★ もう1人の、自分 ★
<オープニング>

 銀幕市の対策課には、その日1日で起こった様々な事件、現象の報告が飛び込んでくる。
「ベイエリアに恐竜が出現しました!」
「銀幕広場でピエロが暴れまわっているそうです、至急応援を!」
「ダウンタウンに住むムービースターのフランケンさんのイビキが煩い、と地域住民から苦情が入っています」
「行方不明だった妖精の赤ちゃんが無事保護されました」
「田中さんちの犬のチロが3日前からいなくなったそうです」
「あのースミマセン……。大事な鍵を失くしたって、おじいちゃんが訊ねてきてるんですがー……」
 大事件から解決の難しい揉め事、中にはそれは本当にここの管轄か!? と思われるものまで。
 対策課に寄せられる報告は様々で、植村を始め職員達は日々胃痛に悩まれる毎日だ。

 そんなある日、対策課にもたらされた報告は奇妙なものだった。
「もう1人の自分に会ったんです……」
 その現象に遭遇した市民はそう言うと皆一様に口篭った。
 場所、時間は様々。共通するのは、まるで鏡でも見ているのかと錯覚する程、寸分違いない自分自身と対面するその状況のみ。
 対峙した己の分身は皆、意味を成さない会話の後、煙のように消えてしまう。
 その時の状況は人それぞれ、様々だったという。
 曰く――……。
 妙に明るかった。やたらと攻撃的だった。暗く陰気だった。何も言わずただ悲しそうだった。
 最後に体験者達が口を揃えて言ったのは、否定的な言葉だった。

「あんなのは、自分じゃない」

 そして、対策課を束ねる植村もまた、役所からの帰宅途中その体験者に名を連ねる事となる。
 翌日、彼は声を荒げて言った。
「……認めない。あんなの、私じゃありません。絶対に認めません……!!」


 その日、1つの依頼が対策課より掲げられた。
『この現象の早急な解明と解決を求める』

 その掲示に、
「ワシの鍵かもしれないのう……」
 白い豊かな顎髭を蓄えた、古ぼけたコートの老人が低く小さく呟いた。

種別名シナリオ 管理番号465
クリエイター紅花オイル(wasw1541)
クリエイターコメントシナリオ2作目となります、紅花オイルです。よろしくお願いいたします。

今回のシナリオは、シリアスです。
この現象の解決には、もう1人のアナタと対面しなければなりません。
プレイングには下記の2点をお書きください。

・対面するのもう1人のアナタ(PC)は、どんな自分ですか?
・その時、アナタ(PC)はどうしますか?

解決する鍵は、アナタの中にあります。

OP最後に登場したおじいさんは、現在プラノベ、ブログでサンプルとして上げている『空間技師』の物語と、同じ世界観のムービースターです。ご参考までに。

今回は少し制作日数を多めに頂いています。ご了承ください。
皆様のご参加、お待ちしています!

参加者
ゆき(chyc9476) ムービースター 女 8歳 座敷童子兼土地神
信崎 誓(cfcr2568) ムービースター 男 26歳 <天使>
チェスター・シェフィールド(cdhp3993) ムービースター 男 14歳 魔物狩り
清本 橋三(cspb8275) ムービースター 男 40歳 用心棒
李 白月(cnum4379) ムービースター 男 20歳 半人狼
薄野 鎮(ccan6559) ムービーファン 男 21歳 大学生
<ノベル>

 どうして他人の幸せなんか、願わなければならない?
 どうして他人の笑顔なんか、望まねばならない?
 自分のしたいようにして何が悪い。自分だけの為に生きて何が悪い。
 誰かの為なんて、もうまっぴらご免。
――座敷童子の自分なんか、嫌いじゃ。

 誰あんた。なんなのソレ。
 そうやって必死に自分の居場所作ってしがみついて。もがいて。
 中途半端、出来損ない、いい加減見苦しいよ?
 もうニセモノは、消えな。
――ソコはおれの場所だよ。

 嫌だイヤだいやだ。
 どうして俺なんだ? どうして俺だけがこんな目に合わなきゃいけないんだ?
 怖いコワイこわい。
 戦いたくない、逃げたい、死にたくなんかない。
――誰か助けてッ!!

 金の為だ、生きる為だ、この剣を振るう為だ。
 それ以外に何がある。それ以上何を求めるという。
 ただそこに有る事、それが俺の役目。
 現し世でいかに生きる?
――その問いに、何の意味があるというのだ。

 弱いよな、無様だな、あんた。
 母親も守れず、親友も救えないで。
 それでのうのうと生きている。笑わせるぜ。
 脆いよな、惨めだな、あんた。
――それで許されると思っているのか、ナァ?

 笑ってあげる。優しくしてあげる。話してあげる。
 そうするだけで、皆僕のいいなり。
 アハハ馬鹿だよね、アイツら。
 もっとね、見惚れればいいよ。褒めたたえればいいよ。
――だって僕は誰よりも綺麗なんだから。


――アナタはダレ?



 学校からの帰り道、その光景を見かけたのは偶然だった。
 普段は通らない公園の前の通り。
 朝、この街で住まわせてもらっているアパートの管理人さんから頼まれたハガキを投函する為、入り口横のポストに近付き、
「え……?」
 公園の中から聞こえて来たその声に、ゆきは自分の目を疑った。
「アハハハハハハ」
 自分がいる。
 いつも鏡で見る、同じ着物、同じ羽織り、同じ髪型。
 そして同じ顔をした自分が、公園のブランコに乗っていた。 
「ねえゆきちゃん、ズルイよ。順番でしょ、次代わってよォー」
「嫌じゃ。このブランコはずーっとわしが乗るんじゃ、誰にも渡さない!」
 周りにはゆきも時々一緒に遊ぶ近所の子供達がブランコを取り囲んでいる。
 その中心で、隣のチェーンもぎゅっと握り2つとも占領したもう1人の自分は、大きくブランコを漕ぎながらアハハハハ、と高らかに笑っていた。
 とても意地悪で嫌な感じの顔だった。
「ねえゆきちゃんー」
「煩い!」
 重ねて叫ばれる交代の要求に、ブランコから飛び降りたゆきはドン、と目の前の子供を押した。
「ああっ」
 その弾みでプラスチックのバケツから砂場で作った土のお団子が零れ落ち、地面で崩れぐちゃぐちゃになってしまう。
「いい気味じゃ」
 地面のそれをわざわざ踏みつけると、ゆきの姿をしたソレは笑いながら反対側の入り口から駆けていった。
「今のは…なんじゃ……?」
 その光景に本物のゆきは、信じられない思いで立ち尽くした。
 ゆきに衝撃を与えたのは、もう1人の自分の『存在』よりも、その『行動』だった。
 わがままで意地悪で乱暴で、まるで自分とは違う。もう1人の自分。
 映画『福来町幸せ壮の住人達』から実体化した座敷童子のゆきは、自分の存在は全ての人の幸福を願いそれを与える為にある、とそう思い生きている。
 それなのに。
「駄目じゃ、あんなのは、駄目じゃ……」
 目の前では子供が泣いている。他でもない、ゆき自身に泣かされて。
「待って!!」
 気が付けば走り出していた。
 もう1人の自分を追いかけて。


「チェスター・シェフィールド君?」
 頭上から掛かったその声に、チェスターは飲み掛けのグラスを置いた。
「そうだけど。……あんたが、薄野 鎮 (ススキノ マモル)?」
「うん、初めまして」
 驚くほど整った顔立ちでどこか女性のような雰囲気を纏った小柄な青年は、柔らかい笑みをチェスターに向けるとその向かい側に腰を下ろした。
 ムービーファンで、大学生の男。それしか相手の事は聞かされていなかったチェスターは、鎮の想像とは違う印象的な外見に、ふぅんと鼻先を鳴らし両目を細めた。
「対策課の依頼受けて調べてるんだって?」
「そうだよ。君も会ったんだよね?」
「……ああ」
 僅かに間を置いて頷く少年に、鎮は柔和な笑みを浮かべる。
「もう1人の、自分に」 
 つい数時間前の事だ。チェスターが自分自身を目撃したのは。
 こちらの姿を見るなり、対面するよりも早く逃げ去っていった自分。
 訳が分からず報告がてら市役所に顔を出すと、そこでチェスターは植村に「またですか」と苦い顔をされた。
 どうやらそのような現象がここ最近頻繁に起こっているらしい。対策課からは既に依頼の告知がなされ、捜査を開始しているムービーファンもいるようだ。
「彼に協力してあげてください」
 植村の指示でカフェ『スキャンダル』に赴いたチェスターは、そこで自分自身が体験した出来事を鎮に話すように言われていた。
「詳しく聞かせてくれないかな、その時の事を」
「いいけど。……まあ、詳しくっていったって、俺の場合一瞬だったから。イキナリ目の前に現れて、話す間もなく逃げてった。完璧どこからどう見ても俺自身。服装や髪型まで同じだった。……あ、イヤ。ここ最近付け始めたチェーンは…なかったかな……。うん、そうだ。こっちの腰の。実体化してからゲーセンでゲットしたヤツなんだけど。あとはなんかスゲービビッた顔してた。俺、あんなヘタレじゃねーし。正直ちと不愉快」
 一瞬という割には、細かな事までよく記憶して見ているチェスター。
 彼の話を鎮は素早く手帳に書きとめていく。
「なあ、アレなんなんだ?」
「さあ。なんだろうね」
 遅れて届けられたコーヒーの香りを楽しみながら、鎮はカップの中に視線を落とした。
「あんま良くわかんないけどドッペルゲンガーとかいうヤツ? ああやって自分の面突きつけられるのは、気持ちいいもんじゃないよなー実際」
「そうだろうね」
 暗い闇の液体に、ぼんやりと自分の顔が浮かび上がる。
 思い出されるのは、薄く紅をさした艶やかなその姿。鏡では、何度も見た。その格好をする機会も、これまで何度も。
 ふと、思う。自分も。もしかして。
 あんな風に笑っていたのだろうか、これまで。
「あんたも」
「え?」
 不意に強められた語調に、鎮は視線と思考を目の前の少年に戻した。
 チェスターは何でもない風にさらりと言った。
「あんたも、会ったんだろ? どうだった、どんなヤツだった?」
「……どうして?」
 鎮は、眉を顰めた。
 あえて言わなかった筈だ。
 鎮自身、もう1人の自分と対面したその事実は。
 そしてそれは鎮にとって不安しか生み出さず、あまり思い出したくない記憶だった。
「君もって」
「え?」
「『君も会ったんだよね?』って、あんた言ったろ」
「……ああ」
 僅かに口の端を上げ、チェスターは言った。
 そうだ、彼は14歳の普通の少年に見えて、魔物と戦い魔物を狩るムービースターだった。
 油断もしていたし、思いのほか動揺していたのかもしれない。
 思い出して瞬く間に不安が増幅する。
 鎮が対峙した自分は、これまで数多く依頼でこなした女装姿だった。
 妖艶な笑みを浮かべ、どこから見ても完璧に女性の姿をした鎮は、言った。

――女装をすると、皆自分に見惚れる。

「……うん、会ったけどね。上手く捕まえられなかった。君と同じですぐに逃げられちゃったし」
 結局、鎮は対面した自分の姿に関しては口を閉ざした。チェスターもそれ以上は聞かなかった。
 2人は互いに協力し合う事を約し、更なる手掛かりを求め街に出た。
「それにしても、あんた女みたいだよな」
 チェスターの物怖じしない言葉に、言われ慣れている事とはいえ、この時ばかりは鎮も苦笑した。


 それは散歩の途中だった。
 ふと、何か心地良い気配を感じ、次いでそれはあっという間に剣呑なそれに変った。
「……なんだ…お前……?」
 李 白月 (リ ハクヅキ)の目の前には、もう1人の自分がいた。
 白月は双子だ。彼には同じ顔をした兄がいる。
 しかし兄とは眼つきも髪の色も性格も違い、それほど同じ顔というものを白月は意識した事がなかった。
 それが目の前には、無視できないほど寸分違わない、自分自身がいる。
 それはまるで鏡を見ているかのようにピタリと同じ。
 もう1人の白月は、自分でも見た事のないような見る者の気に障る嫌な笑い方をした。
「随分と平和ボケした顔をしてんな、ナァ?」
「……なんだ、と?」
 突然現れた自分は、唐突に白月自身を貶し、攻撃的な語調で言葉を発す。
「実体化して骨の髄まで弛みきったか? その甘さの所為でコレだよ、やってらんねぇ」
 そうあざけ笑い、指先で弾いたのは顔の包帯だ。
 白月も咄嗟にそこに手が伸びる。そこは先日の戦いで光が失われた右目だった。
 ずくりと、その奥が熱を発したように疼いた気がした。
「弱いよな、無様だな、あんた」
 目の前の自分から視線はそらさず、白月は素早く周囲を探る。
 銀幕市が一望できる、高台の上。僅かな緑とベンチの置かれた広場だった。
 敵の気配は、ない。これは、ムービーハザードか。それとも誰か、ムービースターの能力なのか。
 その答えが出る前に、言葉の刃は突如白月の傷を抉った。
「母親も守れず、親友も救えないで」
「――――ッ!」
 笑いながら発せられたその言葉に、一瞬にして頭に血が上った。
 全身が怒りで燃えるようだった。
 腰の棍棒に無意識の内に手がいったが、それを白月は己の中の理性で僅かに押しとどめた。
「……何が、言いたい?」
 ギリ、と噛締めた奥歯が低い音を発す。
「それでのうのうと生きている。笑わせるぜ」
 白月がとどまったソレを、目の前の男は簡単に手にして、そして振るう。
「脆いよな、惨めだな、あんた。怒る気概すらなくしたか、アァ?」
 下卑た嫌な笑みを顔に張り付かせ、男は言い放った。 

――それで許されると思っているのか、ナァ?

 ガキンッ
「な…っ!!」
「オラ、どうした! かかってこいよ!!」
 それは突然に。自分自身との戦いは始まった。



 ずっと違和感はあった。
 不確かさと、不安定さと、不安感。
 自分が、誰なのか。自分が、何者なのか。
 それを一番よく知るのは自分以外にありえない。理性では分かっている。
 自分が大切なモノの言葉と差し伸べてくれる手を信じられるのなら、大丈夫だと。
 彼は、言った。
 確かにそうだと、その時は思った。
 それでも。

――ソコはおれの場所だよ。

 目の前に現れた『天使』に、信崎 誓 (シノザキ セイ)は動揺を隠せなかった。

 それはこの街に誓が降り立った時から、ずっと抱えてきた恐れだったのかもしれない。
 美しく透き通った笑みで、コロコロと表情を変え、決して実体をつかませない風のような存在。
 軽妙洒脱で、飄々としていて、そして魅力的で。
 誓は何にもとらわれないそんな自由を感じさせる青年だ。
 そんな華やかな彼しか見た事のない者は、驚くかもしれない。その落差に。
 しかし彼はずっとこうして長い事、身の内に漠然とした不安を抱き込み生きてきた。
 この街に実体化した時から、もうずっと。

 その現象と、対策課から出された依頼は知っていたから、誓はそれでもまだ取り乱さずに済んだのかもしれない。
 真っ先に思い浮かべたのは、同じように自分の分身が現れるという、かつて関わった事件の事だったが、今回はそれとはまるで性質が違うと誓は考えていた。
 第一に分身は皆、すぐに消える事。第二にそれはムービースターもムービーファンもエキストラも関係なく、皆に起こっている事。
 二つの事実が、その現象とかつての事件は無関係だと証明していた。
「なら、おれの出る必要はないね」
 誓は自ら進んでは、今回の依頼には極力関わらないでいようと、無意識にそう決めていた。
 『信崎 誓』という登場人物が出演している映画は2つある。
 ハードボイルド映画『X.Y.Z.』と映画『Michael-Angelo(ミケランジェロ)』。
 暗殺者と天使、という相反する役どころで登場する『信崎 誓』。
 彼がそのどちらの映画から実体化したムービースターなのかは未だ判明しておらず、何故か誓自身も決して語らない。
 だから今回の現象を知らなければ、きっと誓は『もう1人』が遂に実体化したのだと、そう思っただろう。
 それは何より、誓が恐れ抱えていた不安に、他ならなかった。
 分かってはいた。
 これは違うと、頭では理解していた。
 でも、突如目の前で、恐れていた事が現実となり、
「そうやって必死に自分の居場所作ってしがみついて。もがいて」
 その言葉を突きつけられ、
「中途半端、出来損ない、いい加減見苦しいよ?」
 誓は激しく動揺した。
「もうニセモノは、消えな」
「…………ッ!!!」
 気が付けば、その場から逃げていた。
 そして、瞬く間に。
 誓は、自分が分からなくなっていた。



「清本さん、こちらにいらっしゃったんですね」
「む、おまえさんは……?」
「失礼。薄野 鎮です。『カフェ・天使の休息』で……」
「ああ」
 先日の行きつけのカフェの一件で顔を合わせた青年と再会し、清本 橋三 (キヨモト ハシゾウ)は歩みを止めた。
 清本は今日も件のその店で『しょーとけーき』を食べようと街に出ていた。
 しかし声を掛けてきた鎮はどうやら自分を探していたらしい。
 好物の『けーき』はお預けか、と少し残念に思いながら清本は鎮と向かい合う。
「何か、俺に用でも」
「ええ。対策課で清本さんも遭遇したと聞きまして」
「……ああ」
 その主語を省略した言葉に皆まで聞かずとも全てを悟り、清本は頷いた。
「会った。この街で生きると本当に退屈せんな。……アレは、何だ?」
 つい昨日の出来事を述懐しながら、清本は己の細く尖った顎先を撫でた。
 一晩寝て覚めても、未だに目にした光景が頭を離れない。
 自分の中で消化する為何か甘味でも、と出掛けた清本だったが、やはり事件はそう簡単に解放してはくれないようだ。
「まだ、分かりません。今調べている所です。お話を伺っても……?」
「よかろう」
 観念したように、清本はその強面に僅かに苦い笑みを浮かべた。

「その問いに何の意味があるのかと、逆に問われた。俺は答えられなかった」
 2人が連れ立って訪れたのは、清本がもう1人の自分と対面した、高台に続く通りの途中だった。
 数日前、鎮自身この上で大学の帰りに美しく着飾った自分と会っている。
 他に聞いている体験談はこの周辺に集中していた。やはりここらに何かあるのかも、しれない。
「俺は、自分の出演映画を知らない」
「え?」
 思い掛けない突然の告白に、鎮は短い声を漏らした。
 確かに、現代を舞台にした映画のムービースターなら、何の違和感もなく実体化しても気付かない、という事はあるだろう。
 しかし清本は時代劇映画出身のムービースター。
 そんな事が、あるだろうか?
「俺は『えいが』では所謂『脇役』というヤツだ。『せりふ』はおろか『役名』もないやられ役。俺を演じた『役者』は同じようなその端役を、実に数多くの映画に出て演じている。それらの中の『どれか』が俺だと言うのは間違いないだろう」
 でも、分からないのだ、と清本は首を横に振った。
「『えいが』はな、いくつも観た。しかし俺の出る場面は一瞬だ。どれも似たような背景、設定。俺の生きてきたこれまでの記憶と合致するものは特にない」
 伏せられたその瞳はどこか暗い色を湛えている。
「これは…不安、なんだろうな……。自分が何者か分からないのだ。自分では分かっている、つもりだった。しかしいきなりこの世界に飛ばされ、お前は幻だ、不確かだと突きつけられたような気がした」
 不安の、色だ。
「そんな漠とした焦りから、俺は目の前に現れた己に問い掛けた。『おまえさんなら…現し世でいかに生きる?』と」
「答えは……?」
「『ただそこに有る事、それが俺の役目。その問いに何の意味がある』と」
「…………」
 腰の指し物をゆるりと撫で、清本は口の端を真一文字に結んだ。
「構える剣に迷いはなく、余程俺より『用心棒』然としていた……」
 その時、清本は思ってしまったのだ。
 コヤツと自分の差はなんだろう。
 『清本 橋三』という名前があるか否かだけではないだろうか。
 実体化して変わってしまったかもしれない自分と、幻ではあるがそれゆえに役に忠実な自分。
 もしかすると、もう1人の自分は、俺よりも俺に相応しいのではないか、と……。

 この先で待ち受けているものはなんだろう。
 鎮は不安に思わずにはいられない。
 鎮の肩の上で船を漕ぐ、ミッドナイトのバッキーがいつものように落ちかけ懸命にしがみ付いている。
 雨天を優しく撫で肩の上に戻してやりながら、侍と目指すのは坂の上の高台。
 揃って見上げる空は青く、どこまでも高かった。



 鎮と清本が共に歩いていたその時、
「へぇー、街が一望じゃん。こんなトコあったんだな」
 チェスターは、彼らが目指すその高台の上にいた。
 ここからならば、銀幕の街を隅々まで見渡せる。
 目には少し自信のあるチェスター。ここからもう一度、自分の分身を見つけようという考えだった。
「あっちが駅で…綺羅星学園……。お、いつも行くゲーセンだ。すぐ下は、公園……ん? なんだ? なーんかガキ共がウジャウジャ集まってんなー……?」
「おお、ここにおったか」
「ハァ?」
 身を乗り出し、眼下の街を眺めるチェスターの背後より、突如その声は掛かった。
「何だ、あんた?」
「何だ、はないだろう。自分から雇っておいて。狙われているというのならば、大人しくせぬか」
「何言って……」
 黒の着流しを着た眼光鋭い手練れの浪人風のその男は、ぐいっと引き寄せるようにチェスターの手首を掴んだ。
 突然の意味不明な男の行動よりも、チェスターが気になったのは侍が言ったその言葉だ。
「……もしかして、あんた俺に会ったのか? どこで! どんな奴だった!?」
 何を言っていると、その男――清本は眉間の皺を深くした。
「よもや恐慌のあまり錯乱したか」
「何……?」
「狙われているのであろう? だからあんなにも怯えておったのであろう? 弱き者が力を求め、強者を雇うのは当然だ。俺の仕事は用心棒なのだからな」
 清本の口から語られるもう1人の自分の様相。
「なん、だよそれ……」
 その自分とはあまりにもかけ離れたイメージに、思わず握る拳も強くなる。
「ソレ、絶対俺じゃねぇよ。そんなの俺じゃねぇからな! ざけんなよっ?」
 チェスターが声を荒げたその時。
「うわああぁぁぁっ!!」
「オラァッ! どうした、こんなものか!? アァ?」
「くっ!」
 チェスターと同じ声の悲鳴と共に、激しい戦闘の衝突音が彼方で上がった。
 駆けつけたそこには、
「なんだよコレ……ッ!?」
「うわあぁ、助けて! 嫌だ怖い死にたくないッ!!」
「ガキ1人も守れないのか、お前は! ハハハッ!」
「クソ……ッ!!」
 地に蹲り頭を抱え取り乱すチェスターと、自分自身と戦う白月の姿があった。



 水道の冷たい水を頭から被り、誓は大きく左右に髪を揺らした。
 普段はふわふわと揺れる柔らかい黒髪も、今は大量の水を含んで濡れそぼり、髪先からポタポタと雫を垂らしている。
 白いシャツの肩や胸元に幾つも染みを作り、それでもその惨状を気にする事もなく、誓は側のベンチに腰を下ろした。
 伏せられた赤みがかった茶色の瞳は弱く、今にも彼の存在そのものが消えてしまいそうなほど儚い。
 誓は今揺らいでいた。
 自分は、偽物なのだろうか。ならば、対峙したアレがやはり本物なのだろうか。
 胸に鉛の弾を撃ち込まれたように、誓の心は重く冷水を頭からかぶった位では簡単には晴れそうにない。
 深く誓は息をついた。
 その弾みで新たな雫が髪先より生まれ落ち、やがて路面の上音も無く消えていった。
「ハァ……ハァ、ハァ……ッ!」
 不意に耳を掠めた懸命な荒い呼吸に、誓は顔を上げ瞠目した。
 おかっぱに着物の小さな少女が、忙しなく辺りを見回し、誓の姿を認めるなりこちらに向け駆けてきた。
「ハァハァ……の、おぬし…今わしを見なかったか?」
「え……?」
 自分で言った言葉の矛盾に気が付いたのか、少女――ゆきは慌てて首を振る。
「いや、わしではなく! えっと、その…わしの前にわしと同じような童子がこちらの方に来た筈なのじゃ……。それをもし見ていたら、と思うて、ええと……」
 ずっと走ってきたのだろう。息をきらし拙い言葉で一生懸命説明するゆきの姿に、誓はいつもの柔らかさを取り戻し笑みを浮かべた。
「うん、分かるよ」
「え?」
「もう1人の、君だろう?」
「あ……!」
「でもゴメン。見ていないんだ。でも君が言いたい事は分かる」
「……おぬしも?」
「うん、会った。もう1人の、おれと。対策課にね、依頼が出ているよ。ここ最近そういう現象が多発しているんだって。原因はまだ分かっていないみたいだけど」
「そう、か……」
 自分の体験した出来事に、僅かながらも説明を与えられ気が抜けたのか、ふっとゆきはそれまで強張っていた肩の力を抜いた。
 誓は少女を自分の隣に座るよう促す。しかし腰掛けても尚、ゆきの表情の暗さは消える事はなかった。
「吃驚したんじゃ……」
「うん」
 ポツリポツリとまるで独り言のように、ゆきは語り始めた。
「凄い意地悪だった。凄い嫌な笑い方で、わがままで乱暴で。友達を泣かしていた」
「……うん」
「あんなの、駄目じゃ。あんなの、わしじゃない。まるで自分の為だけに生きてるような、そんな振る舞い…許される筈がない……」
「…………」
 座敷童子である自分の存在意義は、人々に幸福を与える事だ。ゆきは人々の幸福を願う心から生まれた。
 だから、いくら自分自身じゃなくても、自分の姿をした者が誰かを泣かせるなんて。
 その光景が信じられなくて、許せなくて、ゆきはもうずっとあの子の涙が頭を離れなかった。
 小さな手がきゅうっと膝の上で固く握られる。
 そんな少女の苦悩する様を誓は無言で見詰め、視線を空に定めた後、あえて明るい声で言った。
「君は、優しいんだね」
 見詰める先のその雲は、青の中ただ一つの純白で。
「泣かせてしまった子の事を、まるで自分の事のように悲しく申し訳なく思ってる」
 ソレは天使の羽のように、緩やかに頭上を流れていく。
「でも、ね。ずっとそんなんじゃ、君が可哀想」
「え?」
「もっと君自身にも優しくしてあげなきゃ。ね?」
「わし、にも……?」
「そう」
 そう言って煌く雫で髪を濡らした誓は、優しくゆきの頭を撫でた。
「あのね、自分の為だけを考えて生きるのは、そりゃ悪い事かもしれない。誰かに迷惑を掛けるなら、尚更。でもね、だからって自分の事、一切考えないで生きるのは、悲しいよ? きっと君の周りの人も決して喜ばない。少なくとも、今おれは悲しかった。だから、そんな風に自分を責めるのはよしなよ」
「……そ、」
 そんな事。
 生まれて初めて言われて、ゆきは驚いた。大きな漆黒の瞳が零れそうなほど見開かれる。
 そんな事、考えもしなかった。
 全ての人の幸福の為に、ゆきはいる。だけどその「全ての人」の中にこれまでゆき自身の事は含まれてなどいなかった。
 無意識の内に、ゆきは自分で自分をそこから外していた。
 途端に、分からなくなる。自分の中が、分からなくなる。
 ずっと、幸せだと思っていた。自分は幸せなんだと。でも、本当にそう?
 自分を省みず、誰かの幸せばかり願い、それで本当に幸せだと言えるの?
 自分の座敷童子としての生は、生き方は、本当に正しいのだろうか……?
 もう1人の自分の方が、もしかしたら幸せなんじゃないだろうか……?
 歪む。それまでの自分が、あっという間にあやふやになってしまう。
「……どうした、ら?」
 きっかけを投げてきたその男の袖にすがり、ゆきは怯えた表情で彼を見上げた。
 誓は、笑っていた。それは決意の笑みだった。
「おれはね、決めたよ。もう逃げない。」
 ゆきと話していて、定まった想いが誓の中にはあった。
 揺ぎ無い物が1つだけある。それが、彼を再び形作り定めた。彼を強くした。
「もう1人のおれ自身と会って、分かったんだ」
 立ち上がった誓は、その瞳に強さを秘めた綺麗な笑みを浮かべていた。

「――もう1人の自分、と仰いましたか」
 突如2人に向け掛けられた声に、誓とゆきは同時に首を巡らせた。
 いつからそこに居たのだろう。
 白い豊かな顎髭を蓄え、目尻のしわは相当深い。目深に被るのは鳥打ち帽、古ぼけたコートに茶色の革靴。
 手にはジャラジャラと連なる大きな鍵の輪の束を握り締め、そこには1人の老人が立っていた。
「空間技師、鍵屋と申します――――」

 老人、鍵屋は言った。
――アナタの心をお開けします。



 振り下ろされた攻撃を棍棒の中心で受け、横に払い流す。
 次に来るのは蹴り。きき足から、体を捻り全体重を乗せそれを相手に叩き込む。
 次の瞬間、どうしても無防備になるから棍棒を回転させ、防御を取るのを忘れていはいけない。
「ハッ!」
 ガッ、と激しい火花が散った。
 棒術と拳法を組み合わせた白月自身の戦いは中々決着を迎えそうになかった。
 相手は自分自身だ。
 この先自分がどう動き、どのような攻撃をしかけてくるか、白月には手に取るように分かる。
 それは当然相手も同じで、その為2人の戦闘は長引いていた。
「うわああぁっ」
 問題は、後ろの少年だった。
 偶然遭遇した彼を、イキナリこの戦いに巻き込んだのは白月の分身だ。
 関係のない通行人を巻き込むことで、白月の隙を誘おうというのか。それともただ単に白月自身を苦しめたいだけなのか。
 少年を庇いながらの戦闘。隙あらば、分身は少年に攻撃を加えようとしてくる。
「これくらい守れて当然なんだろ! ナァ?」
 加虐心剥き出しの顔で、白月の分身は笑いながら棍棒を振るい、その動きを止める事はない。
 戦いながら、白月はハッとした。
 もしかして、と思った時からそれは心の中で焦りと共に広がり、全身に動揺を走らせた。
(まさか。闇月、なのか……?)
 中国映画『狼 〜ROU〜』より実体化した白月は、人でもなく人狼でもない、半人狼のムービースターだ。
 彼は赤い満月の夜にのみ、狂気にかられ心に牙を持つ。
 白月の、心の闇の化身、『闇月』と化す。
 闇月は、乱暴で白月よりも口の悪い狂気の人格だ。
 それは確かに、白月の中の一部だった。
 そして目の前に現れた白月の姿をしたもう1人の自分の振る舞いは、闇月のそれそのままだった。
(なら、コイツも……ッ!?)  
 自分自身ということになる。
「そんな……」
「どうした、オラァ! 動きが止まってるぞッ!?」
 狂気に歪んだ顔で、分身は牙をむくように全開で笑った。


「冗談じゃねぇぞ、何だよアレ……!」
 嫌だ、怖い、死にたくない、と叫ぶ自分自身の姿に、チェスターは信じられない思いでその場に立ち尽くした。
 もう1人の自分は無様にも、頭を抱え地に伏している。
 怯えるその瞳が見詰めるのは、白月同士の戦いだった。
 どうやら、チェスターの分身に白月の分身が攻撃を加えようとしているらしい。それを庇い戦っているのが、本物の白月だ。
「あんなの絶対俺じゃねぇよ。あんなんじゃない……だって、俺がホンモノなんだから……」
 間近から聞こえてきた金属音に、チェスターは視線を落とし、それが自分が身に着けるアクセサリーの音だと気が付いた。
 いつの間にか、チェスターの体は得たいの知れぬ激情に震えていた。
 無意識に取り出していたのは、愛用の銃だ。
 馴染んだ手の中の重さに、銃口を向けるべきが誰なのか、冷静な判断が下せなくてチェスターは動揺する。
「馬鹿な……っ」
 一瞬、迷ったのだ。自分自身を殺すべきか、と。
 認めない、俺じゃない、冗談じゃない。
 しかし、恐怖に蹲る自分が発した言葉に、チェスターの鼓動は大きく跳ねた。

――誰か助けてッ!!

 初めて魔物に襲われた時のあの恐怖。
 まざまざと甦る背筋が凍るようなあの感覚。
 どうして俺なんだと思った。どうして俺が戦わなければならないんだと。
「チックショ……ッ」
 心の中で舌打ちをする。

 決断の時は迫っていた。



 おれは、逃げないよ。
 気が付いたんだ。
 確かに、おれは凄いあやふやで、ニセモノかもしれない。
 どちらでもなく、どちらでもある。そんな自分が正直怖かった。
 でも、おれはおれなんだよね。
 この街で様々な人と出会った。様々な思い出を重ねた。
 そうして形作られた自分は他の何物でもない、本物だって。
 今のおれが、おれだよ。
 それが、答えだ。

 わしの願いは全ての人の幸福。
 人の幸せの為に、長い時間生きてきたんじゃ。
 自分の為、なんて考えもしなかった……。
 でも少し羨ましくも思ったのじゃ。
 自分の為だけに生きる、奔放なもう1人のわしを見て。
 あれも幸せなのかもしれない。あれもわしの願望なのかもしれない。
 そうやって生きる事こそ、人としての幸せなのかもしれない……。
 それでも。
 わしには今の生き方を変えることなんて、出来ない。
 だって、やっぱりどちらも大切だから。
 願わくば、どうか、生きとし生けるもの全てに、幸いを――。 

 自分が何者なのか。自分が一体何の為に生み出されたのか。
 分からぬ不安というものは確かにある。
 しかしそれをも上回る。
 この街での暮らしは実に心地良い。
 ただ闇雲に、剣にしがみ付き生きていたかつての頃より、今の俺には生きている、という充実感、充足感がある。
 俺はな、思うのだ。いっそ自分が何者であっても良いではないか、とな。
 たくさんのスクリーンの中の俺の虚像。
 その中で1人くらい、『かんとく』の為でも『かんきゃく』の為でもなく。
 ただ自分のために剣を振るう『清本 橋三』が居ても良いだろう――なんてな。



「これは……!」
 ただならぬ気配に駆け上がった高台で、事件に関わった面々は一堂に会した。
 隣を歩いていた清本が、その先の自分に気付き駆け出す。
 見渡せば、広場の中央には白月とチェスターの戦う姿。
 誓とゆきの傍らには、見慣れぬ老人が共にいた。
 鎮は、その光景をただ1人外側から見ていた。
 それぞれが、もう1人の自分と対峙している。
 話しかける者、声高に宣言する者、自分の決意を誓う者。
 鎮は、視界の端で妖艶に笑う自分の姿を認めながらも、それらをただ動けず見ていた。
 突如、その広場に、悲痛な叫びが2つ、響き渡った。

「お前は俺、俺はお前だ。……否定したいけど、否定したって変わらないんだ!」
「分かってる。怖いって、逃げ出したいって、そう思ってた! そんな自分を、受け入れれば、向き合えばいいんだろ、チクショウッ!!」 

 その瞬間、辺りは眩い光に包まれ、そして彼らのもう1人の自分達は、消えていた。


「結局、アレはなんだったのか、教えてもらってもいいですか?」
 鎮の問いに、今回の事件の発端である、鍵屋の老人は小さく頷いた。
 彼の足元には薄汚れた犬がいる。
 その首元には赤い首輪。
 チロという名が刻まれたプレートと共に、そこには古ぼけた鍵がぶら下っていた。
「ワシの作ったこの鍵には、人の心を露わにする力があるのです。普段は、持つ者が使う意志を持って相対さなければ、発動される事は無いのですが……。どうやら誰かがこの迷い犬の首に括りつけてしまったようですわい」
 ハッハッと舌を出し、尾を振る犬は数日前より対策課でも捜索願が出されていた田中さん宅の愛犬チロだ。
「犬が…どうして……?」
「人懐っこいこの犬が、遊んで欲しいと様々な人にじゃれ付いていった為、結果として何人もの方の心の扉を意図せず開けてしまったようですな」
 老人の言葉に、鎮は眉を寄せた。
 人の心を露わにするという、その鍵。
 ならば、自分が出会ったあのもう1人の自分は……。
「……僕達が実際に対面した、アレはなんですか?」
 消え入りそうな程小さな声で発された鎮の問いに、老人は両目を細め答えた。
「アレは、アナタの心ですわい。心の中に潜む、もう1人の自分。本当の自分。普段は押し込め隠したままの自分。かつての自分。そうだったらと恐れの対象としての自分。どこかで見た事のある記憶の中の自分。それは対する人によって様々でしょうな」
 シャラン、と老人の鍵の束が音を立てる。
「幻を消すには、そんな『もう1人の自分』を拒絶せずありのまま受け入れる事が必要だった。鍵は、初めからアナタ方の中にあった。出会った自分が、アナタにとって何なのか。それを知っているのは他でもない、アナタ自身でしょう――」
「――僕、自身……」
 鎮は呟きながら、不意に首を巡らせた。
 自分の不安と向き合った者。自分を見詰めなおした者。新たな自分に気付いた者。自分の弱さを認めた者。
 今回この事件に関わった者は皆、自分と対面し、何かを得たようだ。
 その表情は幾分晴れやかになっている。
 自分はどうだろう、と鎮は己の心と向き合う。

 この街に来て。
 自分の変ったところ。自分の変らなかったところ。
 そして、これから変っていくところ。
 それはきっと、人それぞれ。様々。

 見上げる空は青く、どこまでも高く澄んでいて、
「眩しい……」
 まるで自分の心を写す、鏡のようだった。


――もう1人のアナタは、どんな自分ですか?

クリエイターコメントこの度はご参加ありがとうございました。
参加PCの皆様の内面をより深く書かせて頂き、遣り甲斐を感じると共にとても緊張いたしました。

皆様に、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
また機会がありましたら、どうぞよろしくお願いいたします。
公開日時2008-05-12(月) 21:40
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