 |
|
 |
|
<ノベル>
いまや、銀幕市全体が混乱していると言っても過言ではなかった。住宅街、綺羅星学園、繁華街は言うに及ばず、ダイノランドや神獣の森といったハザード区域までが、ディスペアーやネガティヴパワーによって侵され、恐ろしい事件が起きている。戦う能力を持つ者の数にも限りがあった。彼らは信頼できる仲間と示し合わせる時間もろくに与えられないまま、各地へ散っていく。
ギル・バッカスは、今後もしばらくこの混乱が続くと考えた。敵がネガティヴパワーであるならば、アズマ研究所の力は必要不可欠だ。そのため、彼は数あるジズ撃退作戦の中からこれを選んだ。
この研究所が銀幕市に来て2年が経つ。彼らのことを受け入れられない市民もいるにはいたが、すでに少数になっていた。結局のところ、ディスペアーを倒す手段をもたらしてくれたのはアズマ研究所である。彼らの力がなかったら、いまごろ銀幕市はどうなっていただろうか。レヴィアタンやベヘモットを倒せないどころか、ジズクラスの大きさのディスペアーにすら太刀打ちできなかったかもしれない。
「おう。俺様が一番乗りかと思ったが」
対策課に指定された集合場所――ベイエリア倉庫街の出入り口前に仁王立ちしている大柄な男を見つけて、ギルはそう言った。一番乗りは、ベネット・サイズモアだったようだ。
「さっさと済ませて帰りたいんでな」
ベネットは不機嫌そうに、むっつりと答えた。べつに機嫌が悪いわけではない。彼はいつもこんな調子だ。彼は怒ってはいなかったし、緊張してもいなかった。
「明るいうちに終わらせたい」
「俺様ぁ、日が沈んでからのほうが都合がいいんだがなあ。なんか用事か? こんなときに」
「ペットフードのセールなんだ。ケージの掃除に水槽の水替えもしなけりゃならん」
「……」
「……。ハムスターと金魚を買っちゃ悪いのか」
「な、なにも言ってねぇだろうが」
「ふたりとも、アズ研に行く部隊?」
ギルとベネットがどこかのんきな会話を交わしていたところに、白衣をなびかせ、息せき切って、二階堂美樹が駆け寄ってきた。後ろには数台のジープが止まっていて、ガスマスクをかぶった黒づくめの武装集団が、ゾロゾロと降りてくるところが見えた。東栄三郎の姿もある。
「ああ。『ハーメルン』も到着か」
「あと3人、途中で合流したわ。急ぎましょ!」
「まあ待て待て。メンツを頭に叩きこむ余裕くらいあるだろう」
美樹をなだめ、ギルはジープから降りて近づいてくる集団のほうに目を移した。
美樹が言う3人とは、赤城竜、小日向悟、月下部理晨のようだ。3人とも体力も脚力も高い。プロの戦闘集団に遅れることなく、軽くはない装備で走ってきた。
「6人。これで全員ですね。よろしくお願いします」
こんなときでも悟は冷静で、スチルショットを抱えたものものしい姿で、ピョコリと頭を下げた。その隣にいる理晨の姿は、輪をかけて物騒だ。この日本にどうやって持ちこんだのかは不明だが、SR16を手にしていた。彼にとってはスチルショットがサブウェポンというのも、一般市民らしからぬところである。いまの理晨にはいつもの穏やかさがなかった。射るような目つきで、空に浮かぶ「もうひとつの太陽」を見上げていた。
彼の黒褐色の耳には、ズラリとピアスが並んでいる。そのピアスと目つきが意味する恐ろしさを、『傭兵』という稼業をしている者なら、きっと知っているだろう。
「ミランダのことも気になるが……真っ先に研究員を助けてやらねぇとな。って、オイオイ、ちょい待て博士!」
「コ、コラ! 離さんか!」
東は顔合わせを無視して倉庫街に飛びこもうとしていた。赤城がすかさず腕を掴んで確保する。
「大丈夫だって、ちゃんと全員助けてやるためにオレらが集まったんだからよ!」
「そうよ、全員。全員助けて、私たちも全員無事で終わらせないといけないんだから。ストラもついて来てくれるなら、『みんな』にそう命令してちょうだい。絶対よ」
「オレからも同行をお願いします。ストラさんの索敵能力も、火力も必要ですから」
美樹と悟からの要請に、ストラは頷いた。
「ダ・ヤア。われわれ『ハーメルン』は全面的に協力する」
「よし。行くか」
ショットガンを手にしたベネットがそう言ったのを合図に、全員がアズマ研究所に向かって走りだした。
アズマ研究所の状況は、ハーメルンが最初に駆けつけたときとなんら変わっていないように見えた。奇妙な色のエネルギーに包まれ、普段の外観をうかがうことはできない。誰かが押さえていなければ今にも中に飛びこみそうな東に、ベネットが尋ねる。
「研究員は何人いた?」
「うーむ……我輩のようにフィールドワークに出ていた者もいるだろうから、正確な人数はわからん。しかし、30名は確実にいるハズだ」
「けっこういるんだな。ムービースターの数はどうだ?」
「住み込みで協力してくれている者が1名。運動能力データのサンプルとして、朝10時に入所した者が2名だ」
「その3人、ゴールデングローブつけてたワケじゃねぇよな。クソッ……」
「ソレと、ムービーキラーミランダ、か」
ネガティヴゾーンと化した研究所にいるムービースター。現在かれらがどうなっているかは想像もしたくなかったが、作戦のためには考慮に入れるしかなかった。美樹と赤城は、表情に悔しさをにじませる。
「誰も外に出てきていないみたいだ。ということは……全員、脱出できない状況に置かれているということですね。救出を優先しましょう」
「だな。見つけ次第ヒヨコどもに担いで外に連れ出してもらうとするか。ムービーキラーにジズ……露払いは俺様が引き受ける」
悟の推測と提案にギルが賛成し、ガスマスクたちのほうを見た。ヒヨコ呼ばわりされたテロリストたちは、ちょっとムッとしたようではあったが、身に覚えがあるのでなにも言わない。
「先行する。ストラ、敵位置の報告を最優先で頼む」
「ダ・ヤア」
「待て、俺も前だ」
素人とはかけ離れた姿勢と足の運びで進み始めた理晨に、ベネットが並ぶ。
全員が研究所を包みこむ半球状のエネルギー体の中に入った瞬間、耳障りな鳴き声のようなものが響き、触手じみたものが周囲の空気を打ち据えた。
★ ★ ★
「オイ、大丈夫か! 助けに来たぞ!」
突入と同時に、ベネットが大声で叫ぶ。その太い声が、不自然なくらいにわんわんと反響した。応答は……ない。
「な、んだこりゃあ……」
「……見取り図、役に立ちそうにないかな」
赤城が驚き呆れた。その横で、悟がぽつりと独りごちる。研究所は、研究所ではなくなってしまっていた。ここはもはや、ネガティヴゾーンと言う名の異世界だった。研究所の面影は残してはいるが――汚水と悪臭に満ち、カビとサビに侵された、穢れた空間だ。天井や壁の隙間から、絶えず水が漏っている。
美樹の身体に震えが走った。無意識のうちに震えたのだ。
下水道……。
まるで映画の中の怪しい研究所が下水道に沈みかけているような光景だ。美樹とハーメルンにとって、下水道というのは、忘れたくても忘れられない場所だった。
そして、ミランダにとっても、きっと……。
思わず美樹は、すぐ隣にいたストラの顔を見上げていた。
「ジェーブシュカ。われわれも、下水にかかわるのは、コレで終わりにしたいところだ」
「そうね。まったく、そのとおりよ」
美樹は前を向いた。警戒しながら前を行く理晨とベネット、ギルの背中は目の前だ。その先は、滴り落ちる水と、暗黒しか見えない。夜のような暗闇を見つめていると、思い出したくないことまで思い出してしまいそうだ……。
「止まれ。上だ!」
ストラがガリルを構えて鋭く言い放つ。全員が一斉に身構えたそのとき、どんな獣のモノでもない金切り声が上がり、ものすごい勢いで近づいてきた。ギルはほとんど反射的に目をそむけていた。闇の中から降ってきたモノは、まばゆい光を放っていたのだ。そして光はその怪物だけではなく、そこかしこで生まれた。理晨とストラが発砲したのだ。
「キェェェェエエエエエエエイィ! キェェェェェ!」
「うおおおお!?」
スチルショットを撃とうとした赤城が倒れた。ベネットも突然脚に衝撃を受け、水びたしの床の上に倒れる。ショットガンの引金をすでに引いていた。しかし散弾は残らず天井に当たってしまった。
「散開しろ! まとめて足をすくわれるぞ!」
触手だ。白とも黄色ともつかない色の、鈍く光る触手を、敵が振り回しているのだった。光はだいぶ弱くなっていて、ホタルの光ほどにすぎない。理晨やハーメルンが放つライフル弾は、触手の中心に命中していて、光の粒が血のように飛び散っていた。
「ジズか……!?」
「違う。ディスペアーの気配ではない。コレは――」
「ムービーキラーだぞ! だが、ミランダではない!」
東が叫んだ。いつも身につけているゴーグルで簡易分析したのだ。光の触手を持つムービーキラーには、あまり銃撃が効いていないようだった。効いているが、痛みを感じないか、体力が異様に高いのかもしれない。金切り声を上げながら、上に下に、右に左にとすばしこく跳躍する。
「チイッ……」
ベネットが、身体を起こしながら手をかざした。
触手がすばやく伸びてきたが、見えない障壁にぶつかって弾き飛ばされた。ベネットが展開したシールドだ。触手がぶつかったその一瞬、フロントガラスのような角度のシールドがかすかに光り、その姿があらわになった。
「キィィィィィッ――」
ムービーキラーにとって、予想外の感触だったのだろうか。すべての触手が、一度に退いた。
スチルショットの閃光が一条、その一瞬を貫く。
ソレは、後列からの、悟の狙撃だった。
ムービーキラーは、一瞬ひるんだその体勢で固まった。
「おりゃああっ!」
裂帛の気合と共に、赤城が間合いを詰め、ディレクターズカッターを振り下ろした。
耳をつんざくような、ムービーキラーの断末魔。実際、その場の幾人かは耳をふさいだ。赤城の袈裟懸けの一撃で、ムービーキラーの身体はななめに分断されていた。触手が放っていた光は完全に消え去り、二つになった遺骸が床に落ちる。しかしソレは、床に転がる寸前に、黒いプレミアフィルムに変わっていた。そのフィルムも、皆が見つめる中、ボロボロになって崩れ去る……。
「新手だ」
息つくヒマもない。ストラの声が沈黙を断つ。しかし彼は、そう言った次の瞬間に発言を訂正した。
「ん……違うな。敵意が見られない。3人……いや、2人だ」
「研究員さんかも」
「おーい! 助けに来たぞ。こっちだ!」
ベネットが、この世界に入った直後同様、闇に向かって声を張り上げた。たちまち、バシャバシャと水たまりを踏むような足音が、こちらに向かって近づいてくる。そして、頼りない白い光もチラチラと見え始めた。人影は、懐中電灯を持っていた。
「た、対策課の人か!?」
「助かったー!」
「おお、フルヤ君にハシモト君ではないか」
「あ、博士! ハァ、よかった、無事だったんですね、ハァ」
走り寄ってきたふたりの男は、アズマ研究所のロゴが入った白衣を着ていた。ふたりともビショ濡れで、白衣も服も汚れているが、ケガはないようだ。
「研究所のどのへんで、どんな研究してたの? 状況は?」
美樹が尋ねると、ゼエゼエと息を整えているふたりのかわりに、アズマが答えた。
「収容していたムービーキラー――ミランダの観察とデータ分析を担当していたのだ」
「そ、そう! ミランダ!」
研究員のハシモトが大声を上げる。顔を濡らしているのが汗なのか汚水なのかわからない。
「ミランダがぼくらを助けてくれたんです」
「なに!?」
「ミランダさんが……?」
ハシモトの話に、誰もが驚きを隠せない。悟をはじめ、フランキー討伐作戦に参加した者たちは、助け出したあのときのミランダの姿を思い浮かべる。ギルとベネットも、ミランダのことは銀幕ジャーナルを通して知っている――ムービーキラー・フランキーに吸収され、辛くも救い出せたものの、彼女は片目と片腕を失った。そのうえ、ムービーキラーはムービーキラーのままであり、精神状態も不安定なままだった。
ムービーキラーは、絶対に元には戻れないのだ。
「ソレは、正気に戻った……ムービースターに戻ったということですか?」
念のために悟が訊くと、フルヤが暗い顔でかぶりを振った。
「ひどく錯乱してたよ。突然天井が壊れて、鳥みたいなモンスターが襲ってきてね。……そうだ、よく考えたら、ミランダはこんなことになるちょっと前から騒ぎだしてた」
「ミランダは『邪悪だ!』って叫んでモンスターに飛びかかったんだ。でも、ぼくらを見て、『逃げろ』って。だから、助けてくれた、って思うんだ」
「で、おめぇさんたちゃ一目散。ミランダがどうなったかは知らねぇ……ってトコだろ」
「ハイ」
ギルはべつに彼らを責めたワケではなかったが、ふたりの研究員はばつの悪い顔で肩を落とした。見たところ、彼らはバッキーも飼っていないようだし、武器も持っていない。
「ねえ、ゴールデングローブってここで作ってるんでしょ? もしかしたら攻撃に使えるかもしれないわ。製造装置をオーバードライブさせるとか」
「うーん、ソレは難しそうだ。なにせ、どこもこんな感じだから。部屋の位置もなにもかもメチャクチャになってて、ここまで来るのに迷っちゃって……。ゴールデングローブの製造装置がどこにあるかわからないし、電気も止まってるんだよ」
「なに? 予備電源を3つも設置しておるハズだぞ」
「どう見ても、全部落ちてるな」
理晨が肩をすくめる。確かに、いまこの場を照らしているのは、理晨やハーメルンの銃に取り付けられたフラッシュライトだけだ。絶望や魔法の力によって閉ざされたこの空間では、科学の理屈など通用しないらしい。研究所は、研究所としての機能をすべて失っている。
東だけではなく、美樹も肩を落とした。
「じゃ、私が考えてた作戦はムリってことね」
「よっしゃ、まぁとりあえず先を急ごうぜ。丸腰のヤツでも無事だったんだ。研究所の仲間はみんな大丈夫さ。早く見つけて安心させてやろうや」
赤城の明るい声に、フルヤとハシモトの表情もわずかに晴れた。ふたりはチラと博士に目を向けてから話しだす。
「ウチの所員はみんなイレギュラーとか事故にはけっこう慣れててね」
「ああ、爆発なんかよくあることだし」
「日頃から避難訓練もしてるし、きっとみんなどこかに集合して隠れてるよ。まあ、ぼくらは集合したくてもできなかったんだけど」
ベネットが肩をすくめ、ほんのちょっと苦笑いして、むっつり押し黙っている東を見た。
「ずいぶんスリリングな職場なんだな、アズマ研究所は」
「博士がトンデモない思いつきで色々発明したりするからでしょ?」
「失敬な! 歴史に残る発明の99%は、天才のひらめきから生まれてきたではないか」
「……残りの1%は?」
「『事故』という名の『偶然』だ! さあ、非建設的な問答はやめて、先に行くぞ」
東が大またで歩き始める。
束の間、一行の間に小さな笑いが起こった。
ミランダに救われてネガティヴゾーンを走り回っている間、フルヤとハシモトのふたりは、ムービーキラーの姿を一度も見ていないらしい。ただ、なにかが水たまりを蹴とばすような音や、奇怪な叫び声は何度も聞いたと言う。
「ストラ、ムービーキラーの位置と数は?」
「2体。11時と2時の方向、射程外だ」
「その他になにか感じないか? ……妙な『気配』を感じた、って言ってただろう」
「……」
「ストラ?」
「わからん……なぜだ……消えてなくなったとでも言うのか。外ではアレほど強く感じた『気配』が……まるで見えん。ゴールデングローブの影響か……? いや、コレはまるで……」
いつもどこか余裕があるストラの声に、緊張が走っていた。
「まるでこの空間すべてが、私が外で感じた『気配』そのもののようだ」
「腹ン中ってワケかい。ソレなら、こんだけ湿っててもおかしくねぇってことよ」
ギルは鼻で笑った。ライトがなくても、暗闇の世界で生きてきたギルは、この空間の様相を大体把握できている。出入り口から直線距離にしてすでに100メートルは進んでいた。もちろん、アズマ研究所はそんなに広大な施設ではない。もともとは倉庫を改造した急ごしらえの『支部』だったのだから。
奥に進むにつれ、周囲の様相は歪み始めていた。流れ落ちる下水は量を増し、コンクリートのような材質でできた壁や天井には、触手にも血管にも見える生物的な筋が浮き出てきている。ギルには、ソレがハッキリ見えていた。
「研究員の気配は感じないか?」
「イズヴィニーチェ。私は『敵』と認識したモノの気配を察知できる。……普段ならば、一般市民でも集中すれば気配をつかめるのだが……」
「ゴールデングローブのせいか。厄介だが、装備しないワケにもいかないしな」
「あるいは、かなり距離があるかだ。そこのふたりの気配は、かなり近づいてきてからでなければ感じ取れなかった」
「かなり、ね……。アズ研って、こんなに広くなかったわよね」
フルヤとハシモトは、自分たちが歩いてきた道をよく覚えていなかった。道は迷路のようだったし、彼らは無我夢中だったのだ。誰もふたりを責めたりはしなかったが、しばらく状況に進展はなく、重苦しい沈黙と緊張感だけが増していった。
下水道の悪臭も、強くなるいっぽうだ。そして、冬の山のような寒さが足元から這い登ってきている。自分が吐く息が白くなってきていることに、いつしか誰もが気づいていた。
どれくらい進んだだろうか。
先頭を歩いていたベネットが、不意に足を止めた。ストラが怪訝な顔をする。
「敵の気配は感じないが?」
「シッ」
水の滴る音だけが聞こえる――ようだった、が。
確かに、女のむせび泣きが聞こえたようでもあった。
「聞こえたか?」
「ああ」
「女だったな」
「敵ではない女か。研究員だといいのだが」
「あ。この辺……見覚えがあるぞ」
懐中電灯で壁を照らしたフルヤが言った。光が照らし出したモノは、『CP045』と記されたプレートだ。東がフムと声を漏らす。
「第一データ処理室――コンピュータールーム付近だな。わが研究所の中では最も所員が集まるところだ」
「でも……おかしいですよ。ソレなら、ここら辺にドアがあるハズなのに……」
フルヤとハシモトがペタペタと濡れた壁を撫でる。悟はソッと、冷たい壁に耳を押し当ててみた。
泣き声が……。
「この中だ。閉じこめられているのかも」
「ミハイル!」
「ダ・ヤア!」
ストラがガスマスクのひとりを呼びつけた。彼は腰の後ろにくくりつけていたモノを取り外す。C4だった。ギルにとっては見慣れないモノだったので、彼はガスマスクの作業を覗きこんだ。
「なんだなんだ? なに始める気だ」
「爆破する」
「ハデな音が出そうだな。ま、仕方ねぇが」
ガスマスクがC4を仕掛けているそばの壁を、ベネットは力任せに叩いて、大声を上げた。
「壁から離れろ! 爆破するぞ!」
泣き声がやんだ、ようだった。
「下がれ!」
「耳をふさげ!」
全員が充分な距離を取ったところで、ガスマスクはC4を起爆した。
衝撃と轟音で、ネガティヴゾーンそのものが大きく揺れた。耳をふさいでいても、ソレは聞こえた。爆音ではなく、なにものかの叫び声だ。怒りと驚愕に満ち、爆発と侵入者を激しく憎悪している声……。
いの一番にソレを振り払い、壁に開いた大穴に駆け寄ったのは、赤城だった。力任せに瓦礫を取り除け、脇に投げ捨てる。
「おうい! 誰かいるか!」
「た……、助けて! ここです!」
「イシカワさんの声だ!」
壁の中は、アズマ研究所の中にはいくつもあったコンピューター室の面影を残していた。電子機器類はまったく機能していないようだったが、十数人の研究員が、ひとつの懐中電灯を囲んで座りこんでいた。泣いていたのは、その中の女性所員らしい。
「データは無事か!?」
「ちょっと、博士。そんなのより心配するべきモノがあるでしょ」
室内に飛びこむやいなやデータの安否を気遣った東を、ピシャリと美樹はたしなめた。たとえ彼が聞いていなかったとしても、ひとこと言わずにはいられない。
「ケガはないか? 治療してやれるぞ」
「大丈夫です。ただ、ちょっと、寒くて……」
「どうなることかと思ってました。ありがとうございます」
「待て。脅かすワケじゃねぇが、安心するのはまだはえぇぞ。ここはネガティヴゾーンのド真ン中だからな。ムービーキラー見なかったか?」
ギルが尋ねると、青ざめた研究員たちは一様に戸惑った顔をして、かぶりを振った。
「ごらんのとおり、ドアがなくなってね。誰も出入りしてないよ」
彼が言うとおり、ここは、異様な部屋だった。四方の壁にはドアも窓もない。こうしてムリヤリでも壁に穴を開けていなかったら、酸欠になっていたかもしれなかった。
「大槍。どうやら探さずにすみそうだ」
ストラがアサルトライフルを構え、ギルに言う。
「近づいてきている」
ソレが聞こえるまでは、敵の接近を把握していたのはストラだけだった。
しかしすぐに、誰もが、危機が近づいてくるのを悟った。
耳障りな金切り声が、アッと言う間に近づいてきて――。
ガスマスクがふたりほど吹っ飛んだ。彼らは運が悪かったのだ。ちょうど彼らの真後ろの壁が粉々になった。
ベネットがすかさずシールドを張ったが、ゴールデングローブの副作用によるものか、すべてを防ぎきれなかった。瓦礫の直撃は避けられたものの、爆風によって、体重の軽い美樹が転んだ。悟と赤城もバランスを崩し、ベネットも倒れた。
重装備だった理晨とギルはなんとか転倒をまぬがれた。なにかが来ることを、皆よりわずかに先に察知できたストラも。光が、コンピュータ室の中に触手を伸ばし、瓦礫を押しのけながら入りこんでくる。
理晨とストラが張った弾幕が、光の触手のかたまりを、ほんの少しひるませた。光のかけらが飛び散り、奇怪な叫び声が上がる。
「ジェーブシュカ! そのまま伏せてろ!」
倒れた美樹の前に、腕が一本しかないガスマスクが飛び出して、デザートイーグルを抜いた。重々しい銃声は立て続けに9発。デザートイーグルの装弾数は9発だ。
「クソッ――だからベネリのほうがよかったんだ……」
「スミルノフ!」
美樹はなかば悲鳴を上げていた。
デザートイーグルの弾丸は光の触手を何本か飛ばしたが、触手は無数にあった。そのうちのたった1本が、横なぎで片腕のガスマスクを叩きのめしていた。
「なんてことするのよ!! どうして!!」
美樹はスチルショットを取り上げ、撃った。狙いもロクにつけずに。だが、光の弾は当たった。触手のたった1本の先端に。
胴体に当たるよりも効果は薄かったようだ。ムービーキラーは感電したかのように痙攣したが、怒りの咆哮を上げて、2秒後には動き出していた。しかしその2秒というのは、戦士にとって、とても大きなスキだった。ギルの大槍の一閃が、触手をまとめて十数本なぎ払う。返す刀で本体にとどめを刺そうとしたとき――
ギルも、ハッキリと、近づく『気配』を感じ取った。
「上か――?」
「上だ! 撃て! 上からも来るぞ!」
ギルはとどめの一撃をベネットに譲った。跳躍し、部屋の中央から隅へ。
ベネットのショットガンが触手の中心をまともにとらえる。黒いフィルムがあらわれた瞬間、新たな金切り声が響き、天井が崩れた。大量の下水が室内に降り注ぎ、光り輝く触手のかたまりも、降ってきた。理晨はすでに新手を迎撃していた。無言のフルオート連射が、触手を立て続けに胴体から切り離していく。根元を狙っていた。見舞った弾丸の半分は本体に当たっているハズだ。怪物は確かにひるんでいるように見えた。
バシャッ、と金属音が響く。
金属製のネットが広がり、ムービーキラーを包みこんだ。ネットランチャーだ。撃ったのは悟。
ムービーキラーは触手をメチャクチャに振り回した。ネットはものの数秒でズタズタに引き裂かれた。が、今度は赤城がランチャーから放ったトリモチが怪物の身体に絡みついていた。
もう、完全に、光のムービーキラーは身動きが取れなくなった。スチルショットで固める必要もない。あとは、とどめを刺すだけ――
「な……に?」
なにが起きたのか、誰にもわからなかった。
光が爆発して、全員がなぎ倒されていた。
壁も、天井も、コンピュータやデスクも、すべてが吹き飛ばされて……。
(邪悪は、どこに?)
(どこにでもある。おまえたちだ、おまえたちがいるかぎり)
(邪悪はわたしだ)
(そして、おまえたちも邪悪だ)
(わたしは、わたしは、邪悪を、憎む……)
翼を生やした光が落ちてきたのだ。
光球は、まさに倒されかけていたムービーキラーをひと飲みにしてしまった。
光は吼えた。見る者に不安と恐怖しか与えない、異様な光の中心から、目も鼻もない顔が突き出す。顔はヒトの顔に似ていなくもなかった。目があるべき場所に裂傷があり、カビのような毒々しい色をした液体が流れ出している。よく見ると、翼は何対もあるようだが、根元からちぎられている翼もあった。
「これが……」
「ジズ!」
「通常のディスペアーが持つエネルギー数値ではないぞ。なんだ、コレは……!」
ちぎられた翼の根元が蠢き、翼のかわりに触手が生えた。顔の傷もゴボゴボ泡立ち、再生するかと思いきや、やはりそこからも触手が飛び出す。
ジズは傷ついていた。フルヤとハシモトの話から推測するに、ミランダにやられたのだろう。しかしその傷も、ムービーキラーを喰うことでムリヤリふさいだようだ。
「殺る気らしいな」
ギルの口元に、無意識の笑みが浮かんだ。ジズの光は明るかったが、まばゆいほどではない。それどころか、光は徐々に弱まって、翼を生やした怪物の姿があらわになってきた。
怪物は目も鼻もない顔と、レザースーツを着た女の片腕と、ヒヅメのある2本の脚を持っていた。身体のあちこちから発光する翼と触手を生やしている。見たこともないキメラだ。大きさは……ヒグマよりも確実に大きい。
「あの腕……、クソッ! コイツ、ミランダも喰いやがったっ!」
赤城はトリモチ弾をこめたランチャーをジズに向けた。ヤツの女の腕は、赤城にも見覚えがある。間違いない、ミランダのモノだ。
悟が、美樹が、スチルショットを構える。理晨とストラはアサルトライフルを。ベネットはショットガンを。だが、誰も撃てなかった。誰が引金を引くよりも早く、ジズが無数の触手を伸ばしたからだ。
ギルにはその動きが読めた。優れた動体視力のおかげだ。彼は美樹と赤城の前に飛び出して大槍を一閃した。にぶい光を放つ触手が何本も飛ぶ。しかし、理晨のSR16は触手の一撃で張り飛ばされ、ついでに横っ面も殴られた。理晨の隣にいたストラも、足と肩をしたたかに打たれて倒れた。ベネットはとっさに自分の身を守るだけのシールドを張るのが精一杯だった。そして悟は、大柄なガスマスクのひとりにかばわれた。
「アレクセイさん――!」
悟が以前世話になったテロリストだ。ストラの同志の中ではもっとも格闘技に秀でていた。ガスマスクは2メートルほども横様に吹っ飛んでいた。
「ギィィィィエエエエアアアア! キェェェエエエエエエイィ!」
獣や人間や金属音が入り混じった奇声を上げて、ジズは女の腕を振り上げた。その手はいつの間にか、細身の長剣の柄を握りしめている。ジズは叫びながら剣を振り下ろした。ものすごい衝撃が生まれ、床がめくれ上がり、湿った瓦礫が飛び散る。
ガスマスクたちが一瞬怯み、銃撃が途切れた。だが、ベネットがその一瞬を埋める。彼は落ち着いてジズの頭部に狙いを定め、散弾を放っていた。
グシャッ、と、大きな口しかない顔が潰れた。緑がかった黒い汁が散乱する。ジズは倒れなかったが、暴れまわっていた触手が驚いたように、いっぺんに引いた。
悟が、美樹が、立て続けにスチルショットを撃った。間違いなく2発とも命中したが、ムービースターに当てたときのような劇的な効果は見られない。だが、ジズの異様な身体はしびれたように痙攣して、大きなスキができた。
「悪いな……ミランダ!」
赤城が走り寄り、ディレクターズカッターを振り下ろす。
長剣を持ったまま、女の腕が飛んだ。
顔もないのに、ジズは絶叫した。触手が目の前の赤城をなぎ払おうとしたが、そこでジズの身体が激しく震えた。
理晨がスチルショットで狙い撃ったのだ。そのスキを突き、ストラがガリルを連射する。ちぎれ飛ぶ触手の雨の中、赤城は飛び退いた。
ドスッ!
赤城が離れると同時に、ジズの身体に、今度は衝撃が走った。
ギルが、ジズの背後に回りこんでいて――その大槍の穂先を、胴体に叩きこんでいたのだ。
大きく裂ける、そのいびつな身体。
その裂け目から、血まみれの、黒髪の女の顔が出てきた。美しい顔の半分が、醜く引き攣れたように爛れた顔……。
「アァァァァァァァアアアア!!」
「ミランダ……!」
「逃げろ! あぁぁぁああ……逃げろ、邪悪が、来るぞぉぉおお!」
ムービーキラー、ミランダ。
その首だけが、ジズの体内からズルリとこぼれ落ちる。けれどその首は、落ちながら、黒いフィルムに姿を変えていた。床に落ちると同時に、フィルムはクシャリと乾いた音を立てて崩れた。
赤城はほとんど反射的に、手を伸ばしかけていた。フィルムを受け止め、拾い上げようとしていた。
「……」
ギルはその光景を見て、なにも言わずに……ジズの身体から力任せに大槍を引き抜くと、今度はまっすぐ縦に振り下ろした。
「ギシァァアアアアアアアァァァァァァァ!!」
ジズの断末魔が響きわたり、汚水にまみれた世界が……光に包まれる。
★ ★ ★
気づくと、一行はメチャクチャになったコンピュータールームにいた。
しかし、床を散らかしているのは壊れたコンピューターの部品や紙の束ばかりで、悪臭を放つ下水などどこにもない。壁を爆破した痕跡もなかったし、そもそも、ちゃんとドアがある。
誰もが無言で室内を見回す。と、どうやら故障をまぬがれたらしいコンピューターが何台か、プピッと電子音を鳴らして再起動した。パラパラと蛍光灯がつき、室内が一気に明るくなる。
「た、助かった……のか?」
「やった。予備じゃなくて主電源が生き返ってる!」
部屋の隅で小さくなっていた研究員たちが、歓声と安堵の溜息を漏らした。
「ウム! 半径100メートル圏内のネガティヴパワーは消滅した。ご苦労だったな!」
あの戦闘の中、東はちゃっかり無傷だった。単にツイてるのか、要領がいいのかはナゾだ。6人の助っ人は全員どこかしらケガをしていたし、ハーメルンにいたっては倒れたままピクリとも動かない者もいる。
「ストラ! 大丈夫か!?」
理晨は自分の前で倒れているストラに呼びかけた。近代的な装備に身を固めた男たちが転がっている光景を見るのは、理晨にとって、空しさのようなモノを感じる瞬間だった。ましてや、ここは中東やアフリカではない。世界でもっとも戦争とは無縁と言っていい日本のまちには、あってはならない光景だ。
ここは、彼と、彼の『弟』が愛する、平和な場所。
戦いで誰かを失うなど、もっとありえないことだ。そんなことは、ごめんだった。
身を乗り出すと、耳に鋭い痛みが走った。思わず触れた指に、血がベットリつく。ピアスが何個か飛んでしまったようだ。耳たぶが裂けているかもしれないが、確かめるのはあとでいい。
「ストラ!」
「……聞こえている。……状況は?」
「終了だ」
ストラがすぐにうめきながら身体を起こしたので、理晨はホッとする。彼は額から血を流していたが、目立った出血はそこぐらいだ。
「頭を打った」
「血が出てるぞ。レントゲン撮ったほうがいいんじゃないか」
「なに、問題ない。わが同志は? 誰も欠けていないか?」
「アレクセイさんが……」
悟が少し青ざめた顔でストラを見る。その後ろでは、美樹が涙声でガスマスクを揺さぶっていた。
「ねえ、スミルノフ! 返事してよ! 起きてよぉ!」
ストラの顔が、サッと強張る。軽傷ですんでいたガスマスクたちが色めきだって、アレクセイとスミルノフに駆け寄った。
「オレをかばってくれたんです。こんなカタチで、また迷惑をかけてしまうなんて……」
「スミルノフもよ。私のためにムチャなんか!」
「クソッ、だからスミルノフは留守番しとけって言ったのに……」
「い、息してるのか?」
「オイ、アレクセイ!」
「揺らすなバカ!」
「……ちょっとどいてろ」
大騒ぎするガスマスクたちをかき分け、仏頂面のベネットがアレクセイの傍らに膝をつく。
「ふたりともフィルムになってないんだ。死んじゃいない」
「あ……そ、そうか」
「ヒーリングをかけてやる。だが、意識がないなら、念のため病院に運んだほうがいいな」
ベネットは躊躇せずにゴールデングローブを外した。ネガティヴパワーは消滅した、という東の言葉を信じたのだ。コレでヒーリング能力もいつものパワーを発揮できるハズだ。少し疲れているし、自分も多少ならずケガをしているのだが。
赤城は喧騒の中、じっと床を見つめていた。ミランダのフィルムが落ち、砕けて、消えてなくなってしまった、その床を。手を伸ばして撫でてみても、黒いチリすら指につかない。赤城は肩を落とした。
「殺しちまったな……」
「ソレしかなかったんだ。助けられたとしても、研究所がこの有り様だからな。預かるところもなくなっちまってた。他にどうしようもねぇ」
ギルの言い分もわかる。だが、赤城はどうにもやるせなくて、ドン、と拳で床を叩いた。
「でも、命を賭けてまでミランダを助けようとしてたボウズを、オレは知ってるんだよ」
「約束でもしてたのか? かわりにミランダを助けてやる、とか」
「いや。会えなかった」
「……かえってそのほうがよかったかもしれねぇぞ」
「かもな。でも、そう思うのも、なんだか納得できねぇ。ちっくしょうっ……!」
ドン。
赤城はまた、床を殴った。
「……」
ギルは無言で、無精ヒゲの生えたアゴを撫でる。ミランダと言えば、気にかかることがあったからだ。
邪悪――。彼女は、『逃げろ』と言っていた。
研究員たちだけではなく、自分たちにも言ったのだ。ムービーキラーは精神を侵されているから、ただのうわ言のようなモノかもしれないが。
研究所――いや、ネガティヴゾーンの各所に散り散りになっていた研究員が、続々とコンピュータールームに集まってくる。入院する必要がありそうなケガ人もいたが、とりあえず、死者は出なかったようだ。東がホッとしている様子を、悟はちゃんと見ていた。いろいろとブッ飛んだ博士ではあるけれど、彼も人間だったのだ。
「博士、ゴールデングローブやファングッズの製造は可能ですか? ディスペアーとネガティヴエネルギーの観測も」
「ウム……、不可能ではないが、速度や効率の低下は否めない。だが安心しろ! 本部から大至急機材を取り寄せよう」
「本部。そう言えば、市外のネガティヴエネルギーの計測もしているとか聞きましたが」
「その結果は、じきに出るハズだ。ともあれ被害状況を確認しなくては!」
「ケガ人を病院に連れて行くのが先でしょ!」
美樹が指摘したが、東の耳にはサッパリ届いていないようだった。東は部屋を飛び出していってしまったのだ。
美樹の前に寝かされているスミルノフが、うめき声を上げて身じろぎした。ベネットが大きく息をついて額をぬぐう。
「よし。アバラを折ってたようだが、だいぶよくなっただろう。2、3日ジッとしてたほうがいいがな」
「スパシーバ」
「ありがとう! ベネットさん」
「う!?」
美樹が思いがけず満面の笑みで手を握ってきたので、ベネットは石化し、言葉を失った。
「……なぜ貴様が礼を言うのだ、ジェーブシュカ」
「なんでって、友達を助けてもらったからよ。……ねえ、ストラ」
「?」
無表情にわずかな戸惑いを浮かべるストラに、美樹は真顔で詰め寄った。
「『明日もまた会える』って言ったこと、忘れないでよね。だから、みんなに命令してよ。これからもずっと絶対に死ぬな、って。みんな、あなたの命令には逆らえないんだから」
「……」
ストラはキョトンとしていたが、……やがて、ゆっくりゆっくり、笑ったのだ。
「ダ・ヤア、ドレルク」
ケガ人を運ぶため、そして自分たちも病院で治療を受けるために、6人とハーメルンは研究所の外に出た。研究所の中は、蛍光灯や機材や壁が壊れていて、それはそれはひどり有り様だったが、外に出てみれば、ついさっきまで激しい戦闘が行われていたことがウソのように思えた。倉庫街はいつもどおりだ。クレーンやリフトが動く音、船の汽笛がかすかに聞こえてくる。
彼らは、空を見た。
真っ青に晴れていれば言うことはなかったのに、空のすべてが分厚い雲に覆われていた……。
(逃げろ、邪悪が、来るぞ)
|
クリエイターコメント | ミランダは楽になりました。 アズマ研究所、参加者の皆様、ハーメルンの被害は軽いモノです。お疲れ様でした! そして、ありがとうございました……! これまでお世話になった皆様のこと、皆様がハーメルンを大切にしてくれたことを、ミランダを助けようと必死になっていたことを、私はけっして忘れません。 大変だったけれど、とても嬉しくて、楽しい時間でした。 本当に本当に、ありがとうございました! |
公開日時 | 2009-04-21(火) 19:00 |
|
|
 |
|
 |