★ 武士と呪いと伝説の剣 ★
クリエイター陸海くぅ(whxr5851)
管理番号458-2435 オファー日2008-03-31(月) 18:13
オファーPC 清本 橋三(cspb8275) ムービースター 男 40歳 用心棒
<ノベル>

 愛刀の研ぎ直しを鍛冶師に頼んで手渡してきた帰り。清本橋三はふと目に付いた店が気になり足を向けた。
 盾の前に交差した剣があるというデザインの看板に武器屋と書かれていたその店には様々な武器が所狭しと並べられていた。
「いらっしゃい。何でも揃う武器屋へようこそ。手にとって見てもらっても構いませんよ」
 愛想の良い店主が橋三に声をかける。それに「あぁ」と一言返して店内を見回す。爪のような武器やただの木の棒にしか見えないものまで、確かにおおよそ武器に使えそうな物は置いてありそうだった。
 物色していた橋三は、一本の剣が気になって手に取ってみた。すると……。
 【でろでろでろでろでろろん♪】
 唐突に、どこか嫌な音調の曲がどこからともなく響き渡った。
「どうやら呪われてしまったようですね」
 言い放つ店主。何かを言いかける橋三を制して言葉を続ける。
「心配しなくても、呪いは悪人を百人退治すれば解けるはず」
 何故か自信満々で話す店主。それに続いて『お前が我が主か』という謎の声が響いてきた。
『さぁ、我と共に悪を滅ぼそうぞ!』
 剣だと名乗った声を軽く無視しつつ、橋三は剣を手離そうと試みたが徒労に終わっていた。どうやら本当に悪人退治をする羽目になりそうだ。溜息をついて彼は店を後にした。
 そこからはある意味で大仕事だった。悪人を探しては剣で叩いて気を失わせるという、一種の作業。途中に【ちゃらららちゃらら〜ん♪】などと、ゲームでいうレベルアップの音が聞こえてきているのがまた作業感に拍車をかけている。
 青年に因縁をつけているヤクザを打ち倒し、迷惑を撒き散らす暴走族のことごとくを打ち倒し……。今後夜道を気楽に歩けなくなるなぁ、と多少の気落ちを体験しながら彷徨う事数時間……。辿り着いた先は銀行の前だった。しかもそこには何故か警察が大勢集まっていた。
 銀行強盗が逃げ場を失って立て篭もっている。それが野次馬たちから聞こえてくる話だった。ふとその銀行を見やると警官が一人、犯人と思われる男と話をしている。瞬間、犯人が激昂した様子で手にした銃を人質に押し付けた。それを見ていた橋三の目に、人質の女性の涙がキラリと光って見えた。刹那、橋三は走っていた。呪いの事も忘れて。警官の静止も耳に届かず振り切って。
 ――ガシャーン!――
 派手な音を響かせて、ガラスを割って飛び込む橋三。店内の目が一斉に彼を捉える。
 一……二……三…………。体勢を整えつつ、橋三は冷静に辺りの状況を把握していた。店内の中央にまとめて座らされている人質。カウンターの辺りに居る犯人グループと思しき銃を持つ男が三人。一人は袋に金を詰めている。そして……。チラリと視線を窓際にやる。そこに先程見ていた犯人の一人と、その腕に捕らえられた人質が一人。
(まずは向こう)
 獲物を狙う猛禽類のそれを思わせる瞳で狙うは窓際の犯人。地を蹴って駆ける。一瞬の事で状況を把握し切れていない犯人グループは呆気に取られたままである。
 剣を上段に構え犯人の頭部に向かって振り下ろす。犯人はすんでの所で剣を避けたが人質から手が離れた。それを見て橋三は剣でガラスを叩き割る。
「外へ!」
 一言だけ叫んで彼は視線を店内に戻す。
「この野郎!」
 全員同じタイミングで叫んで銃の狙いを橋三に向ける。当の本人は手近な犯人の一人に剣を振るって気を失わせた。そしてそれと同時に残る三人の銃口が火を噴いた。
 さすがに三発の銃弾を避けきる事など出来はしない。この時ばかりは死を意識した。だがその瞬間。
『百人目を確認した』
 声と共に店内が強い光で満たされ、それが収束すると橋三に向かってきていたはずの銃弾が消失していた。
 唐突に、彼の意識に何かの単語が浮かんできた。『さぁ、技を叫べ!』と剣が語る。橋三は何故か素直に従わなければいけない気がした。
「サンダーボルト・スラーーーーーッシュ!!」
 叫ぶと同時に、剣身に稲妻のようなものが宿る。そしてそれを真一文字に振り抜くと、雷の矢が三本犯人に向かって飛翔して行き、それに当たった犯人が次々に気絶していく。
『我は伝説の剣。魔王によって呪いの剣にされていたのだ。封印を解いてくれて感謝するぞ、侍よ』

「どうやら呪いは解かれたようですね。やはり貴方は伝説の勇者だった!」
 武器屋に戻った橋三にかけられた店主の言葉が、これだった。何か釈然としないものを感じたが、言い返す気力もなかったので軽く会釈だけをして店を後にする。背後からは勇者だと喝采する店主の声が響いている。後で知ったのだが、この店はゲームを基にした映画に出てくる店ということだった。
「…………やはり得物は刀に限るな」
 足早に鍛冶師の下へ赴き愛刀を受け取った橋三。たった数時間手放していただけなのに、酷く懐かしく感じる刀の感触を感じながら彼は一人呟いた……。

クリエイターコメントこの度はオファーありがとうございます。何もかもが初めてで四苦八苦でしたが、精一杯書かせていただきました。
コメディタッチの中にわずかなシリアス分とアクション分があるなぁと思われたら幸いです。
楽しい作品を書かせていただき、ありがとうございます。
公開日時2008-04-02(水) 19:50
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