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<ノベル>
<一>
「よっ、そこのおねーさん。何してるんや?」
「うひゃぁ!?」
男が歩く女性に声をかける。
街中でよく見かける光景ではあるが、場所が倉庫街であっては不似合いだった。
さらに不似合いなのはその女性から出た驚きの声は低めのアルト。
女性と思われた人物は振り返り、あわてて自分の口に指を当てて『静かに』という意志をしめした。
「な、なんや、そない怒らんでも……あ、時雨はんやん」
小此木 啓斗(オコノギ ケイト)は振り返った女性の顔を確認すると、少しがっかりしたような顔で女性と思っていた水無月 時雨の顔をまじまじと見つめる
「啓斗さん……今、僕は……女装して囮をしていますから、またあとで」
時雨は静かに答え、啓斗から離れるように足早に去った。
昼の倉庫街を啓斗と時雨は早歩きによる追いかけっこをしていた。
時雨の腰まで届く黒髪が後ろへなびく。
啓斗が走り、時雨にすぐに追いつく。
「そ、そない逃げへんでも……」
「追いかけて来なければいいでしょうっ!」
「逃げたら、追いかけたくなるやないか」
暫く、そのままいたちごっこをしていたが、二人は息を整えて、速度を緩めて歩き出した。
すかさず、啓斗が時雨に聞き出す。
「女装して、囮ってアレかいな? 最近、原始人が美女さらってるってゆうハレンチ学園やろ?」
「そうですよ、ですから静かに……巻き込みたくたくありませんし……というより、ハレンチ学園って何ですか?」
「ハレンチ学園は忘れなや。よっしゃ、そういうことなら俺も手伝うわ。今日は非番やったしな」
にっと人懐っこい笑みを浮かべると、か細い腕で自分の胸を叩いた。
何かいおうとしたが、啓斗の興味本位にあふれた瞳をみると、時雨は何もいえなくなった。
時雨は啓斗と握手を交わしつつ先が思いやられそうだと思わざるをえない。
「でも、今まで街中でさらわれとるんやろ? 俺らも街中に行ったほうがいいんやない?」
「そ、そうですけど……恥ずかしいじゃないですか」
「あかん、あかん! そないなことでは一流の役者にはなれへんで!」
「舞台の上と一般生活ではいろいろと……」
啓斗の剣幕に押されて時雨は少し距離を取った。啓斗は知ってか知らずかさらに間合いを詰める。
「論より証拠や。ほな、いってみよか。大体めぼしはついておるんやろ?」
「ええ、市役所の人の話では商店街付近で多いらしいとのことですが……」
「それじゃあ、商店街のほうレッツゴー!」
嫌がる時雨の手をぐいぐいと啓斗が引きながら、二人は商店街のほう足をすすめるのだった。
そのとき、倉庫と倉庫の間から二人を見ていた視線が4人分。息を荒げながら二人を見ていた。
二人が商店街へいく事を見届けると、その4人分の目は二人を追いかけていった。その姿は動物の皮でできた粗末な衣装を身にまとい、髪や髭などをまったく手入れしていない。
手に持っているのは石器の斧。
一言でいうならば、原始人そのものだった。
昼の商店街はいい匂いで充満していた。
その中を啓斗と時雨は走っていた。
後ろから追っかけてきているのは映画で見るような原始人4人組。野山を駆けるようにはだしでアスファルトを蹴りあげ、跳ねる。オープンカフェのテーブルを踏みつけて石斧を振るって二人に迫ってきた。
「ほ、ほら、いったとおりやん」
「それでも、い、いやですよ〜」
大人しく連れさらわれようと思っていた時雨だったが、この迫り方で来られては逃げるしか思いつかなかった。
「これでもくらえやっ!」
逃げながら、啓斗は雑貨屋のカートを原始人たちに転がした。
雑貨屋のカートの一人が飛び乗り、バランスを崩して倒れるが、残り三人が迫ってきた。
バランスを崩した一人もすぐに立ち直り、後に続く。
「そ、それでっ、いつまで逃げるきや、ねん。まさか、ルドラ以外で人の手を引いて逃げるとは思わなかったわ。しかも、女装したおとこっ!」
「そ、それはいわないでくだ、さいよぉっ!」
走りながら言葉を交わす二人だったが、それが余計に体力を消耗させていく。履きなれていないスカートのためか、時雨がバランスを崩した。
「オワゥウォォッ!」
一瞬の隙をみて、背後の原始人の一人が叫び声を上げる。三人が啓斗と時雨を横から追い抜いて取り囲んだ。
「はやっ!?」
あまりにも鮮やかな動きに啓斗は足を止めた。
だが、今までの勢いが殺しきれない。
「うわ、啓斗さん、立ち止まらないでっ!」
手を引っ張られていたために時雨は啓斗にぶつかる。もともと体格のよくない啓斗は時雨と共に地面にドミノ倒しになった。
その後ゴツンという鈍い衝撃を啓斗と時雨は後頭部に感じると、意識が途絶えるのだった。
気を失ってから、どれほどたったのだろう。
わからないながらも目を開けると、そこには金髪美女の天使が目じりを下げて、心配そうに啓斗の顔をのぞいていた。位置からすると膝枕かもしれない。
「ああ、俺は死んでしまったんやろか……」
金髪美女は首を横に振る
「不運ばかり続いていたけど、俺も天国にいけたんやなぁ」
ぶんぶんと先ほどよりも大きく金髪美女白眉を振った。
悲しそうにしていた美女の目じりが上を向いた。眉もきりっとなっている。
「あ、アンジェはん……」
アンジェはうなずいた。
「せや、時雨はんは!」
アンジェの膝枕から起き上がると周囲を見る。そこに気絶するまで一緒にいた時雨の姿はなかった。
「連れら去られたんか?」
倉庫街の方に顔を向け、アンジェは指差した。そして、啓斗の手を取り銀幕ジャーナルの方を指差す。
「俺に手伝えってゆうんか?」
ゆっくりとアンジェはうなずく。その瞳を啓斗は覗いてうなずいた。
「しゃーない、真面目にやってやろうやないの」
誰にいうでもなく、啓斗はつぶやいた。
<二>
銀幕ジャーナル内、『ストーンストーン被害対策本部』と張り紙のある会議室に老若男女が集まっていた。格好もイギリス紳士から侍とさまざまで、劇団の打ち合わせ光景に見えなくもない。
だが、彼らは今回の事件を解決するために乗り出してきたヒーローたちなのだ。
「二人一組でペアを組んで絞りこんだ倉庫内を捜索するわよ。アンジェさんは外の様子を空中で確認するということで。啓斗さんは私とペアでくわよ」
ホワイトボードに貼り付けられた地図の一角を夜野 月菜 (ヤノ ゲツナ)が円で囲んだ。オレンジ色の髪が揺れ、振り向くと紫のきりりとした瞳が皆を眺める。皆はうなずき、行動を開始した。
日中の倉庫街を原始人が4,5人ほど集まっていた。ゴリラのような鳴き声でコミュニケーションをとっている。中にはどこから盗んできたのか豚肉の塊や、魚などを持っていた。
「ウホ?」
その中の一人が空を見上げて指さした。
照っていた太陽がどんよりと雲に隠れていく。その姿におびえだす原始人。
「オォォッ!?」
さらに、霧が周囲に立ち込めてはじめ、視界がさえぎられていく。超常現象に対して、本能的な恐れがあるのか石斧をむちゃくちゃに振るい、威嚇するかのような雄たけびを上げだす。
「やれやれ、礼儀知らずな蛮族は見るだけで心が痛むものだ」
霧の中なか低い声が響く。ますます、原始人たちは怯え、騒ぎだした。
怯える原始人の背後に霧の一部が人型に集約し、実体化した。その姿は三つ折コートの老紳士。ヴァンパイア映画の看板スター『ブラックウッド』その人だ。
ブラックウッドが動き出す。それは一瞬。怯えて隙のある原始人たちを沈黙させるのに10秒ともかからなかった。
「稚拙な……」
「ウホォゥッツ!」
倒れている原始人一人に、牙をかけようとしたとき。背後から一人原始人が襲ってきた。
急いでブラックは振り返るが、間に合わない。
途中から混ざったのだろうか、ロケーションエリアに抵抗して怯えがない。
「だが、こちらも二人だ」
石斧を振りかぶり、今まさにブラックウッドの頭を狙っていた原始人が目を大きく見開いて倒れこんだ。背中には刀できられた傷がある。
「きみともあろうものでも隙を見せるのだな」
霧の中から出てきたアラストールは刀についた血を拭いながらブラックに尋ねる。
「食事をはじめるときはリラックスするものだよ、それが紳士のたしなみというものだ」
ブラックウッドは不適に笑うと、そのまま気絶させた一体の中で『おいしそうな』原始人に自分の牙を立てるのだった。
「まったく、原始人がレディMをさらうなんて、早すぎるっつーの!」
ぶつくさと文句を言いながら浅間 縁 (アサマ エニシ)は暗い倉庫の中、傍らに侍を従えて歩いていた。
「原始人とはどういうものなのだ?」
傍らの岡田 剣之進 (オカダ ケンノシン)が縁にたずねた。
「原始人ってゆーのは、岡田さんたちが生まれるずーっと、ずーっと前に世界中にいた人種で、言葉とか文化がないの。でも、集団でマンモスっていうでっかい象を倒せたって授業でならったかな」
「『まんもす』というのはなんだ?」
「マンモスってゆーのは……って、話が長くなりそうだから、やめておくわ」
「で、そういえば何の話をしていたっけ?」
「原始人が何かという話だったな……人の姿をしたサルと思うことにしよう」
「なんか違う気がするけど、仕方ないか……」
縁がため息をついて、あきらめたとき、背後から足音が聞こえてきた。ひたひたひたというはだしの足音だ。
「て、敵?」
「物陰に隠れよう」
岡田は縁を抱えて倉庫に積まれた資材の影に急いで隠れた。ひたひたという足音が近づいてくる。床を見れば、倉庫の入り口から入り込む光を浴びて影が伸び、それが次第に大きくなってきた。
縁の心臓がドクドクと脈を打ち出す。原始人の姿が棚に背を向けて隠れている二人の横を通り過ぎようとして、足が止まる。二人は冷たい汗が流れ落ちるのを感じた。
縁の鼓動がさらに高まる。原始人はそのまま進んでいく。
二人が息をはいた。
「このようなところで逢引とは、若い者はよいな」
「ブ、ブラックウッドさん!?」
どこからともなく現れた老紳士に縁は大きな声をあげ、あわてて口をふさぐが老紳士は笑いをこらえながら縁に伝えた。
「あれは私の従者だね。敵ではないので安心したまえ」
「ブラックウッドさん、趣味悪すぎ」
「多少のユーモアは紳士の嗜みというものだよ」
そうやって話しているうちに倉庫の奥、従者となった原始人の足が扉の前で止まった。
見張りが一人いたが、交代と思ったのか入れ替わり、倉庫の外へとでていった。
タイミングもよく、アラストールが残りのメンバーを連れてきた。
「それでは、突撃しましょーか」
「御意」
縁の一声に、岡田は扉に近づくと、蹴り開けるのだった。
<三>
蹴破った中は薄明かりに照らされていた。電球ではなく、たいまつによる明かり。
暖房が入っているかのように気温が高かった。
部屋の片隅に揺れる明かりに照らされて美女たちが手足を縛られて固められていた。表情は恐怖に怯えている。蹴破った音に驚いたのか顔が岡田に集中している。
「銀幕ジャーナルで依頼が出ていましたので、助けに来ました。皆さん、安心してください」
月菜が一歩進んででて、ゆっくりと説明をすると安心したかのように深い息がもれた。
「お嬢さん方、けがはないかね?」
人外の力を使わず、丁寧に美女たちの拘束をとりながら、ちゃっかりと手の甲にキスをしていくブラックウッド。
「僕にキスはいりませんからね」
「おや、時雨くんだったか。うす暗かったので気づかなかったよ」
何かを含んだ笑みを浮かべてブラックウッドはキスをせず時雨を立ち上がらせた。
「食事はちゃんと出されていましたので、特に動けないということはないです」
「無事そうで何よりやわ」
ブラックウッドと時雨の間に割り込むようにして啓斗がでてきた。時雨はそんな啓斗にふっと微笑んだ。
「啓斗さんも参加してくれたのですね。助かります」
「自分でいったことやからな」
少しそっぽを向いて啓斗は頬をかいた。
「囚われていた美女は10人……予想より多いわね」
月菜が確認しながら、脱出準備に取り掛かった。この倉庫は波止場側にあるため、抜け出しても倉庫街の出入り口までは2kmはある。大人数が見つからずにいくのは難しい。
「強行突破も辞さなく行くしかあるまい」
岡田は顎に手を沿え、悩みながら唸った。
「そうですね、とにかく全員でいきましょう……あと2時間で日も暮れます。夜になったら、ますます集団行動が取りづらくなりますから」
月菜が腕時計を確認して、倉庫の窓から外をみた。日が海のほうへ傾いている。
「ちょっと、待って!」
今まで周囲をきょろきょろしていた縁が大きな声を上げた。
「どうしたの?」
月菜が問うとさらに大きな声で縁が叫ぶ。
「レディMがいないよっ!」
「レディMがいない?」
縁の大声に皆が振り返った。薄明かりの中で美女たちの顔をたしかめると、あのレディMの姿がない。
「変装している?」
「いや、そういうことする理由があらへんやろ?」
「それじゃあどこに……」
「あ、あれっ!」
縁が倉庫の窓から外を見たとき、原始人の一人が眠っているような金髪美女を運び出していた。その格好は原始人と同じ毛皮で粗末なものだったが、ブロンドの綺麗な髪がやけに目立った。
「レディMだろうな……」
「絶対、そうよ。あの野郎どもぉ〜! 片っ端からエンのおなかに入れてやるんだからっ!」
「それよりも、まずは囚われていた美女を脱出させないと……彼女もそれを望んでいるわ」
熱くなる縁を宥めるかのように月菜は縁の肩に手を添えた。
「分かっているわよ、私はレディMに認められる女になるためにこの依頼に参加したんだから!」
縁は自分に言い聞かせるかのように大きな声で答えると、美女たちの誘導を始める。
「これだけ熱狂的なファンがいるのは、少しうらやましいな」
縁の姿を見て、岡田はそっとつぶやいた。
「そうそう上手くいかないみたいですね」
月菜は集まってくる原始人を見ながら、呟いた。倉庫の扉を抜け出たら、囲まれていた。
原始人の一人がプレミアムフィルムを持って泣いている。
「アラストール君が斬った蛮族が死んで、フィルムになったようだな」
ブラックウッドが冷静に判断し、身構える。
「戦うしかないか」
岡田もつぶやき腰の刀を抜く。
「アオォォォゥッ!」
涙を流している原始人が渾身の叫びを上げると、地を揺らしながら迫ってくる。
残り100mにでもなったとき、世界が一万年前に遡った。
<四>
洞窟と化した倉庫の中へ美女たちをいれ、入り口を扇状にカバーする。
「これが、ロケーションエリア……」
変異した倉庫街を目にし、月菜は圧倒される。映画のような迫力に体が動かない。原始人の足音が大きく響きだす。
戦闘を走っている原始人が石斧を振りかぶり月菜に襲いかかった。
「ボーっとしている暇はないぞ、お嬢さん」
横から割り込み、庇いながらもブラックウッドが鉤爪で切り伏せた。
ブラックウッドの攻撃が火蓋を切ることとなり、石器時代を背景とした原始人との対決が始まった。
「突破はきついな、防戦一方だ」
石斧に変化した刀を振るいながら、岡田がうなった。姿は侍のままなので、ひどくミスマッチな絵になっている。
相手の数は20人近い。すべてがムービースターに対して、こちらは一般人が大半だ。
「男ですから、俺も戦わないと!」
ロケーションエリアの影響で、啓斗は頭の先からつま先まで石器時代の格好をしていた。使い慣れない石斧を振りかぶっては原始人から美女たちを守る。
「アゴォッ!?」
「ああっ、ポリフェノール!」
石斧の一撃を受けて倒れた原始人に時雨のバッキーが乗っかり、食べ始めた。
次第に喰われていく仲間を見て、原始人たちに動揺が走る。
だが、それは一瞬。マンモスにも立ち向かう原始人たちは虚勢を上げて数で攻撃をしかけてくる。
「数でかかってきてっ、でも……この状況じゃ分散できないし。あー、むっかっつくっ!」
啓斗と同じように石器時代の格好で、攻めて来る原始人。骨ヤリを振り回して縁は追い払う。
「まだ、あと10人くらいいるな……」
岡田がため息交じりに呟いた。
美女たちをガードしながら戦っているため、効率が悪い。ブラックウッドが自慢のスーツもすぐにボロボロになっていた。
残りは5人になったが、倉庫街の奥から10人ほど増援がくる。
「もう、一体何人いるのよ! 私はレディMに会いたいっていうのにっ!」
縁が汗だくになりなりながら、武器を振るおうとしたが、それが消えた。
「こんなときに時間切れ?」
啓斗たちの顔に疲労が多く浮かぶ。そのとき、一人武器を持たずに前に進む人物が一人……時雨だ。
目を伏せ、ワンツーと口でリズムを取ると、アカペラで歌いはじめた。
『♪さぁ、我が子よ 今、眠りなさい 母のぬくもりを胸に♪』
緊迫した雰囲気の中、歌声が聞こえてきた。時雨が、震えながらも目を閉じて歌い始める。歌は心にしみる子守唄。
原始人が往々に立ちすくみ、武器を落とし気を落ち着けた。
「今です、皆さん脱出しましょう」
「それなら、私はレディMを助けにいくっ!」
「ちょっと勝手に……」
「依頼はレディMの救出も入っている。だから、俺が補助する」
「俺もそっちにいくさ、アンジェも上から見守ってくれるだろうし」
アラストールと啓斗が縁のレディM救出に手を貸すことを宣言した。
夕日が波止場の水平線に差し掛かりだしている。時間はない。
「どうか気をつけて」
月菜はそれだけ3人につたえると、残ったメンバーと脱出準備にかかるのだった。
倉庫の窓から見た、連れ去る人影の走っていた方向を目指して、縁は走った。アンジェがその先に儀式場のようなものを見つけ、そこへ縁を誘導する。
まさに映画のワンシーンだった。木材ではなく、ドラム缶や鋼材で作られた社(やしろ)に煌々(こうこう)と灯がともっている。
その社に眠っているのかぐったりしたレディMを抱きかかえて社へ続く階段を上っていく人影がいた。
「あんたね! レディMをさらった罪、重いわよ!」
縁はビシッと指をさした。
くるっと人影が振り向いた。端正な顔つきが、他の原始人とは一線を分けている。
牛の頭蓋骨をかぶり、首には牙や角を加工したネックレスをぶら下げている。
リーダー格なのが明らかだった。
「コノオンナ、オレノヨメ、ワタサナイ!」
「ヨメっていってはるわ、あの人」
「そんな台詞、百万年早いわよ! 皆、いくわよっ!」
レディMのことで頭が一杯になている縁が階段を駆け上り、残りも後に続いた。
リーダー格の原始人がレディMを優しく社の上に寝かせると、巨大な骨棍棒を持つと天に向かってほえる。
「オレハセンシ、ムテキノセンシッ! アボマ!」
そのとき、風景が変わった。階段の一段一段を石段へと変貌させていく。
「その手は食わないわよ!」
「そんなに前にでるな!」
アラストールが止めるも、縁の走りは止まらない。アボマと名乗った原始人は1m級の骨棍棒を階段から駆け下りながら振り下ろした。。
「わきゃぁっ!」
肩にのったエンを落とさないようにつかみ、転がって避ける。石段が骨棍棒に砕かれた。
「さすがにやばいって!」
驚愕しつつも縁は階段を駆け上がった。レディMのいるところまで50段くらいはある。
「キサマッ!」
「お前の相手は俺だっ!」
ガキィンッと硬い音が響いた。アラストールの刀とアボマの骨棍棒がぶつかり合う。
「ジャマダッ!」
「レディMをお前に渡すわけにはいかないっ!」
アラストールは縁が頂上にたどりつくまで、アボマと肉迫し続けた。
アボマがアラストールを力ではじきとばした。。
「うぐっ!?」
背中を石段に叩きつけられ、間髪いれずに、骨棍棒がアラストールの腹に落とされた。
声にならない叫びを上げアラストール。
「マテッ!」
「あんたの相手は俺や!」
追いかけようとするアボマの目の前に啓斗がでて、進路を塞いだ。
「ジャマヲスルナァッ!」
アラストールの腹へ叩きこまれた、骨棍棒が横なぎに振られた。啓斗はガードするもミシミシという音が響き、階段の横へ投げ出された。
ひゅんと風をきり、体が宙を舞った。眼下に見えたのは赤茶けた土。スローモーションに景色がながれ、ジェットコースターの落下の時のようにふわっとした感覚が啓斗を襲った。
「落ちて、たまるかっ!」
骨の砕けていない手を伸ばして石段の端をつかんだ。
視線を頂上へ向ければ、はるか先を縁が走る。
アラストールはアボマの動きをその身でもって塞いでいた。
「俺だって……っ」
体を持ち上げようとしたとき、つかんでいた石段の端の感触が、金属質になっていくのを感じた。
「まだ、やれるっ!」
相手のロケーションエリアは切れる。チャンスはこれからだ。
社の頂上にたどり着いた縁はレディMを抱きかかえ、目を覚まそうとした。
「気がついたのね」
「助けにきてくれたのね……ありがとう。早く、脱出を」
レディMはよろよろと立ち上がり、縁に肩を貸しながら石段を降りようとした。
「オマエハニガサナイ!」
バッと目の前にアボマが立ちふさがり、手に持った骨棍棒を振るいはじめた。
縁はレディMを庇うようにたち、アボマの攻撃から守ろうとした。
しかし、攻撃はない。縁が呆然と立っているアボマの視線の先を追って眺めた。
海の中から、月明かりを浴びて巨大な影が迫ってきた。闇に光る怪獣の瞳は恐ろしいほど鈍く光った。
「オオッ、カミヨッ!」
それを最後にアボマは怪獣の光線で焼き尽くされたのだった。
<五>
縁がレディMに肩をかし、啓斗はアンジェに連れられて倉庫街の外に出た。
縁の手にはプレミアムフィルムがひとつ。
「ご苦労さま……こちらもこの二人で最後だな」
岡田が両手に美女を抱えてやってきた。
「無事、依頼の遂行ができたわね」
月菜がほっとしたように微笑む。
「早いところうちに帰ってシャワー浴びたいわ」
縁がそういうとレディMも笑って答えた。
「私はお酒と料理を食べたいわ。食事は生ものばかりだったから、今の食事が恋しくて」
「今宵はいい月だ。ワインもさぞおいしいだろう」
ブラックウッドの一言に皆一斉に月を見上げる。真ん丸い月を見つめると、妙におなかがすいてきた。
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クリエイターコメント | CAST(参加者)の皆さんお疲れ様でした。 8000字にもわたる長いリプレイになってしまいごめんなさい。
活躍できたかと思いますが、採用できないプレイングもあって非常に心ぐるしかったです。
今後はもっと勉強して、しっかりかけるようにします。
本日は参加していただいて真にありがとうございました! |
公開日時 | 2006-10-15(日) 19:20 |
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