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<ノベル>
●朝露の花園
誰もが理解していたことだ。
胸の内で薄ぼんやりと輪郭を形作りながらも、いざ言葉にしてしまえばそれは急速に現実味を帯びてくる。
枯れぬ花が花ではないように、夢もまた、いつか覚めてしまうもの。非情にもそこに例外が生まれたためしはなく、『いつか』は平等に銀幕市へと舞い降りる。
魔法の終焉が、迫っていた。
深き森の花園といえども、鬱蒼という雰囲気は微塵もない。
蒼穹に映える濃紫色のクレマチスが絡みついたアーチを抜けると、初夏の風がふわりと香玖耶・アリシエート(かぐや・――)の前髪を撫で上げた。
早速、甘くて濃厚な、けれど決して嫌味でない花の香りが鼻腔を擽る。これはきっと、一番目を引くオールドローズの芳香に違いない。上質のベルベットが如く深紅の大輪が風に煽られる度、花弁に残っていた露が朝日を受けてほろほろと零れていく。それは宛ら、繊細な水晶細工が砕け散る瞬間のようで、
「わぁ、綺麗……」
月並みな所感ながらも、彼女の歓声はそのまま、この場にいる全ての者の胸中を代弁していたことであろう。
童心へと返ったかのような香玖耶のはしゃぎ振りに、シグルス・グラムナートは自然、目を細めて笑んだ。
マスティマ戦の直前に互いの想いを確かめ合った2人。晴れて恋人同士になれたものの、彼らに残された時間はあまりにも少なかった。だから、シグルスから秘密の花園の話を持ち掛けられた時、香玖耶は純粋に嬉しかったのである。
朝早くから弁当作りに勤しむべく、前の晩は早めにベッドに潜り込んだ。目覚まし時計もしっかりセットして。それなのに、何故だかうっかり寝過ごしてしまい、ピクニックの支度は疾うに済んでいたという顛末。
元々、映画の中では祖父と2人暮らしであったシグルスにとって、料理作りはお手の物なわけだが、それを差し引いても手際の良過ぎるパートナーというのも、時と場合によっては考え物かもしれない。
実はご本人の手によって叩き壊されていた時計の残骸を握り締めながら、香玖耶が得意気なシグルスを悔しそうに見詰める一幕もありつつ。
兎も角、今日は目一杯楽しもうと心に決めて臨んだのだ。ここは緑が多く、彼らが映画世界で共に過ごした森に近い。最後が迫る中、懐かしい場所に似た地を訪れることが出来たのは何よりだった。
あちらこちらから小さな花の精霊達が香玖耶へにこやかに語り掛けてくれる中、薄桃色の薔薇を数本摘んでミニブーケを拵えていると、肩越しから小野寺 美代(おのでら・みよ)がひょっこりと顔を出した。
「これは、ガリカの八重咲きですね」
普通、ガリカ系といえば代表的なのは赤や紫といった鮮やかな物が多い中、香玖耶はこの系統にしては珍しい淡い色の品種を選び取っていた。
「優しいけれど芯の強い感じ……そうね、存在感とでも言うのかしら。そんな雰囲気が、凄く好きなの」
控えめな色に敢えて濃い目を合わせるのが味噌なのだと、棘に注意しながら嬉々として翡翠色のリボンを花束に結わえる。彼女の意見に同調しながらも、まるで誰かさんの瞳を連想させるようではないかと美代が首を廻らせれば案の定、エルーカを見詰める緑の視線とかち合った。慌ててそっぽを向く様が、また何とも言えず微笑ましい。
穏やかな流れをやや遠巻きに眺めている者があった。新倉 アオイ(にいくら・――)である。気付けばすぐそこにいて、支え合った友人らがある日突然消えてしまう。そう現実を告げられた彼女は、極めて気丈に振舞うも、時折暗く沈みがちでいた。
父親の前ではそのような感情を微塵も見せようとしないアオイが、新倉 聡(にいくら・さとし)は寧ろ心配であった。ならば、気晴らしにとこうして娘を連れ出した彼であったが、
「いやぁ、自然って良いね! 魂が洗われるね! あっ、アオイちゃん、あそこに木苺が生っているよ。行ってみよう。ね、そうしよう!」
いつの間にやら親と子の立場が逆転している。それもそのはず。映画好きが高じて銀幕市に念願のマイホームを購入したものの、出張尽くめでなかなか娘の傍にいられなかった聡にとって、父娘団欒の機会など、そうそうなかった。それでも、注がれる愛情が深く暖かいものだからこそ、アオイも父親が好きなのだ。
はっきり言って、普段あまり植物に興味を傾ける方ではないが、折角父が誘ってくれたのだ。心の底から笑うのは無理でも、彼の一生懸命さには自分の持てる精一杯で応えたい。
「たまには、こーいうのもいいかもね」
珍しく素直に頷いて、乙女が如く紋白蝶を追い駆けて行く父の後姿を、ゆっくりとした足取りで追った。
「よお、久し振り! 元気そうで何よりだね」
人懐っこい笑顔を浮かべてレオ・ガレジスタは以前、世話になったシグルスと互いを労う。実はマスティマ戦の後方支援部隊で共に戦った仲であった。部隊解散後、それぞれの生活に戻った人々が終焉の時を前に如何様に過ごしているのか気になっていたからこそ、ここでこうして再会出来たのは、予期せぬ喜びといえよう。レオにはレオの、そしてシグルスにはシグルスの幸せを今、噛み締めているのだと思うと、ただそれだけで嬉しさが込み上げて来る。
男同士の手短な挨拶を交わした所で、レオは紀州犬のムクを放してやった。
花々の間を器用に縫って、嬉しそうに走り回る胡麻毛交じりの茶色い毛玉。レオが消えてしまっても、ムクはこれまで通り、職場の人達が面倒を見てくれるだろう。その点に至っては、心配ない。
唯一つ、憂慮すべきは遠い遠い場所へ行ってしまえば、抱きしめてやることも、撫でてやることも出来なくなる。二度とあの温もりには触れられないのだ。それが心残りでならない。
だから、彼は残された者達がせめて、幸福であるようにと祈る。勿論、生きていれば嬉しいことばかりではないけれども、例え大きな壁にぶち当たっても、それを打ち壊し、乗り越えられるように。
祈りが希望となって、皆に届くように。
目尻を緩ませながら、銀の瞳がムクを追う。
と――
きゅるるるぅ……。
花園の隅々にまで木霊するのではないかと思しき腹の虫の音。
「はは、ごめん」
目的地に到着したばかりで弁当を広げるというのも無粋だよな、とレオは照れたように頭を掻くも、特に気分を害する者もなく、
「それじゃあ、ご飯にしましょうか」
美代の一言で、早めの昼食と相成った。
●初夏の彩
「へえ、ちゃんと計算して造られているんですね」
東屋周辺を見回し、まず驚嘆した声を上げるは聡。
花の種類によっては、その芳香が食事のお供に敬遠される場合もある。その点、ここは匂いの少ないカラーや紫陽花などで統一されていた。設計者の心遣いによるものなのだろう。
「紫陽花って花の色が段々変わって行くから別名『七変化』って言うのよね。花園の主は見る者を驚かせ、楽しませたかったのかしら? 自己満足に終わらず、来客への細やかな持て成しの気持ちが伝わって来るわ」
「出来るなら、お会いしたいものですね」
パステルカラーに包まれた東屋の丸太椅子に腰を下ろして、香玖耶と美代が微笑み合うと、聡が透かさず彼女らの手を握り締める。
「花を愛する女性とは、純粋可憐な方々と決まっています。2人共、私の妻になってはいただけませんか? 是非にもウチの娘の母親に!」
「えーと……確かこの世界って一夫一妻制じゃなかったかしら?」
「……香玖耶さん、それって突っ込み所違いますから」
眉を顰め微妙に首を傾げる香玖耶に、美代がこめかみを抑えつつ溜息を吐く。
問題なのは、一連の所為に下心がなければ、悪気もないのだと誰もが理解出来るような社交辞令(但し、聡自身は半分本気モードであったかもしれない)も、シグルスには通じなかったこと。彼の冴えた眼差しが静かに父を射抜いていることに逸早く気付いたのはアオイで、
「あのね、お父さん。皆、迷惑してるから止めようね」
慣れた手付きで父親の襟首を掴むと、ぐいと後方へ下がらせる。もうちょっと空気を読んで行動に移してくれるととても有り難いのに、と娘の気苦労は絶え間ない。
あの父親ならば、娘がしっかりしているのも頷けると、口には出さぬものの、妙に納得したレオであった。
矢鱈と大きい具沢山のサンドウィッチは、一同の注目の的であった。作者であるシグルスが平然とする横で、申し訳なさそうに縮こまる香玖耶だが、
「いや、これだってなかなか美味いよ。食べ応えあって」
と、特にレオには大好評。唇の端に付いたマスタードマヨネーズを手の甲で豪快に拭っていると、各人の好みの飲み物を振舞っていた聡がそれに、と続ける。
「どんな料理でも、皆で賑やかに食べることが出来れば、それに勝るものはありませんしね」
但し、彼の持参した弁当は言葉とは裏腹に、豪勢そのものであった。五段重ねの重箱にはどこぞの料亭の会席膳と見紛う彩りで埋め尽くされている。
「凄い……。食べるのが勿体無い位だわ」
「昔からこういうことにかけては、怖い程器用なんだよね」
動物を模した飾り切りフルーツを繁々と眺める美代へ、別段、食べるのが勿体無いなどと思いもせぬアオイは、絶妙な焼き加減の出し巻き玉子を口に運ぶ。途端、程好い鰹出しの風味が広がって、安堵と温もりがアオイの心を満たした。
忙しい人だから、普段は外食かコンビニ弁当で済ませてしまうことが多いのだが、こうして時間のある時はアオイの好きなものばかり作ってくれる。今日の弁当だって、朝4時に起きて拵えたのだ。アオイが笑顔になるようにと願いを込めて。
優しい味の詰め込まれた料理は、心を軽やかにしてくれるもの。
(「お父さん、アリガトね」)
言葉にしてしまえば、調子に乗るから絶対言えないけど。
「実体化した時は、どこの魔界に飛ばされたのかと思ったな」
会話が途切れると、ぽつり、シグルスが呟いた。
自動車は怪物に見えるし、テレビには箱の中に小人が住んでいると勘違いさせられて……。
見たこともない風景、想像が追い付かない事柄。『中世』の目から見た現代の不思議を思い出し、苦笑いが漏れる。
自分の身を置く世界こそが唯一であり、異世界の存在を気にも留めていなかった……というより、思いも寄らなかった彼にとって、次々と覆される常識が恐怖の対象だったことは、想像に難くない。それは正に数多の化け物が跋扈する魔界という表現がぴったりなのだろう。
「そうそう。シヴったらお店の自動ドアを何かの罠だと思ってね、『先制攻撃あるのみ!』なんて壊しちゃったんだから」
ワイン片手にアボカドのディップをたっぷり乗せたカナッペを齧りながら、陽気に笑い飛ばす香玖耶へシグルスが仏頂面になったことも、これまた想像に難くなかった。
「でも、シグルスさんの気持ちは、俺も痛い位理解出来るよ」
ムクに犬用のクッキーをあげながら、終始皆の話に耳を傾けていたレオが、ゆるりと切り出す。
シグルスや香玖耶達とは正反対の、自然が破壊された世界から来たレオにとっても、銀幕市は驚愕と、そしてそれを遥かに上回る素晴らしい所だった。暖かな光、純粋な青の空、広大な大地、何もかもが愛しい世界を少しでも多く瞳に焼き付けたくて、残された時間を自然との戯れに当てている。
最後の夜が訪れ、朝になって人々が夢から覚めても、世界はやっぱり泣きたい位に美しいと信じていたかったのだ。
●永劫回帰、果てぬ光
楽しい昼食が済んでしまえば、晴天の昼下がり、人目を気にせず思う存分至福という名の蜜を堪能する。
なんて贅沢な一時であることだろう。
眩しい陽射しに手を翳して、香玖耶はまるで現在の心境を映したかのような天気だと微笑んだ。
自分達が守り抜いたものが確かに在り、掲げた希望は明日に、明後日に、ずっとずっと遠くの未来まで続いて行くための標と変じたことは、『誇り』の結晶が具現化した証ではあるまいか、と自分なりに分析し結論付ける。
シグルスが忍ばせたワインボトルをほぼ1人で空けた香玖耶の心は、いつしか軽やかなものとなっていた。
「おい、大丈夫かよ」
「ぜーんぜんダイジョブよ!」
全然大丈夫と答える酔っ払い程、危なっかしいものはない。
シグルスの心配を他所に、香玖耶はブーツを脱ぐと、花園を縦断する小川へそろりと足を浸してみた。素肌を通して伝わる冴えた水温が、火照った体に丁度良い。
「シヴも一緒にどう?」
と誘えば、首を横に振るだけのそっけない返答。
連れない態度に唇を尖らせながらも、暫し無言のまま爪先でぱしゃぱしゃと水を弄ぶ。
と、不意に紫の瞳に妖しげな光が宿った。もし、シグルスが香玖耶の些細な所作に気付いていれば、これから起こる事態を避けられたかもしれないのだが、残念ながら暢気に行く雲なぞ仰いでいた神父様にそれは叶わなかった。哀れ、シグルス青年。
聞き取れない程の早口且つ小声で呪文を詠唱する香玖耶。
途端、小川の水面が泡立つ。水で模られた数匹の飛び魚が水面を跳ね回ったかと思うと、それらが一気に弾けて派手な水飛沫を上げた。
「うわっ!?」
予期せぬ出来事にシグルスが目を丸くするのは当然で、後には頭から水を引っ掛けられたびしょぬれ神父と、可笑しそうに肩を揺らす香玖耶がいた。何、ちょっとした小川の精霊との戯れだ。……多分。
「カグヤぁ〜!」
髪から雫を滴らせ、一連の元凶を半眼で睨みつけると、シグルス自らも小川に突進して形振り構わず水を引っ掻き始めた。
「ひゃあっ!! や、やったわね!」
「仕掛けたのはおまえだろ!」
水玉が盛大に飛び交う。
言い合い、じゃれ合う姿は、どこからどう見ても極普通の恋人同士だった。
そういえば、初めて出会ったあの日も、精霊の力を以って香玖耶が水を巻き上げていたのだと、シグルスは小さく笑う。最後を前に、目にする光景は『始まり』と同じ。まるで変わらない彼女と、変わった二人の距離が懐かしくて、新鮮だった。
「光り輝く乙女よ、おいでなさい」
再び、香玖耶の精霊への干渉により、ふわりと光の少女が降り立つと、小川を中心に金色(こんじき)の光が撒き散らされる。すると、七色の祝福が花園に降り注いだ。虹である。
彼方此方で歓声が上がる中、儚く揺らめく精霊ルースの面持ちは冴えなかった。眉根を寄せ、引き結ぶ口元が全てを語っている。「ようやっと叶うに至った愛情を携えて旅立たねばならないなんて、貴女はそれで満足なの?」と。
死して尚、香玖耶の傍に寄り添う友を仰ぎ、そっと語り掛ける。
「悲しむ必要など、何もないのよ」
シグルスと永久の誓いを交わしたように、彼女らの想いもまた、消え去ることなき絆で結ばれているはずなのだから。
けれど、それでも私だけのために胸を痛めてくれているのだとすれば、
「有り難う」
手を取り抱き合ったあの日の白百合を懐古し、香玖耶は天に昇り、薄れ行く光へと最高の笑顔を向けた。
お日様の温もりをたっぷり吸い込んだタオルで水気を落とすと、芝生の上に並んで腰を下ろす。交わす言葉はなく、何をするでもなく、ラベンダーの綻び始めた淡い紫を見詰めた。
大丈夫。
心配ない。
何度繰り返したか分からない言葉をおまじないのように再度呟いてみる。
夢の神子から事実を告げられようとも、シグルスが取り乱すことはなかった。それは香玖耶も同じで、幾らか視線を伏せると「そう」と言を括っただけ。ほんの僅か、彼女の睫は震えていたけれど。
消えることそのものに同様しているわけではない。魔法が消えて消滅しても、ずっと想いは共に在ると2人で誓っているのだから、今更、何を恐れることがあろう。
香玖耶と銀幕市で再会した時、そこにはもう、嘗てのように自身の存在に苦悩する素振りは微塵もなく、自然に受け入れられ、笑っている彼女がいた。それが嬉しく、そんな彼女と共にいられることが幸せだと全身で伝えたい位に幸福だった。
ただ、舌が蕩けてしまいそうな程、とびきり上等な果実の味を知ってしまえば、ある日突然食んではならぬと言われた所で、体がすぐには順応出来ない。寧ろ、艶美の甘みをもっともっとと欲してしまうではないか。
もう少し長く、この街で彼女と在りたかった。隣で見ていたかった。触れていたかった。それが、シグルスが永久に吐き出すことはないであろう想いの丈、詰まりは本音であった。
思考めいたものを飛ばすには、ここは打って付けの環境なのだろう。それとも、この花園内は元より何らかの御節介な力が働いているのか。
実体化した直後、香玖耶はどうしてこんな場所にと思ったものだ。世界と共に在るべき者が、世界から切り離されてしまった絶望。呼吸することをも否定されているのかと、憐憫の情を自分自身に投げては嘲りもした。
けれど、今は違う。銀髪に紫の瞳、精霊を操り決して年をとらない異端者……そんな自分を、この街は全て受け入れてくれた。ありのままの姿でいても、忌み嫌われたりしない。それは、映画の中ですらあり得なかったことだ。
生まれて初めて、心の底から自分らしく生きられた街。
何よりも大切な人と再会し、時空を超えて心を通わせることができた奇跡。人は自分達を「夢」と呼ぶけれど、香玖耶にとってはこの街こそ甘く優しい夢のようであった。
この街の全てに、そして立つべき大地が変わろうとも傍らにいてくれるシグルスに、尽きせぬ感謝と愛情を送ろう。口に出さずとも、貴方はきっと分かってくれるから。
ふっと、香玖耶の手に一回り大きなそれが被さる感触。
重なる瞳。
大丈夫。
心配ない。
だって、そうでしょう? 私達はこれからも、ずっと――
「……くしゅん!」
「……はっくしょん!!」
ムードもそこそこに2人してくしゃみをし、顔を見合わせ笑う所は、やっぱりいつも通り。
彼らだけの特別な、変わらぬ一時。
●娘の憂い、父の配慮
「パパはこう見えて、子供の時は木登り得意だったんだぞ」
昔のことなんて、しかも自分が生まれてもいない頃の自慢話をされたって、信憑性は薄いもの。
だが、アオイの疑心を他所に、聡は裸足になるとこの一角で一番の大木へするすると登っていった。台詞に違うことなき行動は、嗚呼そういえば、なんていちいち思い出させてくれる。
この人は嘘を付いたことがない。少なくともアオイの前ではなかったはずだ。
「ほら、アオイちゃんもおいで」
無邪気に手を伸ばす聡へ控え目な笑みを返しながら、
「あたしは、いーよ」
緩く遠慮を紡ぐ。
代わりに幹へと背を預けた。頭上に視線を向けたなら、さわさわと緑を揺らし、渡り行く風に身を任せる父が、気持ち良さそうにきゅっと両目を瞑っている。
幸せそうだ。
幸せそうでもあり、また少し寂しげでもある気がして、アオイの鼓動がどきりと跳ねた。後に思えばそれは、父の見てはいけない部分を盗み見てしまったような罰の悪さであったかもしれない。
多分、いや絶対に父はアオイの心中を掬い取って、まるで自分のことのように胸を痛めているのだろう。ミニスカートで木登りというチャレンジャー的意味合いを抜きにしても、とてもそんな気分にはなれなくて拒んだ本心――詰まりどんなに些細なものであっても、自分だけが自然の美を感じ、幸せを感じてはいけないのではないかという後ろめたさから、父の申し出を断ったのだという事実すらも。
声を発せぬまま、唇だけでごめんねと小さく呟くと、アオイは俯いた。木漏れ日が爪先に落ちて、歪な、でも美しい程に不思議な色彩を描いていた。
不思議といえば、今まで自分が身を置いていた非日常的な日常こそが、奇の欠片で彩られていたのではないだろうか。
「あのね、お父さん」
今まで銀幕市で起こったこと、体験したことを話すから聞いて欲しいのだ、と。
聡に全てを語りながら、内容がマスティマ戦の辺りに差し掛かると、もう一度胸が疼いた。先とは微妙に異なる、鋭く深い痛みだった。
運命の日までのカウントダウンが始まってからというもの、脳裏に浮かぶのは、青年武士の顔。アオイを庇って負傷してしまう程、お人好しで真っ直ぐな彼の姿。
せめて好意を寄せる異性へ甘えられる位、アオイが器用な性格だったらまた異なる結末を迎えられたのかもしれない。
結局、最後まで胸の内は伝えられぬままだった。第一、別れ際に好きだと告げた所で何になるというのか。困惑させてしまう位ならば、この気持ちは胸に押し込めてしまえば良い。例え臆病者と蔑まれたとて構わないのだ。彼が心置きなく健やかに旅立てるのであれば、成就されぬとか、報われぬとか、そんな野暮な領域に囚われる方が余程滑稽だ。
分かち合った時間は、今こうしている間にも過去へと流れて行くけれど、目も眩むような喜びと温もりを与えてくれた彼を、アオイは生涯忘れないだろう。この先、未だ見ぬ誰かと結婚し、子供が生まれ、歳を重ねてお婆ちゃんになったとしても。
何万分、何億分の1の出会いに感謝して、離別の時は笑って送り出そう。笑顔を保てるかは些か不安だが、アオイがそうと決めたのだ。きっと、きっと貫いてみせる。
決意とは別に、気掛かりなことがあるとすれば、それは先日スターと婚儀を交わした親友のことである。自分などより何倍も辛いはずなのに、気丈な彼女のことだ。伴侶へは勿論、アオイにすら涙を見せないのではないか。友人のそういう部分を否定する気はないが、もっと自分を頼って欲しいとも思うのだ。
赤い髪の容姿故、クラスの中でも浮いた存在のアオイは、ずっと孤独だった。別段、それが苦痛であったわけではない。しかし、肉親以外の誰かに理解される喜びを教えてくれたのは、彼女だ。無二の親友を支えられぬ程、アオイは弱くないと自負しているし、真実、一回りも二回りも成長していた。
誰よりもその発達を実感していたのは、父親の聡であったことだろう。
彼とて仕事に忙殺されて、あまり銀幕市にはいなかったものの、スターが消えることに関しては残念でならない。そう思うからこそ、大切な人々が消えてしまうアオイの胸中は自分の比ではないはずなのだ。
思い切り泣いてごらん。
ともすれば口を衝いて出そうになる言葉を、聡は必死で飲み込む。娘の泣き顔を誰にも見られることなきようにと、父の胸で隠すことなど、いとも容易い行為だが、当の本人はそれを望んでいない。涙を零さぬよう、必死で堪えているのだ。
優しさは救いを求める者の魂をも温もりで包み込むけれど、時として残酷で、煩わしい情にさえ変じるもの。想像を遥かに越える痛みを無理に振り払おうとすれば、更に降り積もるだけ。アオイの覚悟を潰してはならない。
時間の経過でしか癒せない悲しみであるならば、せめて涙に暮れる日々が長きに亘らぬようにと囁いた。
「ねえ、アオイちゃん。知っているかい? 人は何度でも夢を見られるんだよ。魔法は消えてしまっても、また新たな夢を見ればいい。信じることも、想い続けることも自由なんだから」
聡の口調は、アオイに諭しているというより、自らの溢れ出る感情の許しを請うているように聞こえた。
日常の隙間にひっそりと、でも確実に離別は存在する。肝心なのは、悲しみに溺れたまま年月を無意味に送るか否か、だろう。
学生結婚の父が、アオイが生まれて間もなく妻と死別していることを今更のように思い出す。変人根性剥き出しの、このどうしようもない父親は、女性と見れば片っ端から口説く冗談みたいな悪癖があるけれども、依然妻を愛しているのだ。手を伸ばしても、もう届かない所へ行ってしまったのに。
だが、父の言う通りであるならば、今度は自分のためだけの、彼らとの夢を探してみようか。
吹き抜ける風の向きが僅かに変じるだけで、何故だか今日は全ての彩りがちょっぴり優しい。
少しでもいつもの自分に近づくようにと、目蓋を閉じ深呼吸を繰り返していると、
「もし――」
木立から、声が降って来た。
「もし良ければ、一緒に海外へ行かないか?」
「えっ?」
仰げば、聡の迷いのない目がアオイに注がれている。嘘でも戯けでもない視線に、アオイの瞳が揺らいだ。
聞けばこの世界不況に海外支社建て直しのため、来月からアメリカへの転勤を勤め先より言い渡されたという。期間は5年か、それ以上。これまでは出張のみで時々帰って来られたが、今回はそれも難しいとのことだった。
魔法が解けるとこの街も寂しくなる。そうなった後の娘の気持ちを考えれば、聡自身がアオイの傍にいて、娘を孤独から守りたいと願うのは過保護でも何でもなく、親から子への酷く自然な提案だ。
それでも、アオイにとっての外国は漠然と、とんでもなく遠いイメージであった。異文化圏での5年など、到底考えも及ばない。
聡の言い分は正しい。長い目で見れば、それは最良の策なのかもしれない。アオイの意志を尊重したいがために、口調そのものは明日の天気でも尋ねるかのような、実に軽いものだったが、本心は二つ返事を期待しているはずだ。
アオイとて、出来ることなら父の気持ちに応えたい。しかし、それは同時に魔法の証――彼らの痕跡をあちらこちらで感じ、心を馳せる大事な時間をも失われてしまうのだ。無論、親友とも離れ離れにならねばならない。
一番に望むのは父親と銀幕市で暮らすことなのだが、それは無理であると端から分かり切っている。
どうしよう。どうすれば……。
随分と長らく悩んだ後、やっと口をついた曖昧な言葉。
「少し、考えさせて」
答えは必ず出すからと約束して、アオイは眦から熱いものが零れてしまわぬようにと、天を仰いだ。
空は、父子の想いとは裏腹にどこまでも青かった。
虚像ではない日々へ心を砕くのもまた、残された者の宿命なのか。
●遥かの地へ
慎ましやかな音色は、耳に心地好い。
旋律と呼ぶには心許ないそれが、混じり気なき空間に溶け合う様は夢幻にも似ている。
こういうのを、『雅』とかいうのだろうか。
摘み取った葉を唇に当て、レオはぼんやりとそんな風に考えていた。草笛は、この世界に来て覚えたものだ。
健気に生きる草花を手折ってしまうのは気が引けるのだが、自然にどっぷり身を浸し染めると決めた今日だけは、どうか勘弁して欲しいと人知れず懺悔した。
「お上手ですね」
どこか楽しげな色を含む声に振り向けば、美代が水筒と小籠を手に微笑んでいた。
カマンベールクッキーは如何かとお茶の誘いに来たらしい。さっき昼食をたっぷりと胃袋に詰め込んだにも関わらず、甘味は別腹という女子的理論に彼女も漏れなく当て嵌まるらしい。
返事する暇(いとま)も与えず、良く冷えたピーチティの注がれたカップを半ば強引に押し付けられても、レオは陽光のような笑顔を保ったままだった。折角だからと相伴に与る。
お茶を片手に、クッキーを一口。さくさくと軽い生地に練り込まれたカマンベールのまろやかな風味は、瑞々しい桃の芳しさとも相性良い。
クッキーを黙々と平らげるレオの心は、静寂たる湖の底が如き安らかであった。
正直、この不思議な魔法に抱きしめられてまどろんでいたいと思わぬわけでもない。けれど名残惜しさは誰もが同じで、別れが悲しいと感じるのは、沢山の幸せがあったからだ。ならば模倣的な生活にこの身を置けたことだけで既に満たされたのだから、悔いはないと考えるべきであろう。世界には守らねばならない秩序があり、理がある。だから来るべき時が来た。それだけのことだ。
今は辛くても、自分達の選択した道は正しいと思える日が必ず訪れるはずだから。
カップの中身もクッキーの小籠も空にし、お茶の礼を述べるレオが隣を見遣ると、美代は殆ど飲み物を口にしていなかった。陰鬱とまでは行かずとも、神妙な面持ちで俯いている。
「あまり、楽しんでいない?」
「あ、いえ。そういうわけでは……」
視線を泳がせ、もごもごと口篭る美代へ、レオが無言で促した。純粋な瞳のこの御仁には誤魔化し通せないと観念したのか、彼女は蚊の鳴くような声で白状する。
「私は……」
レオ達スターが気丈に振舞っているのを目の当たりにして、美代は安堵とは真逆の境地に陥っていた。
痛みを表にしない様子は、感情を力任せに押さえ付けているのとは明らかに異なる。彼らは至って自然体なのだ。本来ならば、それは喜ばしいことと笑顔で送り出すべきものだが、そうしなければならぬと律すれば、尚のこと深きに落ちていく感覚は複雑だった。
また、アオイの真相心理までは理解出来なくとも、酷く思い詰めていること位は美代にも分かる。娘の傍にいながらにして、何もしてやれない聡の親心をも思えば、切ない。
「見守るしか出来ない自分がとてももどかしくて、辛い、です……」
弱音に塗れた言葉など、望む者はいないはずなのに。
主催者に有るまじき凹み具合と、それ故の激しい自己嫌悪に苛まれる彼女を、穏やかな目が捉える。
「……存在した証って、何だと思う?」
随分と間を置いてから、噛み締めるようにレオが柔らかな声を連ねた。
存在した証。
そう聞いて、美代が真っ先に思い起こしたのは、然程遠くない記憶であった。忘れもしない中学校卒業間近の春。確かにここで過ごした日々の証拠が欲しくて、机に彫刻刀でイニシャルを刻んだっけ。随分子供っぽい手法だけれど、あの頃はそれが精一杯だったのだ。
密やかな背徳の行為が、少女の心を小さく擽る。
去来する甘酸っぱさを吐露出来ずにいると、レオは変わらぬ笑みを湛えたまま、続けた。
「目に見える形で残らなければ、俺達は夢の産物になってしまうんじゃないかって考えているのなら、答えはノーだ」
ずばり言い当てられたら、気恥ずかしさで頬を染めるしかない美代である。
濃密な時間の流れを遮断してしまった所で、過去の全てが水泡に帰する、なんてわけがないのだ。
築かれた道は消えない。それが如何にか細いものであっても。
結ばれた縁はなくならない。それが如何に一瞬の交わりであっても。
「俺はね、スターの魂が行き着く先って、言葉は届かなくても、想いが伝わる場所であれば良いなって思っているんだ」
生きる世界は分かたれても、銀幕市を愛していることに変わりはないから。
嬉しそうに話すレオの横顔を眺めているだけで、美代は銀幕市民の一員であることが大層幸せに感じられた。彼らと同じ時を過ごせた人生は非常に価値あるものとなったと改めて確信する。
「それは、とても素敵ですね」
レオの求める『その後』の居場所が、この庭のように光差す楽園だとするならば。
スターが何の力も持たぬ銀幕市民の羨望の的となるのは、何も特別な能力や境遇を所持しているからというだけではないと、彼女が今更ながら発見した真実はそっと胸へと留め置く。
優美と称賛せずにはいられぬこの世界。
今、こうしている間にも、少しづつ緑は失われていると聞く。未来を担うべき住人達の中には、残念ながら目先の快楽しか見ない者もいる。省みることは幾らでも出来るのに、敢えて目を向けようとしないのが、レオにとっては嘆かわしかった。
しかし、どうか自然の大切さを忘れないで欲しい。いついつまでも異世界の人々が羨むような場所であるために。
それには自然が失われた世界と、そうでない銀幕市の両方が写った自分のプレミアフィルムは最適だろう。レオの記憶で慈しみの心を少しでも呼び起す手助けが出来るのなら、これ以上の喜びに勝るものはない。
美代が後片付けに腰を上げると、彼はごろりと芝生の上に寝転がった。
鮮やかな陽光に目を閉じる。肌に触れる暖かな風は変わらず、明日も誰かを癒すものになるのだろうか、などと思案しながら。
最初に鼻を突いたのは、機械油の臭い。
慣れてはいけないはずの、けれど良く体に馴染んだ懐かしい空気を感じ取り、再び目蓋を開けたレオの瞳に飛び込んで来たものは、忘れようもない環境破壊で極端に自然がなくなった『スチームハート』の世界。彼自身の世界だった。
「え!?」
突如切り替わった予想だにせぬ光景に目を丸くし、レオはきょろきょろと辺りを見回す。
銀幕市の花園にいたはずなのに、いつの間に戻って来たのか。
皆は? ムクはどうした?
疑問符だらけの脳内を整理しようとも、合点のいかない思考回路が答えを弾き出してくれるわけもない。
兎に角、ここに佇んでいても埒が明かない。一歩踏み出そうとして――レオは躊躇した。
ともすれば鉛色の景色に飲み込まれてしまいそうで、けれど如何にしても他の色では染められぬ命が、彼の足元に在った。
しゃがみ込んでよくよく見れば、アスファルトの大地を破って芽吹いた名も知らぬ緑の双葉。それはあまりにも小さくて、踏み付けたなら簡単に圧し折れてしまいそうだ。
(「……いや、そうじゃないな」)
苦笑交じりの溜息は、何を今更と、自身に向けられたもの。
生命の逞しさを、自分は知っているではないか。想いの強さと結び付けば、尚尊い存在となり得ることだって。
蘇り始めたばかりの幼い自然の息遣いに、視界が曇る。
細い雨が、幾粒も頬を打った。赤錆色の穢れたそれではない。この世界の人々も、嘗ては当たり前のように目にしていたのであろう、無色透明な雨が。
そうしてレオは、天へと差し出した掌でいつまでも慈雨を受けていた。
ざらざらで、湿り気を帯びた暖かな温もりが、レオの頬に触れる。
雨にしては妙な感覚だと意識をそちらへ傾けると、
「くぅーん……」
主を覗き込むムクの顔。それがあんまりにも切なげだったから、優しく頭を撫でてやる。
花と緑で飾り立てられた件の花園にレオは寝そべっていたのである。上体を起こして目を瞬かせるも、長閑な景色が広がるばかり。
夢だったのか。
それともあれは……。
腑に落ちない様子で頭を廻らすレオ。
背後に揺らぐ花が、くすりと笑った気がした。
●黄昏夢想の星々
暮れなずむ空を見上げると、色彩が刻一刻と変化して行くためなのか、妙に枯寂の念に駆られる。朱色を絡めて浮かび上がる景観が更なる追い討ちとなって、全ての存在を同じ色に染めた。夕影が夜の帳と交われば、やがて濃い闇を世界に落とすだろう。
若干風の強さが増して来たようだ。さらさらと葉擦れの音を響かせて、今日もまた終わる。
日常が明瞭な記憶となり、心に仕舞い込まれて行くのは、鍵の掛かる小箱に自分だけの秘密の品を入れる行為に似ている気がして、香玖耶は胸にそっと手を添えてみた。
暗くならない内にと、皆がそろそろと帰り支度を始めた頃、
「あ! 蛍ですね、あれは……」
感動の入り混じった聡の声音。
彼の指差した方を見遣れば、成る程小川近くの草花の合間を蛍が飛び交っていた。淡い光が消えたかと思うと、ふっと予期せぬ空間に灯される。その様は『天上の星々集う聖域』とでも形容すべきか。
途方もない数の宝石を積み上げられたとて、到底敵うものではない自然美。レオはムクを抱き締めながら、言の葉すら忘れてしまう。
エルーカの繰る光の精霊とは違う蛍光の加減は、いつ見ても目を奪われる。普段からクールなシグルスも、この時ばかりは珍しく感嘆の吐息を吐いた。
「あのさ、いつだか戦いの前に声を掛けて、励ましてくれたよね?」
感謝の意を表すアオイには、銀幕ベイサイドホテルのファイアフライ・ガーデンで過ごした一夜の出来事が、ついこの間のようにも思われるのに、実際はあれから既に一年が経とうとしている。あの風雅な庭は今はもうないけれど、美代もまた、正に自分もあの時の光景と重ね合わせていたのだと微笑んだ。
繋がれた絆も、擦れ違う憂いも、全てを安寧の地へと導く光となるように。
人気の遠退いた花園は、依然甘い香りを漂わせていた。
乱れ咲く花々が彼の者らを想い、今日の眠りへと就く。意識は夢となり、銀幕市の隅々にまで溶けて行った。
輝く衣装を纏った住人達のささやかな舞踏会も、そろそろお仕舞い。軌跡を描いて駆け抜けた沢山の光の粒は、還るべき場所へと舞い上がる。
静かに、穏やかに、あまりにも優しい余韻を残して。
花移ろうとも、不変の祈りよ、君と永久に。
Fin.
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クリエイターコメント | この度は当シナリオへご参加いただきまして、誠に有り難うございます。
PC様方の大切な想いの日々の、とある1日を共にすることが出来て、大変光栄でした。 魔法の時間は終わってしまいましたが、皆様の行き着く先が笑顔であればと願わずにはいられません。プレイングに注がれた想いが成就され、どうか幸福が訪れていますよう。
さて、このシナリオが『銀幕★輪舞曲』での私の最後の作品になります。 ここまでお読みいただいた全ての方へ感謝を込めて。 NPC共々、本当に、本当に沢山の幸せを有り難うございました。 あさみ六華でした。 |
公開日時 | 2009-07-02(木) 18:30 |
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