★ 変身M ★
<オープニング>

 四畳半の安アパートで男は、テーブルの上に乗った10cm程の大きさのカメレオンみたいな生き物と睨み合っていた。
「自己紹介する。私はここから、はるか遠くの惑星『メタモル』から来た、調査員のバブリードと申す。今回はこの惑星の調査に……」
「お前が宇宙人だってのは分かった。でも何で俺の部屋に居るんだ?」
 男が上を見ると、天井には小さな穴が開いており、穴には小型のシャトルのような物が突っ込んでいた。
「失礼。着地を誤った。帰る時までには直しておくので許してくれ」
「確か目的はここの調査だったな?」
 男は不機嫌そうな口調で、バブリードに聞く。
「その通りだ」
「厄介事に巻き込まれるのはゴメンだ。帰ってくれ」
「申し訳ないが、それは出来ない」
 バブリードの返事に、男は眉をピクピク動かして睨む。
「ハァ? これ以上、俺に迷惑かけるつもりかよ?」
「これも何かの縁だ。私の調査に君も協力してもらいたい」
「笑わせんな! お前みたいなちっこい野郎に何が出来んだ?」
「現地での協力者が必要だ。勿論、見返りは与える」
 男は話していく内に熱くなって行ったが、バブリードが言った見返りと言う言葉が引っかかり、話を聞こうとする。
「何をくれるってんだ?」
「物ではない。一時的に私と同じ能力を持たせよう」
「どう言う事……うぉ!」
 男が聞こうとすると、バブリードの体は発光し、光が収まると、そこには自分と全く同じ姿をした男が居た。
「何がどうなって……説明しろ!」
「了解した」
 パニックを起こしかかっている男に、バブリードは1から丁寧に説明をする。メタモル星は化学が発達しており、今回、調査に辺り、危険が無いようにバブリードに与えられた能力は、現地人と同じ姿、身体能力を持つ事が出来、安全に調査を行えると言う物であった。
「私が調査している間、君には私と同じ能力を共有する事を見返りとして与える」
「それはつまり、俺も他人になれるって事か?」
「その通り、相手に触れることで10分後には、その人になる。ただし、君の場合は30分経つと、元の君に戻るがな」
 バブリードの言葉に、男は頬を綻ばせ、両手を挙げる。
「ハハハ! やったぜ! これで、アイツやコイツにリベンジ出来る!」
 男は今までやられた恨みを晴らすチャンスとばかりに、跳ね上がって大喜びしていた。
「喜んでもらえて何よりだ。しかし、この能力にはデメリットもある」
「デメリット?」
「初めの変身体とは全てを共有してしまうのだ。つまり、この場合は私が怪我を負えば、君も怪我を負う、君が怪我を追えば私も怪我を負う。あと、私が調査を終えた時点で君の能力は消え……」
「そうかい、分かったよじゃあな!」
 バブリードの話を話半分に聞き、男は飛び出して行く。
「さて、私も調査を始めるか」
 バブリードも男の姿でアパートから出て、調査を始めようとしていた。

種別名シナリオ 管理番号215
クリエイター天海月斗(wtnc2007)
クリエイターコメント2つ目のシナリオになります天海月斗です。

ご覧の通り、バブリードの協力者となった男は、かなりの乱暴者で、変身能力を使って喧嘩をしまくる事は確実です。

一方のバブリードも地球の文化になれず、トンチンカンな事をするでしょう。男を止めるも良し、バブリードの調査を早めに終わらして帰らせるも良し。この2人がバカな事をする前に銀幕市に広がる被害を最小限に留めて下さい。

では皆様のプレイングに期待をしております。

参加者
ランドルフ・トラウト(cnyy5505) ムービースター 男 33歳 食人鬼
神月 枢(crcn8294) ムービーファン 男 26歳 自由業(医師)
<ノベル>

 良く晴れた昼下がりの銀幕広場。ランドルフ・トラウトは唐辛子煎餅を食べながら歩いていた。
「辛味が強すぎですね……」
 ランドルフは煎餅の評価を下すと、手帳を取り出し煎餅の総評を事細かに書き記す。
「今回はハズレです……ん?」
 気落ちしていたランドルフだったが、前方の人だかりが気になって、向かうと、1人の青年が信号機によじ登り、辺りを見回していた。人々は青年を気味悪そうに見ていた。
「あの臭い……皆様、失礼します。すいませ〜ん」
 人々を掻き分け、ランドルフは青年に声をかける。声に気付いた青年は信号機から降りてランドルフの前に立つ。
「何かご用ですか?」
「それは公共の物なので、やめてもらいたいのですが……」
 ランドルフが話し出すと人々は立ち去り、2人だけで話し合う。
「そうですか……知らぬ事とは言え迷惑をかけました」
「いえ、分かってくれれば良いんですよ。ところで今日は?」
「実は……」
 青年はランドルフに自分の正体、目的を話す。
「調査ですか……今の銀幕市でそれは大変でしょう?」
「どう言う事です?」
 不思議がるバブリードに、ランドルフは丁寧に銀幕市の現状を伝えた。
「つまり街全体が魔法にかかっていると言う訳ですか?」
「では私もお手伝いしますよ」
「お願い出来ますか?」
 そう言いバブリードはランドルフに手を差し出す。
「君達の星での友好の証だろう?」
「その通りです。バブリードさん」
 ランドルフは差し出された手を取り、2人は硬い握手を交わした。
「では早速……」
「見付けたぞ!」
 ランドルフがバブリードを連れ、歩き出そうとした時、所々に怪我を負った、柄の悪そうな青年がバブリードを睨みながら向かって来る。
「さっきはよくもやってくれたなテメェ!」
「喧嘩はいけません!」
 青年がバブリードに殴りかかろうとした時、ランドルフが2人の間に入り、青年を止めた。
「問題があるのなら徹底して話し合いましょう!」
「ハ、ハイ……」
 2m近くあるランドルフに言われ、青年は完全に驚き、ランドルフに従って話し出す。
「昔、因縁を付けられたとかで、そいつに先程ボコボコにされまして……」
「そのような事をしたのですか?」
 青年の言葉を信じ、ランドルフはバブリードを悲しそうな目で見る。
「ふむ。それは恐らく、協力者の彼だろう」
「協力者? どう言う事ですか?」
 ランドルフに聞かれ、バブリードは一番初めに、自分の能力を与えた男に付いて話した。
「バブリードさん、すいませんが調査は男性を止めてからでも良いですか?」
「当然だ。これは私の責任だ」
 ランドルフとバブリードは男を止める事にして、ランドルフは青年の方に体を向ける。
「ですので教えて下さい。貴方の身に起こった事を!」
「ハイ……」
 真剣な表情のランドルフに青年は怯えながらも、自分が男にされた事を事細かに2人に伝えた。



 『神月診療所』と立て看板がかけられている手狭な診療所の中は、柄の悪そうな青年達で溢れていた。
「聞いて下さいよ。神月さん……」
「何でも半年前、軽く笑っただけでこれですよ……」
「俺なんか、足を間違えて踏んだってだけで……顔ボコボコだぞ」
 神月枢は青年達の愚痴を聞きつつ、全員の治療に当たっていた。全員が顔も知らない大男に、身に覚えの無い事で殴られ、神月は不思議に思い、戸棚から今まで自分が手がけた仕事のファイルを取り出す。
「1人ずつ、詳しく聞かせてもらっても良いですか?」
 神月は青年達の一語一句を全てメモに取り、聞き終えると、ファイルを開き真剣な目付きで見始める。
「今までの話から考えて……彼ですね」
 神月が指差した男性は、昔、神月が制裁を加えた『木村』と言う男性であると推理した。
「ちょっと待って下さい! 俺がのされたのは木村のクソ野郎とは全然、別人でした!」
「しかし君の証言は、木村さんにした事と合致しています。街全体が魔法をかけられた場所です。何があってもおかしくないです」
 神月は青年に迫力のある笑顔で返し、青年を軽く震え上がらせる。
「何をすべきかは見えました。すぐに木村さんに制裁を加えますから、皆さんはここで」
 顔はにこやかだが、迫力があるオーラを出している神月に、青年達は無言で頷き、出て行く神月を見送った。



 神月は仲間達に呼びかけ、銀幕市の各所に散らせ、情報を待ちつつ、自身もくまなく歩き回り木村を探す。
「おじさん、良い?」
 後ろから聞こえる声に神月は振り向いた。そこには、背中に大きな水鉄砲を背負った小学3〜4年生くらいの活発そうな少年が居た。
「どうしたんだ、僕?」
「ばーん!」
 神月が話すのと同時に、少年は水鉄砲を神月に向け、神月の顔に勢い良く水を浴びせた。
「が! ちょ……ちょっと!」
「ばーん! ばーん! ばーん!」
「待ちなさい!」
 神月は少し声を強め、少年の水鉄砲を止めさせ、ハンカチで顔を拭きながら少年に話す。
「ダメだぞ僕。お兄さんだから笑って許せるけど、これが怖いおじさんだったら、こうはいかないぞ。こう言う事は顔見知りだけにしてだな……」
「どーん!」
 神月が丁寧に話している途中で、少年の全体重が乗った蹴りが、神月の脛に入った。
「が……くぅ!」
 神月は苦しみ、その場でうずくまる。
「わ〜い!」
 少年は笑いながら手を大きく広げて走り、神月の前から姿を消した。
「何がどうなって……ハイ?」
 混乱している神月の携帯が鳴り、震える手で神月は電話に出る。
「何? 他人に変身出来る能力を宇宙人から授かった?」
 バブリードの事を知った仲間が、それを神月に伝える。事実を知ると神月は携帯を乱暴に閉じ、ワナワナと体を震わせながら立ち上がる。
「ここまでだ……俺の情報網から逃げられると思うな!」
 神月はヨロヨロと立ち上がり、仲間達にメールを送り、新しく指示を出した。



「クソ! 何度も逃げやがって……」
 あれから神月は何度か、木村を追い込むが、その度に別人に変身され見逃してしまい、体力的に疲れが見え出した。
「一瞬で良い、動きが止まってくれれば後は……」
 荒い息遣いでうつむく神月の携帯が鳴り、億劫な表情で出る。
「何? 何か分かったの?」
「あなたが神月さんで良いですか?」
 電話の相手は聞いた事が無い男の声だった。
「どちら様ですか?」
「失礼しました。私の名前はランドルフ・トラウトと申します。貴方に協力したい」
 『協力』と言う言葉を聞き、神月は呼吸を整えて立ち上がり真剣に話しを聞く。ランドルフは自分達の状況を神月に話し出す。自分達も木村を探している途中、神月の仲間と知り合い、自分達の事を話し、現在に至った事を伝えた。
「探す方はお任せします。足を止めるのは我々に任せて下さい」
「分かりました。見付けたら、また連絡入れます」
 そう言って神月は電話を切り、再び木村を探して走り出した。



「見付けました!」
 その後、仲間達との連携で神月は木村を見付け、元の姿の木村を追いかけながら、ランドルフへ電話をかけていた。
「ダメだ! また巻かれる!」
 あと一歩の所で、木村に大通りへ入られ、ここで変身が完了し木村は再び誰かになって雑踏に紛れた。
「大丈夫です。任して下さい」
 そう言いランドルフは手さげ袋から、唐辛子煎餅を数枚、取り出す。
「バブリードさん……失礼します!」
「な? 何をだ? ゴォ!」
 状況を飲み込めないバブリードに、ランドルフはバブリードの口に無理やり、煎餅を詰め込む。
「グォ! 何だこれは……」
 バブリードは初めて味わう『辛い』と言う感覚に苦しみ、煎餅を吐き出そうとするが、ランドルフに両手で口を押さえられ出来なかった。
「今です! そちらで口を押さえ苦しんでいる人は居ませんか? それが彼です!」
 ランドルフに言われ、神月が辺りを見回すと、口を押さえて涙ぐむスーツをきっちりと着込んだキャリアウーマン風の女性が目立った。
「ええ、確かに……」
 疲れもあり、ヨタヨタと神月は木村に近付くが、木村も痛む口を押さえ、必死に人ごみを掻き分け逃げ延びようとする。
「お願いします!」
 再び木村を見失いそうになり、神月はランドルフに助けを求める。
「分かりました。バブリードさん、再び失礼します!」
「今度は何を……うぉぉ!」
 ランドルフは痛む口を押さえているバブリードに手を伸ばし、バブリードの体を指でくすぐり始める。
「わぁぁ! 何をする! この体には刺激が……わははははは!」
 ランドルフのくすぐりに、バブリードは悶絶して大笑いする。
「神月さん、どうですか?」
「バッチリです!」
 電話で確認するランドルフに、神月はテンションが高い声で返す。神月の後ろには腕をガッチリと決められ、大笑いしている木村が居た。
「さて、ちょっと付き合ってもらいますよ……」
「い……やだ……」
 木村は笑いながらも否定するが、神月は聞かず冷淡な笑みを浮かべたまま、木村を人ごみの無い路地裏へと連れて行く。



「どうしましょうか?」
 人の居ない路地裏で、神月は元の姿に戻った木村の首を締め上げながら、電話でランドルフにこれからの事を話す。
「暴力はいけません! 彼がした事に対して、それ相応の事を私がしますから!」
「そうですね……」
 神月は木村の首にかける力を強めながらも、ランドルフの提案を受け入れようか迷う。
「そうですね……分かりました。処分に付いては任せます。来るまでは私が見張っていますので」
「ありがとうございます!」
 ランドルフは元気良くお礼を言い、その間も神月は木村の首を絞め、木村を気絶させた。



 神月は、意識が朦朧としている木村の上に座って、ランドルフを待った。すると目の前に2m近い、スキンヘッドの大男と姿形が木村と瓜二つの青年が、神月の前に現れた。
「神月枢さんですね?」
「あ……ハイ」
 ランドルフの姿に、神月は圧倒され、少し気の抜けた返事をしてしまう。
「だけど……何で?」
 自分の動揺を知られたくないのか、神月はバブリードの姿に疑問をぶつける。
「それに付いては話します」
 バブリードはこれまでの事を神月に話す。自分が木村の姿を得る為、木村に自分と同じ能力を与えた事、感覚の共有、自分の目的、全てを神月に伝えた。
「君にも迷惑をかけて……」
「良いんですよ。それよりも……」
 深く頭を下げるバブリードを止め、神月は自分の下に居る木村を指差す。
「電話でも伝えましたが、これの処分は全て任せます」
 そう言って、神月は木村から退き、足で軽くランドルフの方に蹴飛ばす。
「クソ!」
 一瞬の隙をついて、木村は一行から逃げ出そうと走った。
「逃がしません!」
 ヨタヨタと覚束無い足取りの木村を、ランドルフは追い抜いて大通りに出る。
「ざまぁみやがれ! 逃げ切って、また変身してやる!」
「そうはいきません!」
「え? グォ!」
 木村が前を見ると、目の前に『止まれ』の文字が現れ、それに木村は激突し、再び気を失った。
「何をしたんですか?」
 神月の疑問に、ランドルフは『止まれ』の標識を担いで現れた。
「これで動きを封じましょう、詳しい事を教えて下さい」
 ランドルフは怪力で飴細工のように標識を曲げ、木村にグルグルと巻き付ける。



「なるほど……非道の限りを尽くしてますね」
 ランドルフは神月から木村の行動を聞き、呆れ顔になっていた。木村は変身能力を使い、これまで自分に酷くした人達に復讐をしていたが、そのほとんどが、逆恨みで、報復も度を越した内容であった。
「彼のした事は許される事ではありません……」
 ランドルフは体を振るわせて体全体の筋肉が二回りほど大きくさせ、白目になり牙が生えた。
「何をするつもりだ? 止めろ!」
 ランドルフの姿に木村は恐怖し、足をバタつかせて必死に逃げようとする。
「ダメです……お仕置きです!」
 ランドルフは両手で木村を掴み、そのまま上空へ放り投げ、あっと言う間に木村の姿は見えなくなった。
「このままお星様になったとか……」
 ランドルフの姿に軽く怯えながらも、神月はランドルフに木村の事を聞く。
「大丈夫ですよ。下がって!」
 ランドルフに言われて神月は下がり、ランドルフは腕を大きく広げ、落ちて来る物を受け止めようとする。
「ハイ! キャッチ!」
 辺りに轟音が響き、バブリードと神月は思わず耳を塞ぐ。砂埃が舞う中、ランドルフは元の姿に戻っており、2人の前に立った。
「後は対策課に任せましょう」
 受け止めた物は木村で、目は白目を向き、口からは泡が出て、髪は突風で逆立っていた。感じた恐怖が相当な物だという事が一発で分かり、神月は黙って頷く。



 対策課の職員に木村を預け、一行は対策課を出て、これからに付いて話し合う。
「本当に私のせいですまない」
 バブリードは改めて2人に頭を下げる。
「全部、過ぎた事です。もうやめましょう」
「それよりも調査に来たんですよね? 俺達で案内しますよ」
 ランドルフと神月はバブリードを許し、2人で銀幕市の案内をしようとする。
「お願いしてもらっても良いのか?」
「勿論です!」
 2人の元気な声に、バブリードは励まされ、3人で調査へと向かった。



 バブリードを連れ、2人は銀幕市の名所を案内しだしたが、地球の文化が全く分からないバブリードに2人は振り回されっぱなしであった。例えばスーパー『まるぎん』では。
「清算が済んでない物を勝手に食べないで下さい!」
「ランドルフ、この人は何を怒っている? これは皆に提供する品ではないのか?」
 星砂海岸では。
「神月、ここの泉は人々が喉を潤すにはきつ過ぎないか……」
「海水を飲まないで下さい! ほら吐いて!」
 聖林通りでは。
「ランドルフ! 私がこの不治の病の彼女にしてやれる事は無いのか?」
「それはドラマです。迷惑ですから店頭で騒がない方が良いですよ」
 このような感じで、騒動ばかりを巻き起こし、2人とも疲れが顔に出始めていた。
「2人ともすまないな」
「いや……良いんですよ」
 迷惑をかけていると言う実感はバブリードにもあり、謝罪するが、それを受け入れるだけの気力は既に2人には無かった。
「では最後だ。この街で一番、見晴らしの良い場所を教えて欲しい」
 2人は杵間山へバブリードを連れて行く。



「ここなら、街が一望出来ますよ」
 ランドルフは絶景のポイントを指差し、全員でそこへと向かい、景色を見た。
「これで全ての調査は終わった……」
 バブリードは夕焼けに染まる街を見ると、穏やかな表情を浮かべ、体を木村の姿から元の小さなカメレオンに戻した。
「これは何の調査なんです?」
 最後にやった事が分からず、神月はバブリードに聞く。
「この星は美しい。ここまで穏やかな景色を見せられるんだ。この星は大丈夫だという事が分かった」
 そう言うと、バブリードの前に乗って来たシャトルが着陸してドアが開く。バブリードはそそくさとシャトルに乗り込み、出発する直前、2人の方を向く。
「今日はありがとう。君達の事は永遠に忘れない」
 バブリードの穏やかで優しげな笑みを見て、2人は今までの疲れも忘れ、バブリードに言葉を返す。
「私もバブリードさんの事は忘れません。また来て下さい」
「でも、その時はもう少し、事前に勉強して下さい」
 ランドルフと神月の言葉に笑顔で返し、バブリードのシャトルは空高く飛び上がって行った。シャトルが見えなくなると、2人は苦笑いを浮かべ、軽く溜息をついた。
「全く、今日は騒がしい1日でしたね」
「そうですね。どうです、打ち上げとして、ちょっと付き合いませんか? 美味いラーメン屋を知っているんですよ」
 神月の誘いに、ランドルフは頬を綻ばせる。
「では食後には上品な味のケーキはどうです? 美味しい所を知っていますから」
「良いですね。行きましょう」
 2人は肩を並べ、仲良く杵間山を降りて行った。空は暗闇に染まり出し、星が輝き出した。その星空の中にあると思われるバブリードの星も、2人を祝福しているように輝いていた。

クリエイターコメント今回も全力で作りました。楽しんでもらえたら嬉しいです。
公開日時2007-09-24(月) 21:10
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