★ 笛吹きたちの普通のウオッカ ★
クリエイター龍司郎(wbxt2243)
管理番号938-6506 オファー日2009-01-31(土) 18:00
オファーPC ギル・バッカス(cwfa8533) ムービースター 男 45歳 傭兵
ゲストPC1 ケイ・シー・ストラ(cxnd3149) ムービースター 男 40歳 テロリスト
<ノベル>

 冬至からまだ日が経っていないだけに、ひどく昼が短い。12月25日、この日は朝からずっと晴れていたが、寒い日だった。ギル・バッカスはさすがにコートを着た。というのも、昨夜はいつもの格好でイヴを過ごして、帰り道にカゼを引きかけたからだ。いろいろあって、たまたま強いウオッカを1杯ひっかけていたので、幸い大事には至らなかった。
 白い息を吐き、ときどき寒さに文句を言いながら、ギルは黄昏時の道を歩いた。
 夜が長いのは、彼にとってありがたいことだ。夜は彼の世界だった。
 なにか事件はないかと覗いてきた市役所対策課は、相変わらず忙しそうだった。しかし、歴戦の傭兵にはわかった――殺伐とした緊迫感が、そこにあった。ギルも話には聞いていたが、ムービーキラーとなったフランキー・コンティネントの討伐作戦が、いよいよ明日に迫っているらしい。ギルは討伐部隊には加わっていなかったので、決行日時を始めとした作戦の詳細はよく知らなかった。
(明日、か……昨日はクリスマスだかいう祭りでほのぼのしてたったのに、明日にゃ戦争かよ。つくづく忙しいところだぜ)
 心中で苦笑しながら、ギルは明日の「戦争」に行くメンバーを思い出してみた。何人かとは、いっしょに「仕事」をしたことがある。しかし……いっしょに酒を飲んだ仲なのは、ひとりだけだ。
 ケイ・シー・ストラ。
 作戦は明日だから、いまも本拠地のバーに詰めているだろう。
(まあ、なんとかなるだろうよ)
 ギルは大槍を担ぎ直した。
 ほとんどあてもなく歩いていたつもりだったが、足は無意識のうちにバー〈スティンガー〉につづく道へと向けられていたようだ。わざわざ会いに行って檄でも飛ばしておこうなどとは思っていない。それでも、ギルは、バーから出てきたところのテロ集団と出くわしたのだ……。


「よう、どんな調子だ、野郎ども」
 素通りしてもよかったが、ギルは集団のリーダー格に声をかけていた。
 彼らはとくに急いではいなかったようだ。ケイ・シー・ストラは足を止め、振り返る。相変わらずの無表情だったが、態度はそれほどつっけんどんでもなかった。
「プリヴェット。大槍、昨夜は世話になったな」
「オイ待て、その『大槍』ってのはまさか俺様のことか。名前くらいちゃんと呼べよ。ギル・バッカスだ」
「バッカス? いかにもウオッカに愛されそうな名だ。もっとも、昨夜は貴様がウオッカを愛していたが」
「『すげえウオッカ』な。ありゃ確かに上物だったぜ。……なぁ、いまは持ってねぇのか? 寒くてよ」
「ドミトリ」
 ストラはチラリと背後のガスマスクのひとりに視線を送った。ガスマスクは肩をすくめる。
「昨日飲んだので全部です」
「だ、そうだ。すまんな、酒神」
「……槍から神サマに昇格かい。まー、モノよりゃマシか。仕方ねぇなぁ」
 ギルは自分の呼び方の訂正と、うまいウオッカをあきらめた。
クリスマス・イヴに、クリスマスツリーの森で催されたのは、ほのぼのとしたパーティーだけではなかった。あわやその平和が物騒な集団によってブチ壊しになるところだったのだ。ちょっとした戦争が起こり、円満に解決した。むしろギルはイヴのありふれたパーティーには参加せず、その戦争に加わったのである。
報酬はショットグラス1杯のウオッカだけだったが、ギルはそれで良しとした。それくらい、雪でキンキンに冷えた『すげえウオッカ』がうまかったから。
「あぁ、おめぇさんたちゃ、忙しかったんだったな。酒の話はまた今度にするか」
「明日の作戦のことを知っているのか」
「よっぽどのモグリでなけりゃみんな知ってる。頭数はそれなりに揃ってるみてぇだし、心配はしてねぇぜ。ブチかましてこいよ」
「フン。心配するようなタチでもあるまい」
 ストラの口の端がピクリと吊り上がった。どうやら笑ったようだ。
「言ってくれるじゃねぇか」
 対してギルは、満面で笑い飛ばした。
「で、いまからどこ行くんだ。メシか?」
「われわれはこれより、スターヒルズ・ホテルの偵察に向かう。夕食はその後だ」
 ふうん、とギルは唸って、アゴを撫でた。
 どうせこの後の予定はない。適当にどこかで夕食を済ませて、ついでにどこかで酒を飲み、帰って寝るだけだ。
「俺様ァ、夜目が利くんだよ。お役に立てるぜ」
「ハラショー。では、同行を願おう」
 ストラはガスマスクたちに短い指示を出し、先頭に立った。
 バー〈スティンガー〉はその存在を知る者でなければ立ち入らないような路地にある。周囲は建物に取り囲まれていて、ちょっとした迷路だ。しかし、ストラは勝手知ったる足取りで歩いていく。スターヒルズ・ホテルと〈スティンガー〉の間を、ここのところ一日に何往復もしているようだから無理もないだろうか。
 ガスマスクたちはゾロゾロとリーダーについていく。機械やアリやイワシのように整然とした、「群れ」の動きだ。しかもめいめいが物騒な銃器を手にしている。
 そして、歴戦の傭兵であるギルにはわかった。ストラもガスマスクたちもいたって無表情だが、ピリピリと殺気立っている。とても昨晩雪だるまを作っていた連中とは思えない。
 ギルは歩きながら、無言のガスマスクたちの数を数えた。
 19人だ。
 ん、とギルは軽く首を傾げて、アゴを撫でた。
「オイ、ゆうべ病院送りになったヤツは?」
「ブレイフマンのことか?」
 ギルの疑問に、隣のガスマスクが答えた。
「あぁ、そんな名前だったな。カゼ引いて行き倒れたんじゃなかったのか」
「点滴打ってもらったんだ。いつもどおり共に行動している」
 彼は隊列の前のほうを指差した。ガスマスク連中の格好は、この世界の軍装には詳しくないギルにとって、まるで同じものにしか見えない。ストラでさえ普段は顔を出しているから違いがわかるだけで、ガスマスクをかぶられたら、ひょっとすると見分けがつかなくなるかもしれない。
 アレがそうだと指差されても、ギルにはドレがダレだかさっぱりわからなかった。そのため、ギルは「んあぁ」と奥歯にものがはさまったような返事しかできなかった。
「大丈夫なのかぁ?」
「微熱はあるみたいだが、問題ないさ。カゼなんかウオッカ飲んで寝れば治る」
「……ま、酒がすばらしいモンだってことは認めるぜ。でもよ、ブッ倒れるくらいなんだから、ちっとはおとなしくしてたほうがいいんじゃねぇか?」
「リーダーは無理強いしなかった。だが本人がついて来るときかなかったから、われわれにはどうにもできない。アイツの気持ちもわかるしな」
「ムリしてでもついていきたい上官か、なかなかめぐり合えるモンじゃねぇな。――だが、戦場じゃそうも言ってられねぇだろう。足手まといになっちまってからじゃ遅い」
 ギルが言うと、彼の周囲のガスマスク数人が振り返り、不気味な丸目でジッと見つめてきた。怒っている様子ではなかったが、笑っているふうでもない。彼らは彼らなりに、カゼを引いた仲間のことを心配しているが、同時に信頼もしているようだ。
(コイツらもわかってるらしいな。お小言はこのへんでやめとくか。飛び道具相手はめんどくせぇ)
 ギルがなにも言わずに肩をすくめると、ガスマスクたちもなにも言わずに視線を前に戻した。ギルが口をつぐんだのは、彼らに無言で見つめられたから、それだけではない。
 先頭を行くストラの視線を感じたのだ。
「!」
 不意に、ハーメルンが一斉に足を止めた。ギルには、ストラが片手を挙げてガスマスクたちに無言の指示を出したのが一瞬見えた。
 止まれ、と。
 ビルとビルの間を、ごおう、と冷たい吹雪が駆け抜けてきた。
『フランキーのところへ、行こうってのかい……』
 雪まじりの風に乗って、妖艶な女の声が近づいてくる。
『行かせはしないよ……アタシが惚れこんだ男なんだ。一度も話しちゃいないけどサ……アハハハハハ……!』
 気がつけば、星空は真っ白な雪雲に覆われていた。ごくありふれたビルや建物や狭い路地も、うち棄てられた北国のゴーストタウンのように凍りついて、なかば雪に埋もれている。
 ムービーハザードか、それともロケーションエリアか。どちらにしても、雪の意思は、ハーメルンとギルをスターヒルズ・ホテルに行かせまいとしている。
「フン、日付を間違えやがったか。どうせジャマするなら普通は明日にするだろうが」
「だが、われわれとしては、日付を間違えてもらえたことが有り難い」
 ジャカッ、とストラがガリルARMのボルトを引く。彼とほとんど同時に、ガスマスク19名も銃器を構えていた。
 ギルとストラは、視界が悪くても敵の気配を読み取れる。ふたりの目は、同じ方向に向けられていた。
「オイ……、サッサとケリつけたほうがよさそうだぜ」
 チリチリと、無精髭や髪が凍りつき始めているのを感じながら、ギルは吹雪の向こう側を睨んだ。コートを着ていてよかった、とも思う。気温がどんどん下がっているのだ。冬の高山のレベルに到達するまで、そう時間はかかるまい。
 ギルは大槍を低く構えて走り出した。ストラが彼に続く。
 女の笑い声が聞こえる。
『フランキー……アレほど筋の通った悪役もいないさ……ストラ、アンタは恥ずかしくないのかい? アタシは恥ずかしいね……アンタを見てるだけで恥ずかしいよ……!』
 ゴオオオオオ、と吹雪がいっそう激しさを増して、先頭を走るギルの顔面にぶつかってくる。チッ、とギルは強い舌打ちをして、隻眼を細め、風が来る方向を変わらず睨んでいた。
「奴さん、おめぇさんのことをご存じのようだぜ」
「あのような声の女を悪役会事務所で見た覚えがある」
「どんなヤツだ?」
「――ジェーブシュカ・マロウズ。実に刺激的だぞ」
 ギルにはロシア語などわからない。『寒波嬢ちゃん』『雪女』といった意味合いの言葉であったなど、彼にはわかるハズもない。
 眉を跳ね上げて振り返り、ギルが思わず見つめたストラは、ニヤリと一瞬笑って、ウィンクした。
 女の金切り声がした。
 すばやく前に向き直ったギルの正面に、白銀色の布で胸と「下」を隠しているだけの女が現れていた。髪も肌も真っ白だ。切れ長の目は銀色だった。刺激的かもしれない。しかし、ギルに女の容姿をまじまじと眺めるヒマなどない。
『ここで死にな!』
 白い女は爪の長い手でギルの顔を挟みこみ、クワッと口を開いた。灰色の唇の奥には、氷のキバが並んでいる。
「お断りだ!」
 相手が女であっても、ギルは手加減などしない。ソレが自分に悪意しか持たない『敵』であるならば。
 手よりも先に足が出た。ギルの足はまともに女の腹にめりこみ、女はうめいて吹っ飛んだ。
 間髪入れず、倒れた女にストラがアサルトライフルの銃弾を叩きこむ。周囲には銃声さえ消え入りそうな猛吹雪が吹き荒れている。雪煙が舞い上がったが、血煙は上がらなかった。女の身体から飛び散ったのは、無数の氷のカケラだ。
『許さない……、絶対に許さないよっ! この恥さらし!』
 氷のカケラをまき散らしながら、女は、今度はストラに向かって突進してきた。風向きが変わった。女が走る方向に向かって風が吹いているのだ。
 ソレに気づいたとき、ギルは大槍を投げていた。ストラが一瞬身体を沈め、ヒラリとバック宙した。
 女の断末魔の悲鳴が聞こえ、金属と金属が激突する音が響く。
 吹雪は急速に弱まった――路肩に停められた乗用車と、その乗用車に槍で縫いとめられた女の姿が、雪景色の中に浮かび上がる。車の屋根にはストラが乗っていたが、彼はすぐに音もなく飛び降りた。ギルの目には、そのしなやかな動きが黒いヒョウのように見えた。さっきのバック宙といい、彼はギルが思ったより身軽だ。
 雪の中、ギルはゆっくりと、女と槍に近づいた。
 首をひねって、女が振り向く。
 しかしその表情が見える前に、ギルは大槍を引き抜いていた。女の身体はたちまち氷像のように壊れ、無数の輝くカケラになって、ギルの足元に崩れ落ちる。
 女の首が最後に落ちた瞬間、カララン、と一巻のフィルムがアスファルトの上に転がった。
 雪はウソのように消え失せて、極寒だった周囲の気温が、一気に銀幕市の夜の気温に戻っていく。今夜の銀幕市も、ギルがコートを着るくらい冷えこんでいたが、今はギルとハーメルンにとってホッとするくらい暖かく感じられた。
「……ずいぶんと嫌われたようじゃねぇか。女に」
 ギルは言いながらプレミアフィルムを拾い上げる。
「嫌われるようなふるまいをした覚えはないのだがな」
「まー、そんなモンだ。女ってのは、いつだって野郎にゃ想像もつかねぇことで怒り出すからな」
「流れ弾に当たったとでも思うことにしよう」
 ストラが軽く手を挙げると、たちまちガスマスクが集合した。ケガ人はいないようだったが、ふたりほどクシャミをしていた。
「ハハ、この大事なときにカゼ引くんじゃねぇぞ」
「もう引いてるヤツがひとりいるよ」
「うるさいな!」
「オッ、やる気かこの野郎!」
 たぶんギルの目の前で仲間に掴みかかったそのガスマスクがブレイフマンなのだろう。ストラがキレ気味で一言制止しただけで、取っ組み合いは終わった。
「この道は俺様にも見覚えがあるぜ。近くにいい飲み屋があってな。金も入ることだし、1杯奢ってやってもいいぜ」
 ギルがフィルムを振りながら言うと、ストラは口をへの字に曲げた。
「われわれには偵察任務が――」
「ひどい雪に降られちまったんだ、あったまってからでもいいじゃねぇか」
 ギルが笑う。ガスマスクたちはこの言葉を聞き、ジッと無言でリーダーの顔を見つめた。ストラはなかば彼らの顔を睨み返していたが、すぐに折れて溜息をついた。


 ギルが行きつけの店はアイリッシュ・パブ風の飲み屋で、客のほとんどは欧米人だった。中には海賊と思しきムービースターの姿もあるが、「現実」のヨーロッパ方面から来た人間も少なくはない。
 酒はビール類が豊富に揃っていた。しかし普段ウオッカばかり飲んでいるハーメルンにとっては、ビールなど麦味の炭酸水に等しいだろう。奢ると言ったはいいものの、20人に浴びるようにビールを飲まれてはとんでもないことになる――ギルはハーメルンがメニューを見る前に、サッサと「ウオッカ、なるべく強いヤツ」とフィッシュ&チップスを注文した。
 店員はスピリタスを持ってきた。
「96度だなんて気合が入ってる酒だな。いっぺんにあったまるぞ、コイツぁ」
「貴様も飲め」
「奢られてるヤツが言うことか?」
「いいから飲め」
 ストラはギルのショットグラスになみなみとスピリタスを注いだ。ストラの隣では、ハーメルンのメンバーがスピリタスに火をつけて遊んでいる。店員は注意したがっているようだったが、引きつった笑顔で立ち尽くすばかりだ。
「リーダー、これ火つきますよ火! 見てください!」
「ん」
「ガキか!」
 ストラに注意するふしが見当たらないので、ギルが激しくガスマスクの頭を引っぱたいた。ここはお気に入りの店だ、出入り禁止になるのも火事で失うのもごめんである。
 ストラはスピリタスをすでにショットグラスで2杯あけている。そのペースの早さにつられて、ギルもグラスに口をつけた。
 スピリタスはまるで火を飲んでいるような気分にさせてくれた。うまいもまずいもない。
「かァ、コイツに金払うなら、ビール頼んでお子ちゃま扱いされたほうがマシだ」
「しかし『すげえウオッカ』は平然と飲んでいただろう」
「ありゃあうまかったからなあ。誰かさんのドジでだいぶ減ったんだろ。つくづく残念だ」
「なんだよ、自分のことか!?」
「誰とは言ってねぇだろうが」
「こ、この……」
「ドミトリ。座れ」
「ダッ、ダ・ヤア!」
「……だが、ドミトリが失態を犯さなければ、あのウオッカが貴様の口に入ることもなかっただろう」
「それもそうか。じゃあ礼を言わねぇとな。――おーい、ねぇちゃん、スピリタスもう1本だ!」
 ギルは満面の笑みで、ドミトリの首に腕を回した。ドミトリはジタバタもがいたが、ギルの腕を振りほどけなかった。まわりのメンバーが声を上げて笑う。
 ハーメルンのメンバーは、全員がガスマスクを頭の上に押し上げて、酒を飲んだり、チップスをつまんだりしていた。ギルには、ブレイフマンがどれなのかいまだに区別がつかない。みんな元気そうに見える。ギルにはわからない言葉を交えながら、彼らはほろ酔いで談笑していた。
 そんな彼らは、全員、明日、戦場に行くのだ。
 その考えがフッと頭をかすめたとき、ギルの隻眼はストラに向けられていた。
「戦士よ。明日、貴様の力を借りられないのは少々残念だ」
「……言っただろうが。頭数は充分揃ってる。俺様がいなくたって、なんの心配もねぇ。……行ってこい」
 店員が持ってきた2本目のスピリタスを、ギルはストラに投げよこした。
「あったまったか?」
「熱いほどに」
「じゃ、行くか」
「ん」
 ストラが腰を上げると、19人のテロリストがほとんど一斉に口を閉ざし、ガスマスクを引き下ろした。
 ブーツの重い靴音を響かせながら、彼らが先に店を出て行く。ギルに一言礼を残してから……。
 何気なくその数を数えつつ、礼に軽く答えるギルに、最後尾のドミトリが多めに言葉をかけてきた。
「今度『すげえウオッカ』が手に入ったら、おまえのぶんも確保しておくよ」
「そうかい。んじゃ期待しとくから、二度とヘマしてくれるなよ」
「ダ・ヤア。ごちそうさん」
 アイリッシュ・パブは急に静かになった。一気に20人も減ったのだからムリもない。
 すぐに、もうひとりいなくなる。
 ギルは空になったスピリタスのビンと皿を見て、代金をテーブルの上に置いた。懐のプレミアフィルムが、やけにひんやりしているように思える。
 まだ夜は終わっていない。自分の仕事も終わっていない。
 これから、スターヒルズ・ホテルに行くのだ。明日、彼らと戦えないかわりに、今夜は最後まで付き合うつもりだった。
 冷えた大槍を担ぎ、ギルは馴染みの店を出る。
 たちまち、冬の夜風に熱い身体を撫でられた。
 

クリエイターコメントオファーに加えてNPCゲスト指定、本当にありがとうございます。不可抗力ですがドミトリは後出し死亡フラグになってしまいました。バトルとお酒ということで、熱く書かせていただきました。状況はすごく寒そうですが!
公開日時2009-02-23(月) 18:10
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