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<ノベル>
綺羅星学園 高等部。
春にしてはやや気温の低く、風の冷たいその日。
突然の緊急事態に、その入口は張り詰めた緊張感に包まれていた。
対策課より派遣された職員達が慌しく、これ以上学生や市民が校内に入らないよう門を閉鎖する作業に追われている。
そのロープを潜り、中に入ってきたのは綺羅星学園の制服に身を包む4人のムービースター。
「なんだか、物々しいな……」
白いシャツに黄色のネクタイ、銀ボタンの指定のジャケットという標準的な高等部の男子制服を着込んだ津田 俊介 (ツダ シュンスケ) は、周囲の様子に眼鏡の奥少し不安げな表情を見せながら呟いた。
「まあ、しょうがないんじゃねぇ? 学校が消滅しちまうかもしれないんだし」
ケロリとそう言い放ったチェスター・シェフィールドは、一瞬顔を顰めると指を入れネクタイを緩めた。
ジャケットの前は開け、シャツもズボンから出している。どうやら堅苦しい恰好が苦手なようだ。
「えええっ!?」
そんなの聞いてないよ、と悲鳴を上げる俊介に、心配げにディーファ・クァイエルがその顔を覗き込む。
「心拍数の上昇と僅かな発汗を確認しました。大丈夫ですか、俊介様……?」
具体的な数値を口にする様はどこか機械めいていたが、小首を傾げるその仕種は可憐で儚く、少年というより少女ような雰囲気を感じさせる。
そんなディーファは、ジャケットの下にニットのベストを着用し、ズボンも他のメンバーとは違い一人薄い色の物を履いていた。
時折袖の長さやジャケットの裾を気にしたり、生地の表面を撫でてみたりしている。その表情はどこか少し嬉しそうだ。
「…………はぁ」
対して、暗く重い悲壮な空気を纏っているのは、レイドだ。
シャツとベストにネクタイはせず、ジャケットも袖は通さず肩に羽織るだけ、という彼の恰好は皆と変らず綺羅星学園の制服だった。
他のメンバーはいい。まだ十代の少年達ばかりだ。普通にこの学校に通っているといっても十分通用する。おかしな所はない。制服だって皆似合っている。
しかし彼は、35歳だった。もういい年なのだ。決してこの制服が相応しい年齢ではない。
それは他の誰でもない、彼自身身に染みてよく理解していた。
(耐えろ、俺! これも金の為、生活の為、アイツを食わせる為……!)
対策課ではこれしか依頼がなかった。背に腹は変えられぬ、と渋々引き受けたレイドだが、制服に加え周りは若い子ばかり。
足取り重く、どうしても溜息ばかりが出てしまうのは仕方ないのかもしれない。
「……何だ?」
不意に感じた視線に、レイドは唯一覗く赤い左目を細めた。
チェスターがレイドを見上げ、意味ありげに薄く笑みを浮かべている。
「キツイな、オッサン」
ズバリと言い切られ、レイドは吠えた。
「……しゃーねぇだろぉ! 制服じゃなけりゃ、校内に入れねぇんだからよぉォッ!!」
レイドの叫びに、びくっと俊介が肩を震わせた。ディーファとチェスターを間に、さり気無くレイドとは距離を取っている俊介。
(ゴメンナサイゴメンナサイ、体質なんだ条件反射みたいなものなんだ、でも怖いいぃィィ……ッ!!)
映画『願い』から実体化したレイドは悪魔だ。
そして映画『ガイア』より実体化した俊介は、見た目こそ普通の日本の高校生だが、超能力者だった。
持って生まれた能力ゆえ、どうしても人外の者に対して過剰なまでに反応を示してしまう。
「更なる体温の上昇と発汗、心拍の乱れを確認しました。あ、レイド様からも同じ反応が。皆様…大丈夫ですか……?」
ディーファが薄い水色の髪を振り乱しながら、その周りでオロオロする。
そんな騒がしい4人が潜った門の先には、浦安 映人と沢渡 ラクシュミ (サワタリ ラクシュミ) が一同を待っていた。
「あ、浦安先輩、来たみたい。初めましてー、対策課から派遣された人達ですかー?」
両腕にシトラスバッキーのハヌマーンを抱きしめ明るく手を振るラクシュミは、この学園の高等部一年生だ。
バトミントンの部活で学校に来ていた所、ムービーファンを探し校内を走り回っていた浦安に声を掛けられやってきた。
これから練習する所だったので、彼女は制服ではなく部活用の白い3本ラインが入ったえんじ色のジャージを着ている。
この所、植村に体質の事で相談に乗ってもらう為対策課をよく出入りしていた俊介は、役所で顔見知りとなった浦安の見つけるとすぐさま彼の元に駆け寄った。
「浦安! 学校が消滅するかもしれないって、本当!?」
「え? 植村さんから聞いたろ?」
「聞いてない! 俺イキナリ制服渡されてここに連れて来られただけだし! うう、植村さん酷いよ〜……」
「他の皆は?」
俊介のうろたえた様子に、慌てて浦安は他のメンバーを見回した。
「一応聞いてるぜ。鐘破壊すりゃいいんだろ?」
「俺も詳細は対策課で聞いてきた」
チェスターとレイドが揃って頷く。
「『ロスト・スクール』10年前の邦画、ジャンルはパニックムービーです。街から学校だけが閉ざされた空間として切り取られ異次元に飛ばされる、というストーリーです。映画内ではチャイムの後の低い鐘の音が現象の前兆として描写され、1時間おきに鳴る回数を減らしていき最終的に全て鳴り終わった瞬間、異次元に飛ばされました。今回は、この綺羅星学園高等部全体がムービーハザードの影響で閉鎖されてしまったようです。校内に入れるのは学園の関係者、もしくは制服を着用した者。一度入ったら生徒でも外へは出られません」
データを読み上げるかのように、瞳を閉じ澱みなく依頼の内容とハザードの詳細を語ったディーファは、紫色の瞳を静かに開け今度ははにかみながら控え目に言った。
「植村様からは…鐘が鳴り終わる前に鐘自体を破壊するよう、言われています……」
「異次元に飛ばされちゃうって、具体的にはどうなるのかな」
ディーファの説明に目を丸くして聞き入っていたラクシュミは少し興奮した声を上げた。
彼女自身実際映画は見ておらず、その後の展開や実際このハザードがどうなってしまうのか、知りたいらしい。
「ゴメンンサイ…そこまでは……」
ディーファがやんわりとした笑みで首を左右に振った。
「何ていうか、訳わかんねぇよな。んー、まぁ何とかしないとダメって事は嫌ってほど分ったけど」
チェスターの言葉に、レイドも大きく頷いた。
「このままじゃ俺達もどっか飛ばされちまうってワケだしな」
「俺、植村さんから映画の中の鐘の場所、校門のすぐ上って聞いてきたんだけど……」
俊介の言葉に一同は一斉に上を見上げた。
薄暗い雲の広がる春の空、そこには何も無い。
「なぁんにも、あらへんなぁ」
「え?」
突然背後からの声に、浦安は驚き振り返った。
いつの間に近くまで来ていたのだろう。綺羅星学園中等部の制服を着た長い黒髪の少女が、そこには立っていた。
「何や大変やねぇ。あ、うち花咲 杏 (ハナサキ キョウ) 言います」
青と金の両目を猫のように細め、杏は笑う。
「中等部の見学に来てたんよ、そしたら何や出られなくなってしもうて。うちも鐘探すの手伝うわ」
よろしゅう先輩、と一人一人その顔を順に見詰めながら杏はペコリと頭を下げた。首元のチョーカーが弾んで揺れる。
視線を向けられ、ディーファとラクシュミは笑顔で、チェスターはやや無愛想に、俊介は何故か怯えた様子で顔を逸らしつつ、杏を迎え入れた。
「よろしゅうセンパ……」
不意に杏の言葉が、レイドの姿に止まる。
「…………」
「……何だ」
「……正直キツいなぁ、旦那はん」
「……ううう、煩い言うなぁァ! 依頼だ、解決する為だ、しょーがねぇだろっ!!」
鐘は見当たらない空の下、レイドの雄叫びと笑い声が響き渡った。
「……さて」
気を取り直して、正面を向く。
浦安は教師に事情を説明する為職員室に向かい、既にこの場にはいない。
「そろそろ行くとしようぜ」
チェスターの促す声に、校門の前に集結した一同は揃って目前にそびえる校舎を見上げた。
「う〜ん、チャイムと一緒になっているから放送室だと思ったんだけど……」
職員室で鍵を借り覗いた室内はガランとした。
放送用の様々な機材から漂ってくる独特の匂い。ガラス張りの部屋の向こうは高校にしては本格的な放送室だったが、そこには何も無かった。
一緒に入ってきたチェスターとディーファが興味深げに室内の様子を見渡している。
「ゴメン、違ったみたい」
後ろの彼らに向け、ラクシュミは小さく首をすくめて見せた。
ラクシュミの提案でここまでやってきたのだが、どうやら空振りに終わったようだ。
小さくため息をつくが、すぐさま顔を上げて笑顔で自分を奮い立たせる。
「うん。次、違う場所探してみよう!」
今まで、大変な時でもなんとかなった。だから今回も、きっとなんとかなる。ラクシュミはそう信じていた。
楽天的かもしれないが、これが彼女の笑顔と元気の秘訣だ。
廊下に戻ると、何故かそこにはレイド一人だった。
「アレ? 杏ちゃんと俊介くんは?」
ラクシュミの疑問に、やれやれといった感じでレイドが廊下の先を顎で指し示す。
「まったく、何やってんだか」
「ぎやあぁぁぁっ!!」
「そんな怖がらなくてもええやん。人体模型のジッちゃんやでぇ、仲良くしてぇな〜」
突然奥から物凄い悲鳴を上げ、俊介が駆けてきた。
その後ろから、俊介を追い立てるかのように理科室にある半分臓器剥き出しの人体模型がガションガションと追っていく。
もちろん、それを動かしているのは杏だ。
「コラ! 俊介に杏ちゃん! いい加減にしろ」
レイドの軽い一喝に、俊介は必要以上に「ひぃ」と震え、杏は不満げな声を上げた。
「え〜。ええやん〜緊張してたら上手くいくモンもいかなくなるで〜? 津田先輩がさっきからガチガチやから、緊張解してあげてるだけやん〜」
「わかったわかった」
子供の扱いになれているのか杏の頭部と軽く叩きそう宥めると、レイドは人体模型を彼女から取り上げ無造作に脇に抱えた。
弾みでゴロンゴロンとはめ込まれていた臓器が床に落ち散らばる。
「あ、右心室に十二指腸、膵臓が……」
小さくディーファが呟くが、お構いなしに転がった臓器は足で蹴飛ばしながらレイドは模型を戻す為理科室へと向かう。
その後ろに、何故かチェスターとディーファが揃って続いた。
「ん? なんだお前ら」
「や、学校の中ってこんな風になってんだなーっと思って」
キョロキョロと辺りを見渡すチェスターは、始めこそ強気な顔立ちと物怖じしないキッパリとした口調が印象的だったが、こうして瞳を輝かせ興味津々な顔で人の後ろについてくる様は、幼さを残す年相応の少年に見えた。
興味あって、というチェスターの言葉に、頬を染めながら控え目に同意の頷きを見せるディーファもまた、校内を歩き回れる事が嬉しくて堪らないのだろう。
「僕も、です……」
連れ立って歩く姿は、普通の14歳と15歳の少年だ。
共にそれぞれの映画から実体化したムービースター、当然中身は普通の子供とはまるで違うのだけれども。
綺羅星学園の制服を着て、学校内にいるから尚の事。彼らもこの学園の生徒に見えた。
小さく喉の奥で笑って、レイドは少年達の好きにさせた。
この世界に実体化してから随分友達の増えたアイツも、本当はこの「学校」ってヤツに通いたいのだろうか。レイドは家で自分の帰りを待っている筈の少女の姿を思い浮かべながらぼんやり思う。
少女の制服姿を思い描き一瞬顔が崩れかけ、慌てて表情を引き締めた為、弾みで模型を乱暴に置いてしまった。またしてもバラバラと臓器が転がり落ちるが、大雑把なレイドはいっこうに気にしていない。
折角入ったついでだ、とレイドは少年達に声を掛け、理科室内の戸棚や隣接の準備室などを調べ始めた。
「中々見つからないねぇ」
「え、あ、そうだね」
共に各教室を見て回っていた俊介は、突如ラクシュミに話しかけられ思わず声を上擦らせた。
慌てて周囲を見渡し、いつの間にか杏の姿が見えないことに小さく安堵する。
エキゾチックな雰囲気を持つラクシュミは、俊介にとって同年代の可愛い女の子でちょっと緊張してしまう対象だ。
しかし、杏は……
(ぜ、絶対アノ子、人外だよっ、うわあぁ、どうしようっっ)
背筋を駆け上がる恐怖に、俊介はラクシュミには悟られぬよう体を震わせた。
普通の外見をしていても、中等部の制服を着ていても、分かる。アレは人外だ、物の怪の類だ。
こっちがソレに気付いてるのを察して、向こうも先程あんな悪戯という名の牽制をしかけてきた。
今はフラリとどこかに行ってしまっているが、また戻ってきたらその時はどうしよう、と俊介は震える。
こればかりは仕方がない、彼の体質なのだから。
ああ、と頭を抱えながら、隣の教室の扉を開けた時、
『旦那、旦那! ため息なんかついちゃって、どうしたんっすか?』
カタカタと腰元が揺れ言葉を発しだし、俊介は慌てた。
「え、何? 俊介くん、何か言った?」
「わぁっ、やっ! な、何でもない、独り言! あははゴメン、ちょっとトイレ行って来る……!」
駆け出した俊介は空き教室に飛び込むと、ズボンの後ろから短剣を取り出し眉を上げた。
「コラ、ニア! 人前では話しかけるなって言ってるだろ!」
『でも旦那がため息ばっかつくから、あっし……』
「でもじゃない!」
俊介の手の中でカタカタ震えるのは、黒い刀身に血管のように赤いラインの入った20センチ程の長さのナイフだ。
名前を、ニア・デスという。
多くの血を浴び様々な人間の断末魔を刻んできた為に蓄積された想念が自我を持った喋る魔剣だ。
持ち主の嗜虐心を煽り殺戮衝動を起こさせる、というかなり物騒な呪われた剣だったが、今は俊介の下大人しく支配下に収まっている。
しかし時折、こうやって突然言葉を発しては周囲を驚かせたり不審がらせる、契約者泣かせの非常識な魔物だった。
「ただでさえあのレイドさんとアノ子の事でいっぱいいっぱいだってのに、お前まで……」
『あ、じゃああっしが斬っちまいましょうか、そいつら!』
「コラァ!!」
以前渡り歩いてきたかつての持ち主達の影響で、本当に常識外れで短絡的、殺伐とした魔剣だ。
鐘は見つからないし、あの2人は怖いし、ニアは煩いし。
「ああ、もうどうしよう……」
俊介は教室の壁に寄りかかり、深く深く息をついた。
その頃、魔剣に危うく斬られる事を決定されそうになっていた杏は、階段の踊り場にいた。
階段の窓から、雲間の切れた空の日の光が差し込みそこは丁度暖かく心地良い。
太陽の恵みを全身に受け、両目を細めた杏は猫のように全身伸びをした。
それもその筈、杏は元々五つの尾を持つ猫の妖怪。猫又である。
今は人間の姿をしているが、本来は黒猫。映画『福来町幸せ壮の住人達』より実体化したムービースターだった。
好奇心旺盛で面白い事が大好きな杏は、嬉々としてこの事件に首を突っ込んだ。
校舎の屋根の上、昼寝していて本当にヨカッタと内心ほくそ笑んでいる。
同行の俊介はどうやら自分の正体に気付いているようだが、あの取り乱す様はそれはそれで面白い。
「さってと。今は人の姿やし、妖力は使えんものね。これなら、人間のお嬢っぽくてええやろ」
楽しげに杏が取り出したのは、部活中のグランドから失敬してきた野球のバットだ。
人間っぽく鐘を壊すなら獲物が必要だろう、という杏の考えである。
自分も異次元に飛ばされてしまうかもしれないという状態で、いかに周囲を化かしたまま事件を解決するかに拘る彼女、さすが妖怪といえる。
杏は、この事件を彼女なりにめいいっぱい楽しむ気でいた。
そろそろ皆の元に戻ろうかと踵を返した時、
「!」
学校内に、その音は響き渡った。
――……キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン
ゴォーン ゴォーン ゴォーン ゴォーン ゴォーン……――……
鐘の音は、5回。
思わず頭に出てしまった猫の耳をしまいながら、杏はその鐘の音のした方に顔を向け眼光鋭くその両目を細めた。
鐘の音を、それぞれの場所で聞いていたメンバーは聞こえた方角をそれぞれに言った。
「西の方角やて! お天道さんが沈む方!」
「いいや、逆方向! あっちだった! 植村さんに聞いていた通り、やっぱり校門の上辺り!」
杏と俊介の意見は全く食い違っていた。
それぞれ猫の耳と、念動力者の走査(ソナー)の力で鐘の音源を聞き分けた2人。どちらも自分の力には自信を持っている。
「ディーファ、どうだった?」
レイドに振られ、ディーファは困ったように両目を伏せた。
「実は…正確に感知出来なかったんです……。屋内でしたから、音が乱反射して機械聴力では捉えきれませんでした。杏様と俊介様、どちらの意見も正しいように思えます……」
控え目に言ってからディーファは脳内にインプットされているデータから、瞬時に綺羅星学園高等部のモデリングを展開させ、杏の言う場所が裏庭である事を告げた。
ディーファは、映画『PERMANENT EMPTY -key』より実体化したムービースターで、機械生命と人間が融合した実験体だった。
彼の体内に巣くうナノシステムが、彼を表面上は完璧な人間、その中身を生きるマシンの生命体と変えていた。
機械の正確さから、ディーファが間違うことは無い。
杏と俊介、それぞれが聞いた鐘の音の場所を手分けして探したが、やはりそこには何もなかった。
「もう、どーしよう!」
校内を走り回ったがそれでも見つからない。焦ってラクシュミは声を上げた。
焦れば焦るほど、事態は悪い方へ転がっていくような気がする。
ラクシュミの足元ではハヌマーンが心配げな瞳で彼女を見上げていた。
「……うん、そうだね。焦っても仕方ないよね」
ハヌマーンをひと撫ですると、うんと大きくラクシュミは頷いた。それから大きな声で、鐘を探す皆に向け声を掛ける。
「皆さーん、一度休憩しませんかーっ?」
「うわっ、デカッ!」
ラクシュミの提案で一休みする事にした一同は、校舎入り口前の階段に揃って腰を下ろした。
「これお姉ちゃんが作ってくれたおにぎり。ハイ、皆さんにもおすそわけ!」
ラクシュミがカバンから取り出したのはバレーボール程の大きさはある、巨大なおにぎりだ。ちょうど3個、えいっと掛け声と共に2つに割りラクシュミは一人一人に手渡していく。
勢いよく齧り付いた杏は、丁度梅干の場所に当たったのかフギャッと猫みたいな声を上げた。
「スゲーな、コレ」
受け取ったチェスターは笑いながら言う。
「何コレあんた一人で食べる気だったワケ?」
「あはは、まさか。流石にあたしも1個が限界」
顔の前で手を左右に振るラクシュミの言葉に、俊介が後ろでこれ1個でも多いだろ、と驚いている。
「もうすぐ部活の大会でね。うちの部、万年地区予選落ちのスゴイ弱小部で、部員もあたし入れて6人しかいないんだけど。どうしても今年こそはいい成績残したいなって。で、休みの日も部活だって言ったら、お姉ちゃんが……」
先日から一緒に暮らすようになった、同じ肌の色の同居人の彼女を思い浮かべながらラクシュミの語尾は小さくなっていく。
今はまだどんな風に接していいのか分からない。決して嫌いな訳じゃないけど、家に一緒にいると緊張に息が詰まってしまう。
だからラクシュミはなるべく家にいないよう、休日もこうして部活や外に遊びに行くようにしていた。
そうしたら、彼女が持たせてくれたのだ。おにぎりを。
「いい姉貴じゃん」
チェスターの何気ない言葉に、そうだよね、と少し心の中が温かくなる。あたしの為に作ってくれたんだ。
「うん! だから、早く解決して、部活頑張らなきゃね!」
ラクシュミは全開の笑顔で頷いた。
「ん、俺も」
指についた米粒をぺろりと舐めながら、チェスターが呟く。
「早く終わらせてゲーセン行きたいし。全速力で調べるとするか」
チェスターの目の色が、遊びから真剣なモードに変った瞬間だった。
「――――来ます」
突如無機質な声で立ち上がったディーファをレイドが見上げる。
「どうした」
そのセリフが言い終わらないうちに。
――……キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン
ゴォーン ゴォーン ゴォーン ゴォーン……――……
鐘の音は、4回に減っていた。
今度こそ、確かにこの場所だと確信し捜索した校門の上。しかしやはりそこには何も無かった。
俊介は飛行(アクセル)で空に飛び上がり、大規模な走査を行うも見つからない。
校内のプリンタに直接アクセスし、ディーファはプリントした脳内データの詳細な高等部展開図を同行者に配った。それを握り締め、一つ一つの教室をしらみつぶしに探すラクシュミとチェスター。
妖気があるのなら、と杏もそっと探るが、その気配はどこからも感じられない。
使い魔であり良き相棒でもある、ケルベロスのヴェルガンダを召還したレイドは先程自分でも感じた鐘の音の発信源を探させた。
しかし、
「ヴェル、どうだ」
首を左右に振る黒き魔物の姿に、レイドは小さく息をついた。
「絶対ここだ、ここだった……」
空の捜索を終え門の前に戻ってきた俊介は、険しい表情で上空を見据えた。
素早く携帯電話の時刻をチェックする。そろそろ時間の筈だ。
その時。
「だから、ここやのうて校舎の裏側やて、津田先輩〜」
「うわあぁぁっ!」
突然後ろから音も無く現れた杏の肩にペタリと置かれた手に、彼女の存在そのものに、俊介は悲鳴を上げた。
ちょうどその瞬間だった。
「あ」
「ああっ!」
――……キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン
ゴォーン ゴォーン ゴォーン……――……
鐘は電子音が終わったその時に、一瞬姿を現し時を告げ、鳴り終わると瞬く間に消えていた。
それは俊介が先程から何度も言うように、校門の遥か上空に出現していた。
「しまった……!」
俊介も杏も、互いの存在に気を取られていた為、反応が遅れてしまった。
念動力と超脚力で2人同時に飛び上がった時には、鐘は既に消えた後だった。
鳴り響いた鐘の音は3回。チャンスはあと2回しか、ない。
「くそ……っ」
杏がバッドを握り締め、俊介が歯噛みしたその時。
『――チェスターだ。杏、ディーファ、レイド、ラクシュミ、俊介。全員、放送室に集まってくれ』
突然の校内放送が高等部全体に響き渡る。
全員の名を呼び、その後彼は自信たっぷりに言った。
『鐘を見つけた。ターゲットは、複数だ』
「つまりは」
ここにきて、一同は一つの結論に達した。
「鳴っている間しか姿を見せない。という事か」
「そう。そして――」
ディーファから校内の展開図を受け取り、口に咥えペンのキャップを引き抜くとチェスターは紙面に勢いよく丸を書き加えていく。
「ここ、と。ここ、と。ここ。後はこっちの3箇所」
「え?」
赤丸で示された場所は、俊介と杏の指摘した校門も裏庭も含まれていた。
「複数って、事?」
「そうだ。全部で6箇所、だな」
「凄い、よく分かったね! でもどうやって?」
図面を覗き込み笑顔で顔を上げるラクシュミに、チェスターは得意げに瞳を強く輝かせながら口角を上げる。
「ここ」
チェスターが指先で叩いたのは彼のこめかみだった。
「俺、目には…動体視力には自信があるんだ。屋上に上がって、全方向確認した。まず間違いはないと思う」
そう言い切るチェスターは、映画『Likely fairytales〜But this is reality〜』より実体化したムービースターだった。
魔物を狩る者として認められ与えられたのは、反射神経と動体視力。チェスター本人の持つ身体能力に上乗せされた形で力を加護された彼の目は、抜群の視力を誇る。
「漏れは、ないか?」
「絶対無い、とは流石に言い切れない」
「討ち漏らしがあってはシャレにならへんでぇ? やっぱ全部把握せな」
「ディーファくんにお願いして、屋上で見てもらおうよ。ね?」
「僕でお役に立てるなら…喜んで……」
「ええっ、鐘もう3回鳴っちゃってるから、あと2回だよ!? 次屋上で探査に当てるって事は……!」
俊介の悲鳴に、一人一人その顔を見回したレイドはニヤリと凄みのある悪魔らしい笑みを浮かべた。
「――勝負は、ラスト1回だ」
全員で屋上に上がり、その時を待つ。
俊介の提案で、放送室のチャイムは止めて鐘の音に意識を集中させる。
時刻は、ディーファが身の内に有する体内時計で正確に告げる。
レイドは召還したヴェルガンダを横に従え、杏はさり気無く猫の耳をそばだて、チェスターは強化された琥珀色の瞳で彼方を見据える。
ディーファの合図に、ラクシュミが出現した方角を指差し声を上げた。
それは、俊介も反射してきた波を全身に受け確かに感じた。
――……キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン
ゴォーン ゴォーン……――……
鐘の場所は、6箇所。
裏庭、体育館上、プール上空、グランド、裏門フェンス。そして、校門の上。
図面に書き込んだ赤丸は綺羅星学園高等部の上、六芒星を模っていた。
裏庭の木の上で、杏は寝転がり空を眺めていた。
薄曇だった空はいつの間にか晴れ、西にゆっくり沈み掛けている。
「このまま寝てしまいたいなぁ」
くあっと欠伸を一つ、バッドの先で杏は無造作に耳の後ろを掻く。
もちろん、そんな事出来るわけないのは分かっている。これから大仕事が待っている。
校内放送が、ディーファの声でカウントダウンを告げた。
そろそろであるらしい。
細い枝の上、危なげなく立ち上がると杏は体の内側から妖気を膨れ上がらせた。
今は誰もいない。ならばこの方がやりやすくていい。
セーラー服に黒髪の少女の頭部には獣の耳と、その後ろには彼女を覆い護るように5本の尾が大きく房を広げていた。
ピクリと、その耳が反応を示す。見上げるは木の枝のすぐ先。
瞬間、現れた鐘がその音を響かせる前に、
「やあぁぁっ!!」
飛び上がり落ちる速度に合わせ、妖火(あやしび)を纏わせたバットを側面に叩き付けた杏は、裏庭に割れ転がりやがて消えた鐘に満足そうに両目を細めた。
「ま、こんなもんやろ」
「さあ、来い!」
ディーファの助けで、体育館の屋根の上にあげて貰ったラクシュミは拳を握り、ぐっと身構えた。
普段上る事など無い屋根の上は、薄汚れ瞬く間にラクシュミのジャージを汚してしまった。
しかし、そんな事を気にするよりも今はもっと大事な事がある。
「お願いね、ハヌマーン」
側で器用にでんぐり返しをしているバッキーに向け、ラクシュミは優しく微笑みかけた。
つぶらな瞳が彼女を見上げる。
心臓がドキドキする。大丈夫、なんとかなる、出来る、を心の中でおまじないのように繰り返す。
これが終わったら、いつもの毎日。勉強して、部活頑張って、そして家に帰ったらお姉ちゃんに笑顔で言おう。
ただいまと元気に言ってみよう。おにぎりありがとう、と伝えよう。
合図の放送が聞こえた。もうすぐだ。
音も無く目の前に現れた鈍い光を放つ金の鐘。それに目掛けラクシュミは叫んだ。
「ハヌマーン、食べちゃって!」
飛び掛ったバッキーは口を開け鐘を飲み込み、やがて満足そうにコロンとフィルムを吐き出した。
「やったぁ!!」
ラクシュミの歓声が体育館上空に響き渡った。
ディーファは瞳を閉じ、静かにその時を待っていた。
脳内に今回のミッション用に新たにデータを書き換えた校内モデリングを構築し、心音での同行者の安否確認、把握を繰り返す。
ディーファは嬉しかった。
かつての映画内の自分より、素直に感情のまま動ける嬉しさ。自分を疎まず求めてくれる人の存在。そんな彼らの手助けとなれる自分。
生きていると実感できるその感情が、何より嬉しくて堪らなかった。
体内のシステムが時を告げる。
既に意思のアクセスで支配下に置いた校内の放送機器に向け、同行者に合図を送る。
夏の日差しはまだ遠く、プールは水色の乾いた側面を露わにしていた。
その上に立ち、ふわりとディーファは宙にと浮かぶ。彼の能力は重力にまで及ぶ。
掌には球状の黒い闇が形成されていた。システム展開により発生させた光をも飲み込むブラックホールは、ディーファの思念で自在のまま、全ての無に還すだろう。
ゆっくりと顔を上げる。体内ではカウントダウンが正確に刻まれている。
目の前に出現した鐘に鳴る間も与えず、
「処理を開始します……」
ディーファは全ての元凶を、無重力の海にと葬った。
「全ての処理を終了しました」
その顔には柔らかい笑みが浮かべられていた。
チャンスは1回。上等。こんな修羅場何度も潜ってきている。
チェスターは不遜にも小さく笑った。
何の変哲もない平穏無事な人生を送っていた。
それがある日魔物に襲われ、救ってくれた人物に見出され、魔物狩りとして生きることになり、彼の人生は一変した。
組織と共に、魔物と戦う日々。
それに比べたら、銀幕市に実体化した事も今回の事件も大したことではない、とチェスターは鼻先を鳴らす。
「ゲーセンで遊んでばっかいないで、社会勉強に依頼受けて来いって言われた時は正直かったるかったけど……。でもこれも有りだよな」
手の中の支給された自動拳銃を構え、グランドの上空に向け目を凝らす。
合図の放送が聞こえた。もうすぐだ。
チャンスは1回。ならば弾も一発で十分だろう。
「キッチリ、撃ち込んでカタつけてやるぜ……!」
瞬間、目の端に捉えた鐘の姿に、すぐさまチェスターは方向を修正し引き金を引く。
広範囲のグランド上空には、彼の優れた視力が必要だった。
ダァン、と響く銃声の後、辺りに火薬の匂いが充満する。
くるりと銃を回し腰に納め、
「任務完了」
チェスターは風になびく黒髪をかき上げた。
裏門横のフェンスに寄りかかり、そのままレイドはズルズルとその場に座り込んだ。
カシャンカシャンと背後が軽い金属音を上げる。
後ろに手をやりその感触を確かめたのは、腰元の剣だ。制服に着替えさせられた時、これだけは持ってきた。
今回は、右目の眼帯は外さない。悪魔の力は、使わない。愛用の剣だけで十分だ。
考えるのは今回の依頼の報酬。そして家で待つ少女の事。
幾らくらいになるだろう、少しはこれで生活が持つだろうか。居候中の家に幾らかは入れたいが、少女にも新しい服位そろそろ買ってやりたい。
その為にはまだ対策課に通わないといけない、今度はもう少しマシな物を選ぼう。
既にレイドの頭を占めるのは、次の依頼の事ばかりだった。
横で身を低く寝そべっていたヴェルガンダがピクリと耳を動かし、上体を持ち上げた。
つられレイドも顔を上げる。上空に合図の放送が聞こえる。
「来たか」
立ち上がり、レイドは後ろの剣に手を伸ばした。弾みで肩からジャケットが草の上に落ちる。
目の前の空間に現れた鐘目掛け、自慢の瞬発力で体全身で剣を叩き付けたレイドは消えゆく鐘には目も向けず、
「さ、次の依頼だ。さっさとこの制服ともおさらばだ」
スタスタと校門に向け歩き出した。
そして、校門の真下。
俊介は上空を見上げ、そこにいた。
出現した鐘は6個。その場所は六芒星を描くように、それぞれ6箇所に分かれていた。
同時に全員で破壊しなければならないと決めたその時から、俊介は眼鏡を外している。
それが、俊介を戦闘モードへと切り替える彼自身のスイッチだった。
合図の放送を、その時を静かに待つ。
『旦那!』
カタカタと握り締めた魔剣が鳴った。
呼応するかのように放送が響き渡る。
「行くぞ、ニア」
アクセル、と頭の中でイメージする。瞬間、俊介の体は内から湧き上がる力に動かされ、天高く空に舞いあがる。
音も無く目の前に出現した最後の鐘。ゴォーンと低い音が鳴り止むその前に。
「――はっ!!」
両手に握り締めた魔剣で鐘を切りつける。
鐘は空中で真っ二つに切り裂かれ、地に落ちる前に煙の如く消えうせた。
「……は、ははは。やった……」
すとんと落ちるように地に戻ってきた俊介は、一気に気が抜けたようにその場にへたり込んだ。
――全ての鐘を破壊し、綺羅星学園は救われた。
「よっしゃ、これでゲーセンゲーセンー」
ムービーハザードも無事消滅し、チェスターが浮かれた声を上げる。
「わあ、もうこんな時間! 見て、夕日綺麗だね」
ラクシュミの声に、ディーファが小さく微笑む。
「ええ、本当に綺麗、です……」
「ああ、こんな冷や冷やするような依頼、もうゴメンだよ」
ぼやく俊介の肩にぺたりと冷たい手が置かれる。
「ホンマ、津田センパイは臆病やなぁ」
「ひっ!! ちょっと、杏!?」
振り向けば、そこに彼女の姿はなかった。
「アレ?」
さり気無く気を探るも、そこに妖気の気配はない。
物の怪らしく、誰にも言わず何処かへ去ったのか。
「なんだよ……」
寂しいじゃないか、と口の中で呟き俊介は両目を伏せた。
依頼組は制服を返す為に、揃って対策課に戻ってきた。
更衣室で、さて着替えとばっと勢いよく制服を脱ぎ捨て、レイドはある事に気付きその動きを止めた。
「……俺の服がねぇ」
「え?」
「あ、本当だ」
服はここで脱ぎ、預かって貰っていた筈だ。
それぞれでカゴに入れられた本来の自分達の服の中、レイドの物だけがなかった。
「オイオイ、勘弁してくれ」
「いいじゃん、制服そのまま着てけば」
頭を掻き毟るレイドに、チェスターが茶化す。
「僕、聞いてきますね……」
脱ぎ捨てられた制服をさっさと回収して持っていった職員を追いかけ、ディーファは更衣室を出て行った。
そして戻ってきた時には、彼はどこか途方に暮れたような顔をしていた。
「何だって?」
「それが……」
言い難そうに、ディーファが口ごもる。
「持って行ってしまったそう、です……」
「はぁっ!?」
綺羅星学園の制服は、元々市に数多くある撮影所から借りた衣装だった。
そこのスタッフがレイドの服も自分の所の衣装だと間違えて持って行ってしまったというのだ。
「おいおい、冗談じゃないぜ……!?」
声を荒げるもパンツいっちょ姿のレイドに、後ろの少年二人は笑いを堪えきれない。
「んじゃ、俺は何を着りゃ……。あ、そうだ! さっきの制服!」
「それが、衣装屋の方で急な撮影があるとかで……。男子学生用の制服は全部持って行かねばいけなかった、という事で……」
「何ィッ!? ……ん?」
怒り絶頂のレイドに、ディーファが後ろから恐る恐る差し出したのはLLサイズとタグの付いた一組の制服だった。
それを見るなり、レイドの顔が赤から土色に変る。
「ぶは……っ!」
「マジかよ、あはははは、こりゃキツいな!」
俊介とチェスターが覗き込み、同時に噴出した。
「着替え終わった? ……アレ、どうしたの?」
打ち上げにお茶でも、と皆を待っていたラクシュミがやって来て、困り顔のディーファが持つそれに目を丸くする。
「え、それ学園の女子用の制服じゃない?」
意を決したように、ディーファが重い口を開いた。
「今は…これしか、ないそうです…レイド様……」
少年二人の失笑は、既に爆笑に変っている。
「それはキツ過ぎやわ、旦那はん〜」
いつの間にか現れた杏が、何故か更衣室の内側に入り込み、ポンとレイドの肩を叩いた。
その表情は、オッドアイの瞳を弓なりに細め、笑いを押し堪えていると分かるみえみえの顔。
ブルブルと肩を震わせていたレイドは、キッと鋭い視線で顔を上げ、役所中に響き渡るような大声で叫んだ。
「……ふっざけんな、チクショオォ、ホント勘弁してくれえぇぇぇっっ!!!」
綺羅星学園が救われたその日。
一番盛大に上がった笑い声が、明るく市役所を包み込んだ。
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クリエイターコメント | この度はご参加ありがとうございました。 どのPC様も個性的で楽しく書かせていただきました。 シーンがポンポンと浮かんできてしまい、アレもコレも、と詰め込んだ結果、予定より長くなってしまいました。
やや、コメディよりになりました今回のノベル。 皆様に、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
また機会がありましたら、どうぞよろしくお願いいたします。 |
公開日時 | 2008-04-13(日) 21:30 |
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