっ!」
 マシンガン化したテリガンのギアが、無制限の銃弾を辺りにばらまく。修羅は眉をひそめ、跳び退いた。修羅が次の一手を狙う傍らで、オゾは拳を握りしめ、何かを決めた、強い眼差しで自分の『もうひとり』を見ている。
 事態は混戦の様相を呈していた。
 一対一で対峙していたはずが、気づけば一堂に会していて、それぞれ、戦いの影響を受ける。
 特に、加減を知らない祇十がところかまわず書の力を発動させるので、そこはさながら嵐の真っただ中だ。
 しかし、皆、自分よりも明らかに強い、そして自分への殺意と憎悪を全開にした相手と、怖じるでも、折れるでもなく向き合っている。そこに、『もうひとり』と同じ憎悪を持ち、相手へと返そうというものは、いなかった。
 それぞれが、己の中の理、信念に従って、自分の『もうひとり』と対峙し、自分の中に答えを見出そうとしている。
 オゾは、拳を握りしめた。
 ここには感情の力が満ちている。それを借りることも難しくはない。
「死んでしまえばいいんです、貴方なんかは!」
 しかしオゾは、違う方法を選んだ。
 すなわち――『もうひとり』がぶつけてくるすべての憎しみを『力』に変換し、自分の身体で受け止めること、だった。
「僕には戦いの心得なんてありません。ギアに任せなければ、身構え方すら判らないくらいです。戦いも争いも、好きではありません。……だけど!」
 両手を広げる。叩きつけられる憎しみが流れ込み、痛いほどだが、耐えた。それを身体の、意識の中で循環させる。方向性を与えた『力』を、ひと息に解き放つ。
 『力』に打ち据えられて、オゾの『もうひとり』はわずかによろめいた。しかし、その程度のことだった。解き放った勢いで転倒したオゾとは何もかもが違う。
「この程度のことで、僕を斃せるとでも?」
 すぐに体勢を立て直した彼が、憐れむような、目でオゾを見下ろしている。
「知っています。優位に立てるかどうかなんて、判りやしない。それでも、やる価値があるから、やるんです!」
 償わねばならぬ罪を抱えて生きている。ここで死ぬことこそ、何より重い罪だ。
「僕には果たすべき義務がある。だから、もう、決めました」
 雄々しいとは到底言えない宣言ではあったが、
「僕は、進む。迷わずに、進みます!」
 突き進むときに発露する自分の力を信じて、オゾは『もうひとり』へと突進した。
 オゾの頭が彼にぶつかる瞬間のことだった。
「それ、忘れないでくださいね」
 ひどくやわらかな声とともに、眼前の自分は消えていた。
 もんどりうって転がり、呆然とするオゾの上空で、玖郎がひとの玖郎と戦っている。何度も蹴られ、斬られ、掻き毟られて、玖郎の翼や身体はぼろぼろだ。己をこうも痛めつけるモノの行動理念が、力の源が憎しみであること、それは玖郎をむしろ明晰にした。
「……これが、ひとの念、か」
 異世界の案件に多くかかわって、その強さを思い知った。
 死してなお尽きることのない情動、決した末路を是とせず覆そうとする執念、理すら歪めてしまう心の在りかたを学んだ。
「それを解すは、やはり、難い」
 しかし、と玖郎は続け、ひとの玖郎を見やった。
「知り、判ずることはできる、か」
 その言葉に、ひとの玖郎がぴたりと動きを止める。
 玖郎を上回る力は、憎しみという感情が培ったのだ。
 これまでにも見てきた異世界のよしなしごとにおいて、その、感情というものがどれだけ大きな力を持っていたか、理解しようと努めることの重要さは、判る。
「ひとの情を瑣末ときりすてるは……危うき結果をまねくのだ、と」
 独語に近いそれを、ひとの玖郎はじっと聞いていた。
 そして一言、
「ならば、つとめよ」
 それだけ言って、掻き消える。
 天狗の鋭い感覚の中に、もう、ひとの玖郎の気配は引っかかって来なかった。
「……」
 黙し、もうひとりの己が消えた辺りを目で追う玖郎の傍らを、全身から血をしたたらせたユエが転がるように駆けてゆく。
 すさまじいまでの傷だが、それはすぐに掻き消える。消えると同時に、『もうひとり』の放つ異能がユエを裂き、傷つける。しかしそれもまた、と、堂々巡りのように繰り返される。
「いい加減、嫌にならないか」
 『もうひとり』の言葉に、ユエは笑っただけだった。
「手足をもがれ、身を裂かれようが、諦めるような人間じゃないって、誰より知っているだろう」
 ユエを想う者、生かす者がいる。
「皆、生きている。そう信じる。信じるからにはまだ死ねないし、消えることもできない」
「あの状況下で生き延びたものがいると? 絵空事だ」
「……そうかもしれないな」
 苦笑しつつ、ユエに揺らぎはない。
「お前に殺されるということは、すべてをお前に押し付けて、自分の存在意義や望みから逃げるということだ。そんな無責任を、俺は許すわけにいかない」
 そしてユエは、手を差し伸べるのだ。
 歯痒さから顕現したとも取れる、もうひとりの自分に。
「お前は俺だ。なら、消える必要はない」
 ユエは、すでに理解している。
 己に巣食う憎悪に飲み込まれ、私怨に走れば、それは結局死へとつながる。
 民のために生き、死ぬという義務、そして民が安穏と暮らせる地を見つけるという望みをかなえることもできない。
「お前の無念も無力感も、全部受け止めるから」
 だから、いっしょに行こう。
 言葉なきそれに、もうひとりは頷き、手を伸ばし、――そして、消えた。
 あとには、静かな笑みをたたえたユエが、佇んでいるばかり。
 祇十は、まだ、戦いを続けている。
 彼は傷だらけで、ぼろぼろだが、その顔は喜色に輝いている。
「くそッ、おめぇは、なんで……くそッ!」
 圧倒的に上手でありながら、余裕がないのは『もうひとり』のほうだった。
 憎悪を叩きつけつつ、それは、泣いているようにも見えた。
「憎みてぇなら好きなだけ憎め」
 『光』『刃』の同時展開を、『闇』の二重発動で防ぎ、祇十はふてぶてしい笑みを見せる。
「それで、俺より上に君臨できるってぇんなら。俺に、更なる高みを見せてくれるってぇんなら」
 いかなる憎悪を向けられようと、罪を重ねようと、己の魂が天よりさらに上をと叫ぶのだ。
「この命なんざ、いくらでも狙ってくるがいいや」
「いい加減、黙りやがれ!」
 振り上げられた拳を、祇十は掴みとる。
 真っ向から見据え、
「おめぇが俺を憎いのは、俺がそうとしか言わねぇと判ってるからじゃねぇのか」
 言い切ると、『もうひとり』は息を飲み、そして、
「あァ、まったく、忌々しいやつだ……!」
 嘆息とも取れる呼気とともに、掻き消えた。
 残された祇十が、拍子抜けしたような、納得したような表情を浮かべる傍らでは、まだ、刃鐘の澄んだ音色が響いている。
 刃鐘の欠片はくるくると舞いながら修羅を囲い込み、彼を追い詰めてゆく。
 しかし、ふたりの戦いに、決着はつきそうもなかった。なぜなら彼らは不死身で、いかなる傷も死にはつながり得ないからだ。だから、歪は、身動きの叶わなくなった修羅へと向き合い、対話を試みる。
「お前にも判るだろう。俺は、あいつを助けたい」
 言うと、修羅の気配がわずかに揺らいだ。
「お前は壱衛を知っているな。だから、俺はその言葉がほしい」
 彼が己であるのなら、自分と同じく、救いの手のひとつとなった存在を大切に思う心を持っているはずなのだ。歪に、どんな殺意を、憎悪を抱こうとも、その部分だけは変わり得ないはずなのだ。
 その確信があって、
「俺たちをかたちづくる幸福のひとつを、お前の手で救ってくれ」
 祈りさえこめて言えば、修羅がぐっと奥歯を噛みしめるような気配とともに、伸ばされた拳が歪の胸を叩く。
(言葉なら、そこに)
 脳裏に響く声なき声に、今や光を移すことのない眼を、包帯の下で見開いた。その、次の瞬間、修羅はもう、姿を消している。
 ぐっと拳を握りしめ、頷く歪を横目に見つつ、理比古は『もうひとり』の攻撃を受け止め、受け流した。腕力では明らかに上の相手だが、理比古の眼に焦りはない。
「……なぜ、君は」
 『もうひとり』は忌々しげだ。
 理比古は、力任せに押し切ろうとする腕の力を逆手に取り、わずかに体勢を変えて、押すエネルギーを別方向に流すことで彼の体勢を崩させた。
 間合いを計り、距離を取りながら向き合う。
「攻撃する気すら、ないのか」
 理比古は微笑んだ。
「怒りや憎しみはしなやかさを失わせるよ。強い力は、大きな隙にもなりやすいでしょ。何より、俺が君を憎んだり傷つけたりする理由がないもの」
 憎しみより慈しみを。
 怒りよりいたわりを。
 何よりも、愛を持って向き合いたい。
「不甲斐ない俺でごめんね。でも、ちょっとずつ、マシにはなっているんだよ。いろんな人たちが、助けてくれるから」
 それらは、理比古に前を向かせ、まっすぐに歩ませてくれる。
「……馬鹿だね」
「そうかも」
「でも、それが、君か」
「うん、そうだね」
 短いやり取りのあと、『もうひとり』は微苦笑を浮かべた。
「なら、その馬鹿さ加減、貫けばいいよ」
 それだけ言って、溶けるように消える。
 もちろん、と微笑む理比古から少し離れた場所で、テリガンはまだ、戦いを続けている。
 自分より強い自分と真っ向からやり合うつもりはなかった。
 半端な力では叩き潰されるだけだ。
 無数の銃撃を警戒しつつ、現れた銃は隷属蝙蝠に変化して回避に専念する。出現した銃を消滅させるためには撃たせるしかないため、『もうひとり』の後ろ側に回り込むことで彼を盾にする。
 相手が生み出した蝙蝠は、光でも闇でもない弾丸を込めたギアで撃ち落とし、すぐさま攻撃に転ずる。
 それでもテリガンはあちこちに銃弾を受けていたし、
「何で諦めない? このまま死んだほうが楽だろうに」
 『もうひとり』はほとんど無傷に近かった。
 しかし、テリガンもまた、諦めとはほど遠い。
「インヤンガイで、身をもって知ったよ」
 出現した銃が、無数の弾丸をばらまく。それを変化によって躱しながら、『もうひとり』を挑発するように周囲を飛び回る。
 案の定、怒気を全身から発散させた彼は、憎しみに引きずられるように魔力を放出し、派手な攻撃を次々に仕掛けてきた。
 とはいえそれも長くは続かない。
「ほら、な」
 元の姿に戻り、テリガンは片目をつぶってみせた。
「怒りや憎しみで魔力を放出させりゃ、オイラの魔力はすぐ底をつく。その状態でオイラの銃が防げるか?」
 『もうひとり』は息を荒らげ、驚愕の表情でテリガンを見ている。
「お前……こんな、何もできないくせに……ッ」
「そうだよ。無力を憎まない日は、きっと来ない気がする――けど。自分を無力と思い込んで嘆くことを、オイラ自身が許さない」
 ギアが掲げられる。
 銃口は、『もうひとり』を向いている。
「力の矛先はきっと見つけ出す。――それを、否定させない!」
 高らかな宣言とともに、テリガンはギアの引き金を引いた。
 たぁん、というどこか軽やかな音が響き渡るとともに、暗闇の領域は、まるで玉子の殻のようにまっぷたつに割れた。



 3.目覚め

 闇黒の領域が開けた先に、一衛はいた。
 茨塔に封じられたままの夢守のもとへ、理比古と歪が駆け寄る。
 テリガンもオゾも、黙ったまま歩み寄り、塔を見上げた。
 歪は、茨塔の天辺を気にしている。――そこには、黒羊が浮かび、眼下を見下ろしているのだ。
「……一衛への働きかけを阻止する風ではない、か」
 歪のつぶやきに、理比古が小さくうなずいた。何かを理解している風だ。
 彼がそれを口にする前に、祇十が声を上げる。
「難しいこたぁ、俺ぁ判らねぇが」
 あちこち焼け焦げたり切れたりしているが、祇十の声は元気いっぱいだし、活力を伴ったハリがあった。
「身体ごと死ぬんならまだしも、記憶だけ失うなんて真っ平ごめんだ。おめぇは違うってのか。せっかく得た心ってやつを、そのまんまなくしちまっても構わねぇってのか」
 まくし立てるような問いに、一衛のまぶたがピクリと動く。
「抗ってみせろってんだ。嫌だって強く思えばいい。結果は後から付いてくる、そういうモンだろうが、あぁ?」
 ユエは別のことを考えていた。
「黒羊の思惑とは、何なんだろうな。複数発生した『可能性の一衛』を今の一衛に統合する、とかか?」
「どうかな……俺は、少し違うと思ってるんだけど」
 理比古も歪も、何かを考えているようだった。それは、言葉を選んでいるようにも見える。
 玖郎は天辺の黒羊を伺いつつ、朴訥に言葉を落とした。
「害を排すのみならば、ただのちからであればよい。しかし、じつのところ、世界はこころに満ち、そしてうつろう。不変の機構では適応が叶わず、齟齬も生じよう」
 テリガンが、オゾが頷く。
「こころは概ね、存続へ有効に作用する。つがいとなれば子を育み護り、群れは結束し糧を獲り外敵に抗する。本旨を忘れ情に溺れねば、無用なものでもない」
 それは、自分自身に言い聞かせるようでもある。
「……変わらねば、ならぬのだろう、おれもまた。それまで培ったものを糧に 終わらぬよう、うつろう事相に応えんがために」
 ひとの情念から生まれながら鷲の本能に呑まれ、ひとの感情というものからは遠ざかってしまった天狗が、長い、さまざまな旅の果てに辿り着いた答えが、それだった。
 理比古はそれを黙って聞き、茨塔にそっと手を触れさせた。
「一衛に見せたいものがあるんだ。一衛が見せてくれたのと同じような、たくさんの綺麗な景色や心をもっと見てほしい。俺は、もっともっと、一衛と一緒に歩きたいよ」
 言葉が重なるうち、茨塔が揺れ始める。
 歪は、黒羊の様子を見ている。
 ――やはり、彼らのやり取りを邪魔することはない。
 これから白紙化を行おうという神にとって、それは不要な刺激であるはずなのに、だ。
「一衛、それでいいのか、お前は」
 歪は、自分の言葉の拙さを知っているが、それを尽くすしかないこともまた、知っていた。
 自分との再会も、旅人との交流も、すべて忘れてしまうのか。
 それでいいのか、という問いを、言葉の内側に潜ませた。
「俺はいやだ」
 いつしか貪欲になってしまった己に苦笑もする。それでも、大事な友人を目の前で喪うことなどできない。
 歪の想いに呼応するように、理比古もまた言葉を重ねる。
「俺は一衛にたくさんのものをもらったから。だから、今度は、俺が一衛にそれを渡したい。たくさんのものを注ぎたいよ」
 歪の拳が、茨塔をごつりと叩く。理比古が茨塔に額を押し付ける。
「――帰って来い。俺は、今のお前でなければ、意味がない」
「もう一度抱き締めさせて――お願いだ、眼を開けて」
 冷ややかな沈黙が落ち、まだ駄目なのかと嘆息が落ちるほんの少し前、
「いや、だ」
 ――ついにそれは、こぼれおちた。
 ハッとなり、見上げれば、茨に貫かれた無残な体勢で、一衛が眼を開けている。
「私は、消えたくない」
 それだけ自由だった右手が伸ばされる。
「もっと知りたい……心というものを。許されるなら」
 弱々しいそれに、皆が天辺の黒羊を見上げる。羊は、感情の読めない眼で、彼らを見下ろしている。
 それでもなお白紙化を行うというのなら、無謀を承知で挑むしかない。
 身構える人々を羊が見つめる。わずかな沈黙、背筋が冷え冷えとするような緊張のあと、しかし、黒羊は、ただ、高らかに鳴いただけだった。
 気の抜けたような、いつもの、あの声で。

 ――そのことばを、まっていた

 声は、全員の脳裏に、直接響いた。
 瞬間、茨塔が掻き消え、一衛の身体がゆっくりとおろされる。
「一衛」
 安堵の含まれた声で歪が呼び、それと同時に、
「あ……」
 黒の夢守の頭上にあった、この階層の心理数が、ちらちらと瞬いたあと、消える。
 それは、すなわち。

 ――われらとて、こころをもたぬわけではない

「覚醒……そういう、ことか……!」
 おそらく、黒羊にもまた、思うところがあったのだ。
 遠い遠い昔、友を喪って暴走しかけた化身を『調整』したことに。
 そして、再び感情を獲得し、心というものへの憧憬を持って旅人たちを見つめる己が化身に。
「だから、俺たちに……託せるかどうか、試そうと?」
 否、おそらくは、夢守自身にその意志があるかどうかも含め、黒羊は見極めようとしていたのだ。
「……よかった」
 気が抜けたのか、その場に座り込み、ぐったりとした一衛の身体を抱きしめながら、理比古は気づけば泣いている。
「もう駄目かもって……でも、だけど、よかった……!」
 子どものようなそれに、周囲の面々が頬を緩める。
 と、そこで、一衛が眼を開けた。
 そして、
「ようやく判った」
 目覚めを喜ぶ人を見上げ、
「私に、あれが見え始めていたわけも、あれが、何であるのかも」
 いつも通りの淡々と静かな声で言い、
「行かなくては。しるしを――つけなくては。かの、芽を、摘むために」
 次の瞬間、煙のように掻き消えた。
「!?」
 驚愕が辺りに満ちる中、黒羊が、帝都へ転移したことを教える。
「帝都?」
 いったいなにが、という問いに、答えられるものはいない。

 ――彼らのもとへ、驚くべき報せがもたらされるのは、そこからしばらく経ってからのことである。

クリエイターコメントご参加、どうもありがとうございました。

『もしも』の世界のあなたが、お前など消えてしまえばいいと憎悪とともに叫ぶ、可能性と気づきのノベルをお届けいたします。
皆さんの熱く瑞々しいプレイング、胸躍らせながら拝見させていただきました。おかげさまで、皆さん領域を抜けてくださり、黒の夢守もまた救われることが出来ました。

もうひとりの自分への対処として、正しい行動はほとんどありませんでした。ただ、自分は絶対に正しいと頑なに思い込み、相手の言動を拒否、拒絶、否定することが、『領域から出られなくなる』唯一の行動でした。

とはいえ、実はあまり心配もしておりませんでした。皆さん、それぞれに「もしかしたらそうなっていたかもしれない自分」と向き合ってくださり、自分なりの答えを導き出してくださったのではないかと思います。

一衛へのお言葉、お心もありがとうございました。
電気羊は、何を考えているか判らない存在ですが、それなりに化身を大切には思っていたようです。

そして、ついに物語は佳境に入りました。
覚醒した一衛が見たものは何なのか、それがどんな物語を連れてくるのか、その行く末を見守っていただけましたら幸いでございます。

なお、同時公開していただく予定の『【至厳帝国ムンドゥス・ア・ノービレ】聖骸の反逆者 三ノ幕』にも、こまごまとした情報や動きが描かれておりますので、併せてお楽しみいただけましたら幸いです。


それでは、どうもありがとうございました。
ご縁がございましたら、また。
公開日時2014-01-13(月) 21:00

 

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