★ レッツお買い物 ★
クリエイター霜月玲守(wsba2220)
管理番号105-6576 オファー日2009-02-06(金) 22:28
オファーPC ミサギ・スミハラ(cbnd9321) ムービースター 男 25歳 生体兵器(No.413)
ゲストPC1 シフェ・アースェ(cmhd3114) ムービースター 男 21歳 ミンネゼンガー
<ノベル>

 どーんとそびえる大型家電量販店の建物を見上げ、初めに口を開いたのはシフェ・アースェだった。
「大きいな」
 感心したように言うシフェに「そうカ?」と返したのは、ミサギ・スミハラだ。そっけないミサギの言葉に、シフェはこっくりと真顔で頷く。
「屋上が見えない」
 シフェの言葉に、ミサギは「確カに」と頷いた。このリアクションも、出身映画の違いなのだろうと心の中でミサギは呟く。
 シフェは自然たっぷりの場所、ミサギは先端技術の集う近未来世界だ。
「屋上ハ、見えナイな」
「大きい建物が多いとは思っていたが、ここもまた大きい」
 ほう、と感心したように言うシフェにミサギはとりあえず同意し、中に入ろうと促すのだった。


 二人がここに訪れた目的は、各々違う。
 ミサギは情報収集用のテレビと携帯電話、シフェは冷蔵庫や飼っている金魚の為のポンプ付き水槽。それらを売っている場所を話し合った結果、二人が今いる大型家電量販店だったのである。
 シフェは、びゅん、と開く自動ドアに一瞬びくりと体を震わせつつ、中に入る。
「相変わラズ、慣れナイのカ」
「大分、慣れてきた」
 ミサギは「そうカ」と頷く。自動ドアを知らなかったシフェは、初めてドアが開いた瞬間は自動ドアを行ったり来たりして大変だった。今まで目にした事のないもの相手なのだから、当然といえば当然なのだが。
 一階には、携帯電話売り場があった。ミサギの目的の一つでもある場所だ。
「見てもいいカ?」
「もちろん」
 シフェの言葉を聞き、ミサギは携帯電話売り場に向かう。様々な色や形の携帯が、ずらりと並んでいる。
「……まだ、この形ナノか」
 ミサギは呟き、並んでいるうちの一つを手に取り、感心したように見つめる。ミサギにとっては最先端の携帯電話も、骨董品のようなものだ。
「これなど、手の中にすっぽりと入るのだな」
 ミサギの隣で、シフェも感心したように言う。シフェにとっては、見たこともないものが並んでいるのだから、どれもが興味の対象となる。
 つまり、二人は違う観点からではあったが、興味深いという点では合致していたのである。
「ミサさん、これなどどうだ?」
 シフェはそう言って、一つの携帯電話を見せる。手の中にすっぽりと納まっているそれは、白と黒を基調とした落ち着いた雰囲気であった。
「それガ、お勧めナノか?」
「いや、ただ目についたから」
 呆気なく言うシフェに、ミサギは「そうカ」と言って頷く。
「モッと、考えテいるのカト思ってたガ」
「考えている。目に付くというのは、惹かれるという事だろう」
 ミサギは「なるホド」と頷く。それもまた、一理ある。
「しかし、たくさん種類がありすぎてよく分からないな」
 ぐるりとシフェは携帯電話売り場を見渡す。中には色違いであるだけのものもあるのだが、その殆どは全て違う形をしている。恐らく、ついている機能も少しずつ異なっているのだろう。
「だカラこそ、自分ニ合ったモノを探スんだろうナ」
「ふむ、その為の数なんだな」
 シフェは再び感心しながら、携帯電話を見る。ミサギも同じように携帯電話を見ていくが、途中で「行くゾ」とシフェに声をかける。
「携帯電話、買わないのか?」
「多すギて分からナクなってキタから、後にする」
 ミサギはそう言い、エスカレータの方へと向かう。シフェもそれに続いていく。
「いつもながらに思うが、便利だな」
「これガか?」
「ミサさんには、物足りないかもしれないけど」
 笑いながら言うシフェに、ミサギは「ならバ」と口を開く。
「こコは、丁度イイのかも知れナイな。俺とシフェの中間みタイで」
「確かに、中間だな」
 話しながら登ると、あっという間に次の目的地である冷蔵庫やレンジといった台所にある家電の売り場に到着した。
「どんナ冷蔵庫ガいいンだ?」
「物が冷やせればいいんだが」
「冷蔵庫ハ、どれも冷やセるぞ」
 ミサギの言葉に、シフェは「そうか」と言ってため息をつく。
「便利なもの、という認識はできたのだが、いまいちこう……」
「釈然トしなイ?」
「しない」
 確かに、とミサギは頷く。ミサギだって、同じような気持ちだ。ミサギからしてみれば、どうしてこのような骨董品がきちんと動くのか、また売られているのか、という事が不思議なのだから。
「……ミサさん」
 ぐるりと冷蔵庫を見渡している最中、不意にシフェが問いかける。「あれは、何だろう」
 シフェの方を見ると、じっと何かを見つめて動かない。ミサギは小首を傾げつつ、シフェが見つめるものを確認する。
 じょわー、と透明な四角い箱の中で、水が舞っている。中には皿やコップが置かれ、その水の洗礼を浴びている。
 いわゆる、食器洗浄機だ。
「こレは……洗っテいる、のデはなイか?」
「洗って、いる?」
「そうダ。この中ノ皿やコップを」
 じょわー。
 水は相変わらず勢い良く箱の中を舞っている。
「凄い……滝が中に入っているのだろうか」
「滝?」
「いや、間欠泉か」
 じっとシフェは見つめている。まるで、箱庭のようだと思いながら。
 ミサギもまた、だんだん同じような感覚になってきた。ミサギの知る食器洗浄機は違う形をしている。だから、目の前にあるものは観賞するものなのでは、と思われてきたのだ。
 二人は、暫く食器洗浄機に夢中になる。じょわーと出てくる水が、中にある皿やコップにぶつかる様子が、見ていて飽きなかった。
「あの、お客様?」
 だから、店員が二人に話しかけた声で同時にびくりと体を震わせたのだ。
「食器洗浄機、お求めですか?」
 にこにこと笑いながら話しかける店員に、ミサギとシフェは顔を見合わせ、同時に首を横に振る。
「たダ、見てイたダケだ」
「他に見るものがあるので」
 二人の返答に、店員は「何かありましたら、どうぞ」といい、その場を去っていった。
 その背中をぼんやりと眺めつつ、ぽつりとシフェが口を開く。
「次、行こうか」
「そうダな」
 冷蔵庫はまた後で、と言いながら、エスカレータで別フロアへと移動するのだった。


 次の階には、テレビやビデオ、DVDレコーダといった映像機器が並んでいた。
「ミサさん、テレビが欲しいと言っていたな」
 シフェが言うと、ミサギはこっくりと頷く。
「情報収集ハ大事だカラな」
「たくさんあるんだな」
 シフェが感心したように言う。テレビと一口に言っても、様々な大きさのものがある。ミサギの知るようなものは、やはりないのだが。
 ミサギが色々見て回っていると、シフェの姿がない。辺りを見て回ると、一人ビデオカメラの前で動いているシフェを見つけた。
「……何をシているンダ?」
 声をかけると、シフェは「わっ」と声を上げ、照れながらミサギの方を振り返った。
「つい、自分が映るのが、楽しくて」
 ミサギはビデオカメラの脇にあるテレビを見る。なるほど、ビデオカメラに映っている映像を、リアルタイムで見せるようにしてある。
「こんナものデ、映スのカ」
 ミサギは感心するようにいい、自らもビデオカメラの前に立ってみる。その様子を、シフェがテレビで楽しそうに見ている。
「……いいナ、その大キさ」
 一通り堪能した後、ミサギが言う。シフェは「えっ」と思わず聞き返す。
「こんなに大きいの、買うのか?」
「大キいカ?」
「部屋に置く場所、ないのでは」
 じっと見つめあう。そうして、先に口を開いたのはミサギだ。
「それナら、水槽だっテそうダろ?」
「水槽は、金魚の為に必要だ」
「テレビだっテ、必要ダ」
 二人は再び見つめあう。ミサギは「テレビ」といい、シフェは「水槽」と言う。
 そうこうしていると、再び店員が「どうされましたか?」と声をかけてきた。二人の雰囲気を察して、出てきたのだろう。
「何でモ、ナい」
「別の所を、見てから決める」
 互いにそう言い合うと、すたすたとエスカレータに向かっていく。
「このパターンばカりダ」
 ぽつりと、ミサギが呟く。シフェは「確かに」と言って笑い、肩を竦めた。
「ここは、一端他のものを見て落ち着かないか?」
「それもソウだナ」
 ミサギもシフェの提案に頷く。次のフロアは、生活家電だ。
「大きな椅子だな」
 シフェの目に飛び込んできたのは、大きなマッサージチェアだ。ふかふかそうなクッションが心地よさそうに見える。
「ご自由にお試し下さい、と書いてある」
 近くに置いてある表示を見て、シフェが言う。興味いっぱいの目だ。
「ナラ、少し座ッテいくカ」
 ふわふわな感触がミサギも気になったらしく、マッサージチェアに腰掛けてみる。その隣に、シフェが座る。
「このボタン、何だ?」
 シフェはボタンに気付き、押してみる。すると、ウインウインというモーター音と共に、マッサージ機能が動き出す。
「ミサさん、何か動いた!」
「何?」
 戸惑うシフェに、ミサギが確認してやろうとする。すると、丁度リモコンのボタンを押してしまったらしく、ミサギのマッサージチェアも動き始めてしまう。立ち上がろうとしたミサギだったが、その反動でまた再び座ってしまう。
「どうしようか、ミサギさん」
 ウインウイン、とモーター音が響く。
「何カ、ストップボタンか何カあるハズだ」
 焦って止めようとするが、なかなか見つからない。どうしようかと迷っていると、シフェが「まあ、いいか」と体をマッサージチェアに預ける。
「何だか、気持ちいいし」
 ミサギは「そうナノか」と言い、同じように体をマッサージチェアに預けてみる。なるほど、なかなか気持ちよい。
「眠りそうになるね、これ」
 うと、としながら、シフェが言う。ミサギも「そうダナ」と頷き、慌てて立ち上がる。
「こノままダと、眠ッテしまう」
 ミサギの言葉に、シフェははっとして立ち上がる。それでも尚、マッサージチェアはウインウインとモーター音をさせている。
「危ない所だったな」
「ああ……コレは、眠らセル椅子ナンだ」
 二人は互いの無事を確認し、その場を後にする。未だに、マッサージチェアはその動きを止めていない。
 たまたま押されたボタンが、しっかりコースだったからであった。


 店内をうろついていると、徐々に人が減っていっているのに気付いた。閉店が近いのだろう。
「どうする、ミサさん。結局、何も買ってないけど」
「そうダナ……」
 店内をしっかり見て回ったのは楽しかったが、自分達が買おうと思っていたものは、どれ一つとして購入していない。
「一ツくらイ、買ッテやりたいナ」
「うん、一つくらいは」
 エスカレータを下りつつ、二人は言い合う。
「シフェは、何ガいいと思ウんだ?」
「俺は……」
 ミサギに問われ、シフェはエスカレータを降りてフロア内を歩く。そして、ぴたり、とあるものの前で止まる。
 それを見て、ミサギは「ああ」と納得する。
「それナラ、俺も欲しいカモしれナイ」
「見ているだけで、飽きないしね」
 二人がそう話していると、店員が「お決まりですか?」と話しかけてくる。二人はそろってこっくりと頷き、商品を指差す。
「これを」
「コレを」
 二人の指差したのは、食器洗浄機であった。
 店員はにこやかに応対し、レジを通してくれた。購入した食器洗浄機は、明日には届くらしい。
「いい買い物ヲしたナ」
「癒されるね」
 店内に、閉店を知らせる音楽が流れ始めた。
 二人は明日届くだろう食器洗浄機を思い返しつつ、家路につくのであった。


<またの来店を約束しつつ・了>

クリエイターコメント お待たせしました、こんにちは。オファーしてくださいまして、有難うございます。
 ほのぼのとした雰囲気で、家電量販店で楽しむ様子を書かせていただきました。購入物を任せていただいたので、お二人が楽しまれたものにしてみました。いかがでしょうか。
 少しでも気に入ってくださると嬉しいです。ご意見・ご感想等、心よりお待ちしております。
 それでは、またお会いできるその時まで。
公開日時2009-03-06(金) 19:40
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