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<ノベル>
●自然公園付近にて
「ごわぁぁぁぁぁぁぁん」と巨大なたらいが戦闘員の斜め上から戦闘員に襲いかかり、甲高い見事に命中する。
「ネ、ネギィ……」と言う言葉を残して、戦闘員は気を失った。
罠を仕掛けた主はウィズで、その近くで肩をワナワナと震えさせているルーク(ルークレイル・ブラック)の姿があった。
二人とも同じ「ギャリック海賊団」に所属している身で、今回のTQの行動と志の低さにかなりご立腹のようである。
でも、ほら、昔の特撮ものってそうじゃないですか?
世界征服を企む悪の秘密結社が、世界征服の第一歩になぜか主人公(ヒーロー)の住んでいる町等で事件を引き起こすって……。
幸い一般市民の皆さんは運動会に夢中で、正確には、ルークがそういう風にして欲しいと予め運動会事務局に頼んでおいており、見かけたボランティアや運動会のスタッフが、そう喧伝していた甲斐もあり、運動会に遅れてきた市民の皆さんは彼らがどうして戦っているのか、スタッフの説明で「ガンバレ! ギャリック海賊団!!」と声を上げていた。
「とりあえず、ネギは回収と……」
依頼の戦果として、ネギ上の武器を回収しているルークが呆れたように言う。
「まったく、こんなちゃちなことをしないで、俺たちギャリック海賊団を見習えよ。どんなに極貧で喘いでいても、堅気から一銭も盗らず、狙うのは伝説の財宝だけって言う俺たちのポリシーを……」
一方のウィズはと言うと……。
「あのさぁ、世界征服って、今時流行らないんだよね。ってかさぁ、世界を牛耳るってどういうことだかわかんねぇの?」
「……」
「明確なビジョンを示してみろよ、征服した後の世界の!」と気を失った戦闘員に説教を垂らしていた。
「とりあえず、説教はここまでにして、こいつ等に、これ着させて相手の基地まで歩かせるか?」とウィズの説教を止め、ルークが鴨のきぐるみを彼に手渡す。
「なぁ、そこの迷航海士、一言言って良いか?」
「なんだ?」
「何で、鴨なんだ?」
「日本のことわざに、『鴨が葱を背負ってくる』ってあるだろ?」
「ん?」
「相手がネギ上の武器を持ってるんだから、鴨のきぐるみなんだよ。分かるか?」
「あ、ああ……」
何となく納得したウィズも戦闘員達に鴨の着ぐるみを着せた上で縄を縛る。
ウィズやルークと戦った5人の戦闘員は、鴨の着ぐるみを着せられた上に縄で縛られ、「さぁ、貴様等の頭領の所へ案内するんだ」と銃を突きつけるルークが言うと、「ネギィ……」と情けない声を上げ、ルークとボウガンを突きつけたウィズに従うがまま、戦闘員達は、杵間山へと入っていった。
●杵間山登山口にて
「オンドゥルルラギッタンディスカァー!!」と訳も分からぬ奇声を上げて、釘バットを右手に持ち、嬉々とした表情で戦闘員を追いかけるのは玄兎だったりする。
多分、見たヒーロー物のDVDで主人公が言う台詞を茶化して言っているんだろうが、使い方が凄く違う気がする。
最初は「戦闘員を追いかけて倒す」はずが、なぜか戦闘員が持っているネギっぽい武器を見て「ネギ欲しいっぴょん」となり、何処で混入したのか分からないが、謎の言葉を発しながら、戦闘員を追いかけていた。
「ネ、ネギィ!(く、来るなぁ!)」と叫び声を上げながら、ネギ上の武器を構えて玄兎を撃つ一人の戦闘員。しかし、良心の塊である玄兎には、一切通じもせず、当たった瞬間に、じろりと見つめられ、そして、方向転換。
「アヒャヒャヒャヒャ、俺ちゃんに何するつもりなんだ〜。悪い子はこのバットでおしおきしちゃうぞ〜」と余計テンションを高くさせて、彼のバットを暴れさせてしまっていた。
その戦闘員の末路はと言うと……。
「カキーーーーン!!」と玄兎の釘バットに戦闘員がジャストミートして空高く舞う。
「さすが、俺ちゃん、超逆転サヨナラ満塁ホームラ〜ンじゃ〜ん!」と嬉々として玄兎が微笑んだ。彼の左手にはプレミアムフィルムがあった。
戦闘員達は「ネ、ネギィ(こ、こいつ、化け物だ)」と後ずさりする。
後ずさりした戦闘員達に対して、「あ、そう言うことしちゃうと〜、釘バットを持った黒うさちゃんが何処までも、追いかけちゃうぞ〜」と玄兎が言う。
戦闘員の一人が、一生懸命ネギ上の武器を振る。
そうすることによって、森林だったあたりの風景は一変し、採石場のような光景に変わる。
説明しよう!
戦闘員達は武器のネギガンを振ることによってロケーションエリア「採石場」を展開するのだ。ただし、たいした強化は出来ないらしいけどね!
「あ〜れ〜、俺ちゃん、こんなとこ来たことね〜よ〜。ネギたん(戦闘員)たち、元の世界に連れ戻せよ〜〜」とだだっ子のように言う玄兎。
そんなのお構いなしで、「ネギィ(やっちまえ)!」と勇ましいかけ声と共に、戦闘員達は玄兎に襲いかかってくる。
「あ〜あ、俺ちゃんに喧嘩うっちゃったぁ〜。後どうなっても知ぃ〜らないぞ〜」とネギ片手に襲いかかってくる戦闘員に対して果敢に立ち向かう玄兎。
「ゴワッシャ!」、「バキッ!」、「ドゴッ!!」と凄く鈍い音がして、戦闘員達は瞬く間に「クキャキャキャキャキャ、俺ちゃん、怒らせると、ちょーこえーんだぜー、もうあんたらにガム分けてやんねぇー」ととびっきり上等な笑みを浮かべる玄兎の釘バットの餌食になっていた。
武器であるネギも奪われた最後の戦闘員は、必死に逃亡を図るものの「アヒャヒャヒャ、アハハハハハハ、ネ〜〜ギた〜ん、何処行くの〜? 俺ちゃんに教えてくれよぉー」と玄兎が追う。
もはや、どっちがヒーローで、どっちが悪役だか分からなくなる状況である。
その後、永遠の追いかけっこをした仕掛けようとしたが、戦闘員がバテてしまい、結果、玄兎の釘バットの餌食となってしまった。
それと同時に採石場だった風景は変わり、元の杵間山の森林へと戻った。
「え〜っと、フィルムが5本だからぁ〜、倒したのは、5人かぁ〜」
追いかけたりなかったのか、ちょっとつまらなそうな表情を浮かべつつ、次の追いかけっこのターゲットこと戦闘員の群れを探すために、杵間山へと入っていった。
●杵間山登山道にて
「あ〜あ、せっかく運動会を楽しんでいるのに。ま、いいか。あいつら叩きのめす」
こう意気込んで今回の討伐行に参加している四幻 ホタルはむしゃくしゃしていた。それもそのはずで、運動会を楽しんでいた彼女が急に植村さんの依頼でここに赴いている。
杵間山の山道を歩くと、例のネギを持った黒い服を着て、顔に怪しいペインティングをした怪しい一団を彼女は捉えた。
「見つけた……」
そう静かに呟くと、彼女は赤く煌めく炎の色合いに染まり、その両端には焔が噴いている両手棍を出現させた。
「ネギィ(誰だ)!」
彼女の気配に気づいた戦闘員の一人が彼女の方へ向かってくる、愛用のネギマシンガンを持って。
戦闘員が銃を撃つ構えを取る前に彼女は棒を構えて、すぐさま戦闘員の鳩尾めがけて、その棒をつきだした。
「ネギィ!」と言う声と共に戦闘員は意識を失うと共に、プレミアムフィルムと化した。
「これで一人か」と呟くように言うと、今度は戦闘員達が会話を交わす。
「ネギネギ(相手は男一人か?)」
「ネギ(多分だろうな)」
「ネギネギネギネギ(だったら、一気に襲った方が良いと思うが)……」
「ネギ(だな)?」
「こいつら、私の性別間違えてやがる……。絶対、ぶっ飛ばす」
草むらから、襲撃するタイミングを計っていたホタルは戦闘員達の会話を聞いて、さらにむかっとしていた。
「あなたたちの相手、私が引き受けるよ!」
草むらから現れたホタルに戦闘員は驚き、すぐさま銃を向ける。
「ダダダダダダダダ」とけたたましくマシンガンから弾丸が発射する音がする。
ホタルにダメージを与えているはずなのだが、彼女の場合、すぐさま「蛍火癒合」を用いて、ケガを回復させてしまう。
そのまま、突っ込んでくるホタルをどうすることも出来ず、彼女の火棍の餌食となる。
「はっ!」
彼女の気合いの入ったと共に放たれる棒術に拠る攻撃は、瞬く間に、戦闘員達を突いていく。
「ネ、ネギィ?」と言う声と共に、一人の戦闘員がその姿をプレミアムフィルムに変える。
そして、接近戦に持ち込まれた彼らは持っているネギ状の銃をそのまま、棒にしてホタルに戦いを挑んできた。
「ガキーン!」
金属音があたりに響く。そして、ホタルの火棍を防いだ戦闘員達に彼女は問う。
「で、何で相手、武器がネギなんだ?」
「ネ、ネギィ(そ、そう言われても)……」
「野菜って、叩くものじゃないだろ?」
「ネギ、ネギィ(だって、原作者が……)」
「って、ネギネギ言うな、まったく!」とホタルが戦闘員の一人を蹴飛ばす。タイミングが良いことに近くにあった気にぶつかり、そのまま気を失う戦闘員。
彼もまた、ガクと倒れたかと思ったら、プレミアムフィルムにその姿を変えた。
「あなたで最後だな」と火棍を戦闘員に突きつけながらホタルは言う。
「ネ、ネギィ(な、なに)」と戦闘員は悔しそうな表情を見せる。そして、ホタルに一矢報いようとして、ネギ状の棒を彼女の頭に叩きつける。
が、ホタルの火棍がそれを防ぎ、今度は、彼女の火棍が戦闘員を襲う。
「ネ、ネギィ(お、お見事)……」といい、彼もまたプレミアムフィルムになった。
「これで、一段落かしらね。急いで、秘密基地を探さないと……」とホタルはこう言って、プレミアムフィルムを回収して杵間山のどこかにある秘密結社TQの基地を探し始めた。
●杵間山山中にて
杵間山山中、「ズシン、ズシン」と機械が移動する音がする。
音の主はサマリスで、彼女もまた対策課の植村からの依頼でこの依頼に参加している一人である。
「この辺ですね」
静かにこう言いつつ、サマリスは静かに銃を構えた。
サマリスの視線の先には、横からTQの戦闘員達の様子を見ることが出来る。そして、こちらの居場所に気づく可能性は少ない。場所については極上であろう。
サマリスは、自らのセンサーを頼りに銃口を戦闘員達に向ける。
そして、引き金が引かれ、そのまま放たれた銃弾は、戦闘員の一人を射貫いていた。
「ネギィ……」と倒れ込むと共に、トドメの銃弾が戦闘員を襲う。
「ネギ……」と言う言葉と共に戦闘員は倒れ、そのままフィルムと化した。
「ネギ(誰だ)!?」、「ネギ(どこからだ)?」、「ネギィ(捜せ)!」と言う戦闘員達の声が聞こえてくる。
「ビンゴ……」
怜悧な一言でサマリスは次の戦闘員のターゲットを決める。
そして、混乱している最中に再びサマリスのライフルが戦闘員達を襲う!
「ネギ!」と当たり所が悪く一撃で倒される戦闘員。
再びサマリスの銃口が戦闘員に向けられ、「パーーーン」と言う銃声と共に、戦闘員が再び、サマリスの餌食となり、そして、最後の一人は、「ネ、ネ、ネギィーーー!」とネギ状の武器を放りだして、そのまま基地へと戻っていった。
「ひとまず、ミッション完了ですね。あとは、彼の足跡を下に、辿っていけば、秘密基地のありかも分かりそうですね……」
そう言って、サマリスはその足跡を辿り、基地へと向かっていった。
●合流、そして……
杵間山山中にある開けたところ。かなりくたくたになった戦闘員を休ませるため、休憩を取っているルークとウィズの二人。
「なぁ、そこの『カレー職人』、何捜してるんだ?」
「その、カレー職人ってなんだよ!
大体、俺は航海士であって、カレー職人じゃねぇぞ!」
「で、何捜してるんだよ?」
「ああ、ボスの弱みを握れるお宝が何処か無いかと思ってな」
「そうか……」とネギ状の武器を片手に、捜してみるものの、なかなか見つからない……。
そんな側から、どこからとも無く「アヒャヒャヒャヒャ、ネ〜ギ〜た〜ん、みぃ〜つけた〜」と怪しい笑い声と共に、黒いうさ耳付きのピンク色の髪をし、その右手には釘バットを持った青年が姿を現した。
「『ネ〜ギ〜た〜ん』って、誰だ?」
「え? お前等、ネギたん、じゃねぇの〜。なぁ〜んだ、つまんねぇ〜のぉ〜」
「俺たちはな、ネギたんじゃなくて、ギャリック海賊団って言うんだよ!」
青年の言動に苛立ちを憶えつつ、ルークが言うと青年の興味は既に彼らではなく鴨の着ぐるみを着た集団に行っていた。
「こいつ……」
「ま、まぁ、ルーク、落ち着けよ。俺に任せとけって」
「あ、ああ……」と苛立ちを押さえつつルークはウィズに交渉を任せてみる。
こう言うのは、自分よりもウィズの方が強いのを常々知っているからだ。
「よう! そこのウサギちゃん!」とウィズは青年に声をかける。
「ん、俺ちゃんのことか?」
青年はちょっとむかつきながらもそう尋ねていた。
「そうそう、あんたも、植村さんの依頼を受けているのか?」
「うえぴょんの依頼、ん〜っと、確か、そうだったなぁ〜」
色々記憶を辿りながら、青年は、何とか、答えを絞り出す。
「へぇ〜、そうなんだ。実は俺たちもその依頼を受けてるんだけど、もしよかったら、一緒に行動しようか?」
「お、おい、大丈夫か?」とルークは彼の言動から見て、心配そうな表情を浮かべる。
「任せておけって、こいつ、意外と使えるかもしれねえぞ」とウィズはルークの耳にささやく。
「あ、ああ……」とルークは頷くとウィズは話を続けた。
「良いけどぉ〜、でも〜、そのネギ欲しい〜なぁ〜」と青年は言う。青年の視線はその所有者であるルークに向けられていた。
「い、良いだろう。これの一本や二本ぐらい無くったって、大して意味はないからな」と言って、ルークはそのネギ状の武器を一つ、彼に手渡した。
「サンキュー、あ、俺ちゃん、玄兎って言うんだぁ〜。まぁ、宜しくぴょん」と自己紹介をする。
そして、「俺はウィズ。で、さっき、ネギをウサギちゃんにくれたのが、ルークって言うんだ。宜しくな、ウサギちゃん」と玄兎に紹介する。
そうこうしている間に、「おや、あれは確か……」と一人の女性の姿を見るや否や、ウィズが、再び声をかける。
「お〜い、ホタルちゃん、久しぶり〜」
「おや、その声は、ウィズさん、その節はどうも助かったよ」
「おい、謎人脈生成者、どういう事になってるんだ?」
「謎人脈生成者って?」
「お前のことだ。一体、どうしたらこういう人脈が出来るんだ?」
「そりゃぁ、色々だよ。だから『謎人脈』なんじゃないか」
「ええい! その『謎人脈』の作り方を俺は知りたいんだって言ってるだろうが!」
「漫才やっている最中に申し訳ないが、ウィズ様もこの依頼に参加してるのか?」
「ああ、そう言うところだよ。っと、ホタルちゃんも?」
「ま、そう言うところだ」
「そうか、首尾は?」
「こっちも、大体ネギっぽいのは仕留めたけど、後は首領だけなのかな?」
「まぁ、そう言うところだな……」とウィズが話していると、「生命反応確認……っと、ルーク様にホタル様でしたか?」と一体のロボットがルークとホタルに声をかけてきた。
「おい、そこの突っ込み野郎! お前こそ、そのロボットとどういう風に知り合ったんだよ!」
「んぁ、お前の人脈の方が謎だろうが!」
再び始まりかける漫才にロボットが問う。
「ルーク様、そのお方は?」
「ああ、こいつは同じ海賊団にいるウィズって言うんだ」
「ウィズ様ですか? 初めまして、私、以前ルーク様の御世話になった『サマリス』と申します。これから、宜しくお願いいたします」
「へぇ〜、まぁ、これから、宜しくな」とウィズがきょとんとしつつも自己紹介をする。
「とりあえず、時間がかかると厄介ですし、先に進もうか?
こいつ等に、道案内させればいいしな」
ルークがこう言うと、一同それに同意し、しばらく休憩したのち、再び、彼らは歩み始めた。
「言うこと聞かないと、こわ〜い、黒うさちゃんが、おいかけちゃうぞ〜」
釘バットをブンスカ回しつつ、玄兎が言うと、戦闘員達は「ネ、ネギィ(は、はい)……」と言いつつ、彼らの本拠地へと足を進めた。鴨の着ぐるみを着た戦闘員達
そして、戦闘員達が歩みを止め、「ネ、ネギ(こ、ここです)」と指を差して言う。
そこは、設けられてから何十年も経つ小さく古びた小屋であった。
●決戦! TQ秘密基地
「な、何、謎のロボにやられただと!」
「ネ、ネギィ(は、はい)」
「なんと言うことだ。何者かが我々の動きを察知しているのか……」
「ネ、ネギィ(そうだと思われます)」
奇妙な巨大な機械を背にしながら、戦闘員が言うと、司令官と思しき男は何かを思案し始めていた。
ドガッ!
ドアが蹴破られる音がする。
それと共に「世界征服だぁ? ふざけんのは掛け声だけにしておけよ! いいかお前、皆まとめてネギマにしてやんゼ!」と言う男の叫び声と共に、数人の男女が一斉に入り込んだ。
「な、何!」
「その鴨は……! え、ええい、貴様等、うちの戦闘員に何をした!! 『平和』という重力に心を奪われた軟弱者共がぁぁ!!!」
司令官、絶賛絶叫中である。それを遮るが如く「パン!」と一発の銃声が小屋の中に響く
「言いたいことはすみましたか?」
眼鏡のブリッジをくいっと上げ、ルークが尋ねる。
「答えは聞いてないピョ〜ん」と茶化すように、玄兎が言う。
「答えは聞いていないだと……。貴様、我らTQのホントの恐ろしさを見せつけてやる!」
総司令官が叫ぶと、一生懸命ネギを振る。
しかし、再び、ルークの拳銃が火を噴き、ネギを吹き飛ばした。
「こちらの言いたいことがすんでませんからね。申し訳ないですが、少々おつきあい頂きますよ」とルークが言うと、続けざまにこう言い始めた。
「大体、『世界征服』と言う大風呂敷を広げておいて、狙うのは地元運動会。ローカルすぎでしょう、どう考えたって。また、一般市民に迷惑かけるのも言語道断です」
その言葉に徐々に熱を帯びてくるルーク。よっぽど一言言上仕りたかったのだろう。
「どんなに激貧に喘いでも、狙うは伝説の財宝のみ……。しかも、一切、堅気には手を出さないギャリック海賊団魂を少しは見習ったらどうです。もっと大きいところで美味い汁を吸ってる奴らを狙うべきでしょう。あなたは、そんなことをして恥ずかしくないのですか!!」
さらに演説は続く。
「ならば、そのもっと大きいところで美味い汁を吸っている奴を狙うのが上等ではないですか? 一般市民を巻き込んで、何が悪党か! 敢えて言おう!! 悪党のカスであると!!! 歯ぁ食い縛れ、そんな悪党、俺が粛清してやる!!!」とルークの演説に熱が帯びる。こうなったらもう止まらないし、誰にも止められない。
他の面々はポカーンとしている。そして、続けざまに出てくる言葉に、司令官はただただ、聞かされるのみ。一切身動きが許されない状況である。多分、動いた瞬間にサマリスの銃が火を噴き、ウィズの連射ボウガンが自身の体を蜂の巣にしそうな気がしていた。
そして、その前方には、釘バットを持った玄兎と、如意棒タイプにした火棍を手にしたホタルの姿がある。
もはや、絶望の淵に立たされている司令官。しかし、そんな彼にも秘策が無かったわけではない。
「言いたいことはそこまでだ! くくくくくく、ふふふふふふ、ははははははは」と甲高く笑い声を上げつつ、マントをバサッと翻すと共に、頭の部分が熊で、右手が巨大な剣、そして、左手にはマシンガンを持ったいかにも凶悪そうな怪人が姿を現した。
そして、熊怪人に驚く一行。
「なんなんだ、彼奴は……」
「ふふふふ、はははははは、ふふふふ、ははははは……。俺の名は、グレイシー=ベアドナルド。お前等を三途の川の対岸へ……」と言った途端、「パーン」と再び銃声が響く。
ベアドナルドの体にルークの拳銃から放たれた弾丸が命中。
「やはり、気に入りませんね」
ルークがこう言うと、ベアドナルドは「なら、お前らから三途の川の対岸へ送ってやろう」と左手の銃を構えた。
「ちょっと待て、銃口がこっち向いてるって!! ウィズ、どうにかしろ!」
「何で、俺がどうにかしなきゃいけねぇんだよ!」
「こっちに、銃口向いてるからだろうが!」
「そんなこと言われたって、お前がそうしたんだろうが……」と言っている側から、ベアドナルドは銃口を一生懸命振っている。
「……」
その光景は、ドツキ漫才をしているルークとウィズはその様子を見ることが出来ず、他の面々も明らかにおかしいと言うか、一生懸命銃を振る熊がほほえましく……見えなくて、逆にその異様さから起こる恐怖の方が彼らの心を占めていた。
一人、容赦なく突っ込もうとする勇者もいるが……。
「そんなに、銃を振っちゃってると、こわい、こわ〜い、黒うさちゃんが、追いかけちゃうぞ〜」なんて言いながら、玄兎がベアドナルドの右腕のマシンガンをめがけて、容赦なく釘バットをたたき込む。
一生懸命、マシンガン振りをしていたベアドナルドもそれには、上手く対応できず、それを阻止されてしまう。
「ガキーン」と鈍い音がして、そのまま、ベアドナルドの動きが止まる。
そして、玄兎が一言。
「俺ちゃんくおりちー、味わってみるぅ〜?」
そうなれば、「ずっと俺のターン」状態になりかけるわけだが、そうも行かない。
「貴様……、俺ちゃんクオリチーと言うたか?」
「ん〜、そうだっけ?」
「『そうだっけ』じゃない!! お前が言ったんだろうが!」
ベアドナルド、怒り心頭である。
その注意を引きつけている間、ホタルやサマリスが残った戦闘員達は全員倒し、残るはベアドナルドのみとなった。
そして、「皆、サポート頼む」と言い残して、ホタルが前へ出た。
一方、そのころ、ベアドナルドと玄兎の漫才はと言えば……
「この野郎、お前の体をミンチにして、兎の肉のハンバーガーにしてやる! お前の肉なら、そうだな、ハンバーガーが4個以上は出来そうだな」
「嫌だぴょ〜ん」
即答ですね。わかります。
「この餓鬼、ホントにミンチにしてくれる!!」と左腕の巨大剣を思いっきり振り上げ、玄兎に叩きつけようとする。
「ガン」と一瞬思い音がしたと思ったら、次の瞬間、玄兎がその巨大剣を自身の釘バットで押さえ込んでいた。
「ヒャヒャヒャヒャ、俺ちゃんふぁんたずぃ〜、とことん楽しませて上げるよ〜」と不敵な笑みを浮かべる。それと共に、ホタルの火棍が見事にベアドナルドの鳩尾を突いていた。
「……こいつ、本当にやる気だ……」と思ったのか、熊の表情は苦痛に満ちた表情を浮かべてかと思ったら、不敵な笑みを浮かべ、ミドルキックを玄兎にプレゼントする。
「クキャキャキャキャ、あ〜あ、俺ちゃんを怒らせちゃったぁ〜。どーなってもしらないぞ〜」とダメージを受けているはずの玄兎だが、彼の表情には狂気じみた笑みが見えた。
そして、釘バットを右手に持ち、思いっきり振りかぶり、ベアドナルドの頭部に力の限り叩きつける。
「ガン!」と思いっきりいい音がし、ベアドナルドの頭部から紅の雫がしたたり落ちる。
「貴様ぁ、貴様ぁ、ゆるさんぞ!!」
ベアドナルドの怒りが頂点に達する。そして、我を忘れたのか、そこら中の物をたたき壊し始めた。
そして、それをチャンスと見たルークとウィズはお互いアイコンタクトを取る。
続けざまに両手に持ったルークの拳銃が火を噴き、ウィズお手製の連射ボウガンが凄まじい勢いで、ベアドナルドを襲う!!
「ぐぁ!」とうめき声を上げて、ベアドナルドは膝を突く。
「貴様等ぁ、許さんぞ!」
ベアドナルドの怒りの矛先は、ウィズとルークに向かう。彼らの側へ赴こうとした瞬間。
「終わりね」
「貴方様は、本来、あなた様がいる世界へ戻るべきです」
側面からのサマリスによるリニアキャノンとアサルトライフルによる銃撃と瞬時の判断で、ウィズとルークの正面に回り、ホタルの火棍を用いて連撃が決まった。
「おのれ、おのれ、貴様等……」と呻き、相手を呪うような声でベアドナルドが言う。
しかし、後背からとどめの一撃を放たんが如く玄兎が歩んでいた。
「俺ちゃんのターン! 釘バットを使って、熊男にちょくせつこーげきぃー!!」
そして、玄兎の釘バット攻撃が後頭部に決まり、男は一本のフィルムとなった。
「ふぅ、お疲れさん。しかし、どうしてこう言うとんでもないのが現れたのかねぇ……」
ホタルは、ベアドナルドだったフィルムを見つめつつ呟いた。
「さぁな、それは俺には分からないよ。ひょっとしたら、そう言うのを望んでいた奴がいるのかもしれないし、誰かの意図を汲んだ奴がそれを望んだのかもしれないしな」とルークが言う。
「ああ、そうだな。誰に望まれて、こいつ等が出てきたのかはわからねぇからなぁ。ところで、そこの『イラナイ子』、フィルム何本ある?」
「なぁ、そこのイラナイ子って何だ?」
「ルーク、お前のことだよ!」
「何で、俺がイラナイ子なんだよ!」
「お前のせいで、何回航路間違えたか、分かってるのか!」と冗談めかして言うウィズ。
「なんだと! お宝を見つけるときだけはきちっと決めてるじゃないか!!」と冗談めかして言うルーク。
気がつけば、いつもの軽口の言い合いが始まっており、その光景は実にほほえましい物である
その一方で玄兎が「ね〜ぎ〜、ね〜ぎ〜、楽し〜いなぁ〜〜」と楽しそうにネギを振っている。
実体化して間もないサマリスとホタルもこの三人の光景にはさすがに苦笑せずにはいられない。
「面白いものですね、人の繋がりって……」
「ああ、そうかもね。繋がりあってこそ、人なのかもしれないね」
「そうなのかもしれませんね。さて、ルーク様、ウィズ様、玄兎様、ここの小屋を元通りにして、運動会へ戻りましょう」
言い合いが取っ組み合いになりかけていたルークとウィズはその声にはっとしながら同意して、そして、玄兎はいやいやながら同意して、部屋の片付けを簡単に済ませた。
「あ〜〜〜、バケツリレーとかぁ、競技が全部ぅ〜おわりそうだぁ〜。急ごうぜぇ〜!」と駆け出しながら玄兎が微笑む。
「そう言われれば、運動会に早く戻らないと……」
ホタルもそう言いながら、彼の後を追う。
玄兎とルークはネギ状の武器を振りながら、楽しそうに歩いている。
秋の日はつるべ落としと人は言うけれど、日はまだ傾いていない。
杵間山から急いで降りた五人は、無事運動会に参加出来たそうだ……。
ただし、急ぎすぎた玄兎はバケツリレーで組を間違えてしまい、ウィズは閉会式で仲間と何か、とんでもないことをやらかしたそうな……。
それはまた別の話。
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クリエイターコメント | ご参加頂きありがとうございました。 皆さんの素敵なプレイングを下に、素敵な物語を作ることが出来ました。 相当ノリノリで楽しく書かせて頂きました。 若干プレイングで反映できなかった部分もありますが、その点はご容赦頂きたく思います。 そして、何点かさりげなくネタを仕込んでみたのですが、お気づきになりますでしょうか? それも、捜してみて下さいませ。
またのご参加、心からお待ち申し上げます。 今回は、本当にありがとうございました! |
公開日時 | 2008-11-01(土) 11:20 |
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