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<ノベル>
リオネの呼びかけに、誘われて来た、森砂 美月は、リオネに誘われると、快く協力を申し出てくれた。
そして、リオネに今回のカレーの内容を聞いて、グリーンカレーだと知り、綺羅星学園のパソコンのネット検索でグリーンカレーの検索を始めた。
「グリーンカレーね。あ、あった、これね」
それを、すぐにプリントアウトするとパソコンを覗き込んでいた、リオネに微笑み、、
「リオネちゃん、グリーンカレーの作り方が分かったわ。上井さんの所に戻りましょうね」
「あっ、分かったんだ〜♪早くひさちゃんの所に行こっ♪美月ちゃん♪」
リオネは、手を美月の方に出すと、二人は仲良く手を繋いで歩き出した。
綺羅星学園を出ると、市長秘書、上井 寿将が校門の前で待っていた。
「よう。お疲れ。で、分かったか?」
寿将が軽く聞くと美月が、
「はい。分かりましたよ。これがグリーンカレーのレシピです」
そう言って、先程プリントアウトしたばかりの、グリーンカレーのレシピを寿将に手渡す。
「ふむふむ、グリーンカレーのペーストに結構な香辛料がいるな」
「スーパーまるぎんなら、揃うと思います」
美月の一言に、リオネは、
「スーパーでお買い物だね♪」
「まあ、そうだな日が暮れない内にさっさと行くか」
「はい、じゃあひさちゃん♪」
そう言ってリオネは美月と繋いでいる逆の手を寿将に差し出す。
「おい、俺にも手繋げってんじゃねえだろうな?」
寿将がいかにも嫌そうに言うと、リオネは笑顔で、
「みんなで手を繋いで行った方が楽しいじゃない?ひさちゃん」
そう言いつつ、何時までも引っ込められない片手に諦めて、寿将は渋々リオネの手を握る。
「ふふっ。上井さんもリオネちゃんには、弱いんですね」
美月がちょっとおかしそうに上井に微笑む。
それを聞いて寿将が、
「そんなんじゃねえよ!こいつが泣いたら、泣きやまねーから、仕方なくだよ」
「もう、ひさちゃんったら照れちゃって〜♪」
「リオネ!お前もうるせー」
そんな、掛け合いをしながら歩く3人は、仲が良い家族の様だった。
3人の影が少しずつ長くなっていった。
スーパーまるぎんが見えると、リオネは繋いでいた手を離して、走り出した。
「美月ちゃーん、ひさちゃーん早く〜♪」
そうやって、手を振りながら、二人を急かすリオネ。
「まって〜、リオネちゃん〜、前見て歩かないと、危ないわよ〜。って、危ない!」
美月の声と同時に、リオネは、前を歩いていた女性にぶつかった。
「きゃっ!あらあら、大丈夫?あら、リオネじゃない?」
リオネにぶつかられた女性は、すぐにリオネを助け起こす。
「いった〜い。ごめんなさーい……あっ、リカちゃん」
リオネとぶつかったのは、長身の美女、リカ・ヴォリンスカヤだった。
「怪我とか無い?」
リカがリオネの心配をするが、
「うん。大丈夫。ぶつかっちゃったね。ごめんね。リカちゃん♪」
それを見ていた、美月と寿将が慌ててやって来る。
「リオネちゃん、大丈夫?」
「バカッ、だからちゃんと前見て歩かないと危ないっていつも言ってるだろうが!」
「リオネ、何ともないよ。ひさちゃん、怒らないでよ〜。ごめんなさ〜い」
心配する美月と怒る、寿将その間に入ったのがリカだった。
「あんまり、リオネちゃんを怒らないでちょうだい、お兄さん。あら、あなた何処かで見た顔ね」
「お前は、リカ・ヴォリンスカヤだな?」
「あら、わたしの名前知ってるの?」
「これでも市長秘書何でね、大体のムービースターの顔と名前は覚えてる」
「そうなの、リカちゃん、ひさちゃんったら実は凄いの〜。みんなの顔と名前しっかり覚えてるんだよ〜♪」
リオネが自分の事の様に自慢する。
「ひさちゃんって言うの?」
リカの問に、ちょっと怒った様に、
「俺の名前は、上井 寿将だ。リオネが勝手に言ってるだけだ」
「そうなの?」
と、リカがクスッと笑う。
「で、その市長秘書さんが、リオネちゃんとスーパーに何の用なの?晩ご飯の支度?」
「いや、面倒くせーな。リオネ、説明してやれ」
「は〜い♪あのね、リカちゃん……」
「……という訳なの、リカちゃん。リオネ達、『銀幕市カレー』を作らなきゃいけないの。だけど、ひさちゃんがすっごく大変だって〜」
と、リオネがたどたどしく説明する。
「そうなの。仕方ないわね〜。わたしも手伝ってあげる♪」
「えっ!?いいの?リカちゃん?」
「リオネが、困ってるのに放っておけないでしょ」
「ありがとう♪リカちゃん♪」
リカの申し出に、1人はしゃぐリオネ。
「美月ちゃん、ひさちゃん♪リカちゃんも手伝ってくれるって〜♪」
「お、おう。まあひとでは、多い方がいいからな。有り難いな」
だが、寿将は気付いていなかった。
リカのお手伝いで自分がどんな目にあうか。
今は、知るよしもなかった……。
「それじゃあ、皆さんお店の方に入りましょう」
美月が、優しくみんなを促した。
「おっかいもの〜♪おっかいもの〜♪」
「リオネったら、あんなにはしゃいじゃって」
リカもリオネに続いて歩いていく。
「じゃあ、俺達は香辛料見てくるから、お前等は具材を集めてきてくれ」
そう言って、寿将は美月と二人で香辛料売り場に行ってしまった。
その時、リカの目がキラリと光った……気がした。
「リオネ、緑色のカレーって言ってたわよね?」
「うん。材料が分からなかったけど美月ちゃんがパソコンで調べてくれたよ♪」
「やーね、緑色って言ったら抹茶に決まってるでしょ」
「抹茶!?」
リカの発言にびっくりするリオネ。
「抹茶って、お茶だよね?そう言うのをカレーに入れても良いの?」
不思議そうに聞くリオネ?
「抹茶は健康ブームってのもあるし、最近の流行りなのよ、リオネ」
と、したり顔で説明したあと、リカは抹茶を大量に籠に詰め込んだ。
「お茶は、緑色だもんね。緑色のカレーがきっと出来るよね♪」
「そうよ、リオネ。それじゃあ、次は具材を見なきゃ。あ、そうだ!ついでにカニクリーム・コロッケも買いましょ」
「カニクリーム・コロッケ?カレーの上に乗せるの?」
リオネが不思議そうに聞いてくる。
「ううん。もっと言い使い方があるのよ♪」
と、ウインクしてみせる。
「そうなんだ〜♪」
リオネが無邪気に感心してみせる。
「それとね、リオネ。とっておきの隠し味があるのよ」
「隠し味?」
リオネが首を傾げる。
「まるぎんの駐車場で、夕方になると買えるアレなんだけど……。アレがあれば間違いなく、『銀幕市カレーに選ばれるわよ。リオネ♪ここで、ちょっと待ってて」
「良いの。わたし、1人で買ってくるから、買い物籠見ててちょうだい。リオネ」
と言って、ウインクする。
「うん。分かった♪リカちゃん、早く戻ってきてね♪」
「分かってるわよ」
(移動販売の屋台、もう来てるかしら?)
リオネと分かれ、リカは駐車場に向かった。
アレを買いに。
一方、美月、寿将組は、何種類もあるスパイスをレシピ通りに選んでは、籠に入れていた。
「コリアンダー、クミン。ピューマックルーって、何だよ?」
「あ、ありました。上井さん。この、粉状のです」
「あ、あったか?にしても必要な香辛料多すぎだぜ。まあ、グリーンカレーにしようって言ったのは、俺だけどさ。とんだ、貧乏くじ引いちまったぜ」
寿将のぼやきに、美月が微笑みながら言う。
「上井さんは、なんだかんだ言って、リオネちゃんが心配なんですね」
「バッ!そんなんじゃねえよ!ただ、お守りさせられてるだけだ!」
「ふふっ。それじゃあ、今度は、チーズと小麦粉を見に行きましょうか?」
「ああ、そうだな」
美月が下に置いていた籠を持ち上げようとすると、横から手が伸びてきて、籠を持ち上げた。
「あ、有り難うございます。上井さん」
「別に、良いんだよ」
そう言って、寿将は籠を持つと先を歩いた。
材料を探して。
まともなグリーンカレーを作る為に。
二組は合流して、美月が提案した調理場、彼女が勤務する、綺羅星学園の調理室に向かった。
そこなら、ナンを焼く窯もあるらしい。
「なあ、リカ。何かお前、買い物袋多くねえか?」
リカが後ろ手に持っている買い物袋の数の多さに疑問を持った寿将が疑問を口にする。
「あら?そうかしら?これも、美味しいグリーンカレーを作る為よ」
「まあ、それなら良いが」
寿将は、釈然としないものも感じたが、一応納得した。
「はい、調理室に着きましたよ、皆さん」
「わ〜い。お料理だ〜♪」
美月の言葉に、早速ワクワクしているリオネが跳ねた。
「こらっ、リオネ。とりあえず手を洗え。料理は、それからだ」
「は〜い♪」
そんなやりとりをリオネと寿将が繰り広げてる中、リカはビニール袋に隠していた礼のアレを袋から出し、そっとエプロンのポケットに忍ばせた。
それを、偶然見た美月は、
「リカさん。今何かポケットに……」
「え?何の事?わたし何もしてないわよ?ほら、リオネエプロン付けなさい」
「は〜い♪」
美月は、不思議に思いながらも、自分もエプロンを付けた。
グリーンカレー作りは、順調だった。
……一見は。
リカの包丁さばきは、プロの料理人の様で、ジャガイモや人参を綺麗に剥いて刻んでいくし、美月は優しくリオネに料理の基礎を教えていた。
「料理って楽しいね〜♪」
と、思わずリオネが言う程だった。
そんな中、寿将はチーズナンを作っていた小麦粉を練って、盤上に伸ばし、これまた盤上に伸ばした極上チーズを重ねていく。
「おっと、小麦粉が足りねーな」
そう言って、寿将がその場を一瞬離れた時だった。
リカは、先程買ってきた、カニクリーム・コロッケをナンとチーズの間に挟んで、寿将が戻る前にまた調理に戻って行った。
「美月ちゃん。お湯湧いたよ」
「そう、リオネちゃん。じゃあ、お野菜をこの中に入れて、材料が柔らかくなるのを待ちましょう」
と、美月が優しくリオネを手伝う。
「おーい、こっちもナンの生地出来たぜー!窯で焼くぞー!」
何も知らない寿将が、ナン生地を釜に入れて熱を入れる。
リカはそれを見て微笑むのだった。
それから数刻経ち、美月が各種スパイスをカレー鍋に入れていった。
カレー独特の匂いが部屋に香りだした。
「美月ー、ナンの方もそろそろ良さそうだ。ちょっと手伝ってくれー」
「あ〜、はい分かりました〜」
鍋の前にリカとリオネだけになった。
「今ね!」
リカは、ここぞとばかりに大量に買い込んだ抹茶をカレー鍋の中に突っ込んだ。
そして、エプロンのポケットに手を入れて、
「リオネ、ちょっと後ろ向いてて。隠し味を入れるから」
「隠し味って?」
リオネが首を傾げる。
「企業秘密よ♪」
「うん。分かった」
素直に後ろを向くリオネ。
それを確認すると、リカはまるぎんスーパーで夕方になると買えるアレをカレー鍋に入れた。
そしてカレー鍋を一混ぜすると、
「リオネ、もう良いわよ」
と、満面の笑みで言った。
「リカちゃん、何だったの?」
「秘密よ♪」
リカは、何故か楽しげだった。
そんな感じで、調理を初めてから数時間。
調理室にはカレーのスパイシーな香りが充満し、グリーンカレーとチーズナンは完成した。
「おーっ。初めてにしちゃ、美味そうに出来たじゃねーか」
寿将がテーブルに並べられた、カレー達を眺めて言った。
グリーンカレーは鮮やかな緑で逆に食欲をそそるし、チーズナンはチーズの香りが際だっている。
「で、これ、誰か味見したのか?」
寿将が聞くとリオネが、
「まだだよ〜」
「一番最初は男性のあなたに食べてもらわないと」
リカがいい笑顔で言うと、美月も、
「そうですよ、上井さん」
そう言って、ナンを取りグリーンカレーを付けて寿将に差し出す。
「上井さん。あーん」
「ああ!いい!そう言うのは!」
と、上井は照れた様に、美月の手のカレーナンを取ると、一口食べた。
直後!
「んー!あー!うぎゃー!」
「えっ!えっ!どうしたの?ひさちゃん!」
リオネが尋ねるが、寿将は床をのたうち回っている。
「にが!抹茶かー!何でナンに蟹が……!」
「あっ!」
のたうち回っている、寿将の目の前に包丁が突き刺さる。
「ゴキブリだわ。やーね」
リカが包丁を投げつけていた。
緑色だった寿将の表情が蒼くなった。
「……とりあえず水くれ」
「はい、上井さん」
美月が微笑みながら寿将に水の入ったグラスを渡す。
その美月の笑顔にちょっと脅えながら、上井はグラスを受け取り、一気に飲み干した。
「あー、死ぬかと思っ……」
リカの目が光ったのが見えたので寿将は、それ以上何も言えなかった。
「ひさちゃん、美味しかった?」
「あ、ああ、美味かった。これなら、チャンドラも喜んでくれるだろう……」
「ホントにー!じゃあ、リオネも一口……」
「お前には、まだ早い!」
食べようとする、リオネを寿将が必死で止める。
「何でー!」
「お、大人の味だからだ。大人になったらな」
「ぶー。ひさちゃんのけちー」
ほっぺたを膨らませていたリオネだったが、落ち着きを取り戻し。
「美月ちゃん、リカちゃんお手伝いありがとうね♪これできっと王子様も喜んでくれるよ♪」
「リオネちゃんが喜んでくれて嬉しいわ」
「リオネのお願いじゃ断れないからね♪」
そんな和やかな会話を聞きながら、寿将はカレーをじっと眺め1人考えていた。
(これが、『銀幕市カレー』になる事は、まず、ねえ!まあ、この不味いの喰ったらチャンドラも嫌でも国に帰るかもな……)
寿将の思いを3人は知らないままで居た。
幸せな事に。
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クリエイターコメント | この度は大変納品が遅くなりまして申し訳ありません。 結果は凄いのが出来ました(笑)。 今回はご参加下さいまして有り難うございました。
誤字脱字、ご要望、ご感想等ございましたら、メールして頂けると嬉しいです。 今後の参考にさせて頂きます。
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公開日時 | 2008-08-21(木) 10:20 |
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