★ 銀幕市最強覆面レスラータッグマッチッッッ!!! ★
クリエイター諸口正巳(wynx4380)
管理番号100-7185 オファー日2009-03-25(水) 23:13
オファーPC 赤城 竜(ceuv3870) ムービーファン 男 50歳 スーツアクター
ゲストPC1 クラスメイトP(ctdm8392) ムービースター 男 19歳 逃げ惑う人々
ゲストPC2 ルイス・キリング(cdur5792) ムービースター 男 29歳 吸血鬼ハンター
ゲストPC3 神宮寺 剛政(cvbc1342) ムービースター 男 23歳 悪魔の従僕
ゲストPC4 桑島 平(ceea6332) エキストラ 男 46歳 刑事
ゲストPC5 ケイ・シー・ストラ(cxnd3149) ムービースター 男 40歳 テロリスト
<ノベル>

『銀幕市最強の覆面レスラーを見たいかァーーーッ!!』

 うぉぉぉぉおおおおおおおおーーーッッ!!

『オレもだ! オレもだ、みんな!!』


『全選手入場!!』


『ヒーローに中の人などいないッッ!! 幹部の中にも人などいないッッ!!
 それをすべてのちびっこたちに知らしめたい!!
 赤き彗星 レッドオヤジマンだァーーーッ!!』

『メイドの土産にウサ耳とはよく言ったもの!!
 ツンデレ接客の奥義が今実戦で爆発する!!
 ラブリー★PARADAISEだァーーーッ!!!』

『弱ァァァァァいッ説明不要!! 身長172cm!!!
 戦いたくないのにここまで来たッ
 九十九 軒だァーーーッ!!!』

『わりと暗い設定はどーしたッ 銀幕市のカオスメーカー!!
 オレを驚き呆れさせる奴はいないのか!!
 漆黒の蝶々仮面 ナイト・バタフライだァーーーッ!!!』

『組み付きしだい投げまくってやれるもんなら投げまくってやる!!
 よくわからんが自分を試しに来たッッ
 一応やる気満々 クワシマンだァーーーッ!!!』

『プロの戦闘方法を見せてやる!!
 まさかこの男がきてくれるとはッッ
 世界がそれを死と叫ぶ、漆黒のサンボマスターだァーーーッ!!!』

『……ッッ  どーやらもう到着が遅れたファイターはいないようですッッ 説明不要・理解不要の戦いは今ここから始まるのですッッ』



 ……何が起こっているのかわからねーと思うが、リングに上げさせられた当の6人にも、自分の身に何が起こっているかわからねーのだった。
 確か赤城竜は、街中でテロ集団『ハーメルン』とモメているようでモメてない桑島平を見つけたのだ。桑島は『ハーメルン』が町のド真ん中でパルクールの訓練なんかを始めたので、子供やクラスメイトPをいたずらにおびえさせたため、警察として注意していた。時間はちょうど昼時で、神宮寺剛政はワゴンでフライドポテトとホットドッグを買っていた。そこで、警察からお叱りを受けているテロリストたちを眺め、クラスメイトPが持っていた九十九軒のオカモチを見て、ラーメンにすりゃよかったと後悔しているところだった。ニンニクラーメンチャーシューどっさりのラーメン食べたい、と。ルイス・キリングは『ハーメルン』のパルクール訓練をどっかのチームのパフォーマンスだと思って面白おかしく見物していたのだが、それを国家権力によって弾圧されたような気がして、後ろから野次を飛ばしていた。
 それが今はどうだ、なぜか観客席満員御礼のプロレスリングではないか。何となく場所は地下っぽく、アングラな雰囲気が漂っている。観客のテンションは総じて高く、ルイスはほとんど条件反射で、投げキッスやガッツポーズで声援にこたえているのだった。

 ん?

 いや?

 よくよく思い返してみると、ちょっとにぎやかな銀幕市の一画に、チラチラッと銀色の紙ふぶきが舞ってきていたような。
 そしてその紙ふぶきの中、唐突にトントンとマイクを叩いてマイクテストを始めたメガネの男がいたような……?
 次の瞬間、現在のプロレスリングだ。
「あ……あいつだ!」
 真っ赤でド派手な覆面の赤城が、びしりとリングサイドの実況席を指さす。確かにそこには、ヘッドセットをつけたメガネにスーツの、いかにもな実況アナが座っていた。彼の横にはやけに美しい美女(=頭痛が痛いレベルの間違った日本語)が座っており、美女の横には野獣みたいなマスクと体格の男が座っている。すごい毛深い。たぶん解説の人と彩りだ。
「オイこらッ、てめぇオレたちに何しやがったー!?」
『おおっと、レッドオヤジマンの闘志は絶好調ッ! これはいい試合が期待できそーですッ、いや期待どおりにしてもらえないと困るのですッッ!』
 赤城の凄みにもアナはぜんぜんまったく動じない。隣の彩りもきれいな顔でニコニコしているだけだ。赤城はロープに両手をかけて、がっくり肩を落とした。闘わねばならないというのか。唐突すぎやしませんか。なんでこんな目に。
 しかも、いつの間に誰の手によって着替えさせられたものか、全員覆面レスラーっぽい格好になっている。洗脳まではされていないようなのが(ノリのいいルイスはべつ)救いかもしれないが、この恥ずかしさでは、むしろ意識がないままトチ狂っ――じゃなくてノリを合わせていられたほうがシアワセだったかもしれない。
 覆面レスラーとしての役割を与えられた6人の出で立ちは、お約束のガウンを着ていたり上半身裸だったりと色とりどりだ。覆面をしていても、その体格や特徴ですでに正体がバレバレなのだが、たぶんそこもプロレスの「お約束」なのだろう。
 クラスメイトPはどう見てもレスラーには向いていない体格だし、桑島も年齢のせいで若干あちこちたるんでいるようないないような感じなのが心配なところだ。つーかこのふたり以外筋骨隆々であり、パンチで人を殺せそうだった。冷静に考えたら、一部の中の人が吸血鬼狩れる半吸血鬼だったりすごい悪魔との契約者だったりセガールレベルのテロリストだったりすんのってヤバくね?
『そんなことはなァァァァーーーいッ!』
 そうですかわかりました。
「なんだこれは。貴様は何者だ?」
「おまえストラだろ」
「なぜわかった」
「それ覆面じゃねェもん」
 人間、あまりにも理解不能な出来事に巻き込まれると、逆に冷静になるものだ。桑島はストラの顔面を指さした。ストラがかぶっているのは確かに覆面ではなく、いつも胸や背中にブラ下げているガスマスクである。ただ、それを言う桑島もかぶっているのはレスラーの覆面というか、強盗やテロリスト御用達の目出し帽なのだが。
 ストラはぺたぺた顔(もとい、マスク)を触って、自分が何をかぶっているか理解すると、ガスマスクを外そうとした。
『ぉおおっとォーーーッッ!!』
 ずドばーーーーーんッ!!
「ひぇあああああああ!?」
 世にもあわれな悲鳴を上げたのはクラスメイトPだけだ。しかし、悲鳴を上げてもおかしくはない大爆発だった。リングの周囲や花道の脇には、炭ガスの噴出孔と花火が仕掛けられていたらしく、それらが一斉に火と煙を噴いたのだ。それはそれはものすごいエフェクトで、リングサイドの観客が数人吹っ飛んでいた。
『こォれェはいけませんんん! 覆面をかぶっていない覆面レスラーはただのレスラーだ! いや、この場合だとただのムービースターだッ! そォれェはァルール状許されませんッッ!! ここはッ!! 銀幕市最強の覆面レスラーを決めるッ!! 漢の戦場なのですからァァァアアーーーッッ!!』
「うぉおおおおおおおーーーッッ!!」
「そーだそーだーッ!」
「そのとーりだーッ!」
 相変わらず何が起こってるのかわからねーが、6人は少しずつ理解しようとし始めていた。
 たぶんここはムービーハザードの中なのだろう。ロケーションエリアの中というのも考えられる。さっきから頭上にガンガン降ってくる、このハイテンションな実況中継の主だけは、この状況を完璧に把握しているのだろう。彼の凄まじいテンションのマイクパフォーマンスによって、観客のテンションは簡単に操作されているようだ。普通マイクパフォーマンスってレスラーがやるものなんだけども、これをパフォーマンスと言わずして何と言おうか。
「よ……よくわかんねェが、どうやらプロレスやらなきゃならんらしいな。アイツに付き合ってやるか、仕方ねェ」
「そんなぁ! なんで僕が! 僕、出前届けなきゃならないんですよ。ラーメンのびるじゃないですか、チャーシュー16枚入りのニンニクラーメンがぁ! ぅわああ怒られるー!」
「お、おい、揺らすな揺らすな揺らすな、マスクが破れる!」
「P、おまえはいつもどおり巻き込まれただけじゃねえか。くそッ、こんなことになったのも、おまえらが街のド真ん中で曲芸なんかやってるからだッ!」
「れっきとした訓練だ。曲芸ではない」
「みんな、応援よろしくねーッ! ナイト・バタフライ、みんなの愛のために頑張っちゃうわよぉおん!」(指定:語尾にはぁと)(編集より返信:機種依存文字のため再現できません)
「つーかなんだなんなんだお前ら、人の顔見てクスクスクスクス笑いやがってッ、何が言いたいんだ!? あ!?」
「きゃーこわーいラブリーさまー」
「すてきー、ラブリーさまー!」
「誰がラブリーなんだよ誰が!」
『さぁ、6名のファイターの気合は充分でありますッ。早くも挑発合戦といがみ合いが始まっております! しかァしッ! この最強タッグマッチはタッグマッチなのでありますッッ。つまり、現在こうして仲がいいんだか悪いんだかわからない6名は、今! このとき! いきなり! 指定された相手と組み、他の4名をブッ飛ばさねばならないわけなんですドゥ・ユゥ・アンダスタァァァァァンッッ!?』
「「「「「はーーー!?」」」」」「なんだと?」
『タッグは皆さんごぞんじ、偉大なるA★MI★DA神によって決定されますッッ』
『ほっほっほ、わしじゃ、わしじゃよみんな』
「うぉぉおおおおーーーッッ!!」
「アミダさまー!」
「キャーキャーアミダさまーっ、こっち見てーっ」
『ほーっほっほっほ、媚びろー! 媚びろー!』
「アミダさまー!」
「うわらばー!」
『それはA★MI★BA様だァァァーーーッッ!』
 そんなわけで勝手にタッグチームが決められた。世の中は常に理不尽である。
『まずは第一試合で激突することになるAチームとBチームの発表だァァーーーッッ!!』
『Aチーム! クワシマンあんどラブリー★PARADAISE!!』
「おおおおーーーーッッ!!」
「はーッ!?」
「んで、ラブリーなんとかって誰のことだ?」
「お前のことらしいぞ、神宮寺」
「なにー!? だからなんなんだよラブリーって!?」
「よく似合う」
「ンだとこのガスマスクてめェ!」
『Bチーム! 九十九 軒あんどナイト・バタライ!!』
「おおおおおおーーーー!!」
「きゃっ、ツクモちゃん、アタシたちつがいですってよ」
「ま、待ってやめてどうして急にルイスさんそんなキャラにっああっ怒ってるんですねっすいません、弱い僕なんかとタッグですいませんすいませんッ」
『そしてシードとなるCチームは残り2名、つまりッ、レッドオヤジマンとサンボマスターだァーーーッッ!! 赤いッ! いろんな意味で赤いぞォォッッ!!』
「おおおおーーーーー!!」
「ワケわからんがまあいいか、よろしくなストラ!」
「……受け入れるというのか……この状況を。信じられん……」
「リーダー! リーダー! リーダー! リーダー!」
「皆殺しだーッ、行けぇぇえリーダー!」
 リング上の5名(ロープに登って観客の声援に応えているルイスを除外した数)はぎょっとしてその声がしてきたほうを見た。
 ガスマスクたちだった。
 格好はいつものガスマスクなのだが、大興奮の観客に混じって激しい野次やエールを送ってきている。無論エールはストラのタッグチームではなくストラのみに宛てたものだ。赤城はちょっとテンションが下がった。ストラはもっと下がっていた。同志はすっかり状況に流されてしまっているのだから。
『さあ、タッグチームも決まりましたッッ。いよいよッ! いよいよ、銀幕市最強覆面レスラーを決める戦いが始まるのでありますッッッ!! 10秒後、ゴングだァァーーーッッ!!』


 10秒後。


 赤城改めレッドオヤジマンと、ストラ改めサンボマスターは、見えなくてとてつもない何らかの力により、リングの外に放り出されていた。
 ずどばこーん、と再びリングサイドと花道が派手な火と銀紙を吹く。
 レッドオヤジマンとサンボマスターは身体を起こし、まばゆくライトアップされたリングを見上げた。リングに取り残されているのは九十九 軒&ナイト・バタフライ、そしてクワシマン&ラブリー★PARADISE。ああかわいそうに、九十九 軒、あんなに震えて!
 すっかりこの場の空気になじんでいるナイト・バタフライがとても異常に見える。いや、異常でいいんだ異常で。
「腑に落ちんが、この状況に付き合ってやらねばならんようだな」
 サンボマスターがガスマスクの奥で深ーいため息をつく。どこからかガスマスク連中がレッドオヤジマンとサンボマスターのためにパイプ椅子を持ってきてくれていたので、ふたりは素直に座った。
 ……よく見ると、ガスマスクたちはタオルも持っているし、アイシングの準備も完璧だし、ドリンクも用意している。どうやら彼らもしっかりこのワケわからん状況に巻き込まれているようだ。彼らはセコンドにされてしまっていた。しかしレッドオヤジマンはなんだか疎外感を感じるのだ。このセコンドって、サンボマスターにしかついてないんじゃないだろうか、と。

『レディーーース・エーンド・ジェントルメェン! ウェルカム・トゥ・(聞き取れない)! 
 大変長らくお待たせいたしましたッ! 銀幕市最強覆面レスラータッグマッチッ、ぃいよいよゴングですッ!』

『赤ッコォナァアアア! 九十九 軒&ナイト・バタフライ! 青ッコォナァアアア! 
 クワシマン&ラブリー★PARADISE(以下めんどくさいのでラブリー★パラダイス)(★はハートにしたかったんですけど無理でした)(補足が長いんだよコノヤロー)(今のちょっとアゴ突き出して読んでください)!』

『なおッ、実況席には解説者として、覆面レスラーの神様ミスター砲丸、そして女神ノリクァ・フジャーラさんに来ていただいておりますッッ! ミスター砲丸、ノリクァさんッ! いやー今夜の試合、実に楽しみですねッッ!』
『ウガー(はい)』
『すっごく楽しみですッはいッ』←声明るいけどカンペ読んでる感じ
『さあ……ッ、リングの状況はどうでしょうかッ』
『ウーガーウー(どうやらレッドオヤジマンが何やら指示を出しているようですね)』
『おお……! レッドオヤジマンとサンボマスターのチームはシードというわけですので……今リングに立っているひと組の、勝者が彼らと対戦するわけですよねぇ』
『ウッガガウガガ(まあ普通そうなりますよね)』
『指示を出している……というのは、オレはどちらと闘う覚悟もできていると! どちらも敵であり戦友と書いてともと呼ぶ仲であるとッ! だからお前たちのために、試合をより素晴らしいものにするために指示を出すとッ! そういうことですね砲丸さん!』
『ウーガー(理屈よくわかんないですけどそうなるんでしょうかねえ)』
『レッドオヤジマンの指示によってぇ、どうやらクワシマンと九十九がエプロンに入るようです。これで生身のエキストラと限りなく生身のエキストラに近いムービースターが危険を回避できるかたちになりますねぇ。ノリクァさん』
『そうですね、危険は回避できますよねッ』←ただの鸚鵡返し
『試合は3カウント、1ラウンド1本先取で行われますッ。さぁ、レフェリーも入って、両者睨み合いが始まりましたぁッ!』
『ウガウガウガ……ウオッ(ナイト・バタフライはやる気充分ですね。おっと?)』
『おおっとナイト・バタフライの挑発ゥ! お尻を叩いておりますッッ。ヤれるものならヤってみろと! これにはラブリー★パラダイスも戸惑いを……いや怒りを隠せないかァアッ!?』
『ウーガー(いや、あれはむしろ「ぶって私のお尻ぶって」じゃないでしょうかねぇ)』
 カァァーンッ!
 ワァァァアアアアアーーーッッ!!
『はーじーまーりーましたァァアアアーーーッッ!!』
『きゃああッ、頑張れーッ』←声明るいけどなんか恥ずかしそう
『おおっとー! ナイト・バタフライが前に出るゥ! おおっ、つ・か・み・かかったァァーーーッッ!!』
『ウホッ(それにしても両者とも個性的なコスチュームですねえ)』
『そうですよねぇ、ラブリーさんはかわいくて私好きですけど、バタフライさんはちょっと……ハダカに見えますねぇ』←素で苦笑いしてる
『ナイト・バタフライ、今回の試合には褐色の全身タイツ姿で挑んでおりますッ。これはヘタに地上波で流したら視聴者からお叱りの電話が来るかもしれないレベルッ。でも安心してください、ここは地下の暗黒格闘技場なのですッッ!』
『ウオオガ?(そうだったんですか? だったら解説いる意味が……)』
『対するラブリー★パラダイスはウサミミつきの覆面とレースつきのレースアップブーツ! そしてフリッフリのピンクと紺色のレースのコントラストが美しい、メイドさんを髣髴とさせるスパッツでありますッッ』
『ウガ(いや、あんまりメイドっぽくはないですよね)』
『きゃあっあぶないっ』←何かコメントしようという必死さが伝わる悲鳴
『おおっとー! ラブリー★パラダイス、ナイト・バタフライを投げるゥ!』
『ウガー(これは下手投げですねー)』
「きゃあんっ(はあと)! いたぁぁいっ(はあと)!」
『ナイト・バタフライ、黄色い悲鳴を上げたァーーーッッ!!』
「〜〜〜〜〜ッッ」
『あーっとぉ! ラブリー★パラダイス、悲鳴のあまりのキショさに硬直ゥ!?』
「スキだらけよぉん(はあと)! もらったわ、ア・ナ・タをもらったわぁ(はあと)!」
「おわぁあああ、さっきからクリンチばっかしてくんじゃねェエエエ!! ……耳の後ろに息吹きかけんじゃねェェエエエエエエエエ!!」
 ※クリンチはキックボクシングやボクシングの技です。レスリングは基本的にクリンチの連続で成り立ってます。
「神宮寺! ――じゃなくてラブリー仮面! タッチしろタッチ!」
『おおっとォここでクワシマンが仲間の危機に救いの手を差し伸べたァーーーッッ!!』
「タッチって、こ、こいつがビタッとくっつきやがってそんなとこまでああっちっくしょ離れろ離れろうへァ舐めんな何してんだバッカヤロてめこらこの野郎! うぉぉぉぉ!」
『キャー!』←やけにわざとらしい悲鳴
『ダウンッッ!! ラブリー★パラダイスここでダウンでありますッ!』
『ワーーンヌ!』
「ふぬぉぉぉおお!!」
「うふふふ離さないわ、骨になって灰になっても離さないわよラブリーちゃあん(はあと)」
『トゥーーー!』
「神ぐ……じゃなかったラブリィーーーッッ!! 手ェ伸ばせ! 手ェ伸ばせェ!」
「う……う……海に捨ててぇぇーーー!!」
 バッチーン!
『タァーッチ! ここでラブリー★パラダイス、クワシマンと交替でありまァーーーすッ! いやーミスター砲丸! あの天空の城の名場面を髣髴とさせるタッチでしたねぇ!』
『ウガゴゴゴ(はい、ちょっと萌えました)』
「どりゃああぁぁぁクワシマン見参! もうこうなったらとことん付き合ってやるよッ」
「おーっほっほっほ、相手にとって不測はないわぁん(はあと)。遠慮なくイカせてもらうわよぉん、クワシマぁン(はあと)」
「くっ、こ、こいつ……」
『クワシマン、タッチを後悔しているかァーーーッッ!?』
『ウッガガガ(まあ気持ちもわかりますけどね)』
『がんばれッ、クワシマン!』←とってつけたような応援
「それぇぇぇぇいっ(はあと)!」
「おわー!?」
「だからてめーすぐクリンチすんのやめろって!」
 ※クリンチは(略)
『ナイト・バタフライ、相手が変わってもまったく動じないッッ。クワシマンに抱きついたァァーーーッ!』
「ふが!?」
「な、なんだ!?」
「く……くさぁぁぁあいッ! すっごいッ、もうものすっごい加齢臭ッッ! 血も吸いたくないわッ、いやぁぁぁ九十九ちゃん助けてぇぇぇんん!」
「ええぇぇええ!?」
「か、かれいしゅ――」
『加齢臭でありますーーーッッ!! 吸血鬼のするどい嗅覚と、純血を好むグルメ体質とは、四十路後半突入の男性は相性が悪かった模様ッッ!!』
『ウガー(人間であれば加齢臭の宿命には逆らえませんからねー)』
「お、おい……地味にヘコむぞルイスそれ……」
「あ、あのっいやっどういうことなんですか? 僕試合に出なくてよかったんですよね? どういうことですか、僕も闘えってことですか?」
『キャー、九十九 軒さんが出ましたねー!』←うれしそう
『ここでようやく九十九 軒の登場ですッッ。ノリクァさんは九十九 軒がお好きなんでしょうかッ』
『はいっ! あの母性本能をくすぐところがとってもいいんですっ』←マジでうれしそう
『九十九 軒、クワシマンを前にして生まれたての小鹿のよーに震えているぞォーーー!』
 こーろーせッ!
 こーろーせッ!
 コーローセッ!
 コーローセッ!
 SATSUGAIせよ!
 SATSUGAIせよ!
「ひぃぃぃぃぃ!?」
「なんだッ、急にアングラっぽくなりやがって。みんな無理すんなよ」
『会場からの激しいSATSUGAIコールッッ!! 砲丸さん、これは――』
『ウッガガガ(九十九 軒は嫌われているわけではありません。むしろあれは愛されていることの証なのです。理不尽にやられつづけるシーン、それが九十九 軒の本領が発揮されるシーンなのですから。あのコールは歪んだ愛情表現なのです)』
『なるほどッッ!!』
「く、桑島さん! お願いです助けてくださいっ」
「た、助けるったって……」
「ファイッ!」
「うお!」
『おっとこれは、レフェリーがイラついておりますッッ!! レフェリーのイラつき、すなわちそれは観客のイラつきでもあるのだァーーーッッ!!』
「し……しょーがねーなもう、メガネ! ここはどっちかが勝たなきゃどーにもならねえみたいだ。悪いな、許せ、ごめんなさい!」
「ひぇああああ、やめて、触らないでぇぇぇぇ!」
『クワシマン、アッサリ九十九 軒を抱え上げたァーーーッッ!?』
『キャー、イヤーッ』←浮いた悲鳴
『ウガガー(驚きの軽さですね)』
『さあクワシマン、九十九 軒をどうするというのかー!?』
『ウホッ(おや、両足を掴みなおしましたね……どうやら……)』
「うきゃあああーーーーーー!!」
「どるぁああああああーーー!!」
『ジャ・イ・アン・ト・スゥイイィィィイイイーーーングッッ!!』
 うおおおおーーーーーーー!!
『観客席からのこのどよめきーーーッッ!! 感無量であります! 大技であります! これぞプロレスでございます!』
「うぉぉぉおりゃああああああ――」
 コギグリギュオア!
「――あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッッ!!」
「ぶべぇぇええええぇぇーーー!?」
『おおっとォー! 何と言うお約束ーーーッッ!! クワシマンの腰からすげーヤな音がしましたッッ、マイクさん、音を拾いましたかッッ!?』
(親指を立てる音響係A)
『クワシマン、四十路半ば!! 無念のギックリ腰!! しかぁしッ、九十九 軒も遠心力によって吹っ飛ばされたーーーッッ!!』
「ほぎーーー!!」
「おぅあーーー!?」
『あーっ!?』←半笑いの悲鳴
『ウガーガ(これぞ九十九 軒のなせる業ですね。周囲は否応なしに巻き込まれる)』
『なんというッッ……なんということでしょうッッ。彗星のごとくスッ飛んだ九十九 軒、青コーナーのエプロンに突っ込んだァァァーーーッ!! 顔面からラブリー★パラダイスのブ厚く豊満な胸板に激突ッッ。こォれは両者悶絶ですッッ!』
『九十九さん、鼻とかメガネとか大丈夫かなぁ』←心配そうだけど半笑い
「くぉ、こ、腰が……腰がぁぁ……」
「桑島ァ! 桑島、しっかりしろー!」
『そしてリング上ではクワシマン悶絶中! ああっと、レッドオヤジマンがッ、ロープの間からクワシマンに手を差し伸べるッッ』
『ウガガガゴ(ふたりは盟友なんですよね……AMIDA神も残酷なことをするものです……)』
『うっ……私、涙が……』←ほんとに泣いてるのかどうか声だけでは判別できない
「桑島ぁああ……!」
「あ、赤城さ……腰……腰がほんと痛……」
「張り切って大技なんか出すからだッバカヤロウッ……!」
「ちょっとっ、九十九ちゃん! 早く戻ってきてアタシとタッチしてよぉ! 絶好のチャンスなのに……クワシマンをほーり出してラブリーちゃんと抱き合う絶好のチャンスなのにっ。キィィィィ! こーなったらルールなんか虫よッ! いえ無視よッ! 約束とルールは破るためにあるもの、行くぜシャおらァアアア!!」
『あーっとォ! ここでナイト・バタフライがリングに乱入ゥゥ! プロレスのこういうとこにシビれる! あこがれるゥ!』
『ウガウガウー(醍醐味ですねえ)』
 うおおおおおおおおお!!
 こーろーせ! こーろーせ!
「える・おー・ぶい・いー・ラッ・ブ・リィィィちゃあああん! 九十九ちゃんッどきなさいッラブリーちゃんはアンタだけのものじゃないのよォーーーッッ!!」
「うげは!」
『ナイト・バタフライ、クワシマンを踏み切り台にしてダァァーーーイブッ!!』
「うぉおおおああこっちくんなーーー!!」
『ウッガッガッ(これは大胆な技ですよお)』
「ぶげぇ!」
『おおっとー、ラブリー★パラダイスのカウンターヤクザキックが炸裂ゥゥ! ナイト・バタフライ吹っ飛んだァァーー――――』
『あーっ!?』←一応驚いてるっぽい演技っぽい声
『――と思ったら見事なムゥゥーンサルトォォーーーッッ!!! さすがッ、さすが吸血鬼を狩れる半吸血鬼ッッ! オカマなキャラはキャラにすぎないのかーーーッ? ナイト・バタフライ、軽やかにィィィ――着地ッッ!!』
「ぶげぁぱ!!」
『もとい、着クワシマン! チャクワシマンでありますッッ! 踏まれたクワシマンはぁぁぁ……ああーっと、白目です! 白目を剥いて失神かァァーーー!?』
「クワシマァァァァァアアアアンンン!!」
『レッドオヤジマンの悲痛な叫びがこだまするゥゥゥゥ!!』
「ああん……強烈だったわ……刺激的だったわ……もっと……もっとちょうだい、ラブリーちゃん! こんな四十路なんかには、もう邪魔させないんだからッ」
「て、てめぇえ、仮にも俺の相方だぞ! 許せねェ!」
『ラブリー★パラダイス激怒したァァァァ!! おおっとぉ、何をするつもりだー?』
『ウッガガガ(九十九 軒を利用しない手はありませんからねえ)』
「食らえぃ!」
「きゃーーー――」
『とうてーーーき!! ここで九十九をとうてーーーき!! まるで座布団のよーに九十九 軒が飛んでいきますッッ!!』
「おなめにならないで! ここで必・殺ッ!」
『出たァァーーーッッ!!』
『わぁーっ!』←一応歓声っぽいものを出しとく
「ドMカウンターーーッッ!! あぁんっ(はあと&鼻血)」
 ズドギャアアアーーーーーンンン!!
『説明しよう! ドMカウンターとは、まともに技を食らって吹っ飛びながらも何らかの方法によって相手に自分が負ったダメージの2倍をお返しするというドMな技だッッ! ああッッ、ナイト・バタフライ、鼻血を噴きながらロープに叩きつけられたァァーーーッッ!』
「おぎゃぁぁあああああ!!」
『そしてそしてそして、九十九 軒も今飛んで来た方向を飛んできた速度の2倍の速さでフッ飛んでいくゥゥゥ!!』
「なにィ!? ……ふっ、くだらん技だ!」
「よけろラブリーッッ!!」
「!?」
 ギャウ……ン!!
「ぼべぁぶば!?」
「ぐぁばちゃーーーッッ!!」
 グショメシメメタァァァアッッ!!
『イヤーッ!』←マジ悲鳴だったかも
『お……恐るべしッ、ドMカウンター!! 一瞬にしてリングが血の海になりましたッッ!! 目を覆いたくなるような惨劇! あわれ九十九 軒ッ! さらばラブリー★パラダイスッ!』
「ばっ……か野郎ッ……だから、よけろって……言ったのにこんちくしょおおお……!」
『レッドオヤジマンの慟哭が天井を打ちます……ッッ』
「勝ったぁぁあ! だって立ってるのはアタシだけだもんね、俺様がラストマンスタンディングだもんねッ?! 最後まで立ってたヤツが勝ちでしょ、勝負ってそういうものでしょぉぉぉぉおおおお!!」
『確かにッ、確かに現在リングの上で立っているのはナイト・バタフライだけだッ。華麗に舞う全身褐色の蝶々!! レフェリー、一瞬迷ってぇぇ――』

 カァンカァンカァンカァン!!

 うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!
 おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!

『白熱ッッ!! なんという白熱した試合ッッ!! 第一試合ゴングですッッ!! 勝者赤コーナー、九十九 軒&ラブリー・バタフライのタッグが勝利をむしり取りましたァァーーーッッ!!!』
『すっごーいすっごーいっ』←歓声にかき消される程度の歓声
『ウッガッガッガー(なかなかみどころのある試合でしたねー)』
『いやー砲丸さんッ、まったく素晴らしい試合でしたああッ』
『ウッガッガー(次の試合がどうなるか楽しみですね)』
『クワシマンが担架に乗せられて行きますッッ』
『あー血が出てるぅ』←見ればわかることを言う
『あーっと、エプロンに立っていたラブリー★パラダイスとカウンターに使われた九十九 軒も、意識がないようですッッ。しかし!! 命に別状はありませんッッ。この私が言うので間違いないですッッ。さぁあてッ、息つく間もなく次の試合が始まりますよォォーーーッッ!!』
『あっ! 九十九さんが気がついたみたいですよ』←けっこう嬉しいみたい
「はふっ……? あ、え……? 負けたんじゃないんですか? え、勝ったの? こんな状態でどうやって? あ、待ってください……てことは……また試合に出るってことですかァァーーーッ」
 YES! YES! YES!
「ま……またボコボコですかァァーーーーッ」
 YES! YES! YES!
「OH MY GOD!!」
『10秒後に早くも決勝戦が始まりますッッ!! チャンネルはッッそのままッッ!!』


(流れるテーマソング)
(リング上を歩く謎の美女。掲げているのは『決勝戦』と書かれたボードだ)


「……今のはなんだ、ハプニング集か?」
「いや、死合だ。命を賭けた漢同士の戦いだった。クワシマン……、ラブリー……、九十九……。お前らの仇、必ず討つ! 〈存在しない中の人〉の称号にかけて……!!」
「あのメガネは敵のチームではなかったか」
「リーダー! サンボマスターとして、共産圏の代表として、戦ってきてくださいッッ」
「リーダー! リーダーは無敵です。無敗の王者です。リーダーと戦ったヤツはみんな死んでるから正式な記録に残ってないだけなんですッ。リーダーなら――いや、リーダーとレッドオヤジマンなら、必ずやあのドMを倒せます!!」
「……わかったわかった。ひと暴れすればいいのだな。熱血、私が最初に出よう」
「あ、待て! ヤツはオレの獲物――」
 バシューーーーッッ!

『レディーーース・エーンド・ジェントルメェン! ウェルカム・トゥ・(聞き取れない)! 大変ッ、大変長らくお待たせいたしましたッ! 銀幕市最強覆面レスラータッグマッチッ、ぃいよいよ最終戦ゴングですッ!』
『うわぁっ楽しみーっ』←そろそろ黙ったほうがいいと思う
『さぁーてッッ、決勝戦、どうやら最初にナイト・バタフライと闘うのはサンボマスターのようですッッ。ん? おやっ?』
「ユー! ノー! マスク、ノー!」
「何だ、何が言いたい。ロシア語で話せ」
『おおっと、どうやら今ここに来てレフェリーからのダメ出しのようですね。砲丸さんッ、これは一体――』
『ウガウガウ(マスクですね。ガスマスクは固くて危険ですからね)』
『なんとレフェリー、今さらサンボマスターの「覆面」に物言いですッッ! 最初から言えよッッ!! これを受け、サンボマスターがいったんリングから降ります!!』
「よおしッ、オレが出る! お前はそこでマスク変えてろッ!」
『レッドオヤジマンだァーーーッッ!! その瞳は怒りに燃えているゥゥゥ!! やはりクールなサンボマスターには任せておけない!! ここはオレの怒りを! 収まりきらないこの怒りを! 一刻も早くナイト・バタフライに浴びせたい!! そういったところでしょうかッッ!!』
『ウーガー(そんなところでしょうねえ)』
『カッコいいですねえ……!』←たぶん心にも思ってない
「んもぉ、次の相手はどっちとも加齢臭がしそうじゃなぁい。まぁいいわ。まとめて月までブッ飛ばしてあげるんだからッ(はあと)」
『ナイト・バタフライ、望むところといったところでしょうかッッ!! 第一試合で受けたダメージは回復しているのか? それともドMにとってはあんなダメージなど前菜にもならないとゆーのかァーーーッッ!?』

 カァーーーンッッ!!

 うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!
 おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!
 殺れェーーーッッ!! 殺っちまえぇぇーーーッッ!!
 ナイト・バタフラーイ!!
 レッドオヤジマーーーン!!
 九十九ォォーーーーー!!
 サンボマスターーーー!!

『試合開始だァーーーッッ!!』
「先手必勝よぉぉん(はあと)」
「おルぁあああッ、骨を切らせて肉を断つッッ!!」
「それ逆それ逆赤城さん」
「加齢臭を食らえぇぇええい!」
「ぶごぉ!?」
『なんとォーーー!! レッドオヤジマン、自ら掴まれに行ったァーーー!!』
「てめぇがッ!」
「ぐげ!」
「ニオイにッ!」
「えげ!」
「敏感だってことはッ!」
「おほ!」
「クワシマンがッ!」
「ぢば!」
「死と引き換えにッ、教えてくれたんだァァーーーッッ!!」
「いや俺生きてる! 俺生きてるよ赤城さん!」
「ぎにゃあああーーー!!」
「ああああッバタフライさぁぁん! やられないでくださいッ、でないとまた僕が闘うハメにいッ!」
『猛攻!! レッドオヤジマンの猛ラッシュッッ!! 正拳突きからアッパー昇竜への流れるような瞬殺コンボッッ!! これにはナイト・バタフライも――』
 ぴるぴるぴるぴるぴる♪
 ぴるぴるぴるぴるぴる♪
『ピヨッたァーーーーーーーーーーーッッ!!』
 うおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーッッッ!!
「行けぇぇぇオッサン! もっかいコンボ!」
「行けぇぇぇぇぇブッ飛ばせえええええ!!」
「ぅぉらぁああああーーッッ吹っ飛べーーーッッこのドMがーーーーーッッ!!」
『おおっ……レッドオヤジマンがッ……』
『泣いてる……』←どうやらこれはマジで感動してたみたい
『ウオオ……(うおお……)』
「甘いわぁぁぁぁ!!」
「ぐほォォーーー!?」
「何ィイイイ!!」
「な、なんだってーーー!!」
『なんとぉーーーッッ!! ここでナイト・バタフライ、伝家の宝刀・ドMカウンタァァアアアアア!!! 森崎君……じゃなくて失礼しましたレッドオヤジマン吹っ飛ばされたァァーーーッッ!!』
『ウガウガウガガ(ナイト・バタフライ、レバガチャが得意なんですね)』
「赤城さ……レッドオヤジマーーーーンン!!」
『ああっとー!! なんとッッここでッッ瀕死だったはずのッッ』
『クワシマン……!?』←普通に驚いてる
「づあッ!!」
「おふッ!!」
「な、なんですってーーー!?」
『とめたァァーーー!!! クワシマンがッッレッドオヤジマンが流星と化すのを阻止したァァァッッ!!』
『ウッガー(ここでとめられなければ観客席に衝突していたでしょうね)』
「う、うう……く、クワシマン……なんて無茶しやがる……」
「いいんだ、レッドオヤジマン……あ、あんたは……俺のために涙を流してくれた……だから……」
「ふたりともそこで寝ていろ。私が奴を殺してくる」
 パァン!
『きたァーーーーーーッッ!! ここでマスクを取り替えたサンボマスターとレッドオヤジマンがタッチッッ!! 血だッ、血の宴が始まる予感ですッッ!! サンボマスター、このリングをも惨劇の色に染め上げるのかァァーーーッ!?』
「うふふふ、血なら望むところよぉん(はあと)」
「リーダー! リーダー! リーダー! リーダー!」
『くすっ、かわいいです。あのマスクの人たち』←乾いた笑い
『おやおやッ、セコンドのハーメルンも全員ツンボマスターと同じ覆面……というか目出し帽をかぶっていますッッ。しかもガスマスクの上からかぶっていますッッ。意味がわからない!! 目出し帽とガスマスクという二重構造で顔を隠す意味がわからないッッ!!』
『ウーガー(クワシマンとかぶりますねえ)』
「目出し帽ではない、バラクラバと言え。おい、吸血鬼。茶番を終わらせるとしよう」
「いやん(はあと)こわぃい(はあと)ねえねえ優しくしてぇん(はあと)」
「ダ・ヤア。苦しむ間もなく死なせてやる」
 プ・ン!
『な……ッ、き、消えたッッ……!?』
『へ……っ?』←美女にあるまじき台詞、でもないか
「ほわきゃあ!」
『うぉおおおおーーーッッ!! 投げられたッッこれは完全にチートッッナイト・バタフライ、気がついたときには投げられていたァァーーーッ!!』
『ウッガッ(見えなかったですねー)』
 ビッタァアアアンン!! ゴッキャアアアアス!!
「あああっこのマットの感触ッぐべッ」
「チッ、頚椎を折ったというのになぜ生きている」
『こォれは怖いッ!! ガチですッッガチで殺す気ですッッ!! この漆黒の狂犬をとめられる者はいないのかァーーー!?』
『……』
『……』
「え、ちょ、僕を見ないでください! なんで僕にそんなことができるって思うんですかッ無理ですッ絶対む――」
「おらあああ、リングに入ってリーダーに気合入れてもらえってんだー!!」
「ひゃああああやめてええええ」
『あっかわいそーきゃはっ』←この女ドSです
『なんとッッ、なんということでしょうッッ!! ガスマスクの上に目出し帽の珍妙な集団がッッ、ヒョイと九十九 軒を担ぎ上げぇぇえええ――投げこんだァーーーッッ!! リングの中に九十九 軒も入ったァーーーッッ!! このまま彼もサンボマスターの餌食となってしまうのかーーーッッ!?』
「やめてくださいッッお願いですこのとおりです僕が悪いんですぜんぶ僕が悪いんですッやめて助けて殺さないでえええ」
「おい、スト……サンボマスター! マジで殺すんじゃねーぞ、ルイ……蝶々仮面と違ってそいつは人外じゃねェんだから!」
『もはや誰が敵で誰が味方かわかりませんッ、ラブリー★パラダイスもサンボマスターを制止しているッッ』
「ダ・ヤア、把握した。軽く絞めて3カウントを取ってやる。それでいいな」
「ひぃぃぃ……うぁぁぁ……」
『さ……サンボマスター、バキボキ拳とか首とか肩とか鳴らしながら九十九 軒に近づく……ッッ!!』
『やっちゃえーきゃはっ九十九さんかーわーいーいー』←明らかにドS
「させ、ねェ……! 九十九はオレのッ……俺さまのッ……もんじゃーーーーッッ!!」
「なん……だと……?」
「あーッ、リーーーーダーーーーーーッッ!!」
『ガスマスク+目出し帽の悲痛な叫びィィィィ!! そしてッ、やはりこの男はよみがえったァ……ッッ!! ナイトォーッ・バタフラァァァアアアアアイ!!』
 ズビシバシャーーーーンンン!!
『強烈なァァサマーソルトォォォーーーッッ!!』
「……!!」
「でえええええええ!!」
『サンボマスターもろともッ、九十九 軒を巻きこんでッッ、飛ぶゥーーー!!』
『ウッホッホッ(ロープを狙っていますねー)』
 バイーンン!
『跳ね返ったァーーー!! サンボマスターと九十九 軒、ロープにブチ当てられて対角線上にスッ飛んでいくゥゥーーー!!』
「うお、あぶ……」
「クワシマン! 危ない!」
「れ、レッドオヤジマ……!?」
 ベッキャアアア(ぶっちーん)アアアス!!
「リーーーーーダーーーーーーーーー!!」
「ほヒゃあーーーーーーーーーーッッ!!」
「うおあーーーーーーーーーーーッッ!!」
「ふっ……決まったわ……!」
 うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!
 おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!
『こ、このッ……この、歓声……ッッ!! 皆さんにも届いているでしょうかッッ、この、割れんばかりの歓声がッッ……!! ふ、吹っ飛びました……ロープをブッちぎって……サンボマスターと、エプロンにいたレッドオヤジマンが……!!』
『ウッガガガ(九十九 軒もですね)』
『レッドオヤジマン……最期に……最期に、クワシマンを……腰を痛めたクワシマンをかばって……ッッ』
『……』←絶句。仕事しろ
「勝利ってのは、いつだって……空しいもんだぜ――」
『ナイト・バタフライ……リングに立っているのは、ナイト・バタフライ……のみ……ッッ!! これが……意味することは……ッッ』

 カァンカァンカァンカァン!!

 うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!
 おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!

『ナイト・バタフライッッ!! ナイト・バタフライですッッ!! このドMが! このドMがやりやがりましたァーーーッッ!! ナイト・バタフライこそ、銀幕市覆面レスラー最強の名を冠するに値する戦士であるとッッ……今この瞬間に、決まったのですーーーッッ!!』
『おめでとうございますナイト・バタフライさんっ!』←なぜか半笑い
『ウッホホウガガ(九十九 軒もじゃないんですか? これタッグマッチですよね?)』
『ありがとう……ッッ。ありがとう、戦士たち……ッッ。今宵の戦いを、私たちは生涯忘れないことでしょうッッ!! ありがとう!! 本当にありがとう!! 最後にもうひとつ、ありがとうッッ!! ダァーーーーーッッ!!!!』

 うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
 おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉ…………。

『これでッッ……満足、ですッッ……!! ありがとうッ……!』

 ワー……
  ワー……
   ワー…………。


「熱血。おい、熱血」
「う……ぅーんん……」
「スミルノフ。水筒を貸せ」
「ダ・ヤア!」


「ひでぶ!?」
 顔面に水を浴びせかけられ、赤城はバネ仕掛けのような動きで跳ね起きた。その瞬間、身体じゅうに激痛が走る。まるで全身の骨が粉々になったかのような痛みだ。そんな重傷負ったことないが。
「な、なんだ、何すんだオイ!」
 顔をぬぐって目を開けてみると、目のまわりと口の端にマンガみたいなでっかいアザを作ったストラがそばにいた。赤城の顔に水をぶっかけたのは言うまでもなく彼だ。
 赤城は呆気に取られて、あたりを見回した。
 銀幕市の、何の変哲もない一画……なのだが、今まさに救急車が駆けつけてきていた。クラスメイトPが色んなところから血を流しながらその辺にぶっ倒れている。なぜか笑顔だ。こんな格言がある。「笑って死なれちゃ他人は不気味」。オカモチがひっくり返って、内臓がはみ出していた。いや内臓じゃなくてのびまくったラーメンだった。
 桑島平は、あんまりこういう表現したくないんだけど、 _|\○_ こんな格好で倒れていた。剛政が腰をさすってやっている。そして赤城たちに背を向け、腰に手を当てて仁王立ちし、沈みゆく日を眺めているルイスも見えた。
 何が自分たちに起きたのか一瞬わからなかった赤城だったが、自分の身体のまわりに落ちているものを見ると、音を立てて記憶が戻ってきた。それはそれはひどい目に遭ったのだ。みんなみんな巻き込まれた。こんなのはクラスメイトPだけの専売特許にしてもいいんじゃないかと思うくらい巻き込まれたのだ。
 落ちているもの、それは銀色の紙ふぶきとそれぞれの覆面。
 涙ぐんでひっくり返っていた実況アナの、最後の「ありがとう」が頭の中で響く。
「え、なに? これ俺のか? ……ま、マジで俺、こんなモンかぶってレスリングやってたのか……!?」
 ウサミミつきの覆面を拾い上げた剛政が、今にも泣きそうな声を上げた。息も絶え絶えの桑島から聞いたのだろう。剛政が、すごいフリフリであったことを。
「ほらほら、ケガ人はどんどん運んじゃうぜー。どんどんしまっちゃうんだぜー」
 ルイスがいつの間にか救急隊員を手伝い始めている。最初に救急車に担ぎこまれたのはクラスメイトPだった。見た目は瀕死の重傷だが、どうやらいい夢を見ているらしい。
「ふは……へ……ぼくら、かったんだ……ぼくらがさいきょうなんだ……ふひ……」
 彼の歯と鼻が折れていないことを願うばかりだ。
「うぅ……いだだ……ストラ、世話になったな」
「病院には行かないのか」
「こんなもん、桑島の腰に比べりゃ屁でもねェよ! おーい、桑島ー、生きてるかー」
 赤城は相変わらず身動きできていない桑島のもとへ歩いていく。
 ストラは小さくため息をついて、何もせずに控えている同志たちのほうを振り向いた。
「……全員そのバラクラバを脱げ」
 そして、疲れた声でそう指示をした。


 後日、どこからともなく、ルイス・キリングのもとにはチャンピオンベルトが届いた。剛政、赤城、桑島、ストラのもとには、覆面の雄姿を押さえたスチル(額入り)が届いたという。剛政は壊して燃やしてバラバラにして捨てた。赤城と桑島はちょっと考えてから壁に飾った。ストラも捨てたのだが、ガスマスクの誰かが拾い、皆でこっそり大事にしているらしい。
 クラスメイトPには? あ、どうも忘れられたみたいですね。それか郵便事故だと思います。




〈了〉
 

クリエイターコメント諸口はかな入力なので、「!」を「びっくり」で辞書登録してるんですよ。そしたら今回びっくりびっくりびっくりって打つことになっちゃってすごい時間かかるので、途中から全部●にしてから完成したあと「!」に置換したんですけどね、「228個の修正を完了しました」とか出ました。バキは実はほとんど読んだことないです。
公開日時2009-05-25(月) 19:00
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