★ 出会いと追加 ★
クリエイター霜月玲守(wsba2220)
管理番号105-4395 オファー日2008-08-31(日) 22:34
オファーPC 津田 俊介(cpsy5191) ムービースター 男 17歳 超能力者で高校生
ゲストPC1 綾賀城 洸(crrx2640) ムービーファン 男 16歳 学生
<ノベル>

 綾賀城 洸(アヤガシロ アキラ)は、突如肩に乗っていたバッキーの蒼穹(そら)がうごうごと動いた為、思わず「おっと」と口にする。
「どうしたんですか、蒼穹」
 蒼穹に尋ねると、泣いている女性を蒼穹が指し示す。洸は一つ頷き、女性の方へと近寄る。
「どうされましたか?」
 洸が声をかけると、女性は肩を震わせながら振り返る。どきりとするような、綺麗な女性だ。
「父が、危篤なのです」
 女性はそう言って、俯く。
「それはいけませんね。早く、傍に行かれなければ」
「父は、団子が好物なのです。一刻も早くそれを持って傍に行ってやりたいのですけれど、その、私には……お金がなくて」
 女性はそう言い、わあ、と泣き崩れた。洸は慌ててポケットをまさぐり、ハンカチを取り出して差し出す。
「泣かないで下さい。団子なら、僕が買って届けますから」
「本当ですか?」
「ええ。だから、一刻も早く、お父さんのところに行ってあげてください」
 でも、と女性は戸惑ったように呟く。親切に縋りたいが、本当にいいのだろうかと迷っているようだった。
 洸は安心させるように笑顔で頷き「いいですよ」と言う。
「お父さんがいらっしゃる場所を教えてくださりますか?」
 そう尋ねると、女性は「ここです」と言いながら、場所を教えた。そこは銀幕市内ではあるが、交通の便があまり良くない場所だ。普通に行けばかなりの時間を要してしまいそうである。
「早く届けてあげないと、父は、父は」
 震えながらまた泣き出しそうな女性に、洸は「分かりました」と言って微笑んだ。
「なんとしても、お父さんに団子を届けます。安心してください」
「有難うございます」
 女性は再び頭を下げる。
「あなたも、一緒に行きますか?」
「え?」
 きょとんとする女性に、洸は「ええと」と言う。
「ちょっと変な場所でしょう。だから、団子と一緒に」
 洸が言うと、女性は「あ、ああ」と慌てたように何度も頷く。
「だ、大丈夫です」
「でも、この場所には行きにくいですし」
「大丈夫、なんです。そ、その……もう段取りを取っているんで。あの……その場所で待ってます!」
 女性はそういった後、ぺこりと頭を下げて「お願いします」と言い、逃げるように走り去っていく。
「……よほど、急いでいるんですね」
 ぽつり、と洸は呟いた。


 団子を購入した後、洸は市役所の対策課へと赴いた。父親の元に一刻も早く届ける為に、対策課を通じて誰かに手伝ってもらうと思ったのだ。場所が銀幕市内なので、ムービースターに手伝ってもらっても大丈夫そうだった。
 受付に伝えて待っていると、連絡を受けた津田 俊介(ツダ シュンスケ)が現れた。
「ええと、綾賀城さん?」
「あ、はい。ええと……?」
 慌てて立ち上がりながら、洸が尋ねる。俊介は自己紹介した後、洸の持っている団子の入った袋をちらりと見る。
「えっと、それを送ればいいんだな」
「はい。お願いします」
 ぺこりと頭を下げる洸に、俊介は「分かった」と頷き、市役所から出る。
「それで、その場所は?」
「はい。ここです」
 俊介に尋ねられ、洸は指定された場所を教える。俊介は一つ頷き、手を差し出す。洸はきょとんとして、差し出された手をじっと見つめる。
「握手、ですか?」
「まあ、ある意味」
 俊介の言葉に洸は頷き、俊介の手を取る。すると、俊介は小さく「飛行」と呟き、地を蹴る。途端、俊介と俊介の手を握る洸の体が浮き上がる。突然の事で、洸は思わず「うわ」と声を上げる。
「急いでいるんだから、空輸が早い」
 慌てる洸に、俊介は声をかける。洸は暫くきょろきょろと辺りを見回していたが、やがて落ち着いたように笑い、俊介に向かって「有難うございます」と礼を言う。
「何で、お礼?」
「早く届けるために、して貰っているからです。有難うございます」
 にこやかに言う洸に、俊介は思わず吹き出す。
「何か面白い事でもありましたか?」
「あ、いや、ごめん。あんた、面白いな」
「そうでしょうか」
「自覚もないみたいだな」
 くすくすと俊介は笑う。俊介の様子を見て、洸もにこやかに笑った。
「それで、何で団子なんだ?」
 俊介が尋ねると、洸は女性とのやり取りを話した。最期、慌てたように去っていった部分まで。俊介は暫く考え込み「えと」と口にする。
「それで、団子をお前が買って、届ける事にしたのか?」
 そうです、とにこにこと頷く洸に、俊介は押し黙る。それは、嘘ではないか、と疑い始めたのだ。
「あ、あそこっぽいですね。教えてもらった場所」
 俊介が考え込んでいると、下を見ていた洸が言った。誰の姿も見えず、周りには何もない単なる空き地にそこは見えた。俊介は「本当に?」と思わず聞き返す。
「あそこ、何もないぞ」
「でも、あそこだと思います」
 洸の言葉に、俊介は「分かった」と答える。洸から教えてもらった場所は、確かにその空き地に間違いない。だが、周りに全く何もなく、人気すらない場所が指定された場所と言っていいのか、疑問だ。
 俊介と洸は、空中からふわりと地上に舞い降りる。それと同時に辺りを見回すが、やはり何もないし誰もいない。
「少し、待ってみます。有難うございました」
 洸はそう言って頭を下げた後、ちょこんとその場に座った。俊介は「分かった」と頷き、洸の隣に座る。そんな俊介を、洸は不思議そうに見つめた。
 俊介への依頼は、団子をこの場所に一刻も早く届ける手伝いをしてもらう事だ。つまり、既に依頼は終了している。
「一緒に待ってやるよ。一人でぼんやり待つのも、なんだし」
「有難うございます」
「別にいいって。ところで、年は何歳?」
「年、ですか? 16歳ですけど」
 洸が言うと、俊介は「え」と声を上げる。年下だろうとは思っていたが、まさか一つしか違わないとは。もっと下だと思っていた俊介にとって、洸の年齢は意外すぎた。
「ま、まあいい。年下には変わりないし」
 きょとんとする洸に、俊介はにっと笑って「宜しくな、洸」と声をかける。
「もう依頼は終えたんだから、呼び捨てでもいいかな、と思って」
「あ、はい。勿論です。それじゃあ、僕も俊介さんと呼んでもいいですか?」
 俊介が頷くと、洸は嬉しそうに笑った。
「それで、何処の団子を買ってきたんだ?」
「商店街にあるお店です。小豆に拘ってるらしくて、つぶあんの団子が凄く美味しいんですよ」
 店名を告げると、俊介は「ああ」と言って頷く。
「そこなら、みたらし団子を食べたことがある。結構美味しかった」
「じゃあ、次は是非つぶあんを」
「だな。むしろ制覇する勢いでいかないと」
 二人が談笑していると、突如周りの木々がざわざわと音を立て始めた。何事かと立ち上がって辺りを確かめていると、空き地全体に「置いていけぇ」という、低く唸るような声が響きだした。
「その団子を、置いていけぇ!」
 恐ろしげな声に、俊介は構えを取る。背に洸を守るように。
 だが、洸は怖気付くどころか、真っ直ぐに前を見据えながらきっぱりと「駄目です」と言い放つ。
「これは、大事な届け物なんです。ですから、渡せません」
「置いていけぇ!」
「駄目です」
 きっぱりと、洸は否定する。すると、風がびゅう、と強く吹いたかと思うと、真っ白な巨体が現れた。
 巨大な雪だるまのような形の、顔がお粗末な落書きみたいで、角が二本ぴょんぴょんと飛び出たものが。
「可愛いですね」
 にこ、と洸は笑うが、俊介は「やれやれ」とため息をつき、眼鏡を外す。見た目はアレでナニだが、戦闘態勢を取っておくに越したことはない。
「折角だから、記念撮影を。はい、チーズ」
 ぱしっという音がして、辺りが光る。撮影の為の、デジカメのフラッシュだ。光が放たれた途端、巨大な雪だるまはふわりと風に消え、三匹の子狐が現れた。
「あいつらが変身してたのか」
 ぽつりと俊介が呟くのも気付かないらしく、子狐たちは近くの草むらに逃げ込んだ。
「ちょっと、何よ今の光」
「眩しかったねー」
「そうじゃないでしょっ! それより、ちゃんと対策立てないと」
「謝る……?」
「違うわよ! 何で、早速謝るわけ? あんたには何かないの?」
「もう一回、頑張ったらどうかな?」
「そりゃそうでしょうよ!」
 草むらで行われているコントと言う名の作戦会議に、思わず洸は吹き出す。
「全く」
 ぽつりと俊介は呟き、ぐっとコブシを握り締めた後「爆発」と呟く。すると、どんっ! という音と共に子狐たちの作戦会議場の近くが爆発してしまう。三匹はそろって悲鳴をあげ、草むらの中から飛び出す。
「なななな、何、今の?」
「ば、爆発、爆発したよ」
「……怖い」
 三匹はそれぞれに震えつつ、一箇所に固まる。それを見ながら、俊介は「電光」と呟いて左手に電気を集め、びりびりと空気を光らせながら三匹に歩み寄る。
「お前ら、洸を騙しただろ?」
 びりびり、ざっざっ。
 ゆらりと歩いてくる俊介に、子狐達はびくりと体を震わせる。
「悪い子には、お仕置きが必要だ」
 俊介がそういうと、三匹はぎゅっと目を閉じて更に小さく縮こまる。と、そこに洸が「待って下さい、俊介さん」と声をかける。
「確か、アニメのキャラですね? えっと、あん、ころ、もち、という」
 洸の優しい声に、子狐達は顔を上げる。
「一体何があったんですか? こんな風に、驚かせたりして」
 洸が尋ねると、三匹は一斉に泣き出し、事情を説明しだした。
 実体化したものの、お金がなくて困っていたこと。お金はないが、団子が食べたくてたまらなかったこと。そうして、洸を騙して団子を貰おうと思っていたこと等……。
「どこかで働いて、お金を稼ぎたいのよ。だけど、何処で働いたらいいかも分からないし」
 長女のあんが、ため息混じりに言う。
「そうしたら、団子たくさん食べれるし」
 長男のもちはそう言って、肩をすくめる。
「どうしたらいいのか、分からなくて……」
 震える声で、次女のころが言う。
 洸は「分かりました」と頷き、団子の入った袋を三匹に差し出す。
「これは、あげます。そして、お店で働けるようにしましょう」
「本当に?」
「はい。そうしたら、もうこんな事をしないでしょう?」
 にこっと笑う洸に、三匹は何度も頷く。洸はそれを確認し、小さく「じゃあ」と呟きながら俊介の方を振り返る。
「いつ、話し合いに行きましょうか」
 いきなり話を振られ、俊介は眼鏡をかけようとしていた手を止める。
「何で、俺に聞くんだ?」
「だって、友達でしょう?」
 笑顔で洸は答える。何を今更、といわんばかりに。
「いつ友達になったんだよ……」
 俊介は苦笑交じりにそう言いつつも、話し合いに行くことを否定しない。何となく、否定できなかった。
「それじゃあ、お礼に何かしようか」
 不意にもちが言い出し、あんところもこくこくと頷く。
「じゃあ、名乗りを見たいです。いつもの」
 洸がリクエストすると、三匹は快く頷く。原作を知らぬ俊介が何事かと見守っていると、子狐達はびしっとポーズを取る。
「三匹そろって、あん!」
「もち!」
「ころ!」
 叫んだ後、あんがもちをべしっと前足で叩く。
「あんたは最期でしょ! ほら、もう一度! 三匹そろって、あん!」
「ころ!」
「もち!」
 洸はそれを見て、ぱちぱちと拍手を送る。俊介は「あのさ」と口を開く。
「さっき、こいつら間違えたんだけど」
「ああ、それも含めていつものなんですよ」
 楽しそうに解説する洸を見て、俊介は思わず指をこめかみに当てた。
 何故だか、どっと疲れた気分がしてならなかった。


<苦労症、という言葉が追加されつつ・了>

クリエイターコメント お待たせしました、こんにちは。霜月玲守です。
 このたびは、プラノベのオファーを頂きまして有難うございます。
 お二人の出会いと、仲良くなっていく様子を書かせていただきました。ほのぼのとした雰囲気にしてみたのですが、いかがでしょうか。
 少しでも気に入ってくださると嬉しいです。
 ご意見・ご感想等、心よりお待ちしております。
 それでは、またお会いできるその時迄。
公開日時2008-09-16(火) 18:50
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