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<ノベル>
1.不本意な戦闘準備
「……っそんな、そんな、魔女だけでも駄目なのに、後ろに『娘』がつく衣装だなんて……ッ!」
白亜(ハクア)はまたしても泣きそうになっていた。
カフェ『楽園』に来るときはいつもそうなのだが、映画内では人間たちを震え上がらせ、数多の死と絶望を撒いてきた、冷酷非道で鳴らした美形一角鬼も、このカフェにおいては無力な仔猫ちゃんでしかない。
カフェ『楽園』が白亜に与えた影響というかトラウマとは、それほど多大で深刻なものなのだ。
「だって……人手が足りないんですもの。白亜さんなら魔女っ娘姿も似合うし、戦い方のツボも心得ているし、適任でしょう?」
すでに涙目の白亜にはまったく頓着せず、輝くような黒い笑顔で、どんなに女性めいた顔立ちをしていようとも自分が男性であるという事実を覆すことのできない白亜には心臓破り級の衣装を提示してくるのは、黒いシンプルなワンピースにケープを髣髴とさせるマント、そしてとんがり帽子と言う魔女の扮装をしたイーリスだ。
「ちゃんと、衣装に合わせてアクセサリも作ったから、大丈夫」
「い、一体何がどう『大丈夫』なのか、きちんと説明して欲し……」
「質のいいアメジストとハーキマーダイヤモンドを使った特別な逸品なの。知っている? ハーキマーダイヤモンドは、一切研磨せずともすでにこれだけの美しさを持っているのよ、素敵でしょう? とてもいいものを使ったから、インスピレーションを高めて、白亜さんを導いてくれるわ、きっと」
「いや、私の言う説明はアクセサリではなく、」
「さあ、時間がないわ。早く着替えてしまいましょう、次の犠牲者が出る前に。白亜さんだって、そう思うでしょう?」
白亜の言いたいことなど隅々まで理解しているだろうに、それにはまったく頓着することなく、イーリスが手早く白亜を剥きにかかる。
確かに銀幕市の人々に被害が及んでいるというのならば放ってはおけないだろうが、女性にだって猛者の多いこの街において、何故自分がわざわざ魔女の装いなどして問題解決に当たらねばならないのか、釈然としないし納得も出来ない。
しかし、イーリスがやる気満々であることは覆せない事実でもあり、こうなってしまうと抵抗するだけ無駄だと身を持って知っている白亜は、口中に絶叫を飲み込んで、こうなるに至った経緯を反芻し、その原因である星の悪魔とやらに怒りの矛先を向けることにした。
そうでもしなければやっていられない気分だった。
「この衣装なら、お化粧はちょっと濃い目の方が映えるかしらね」
ごくごく当然のようなイーリスの言葉に涙が出そうになる。
こんなことなら連絡を無視して家にこもっていればよかった、と思う。
白亜は、本来ならば月曜日と金曜日にしかカフェ『楽園』のシフトに入っていないが、ハロウィンイベントで人手が足りないから、と手伝いに呼ばれたことは仕方ないとしよう、百歩譲って。
しかし、「お店は私たちが何とかするから、あなたは魔女の扮装をして悪魔を退治してきて」と言われるのはどうも釈然としない。
この店の中だけなら、色々と特殊なイベントが行われているのもあって、白亜が女性の出で立ちをしていても誰も何も言わないが、外に、やたらと露出度の高い衣装を着て出て行かねばならないなど、拷問以外のなにものでもないではないか。
「……それなら、私が店の方を何とかするから、イーリスが悪魔退治に行けばいいのでは……?」
とにかく、この恰好で外に出たくなくて、やたらとスカートの短い黒いワンピースを着せられながらそんな提案をしてみるが、わざとらしく驚いた表情をしたイーリスに、
「白亜さんはこんなか弱い私たちに悪魔退治をしろと言うの? 白亜さんたら、薄情なのね。私、哀しくなっちゃうわ」
などと言われ、やはりわざとらしい泣き真似までされた時点で諸々のことを諦めた。
森の娘がか弱いとしたら自分など生存も危ういんじゃないのかと思いはしたが、それを口にする度胸はなかったし、このまま拒絶し続けたら、多分、あとでひどい目に遭わされるだろうということも判る。
いつも『仕事中』に来ている衣装の露出度をアップされるとか、問答無用でセクハラされるとか、先日行われたお茶会で披露されたという、語尾が『にゃん』になるドリンクを飲まされるとか。
そんな自分を想像して、それならまだ魔女っ娘姿で悪魔退治をした方がマシだと判断し、がくり、とうなだれた白亜は、それでももちろん精神的な踏ん切りはつかず、
「せ、せめてこの上に羽織るものくらいは……」
などと、精一杯悪足掻きをする。
あらそうね、と笑ったイーリスが、
「マントの裾からちらりと覗く足、というのは確かに美味しいわよね」
と、手をポンと打つ。
白亜はそれを聞いて、何をどうしたって自分は存在そのものを楽しまれてしまう運命なのかと、少しばかり世を儚みたくなった。
ゆきは、お世話になっているアパートの管理人さんから、カフェ『楽園』のハロウィン限定スイーツが食べたいと言われ、それを買うお遣いを頼まれて『楽園』を訪れていた。
今日一日だけの限定スイーツは、もちろん、ほくほくの南瓜をふんだんに使ったタルト・オ・シトルイユ(胡桃&メープル風味)だ。
店先からふわりと漂ってくる甘い香りを胸いっぱいに吸い込むだけで幸せな気分になれる。
「ああ……美味しそうじゃのう」
ショーケースの前に佇み、可愛いがまぐち財布をぎゅっと握り締めたゆきが、管理人さんの喜ぶ顔を思い浮かべ、管理人さんとお茶をする時間が楽しみだ、と顔をほころばせた時、隣で、
「ああ……やっぱり綺麗だなぁ、娘さんたち……」
溜め息をつかんばかりにうっとりとした声がした。
聞き覚えはない声だったが、それがあまりにも嬉しそうだったので、首を傾けて上を見上げると、そこには、十代半ばから後半と思しき少年がいて、様々なスイーツがところ狭しと並べられたショーケースの前に陣取って、魔女の扮装で接客をしている森の娘たちをきらきら輝く目で見つめている。
「おぬしもハロウィン限定のお菓子を買いに来たのかの?」
思わず声をかけると、少年は初めてゆきに気づいた風で彼女を見下ろし、ちょっと笑って頷いた。
「うん、まぁ、そんなところかな。きみも『楽園』のハロウィンイベントに来たんだ? ……ムービースターだよね?」
「うむ、わしはゆき、座敷童なんじゃよ。そういうおぬしもムービースターじゃろう?」
「ああ、うん。僕は一乗院柳(いちじょういん・りゅう)っていうんだ。座敷童かぁ、可愛いなぁ」
「おや……それは、どうもありがとう」
柳の言葉にゆきがにっこり笑った時、柳に気づいたらしい森の娘のひとりが、満面の美しい笑みを浮かべて歩み寄ってくるのが見えた。
「いらっしゃい、柳さん! 遊びに来て下さったのね、嬉しいわ」
蠱惑的な肢体を、少々露出度の高い魔女扮装に包んだ彼女に、柳が嬉しそうな顔をする。
「今日は、リーリウムさん。今日もとってもお綺麗です。来てよかったなぁ……!」
「うふふ、どうもありがとう。……こちらは、お友達?」
「ああ、いえ、今知り合ったばっかりなんですが、ゆきさんと言って、座敷童なんだそうです」
「あら、そうなの。いらっしゃい、ゆきさん。あなたもハロウィンお茶会に来てくださったの? どうもありがとう、ゆっくりして行ってくださいね」
「限定タルトというのを買いに来ただけなのじゃが、店内も楽しそうじゃのう。うむ、ゆっくりさせていただくのじゃよ」
ゆきが、リーリウムの言葉に笑い返すと、
「ええ、そうね、楽しんで――……」
森の娘は唐突に言葉を切り、少し考え込む風情を見せた。
「どうしました、リーリウムさん?」
首を傾げた柳が問いかける。
「ああ、いえ……そうね、そうだわ、この際巻き込んでしまうのが一番ね、そうしましょう」
なにやら不穏当なことをつぶやいたリーリウムが、満面の、神々しいほど美しい笑みを浮かべ、ふたりに向き直る。
「あのね、柳さん、ゆきさん。ひとつお願いしたいことがあるのだけれど、いいかしら?」
「お願い? って、なんですか?」
「ふむ? わしにできることならば手伝うのじゃよ」
「ええ、おふたりでなくては出来ないことなの。わたしたちを助けると思って、引き受けてくださる?」
リーリウムに言われて柳が頷く。
「そりゃ、リーリウムさんにそんなこと言われたら、はいと言うしかないですよ。僕に出来ることなら何でも仰ってください」
柳の力強い同意にリーリウムが微笑んだ。
「ありがとう、柳さん、ゆきさん。じゃあ、ちょっと、こちらへ来ていただけるかしら……?」
言って手招きする森の娘に促されるまま店内を進むふたり。
――バックヤード、控え室と呼ばれる場所に案内されたふたりの前に、魔女の扮装をした、今にも泣きそうな顔をした人物が現れるのはそこから数十秒後のこと、それですべてを察して逃げようとした柳がリーリウムに捕獲され、問答無用でひん剥かれるのがそこから三分後のことだ。
理月(アカツキ)は対策課でその依頼を聞いてカフェ『楽園』を訪れていた。
いや、実際には、今日がハロウィンというお祭の日で、カフェ『楽園』が何かイベントを行い、また特別仕様の限定タルトを販売すると聞いていたので、依頼がなくても行く気ではあったのだ。他の用事が忙しくて先だっての特別感謝お茶会に参加できず、限定タルトを買い逃してしまったのもあって、今回こそは、と思っていたのである。
――無論、参加していたら接客側に巻き込まれていた可能性があったことも十二分に理解している理月だが。
何にせよ、ヒトの精気を食うという悪魔の話を聞いて、理月が、
「まぁ……放っては、おけねぇよなぁ」
何か自分に出来ることがあれば、と思ったのは確かだ。
彼は、基本的に、荒事専門のいわゆる何でも屋なのだから。
しかし、にこやかに出迎えてくれたリーリウムによって控え室に通された理月は、何度か同じ事件で一緒になっている美形一角鬼・白亜と、確か以前砂浜で起きた目に痛い水着ハザードに巻き込まれていたような気がする少年とが、明らかに男性用の衣装ではない代物に身を包んで打ちひしがれているシーンに行き逢って思わず硬直した。
白亜は、ホルターネックのワンピース(スカートの裾はミニクラス)に繊細なレースのオーバーニー・ソックス、ヒールの高いショートブーツ。色は黒。首にはきらきらと輝く天然石をちりばめた美しいネックレス、頭にはとんがり帽子。
少年は、腰の大きめリボンがアクセント★ のシフォンワンピースに編み上げブーツ、レースの手袋。色はもちろん深い深い黒で、頭にはとんがり帽子が鎮座している。彼(彼女?)の肩には、蛇のような身体をした、狐によく似た小さな動物が乗っかっていて、びっくりするほど渋い声でもって少年をしきりと励ましているようだった。
その彼らを、見たことのない女性が、困ったような表情で見下ろしている。
彼女もまた、黒を基調としたバルーンスカートタイプのワンピースを身にまとい、足にはリボンのモチーフがついたハイヒール・サンダルを履いて、頭にはとんがり帽子を被った、いわゆる魔女の恰好をしていたが、こちらは普通に女性なので、黒が白い肌に映えてとてもよく似合っていた。
いや、白亜と少年のそれも、実はとてもよく似合っていたのだが、多分ふたりにとってはまったく嬉しくない褒め言葉だろうと思う。
「あれは、白亜と、確か……」
「一乗院柳さんよ。今は魔女っ娘柳沙ちゃんだけど」
にっこり笑ったリーリウムが説明してくれるのへ、理月はぎこちなく視線を向け、
「……星の悪魔とかいうのを退治するために呼ばれたんだよな、俺?」
事実の確認を行うのだが、
「ええ。魔女の恰好をして、ね」
「はいっ!?」
対策課の依頼内容にはなかったはずの条件が盛り込まれていることを知って目を剥いた。
にっこり笑ったリーリウムが、
「理月さんならこれが似合うかしらね。少し、スカートの裾を詰めた方がいいかしら?」
などと言いつつ、やたらと露出度の高い、ベアトップのワンピースといった趣のそれを両手で掲げて見せてくれるが、
「いや、ちょ、待て、何で魔女の扮装……」
理月にとっては寝耳に水である。
青天の霹靂とはまさにこのことだ。
「ああ……そういえば、不幸なすれ違いがあって、魔女の扮装をしなければ結界内に入れないことを書き忘れていましたね。つまり、この衣装を身に着けない限り、悪魔退治は出来ないんです。悪魔退治のために来てくださったんですよね?」
「い、いや……それは、そうなんだが……!」
「だったら、はい、お着替えしましょうね」
「だ、だから……その……」
「理月さんはお肌も綺麗ですし、無駄毛もなさそうですから、少しお化粧するだけでとっても様になると思うわ。さぞや可愛らしい魔女っ娘になるでしょうね、楽しみだわ」
理月が心に冷や汗及び脂汗をだくだくと流していることには気づかない……というか気づいていても完全に無視する気満々の様子で、リーリウムが理月の腕を掴む。
女の細腕とは思えない怪力に、物理的に動きを封じられているから、という理由でではなく、蛇に睨まれた蛙状態の理月は逃げ場をなくして息を呑んだ。そもそも理月は押しが弱いのもあって、強引に物事を進められると拒絶できなくなってしまうのだが、それ以前に、この女王と愉快な仲間たちを相手に、何をどうやっても逃げられる気がしないのだ。
――きっと、先だってのお茶会でもそうだったんだろうな、などという諦観がチラリと根ざす。
それでも、だ。
「ま、ままま待てッ、だからって何でその衣装なんだ! 大体、俺の年で魔女ッ娘とか明らかにヤバいだろ!?」
東方系民族の常で多少童顔に見られようとも、彼は三十路を立派に過ぎた成人男子である。上背もあるし筋肉もついている。外見はどう頑張っても二十代半ばから後半程度だ。それが、何が楽しくて、あんな、羞恥プレイもいいところの衣装に身を包んで戦わねばならないのか。
ああいう格好は、青春を謳歌する若いお嬢さんがすればいいのだ。
ぶんぶんと首を横に振って拒否するものの、
「あら……じゃあ、理月さんは、ご自分が魔女の扮装をするのが嫌だからって悪魔を放置して、これ以上被害が出てもいいと仰るの?」
「うっ」
「銀幕市の皆さんの平穏と安全に比べたら、ほら、このくらい、なんともないと思いませんか?」
「い、いやそのッ、そ、それは……」
「……ね?」
反論の余地がないほどに畳みかけられ、
「うう……」
理月はちょっと泣きそうになりながらがっくりと肩を落とした。
それを、白亜と柳とが、同病相憐れむの表情で見つめている。
――そう、何にせよ、悪魔を放っておくことは出来ないのだ。
すでに少なくない数の被害が出ているのだから。
押しに弱く、強引な相手には流されやすく、また、現在銀幕市を心の底から愛している理月が、そう言われて断れるはずもなく、彼がすべての抵抗を諦めたのは当然とも言えた。
言えたが、納得は行かない。
「せ、せめてもう少し露出度の低いのはねぇのか……!」
悪足掻きをしてみるものの、小鳥のような可愛らしい仕草で小首を傾げ、にっこりと笑ってみせたリーリウムの表情からすべてを悟ってうなだれた。つまりはないということだ。
……逃げ場、一切なし。
「さあ、じゃあ理子さん、お着替えを始めましょうねー?」
神々しく輝く笑顔でリーリウムがにじり寄る。
狼に食われる子羊を想像して理月が真剣に涙をこらえたその時、
「……待て、もう少しよく話し合おう、な?」
落ち着いているようでいて実は焦りの感じられる声とともに、やや顔を引き攣らせた金髪緑眼の美青年が、満面全開笑顔のイーリスに控え室へと押し込まれて入って来る。
連れられて、ではなく押し込まれて、である。
森の娘の理不尽な怪力ぶり、そして彼のカフェ『楽園』へのトラウマぶりを如実に示すワンシーンだった。
「そもそもおかしいだろう、依頼として受けて来てみればこれ、ってどうなんだ。何で女装かつ魔女なのか、まずそこから小一時間ほど依頼者及び製作者を詰問したんだが!」
「ああ、ごめんなさいね、理月さんにもお詫びしていたのですけれど、不幸な行き違いがあって、依頼文に、魔女の恰好をしていないと悪魔のいる空間に入れない、という記述を入れるのを忘れていたんです。でも、シャニ……ではなくてシャノンさんも、悪魔退治のためにここに来てくださったんですよね?」
「いや、それはそうだが。というかシャニィじゃないからな」
「あらごめんなさい、つい。でも、だったら、仕方ないわ。被害が広がらないうちに、早く済ませてしまわないと」
「その輝くような笑顔に思わず怯みそうになる俺は未熟なんだろうか。その不幸な行き違いもわざとのように思えるし。まぁ……確かに今日はハロウィンだし、仮装は仮装で構わないが……魔女はどう考えてもおかしい気がするんだがな。……これも仕事か。……しかし、何故かここに来ると女装させられることが多いような気がするんが、うん、気の所為だよな……」
何か、一生懸命自分を納得させようとぶつぶつつぶやく彼には見覚えがある。
「シャノン……あんたまで!?」
しばらく前、ともに死地を潜り抜けた仲である吸血鬼ハンター氏の登場に、彼がこれから受けるであろう仕打ちを想像して理月はまた涙をこらえた。……もっとも、シャノン・ヴォルムスは非常に女性的な顔立ちをしているから、少なくとも自分の数倍は似合うだろうと思いもするのだが。
そろそろ自分たちはカフェ『楽園』被害者の会か何かを立ち上げるべきではないか、とすら思う今日この頃。
「……理月か。白亜に柳まで……これは何かの呪いか……?」
着々と魔女ッ娘化している理月に気づいて、ふっとニヒルな笑みを浮かべてみせるシャノンだが、隣ではイーリスが彼のジャケットを問答無用で脱がしにかかっている。まったくもってしまらない。
「呪いっつか、運命なのかもな……」
理月も同じくニヒルな笑みを浮かべてみせるものの、すでに露出度の高い魔女ッ娘衣装にお着替え完了★ な今の状況では、何を言ってもまったく説得力がない。
そしてもちろん、森の娘たちがそれらを斟酌してくれるはずもない。
「さあシャニィちゃん、お着替えしましょうね! 長いスカートなんて履かせて戦い難くなると困るから、露出度は高い方がいいかしらね、やっぱり」
「待て、それはそれで色んなものが心配で戦えなくなるだろう!?」
「あら……大丈夫よ、シャニィちゃんも理子さんと同じで脚が綺麗だから。チラリズムと言ったかしら?」
「何がどう大丈夫なのか理詰めで説明してくれ……ッ!」
血を吐きそうな表情でシャノンが突っ込むが、森の娘たちの前にはすべてが無意味だった。
イーリスがシャノンを剥いている間に、リーリウムがウエスト切り替えのカシュクールワンピースを手に、逃げ場を塞ぐかたちで歩み寄ってゆく。恐ろしくハタ迷惑な連携プレイだ。
ワンピースはパフ&バルーンスリーブのふんわりとした仕上がりで、その下にインナーキャミワンピースを着るのもあって、他の四人に比べればまだ露出度は低めだが、膝上数センチというスカートの裾の短さは、仮にも男性であるシャノンにはちょっとした試練だろう。
リーリウムの手には、十センチはあるのではないかと思しき踵のロングブーツと、緑色の鉱物が伺える大粒のラウンドクリスタルを連ねて作られたネックレスもある。魔女っ娘シャニィちゃんのアクセサリだろう。
「ま、まさか、それを……」
「うふふ、とっても似合うと思うわ。ねえイーリス」
「ええ。リーリウムは何でも作ってしまうからすごいわね」
「だって……漢女の皆さんを美しく飾って差し上げたいんですもの」
「そうね、とっても素敵なことだわ」
「頼むから人の話を聞いてくれ……ッ!」
無論、それで彼女らが手を止めるはずもなく。
悲痛ですらあるシャノンの悲鳴のあと、すぐに、魔女ッ娘シャニィちゃんが一丁上がり、となるのだった。
2.エンシエントと明けの明星
確かに、そこへ入り込むのにさしたる苦労はなかった。
肉体的には、という意味だが。
「荒野、と、言ったところか」
しかしながら、どんなに目にしみ、また心に沁みる恰好であれ、そこが戦いの場となれば話は別だ。
魔女っ娘シャニィちゃんことシャノン・ヴォルムスは、油断なく周囲を見渡しながら気配を読んでいた。
またしても女装させられた衝撃で忘れそうになるが、この閉鎖空間に住まう悪魔は、すでに、数十もの人間の生命エネルギーを貪り食っている凶悪な魔物なのだ。例え彼が強い力を持つヴァンパイア・ハンターだとしても、油断していい理由はどこにもない。
「……どこに、いる?」
妙に底冷えのする声でつぶやくのは、道中、自分がこんな目に遭うに至った原因である星の悪魔に対する恨みをぶつぶつとこぼしていた白亜だ。
白亜とは以前、とある擬似空間において、小国を守るためにともに戦った仲でもあるシャノンだが、実は彼が、儚げな外見に似合わぬ黒さと容赦のなさを持っていることを知っている。
「何か……すでに切れてねぇか、白亜」
どうやら、白亜と同じく十対千という荒唐無稽な戦いをともに潜り抜けた仲である理月も、同じことを思っていたらしく、シャノンの隣に並んだ彼がこそこそと耳打ちしてくる。
シャノンは小さく頷いた。
「まぁ、気持ちは判る。女王や森の娘たちに怒りをぶつけても仕方ないと判っているからこそ、ああして、直接の原因になった悪魔とやらにその矛先を向けているんだろう。と、いうか、そうするしかないだろうが」
「……正直、俺も同じ気分だしな。あんたもだろ?」
「当然だ」
顔を見合わせ、こっそりと溜め息をつく。
その背後では、ひっきりなしに溜め息をこぼしつつ、ゆきになだめられながら柳が足取り重く歩いている。柳の肩の動物、名をクダラと言うらしい管狐が、なにやら色々と励ましの言葉を口にするのだが、柳にはあまり慰めになっていないようだった。
ゆきは、座敷童子という幸運を呼ぶ妖怪で、本来の姿は童女であるらしいのだが、今回は、戦いに赴くに子どもでは不便だろうと、どこかの王子を手伝った時にもらったというアイテムでもって、大人の女性の姿に変身しているらしい。
「すべて終わればすぐに着替えられるんじゃよ。頑張るしかないじゃろう、柳」
「そ、それは判ってるよ。判ってるけど、何かもう、ツッコミ不在のこの状況下において、言葉に出来ないくらい打ちひしがれる程度のことは許されてしかるべきだと思うんだ……!」
「ああ……うむ、まぁ……その、実はわしも、魔女の衣装なら何もそんなに露出度を上げなくとも、と思いはしたのじゃが」
「……突っ込んでくれたらよかったのに。女の人の言うことなら、あの人たち、結構聞いてくれるから」
「いや、リーリウムとイーリスが、有無を言わさぬ勢いで楽しそうじゃったから、こう……何というか、口を挟むのも申し訳ない気がして来て、突っ込むタイミングを逃してしまったのじゃよ」
「気持ちは判るけど、そこをもう少し頑張ってほしかった……!」
血を吐くような柳の言葉に、胸中で思い切り同意しつつ、シャノンは、弾むような足取りで前を歩く、森の娘の筆頭・リーリウムの後姿をこっそりと伺った。
五人と同じく魔女の扮装をした彼女は、姿かたちだけ見れば輝くように美しい。――中身を見ると、輝くように黒いのだが。
リーリウムは、五人が妖幻大王真禮(シンラ)に言霊を借りたあと、一刻も早くこの地獄を終わらせようと、速やかに現地へ向かうと言うのへ同行を申し出、悪魔退治の一員に加わったのだ。
前々回の阿鼻叫喚お茶会において、ちょっとしたハプニングというかアクシデントで後頭部を打ちそうになったのを助けてもらったこともあるし、シャノンは、ものすごい苦手意識――と言うよりある種の恐怖感かもしれない――を持ちつつも、恐ろしい怪力を誇る彼女がいることは助けにもなるだろうと思っていた。
「……なんか、空気が重たくなったな」
不意に、ぽつりとつぶやいたのは理月だ。
六人全員がおそろいでまとっている黒いマントの下に、ベアトップのミニワンピースに編みタイツ、刺さったら痛そうなハイヒール・サンダルという出で立ちで美脚披露中の理月は、身体つきが細身なのと、メイクが巧みだったこともあって、ちょっと雰囲気が厳つい美女、といった趣に大変身している。
鏡を前にした本人は死にそうな顔をしていたが、一撃で男とばれて後ろ指を差されるよりはマシ……だろうと思う。多分。
「何か、来る」
理月の言葉に頷いた白亜が、荒涼とした野原、ひたすら涸れ果てた大地の向こう側に鋭い眼を向けた。
ごぅん、という、鈍い音が響く。
どこかから哄笑が聞こえてきた。
「……?」
それは、徐々に大きさを増してゆき、やがて、彼ら六人を包み込むほどになった。狂的な、嘲笑的なそれは、確かに強大だと思わせる力と、醜悪な歪みとを含んでいる。
『ようやく会えたな……エンシエントども! わざわざ殺されに来るとは、いい心がけだ!』
唐突に、目の前に広がった暗雲のようなものが、空気を震わせるかのごとき雷声でそう言った瞬間、六人の魔(漢)女たちの前に、雄山羊の頭部に屈強な人間の男上半身、雄山羊の下半身と大きなコウモリの翼、そして蛇の尻尾を持った、身の丈三メートルはあろうかという怪物が顕れ、六人を見下ろした。
『彼』がまとう、黒く濁ったエネルギーは、醜悪ではあったが間違いなく強力だ。
悪魔はなおも哄笑を続けていた。
『千年もの間、貴様らに封じられ、舐めた辛酸、忘れはせぬぞ!』
何のことかさっぱり判らないが、とにかく悪魔は、魔女、エンシエントと呼ばれる存在に、過去、ひどい目に遭わされたものであるらしい。千年といえば、さすがのシャノンにも結構な時間だが、その長い時間を封じられていたということだろうか。
そんなことを考えつつ、シャノンが、高らかに笑う悪魔を見上げていると、
「ええと、補足です」
少々腰の引けた状態で、柳が声を上げる。
「『目』を開いて、この映画を調べました。タイトルは『堕星の悪魔』、ものすごーくマイナーな映画みたいです」
「ふむ、それで?」
「ええと、星の悪魔と呼ばれる彼は、悪さをして、エンシエントと呼ばれる魔女たちによって千年間封じられていたんですが、ある時封印が解け、地上に復活します。魔女たちへの復讐を行うべく、あちこちで人間の精気を吸ってはパワーアップして行った彼は、転生を果たした魔女たちを追い求め、その息の根を止めるため彼女らに戦いを挑む、と言ったお話だそうです」
「っつか俺ら別に魔女の転生した姿でも何でもねぇぞ。いきなり名指しされたけど」
「えーとですね、作中でも、黒いワンピースを着ているとか、とがった帽子を被っているとか、そういう、『魔女っぽい』恰好をした女性なら誰でも襲っていましたから、彼にとっては魔女の恰好をしているだけでストライクなんですよ多分」
「そんな安易な。こういう話なら、定石として、魂の輝きで判るとかそんなんじゃねぇのか」
「残念ながら違うみたいですね。悪魔が、『食事』も兼ねてしらみつぶしに探した所為で、結構な被害が出たらしいですよ」
「……馬鹿じゃねぇのか、星の悪魔って」
その馬鹿さの所為で魔女っ娘になってしまった漢女たちを代表して、ごくごくストレートに理月が断言すると、悪魔の額に青筋が浮かんだ。案外怒りっぽいらしい。
『よくもまァそのような大言壮語が吐けるものだな、この明けの明星、ルシファー様を前にして!』
「なるほどルシファー……それで、星の悪魔か。だが、その恰好はどうも、ルシファーというよりはバフォメットだな。スタッフの勉強不足なのか、それとも適当なヴィジュアルを引っ張ってきただけなのか……」
「何にせよ、あまり恰好よくない」
とにかく、自分たちが女装させられる羽目になったのはこの星の悪魔の所為なのだ。皆の声がとがるのは当然だったし、穏便に開放されるためには彼を倒さなくてはならないこともよく判っているから、全員……というか基本的に戦闘要員であるシャノン・白亜・理月は、最初から殺る気満々だった。
とはいえ、悪魔の精神を逆なでするような物言いは、決して作戦などではなく、単純に口から零れ出た素直な内心だったわけだが、無論悪魔がそれを見逃してくれるはずもない。
『貴様ら……よほど死に急ぎたいと見えるな……!』
地の底から響くような声とともに、大地が鳴動し、悪魔の周囲の闇がざわざわとざわめいた。
それを目にして、柳がもうひとつ、と付け加える。
「どうもこの映画、その……」
「その、どうした?」
「ええと、いわゆる、ちょっと特殊なアダルト系だったらしくて」
「ん? 何だ、単純な娯楽ファンタジー映画とかじゃねぇのか。……って、もしかして、女が襲われたってのは」
「はぁ。僕未成年なんで、その辺り全部『目』を逸らしちゃいましたけど、そういうことみたいです。それでですね」
「うん?」
「その、結構マニアックにアダルトな世界観で」
どう説明すべきか言いあぐねているらしく、柳が一瞬考え込む。
ざわざわ、ざわざわ。
その間にも、悪魔を取り巻く暗闇は蠢き、やがて、
「――……基本的な攻撃手段が、『闇』を操っての触手らしいんですよねー」
彼がそう言うと同時に、ミミズ、芋虫、蜈蚣、その辺りを髣髴とさせる気色の悪い触手となって、六人に襲いかかって来た。
「……美しくない」
ぼそり、と白亜がこぼし、
「確かに、あまり触りたくはないかたちじゃのう」
大して動じていないゆきが首を傾げ、
「いくつかレビューとかも漁りましたけど、あれに魔女たちが襲われる姿がたまらないって、マニアには受けがいいらしいです。っていうか、魔女の恰好してたら男でも襲うのかなぁ、あれ。想像して嫌な気分になったんですけど」
柳がぐねぐねと蠢くそれへの嫌悪感を覗かせて言い、
「……マニアックなのか、それって? 何にせよ、悪趣味だよな」
この世界のツボはよく判んねぇ、と理月がつぶやき、
「つまるところ、一刻も早く倒せ、と、いうことか」
シャノンはそう言って、言霊の存在を脳裏に思い浮かべた。
「……そう、だな」
白亜が、ゆきが、柳が、理月が頷く。
誰もが、迫り来る不気味な触手たちを、特に恐れるでもなく見つめていた。
シャノンもまた、今更こんなことで驚き、また怯えるような精神を持ってはいない。
3.謳うコトノハ
「不愉快だわ」
唐突にこぼしたのは、リーリウムだった。
彼女の手に、いつの間にかすらりとした長剣が握られていることに気づいて柳は首を傾げる。一体どこに持っていたのだろうか。
「リーリウム、あんた……」
「こんな、醜悪で不細工な生き物が、かの麗しき魔王陛下と同じ名前を持っているなんて」
『何だと、貴様……』
「わたしを食えたものじゃないとか抜かしてくださった恨みも込めて、早く、殺してしまいましょう」
にっこりと黒く笑い、リーリウムが走り出す。
――その足捌きは、素人のものではない。
「危ねぇって、リーリウム!」
迫り来る触手へと突っ込むリーリウムに色をなし、同じく腰から『白竜王(ハクリュウオウ)』を引き抜いた理月がそのあとを追う。
ぞわり。
『食らい尽くしてしまえ!』
星の悪魔が優越感たっぷりに命じると、触手はリーリウムと理月、双方を取り囲み、まるでおぞましい津波のように襲いかかったが、
「――……なるほど、こいつには物理攻撃無効化属性は、ねぇのか」
白銀の閃光が二条(ふたすじ)、薄暗闇を貫き、
「ええ。だとすれば、恐れるまでも、ないでしょう?」
理月とリーリウム、それぞれの得物によって、触手は半ばから切断され、斬り刻まれて地面に散らばると、すぐに暗闇へと溶けて消えて行った。
凄腕の傭兵である理月はともかく、映画内では戦闘など一度も携わらなかったはずのリーリウムの腕もまた素晴らしく、理月の剣閃が牙を剥く銀の月光ならば、彼女の剣閃は、まるで白い雷光のようだった。
「……いわゆるスカートの裾が気になって、ちょっとばかり動き辛いんだが、これ……」
悪魔から距離を取った理月が珍妙な顔でぼやく。
「あら、大丈夫よ、とっても素敵だもの」
「……何がどう大丈夫なのか、詳しく説明して欲しいような、して欲しくねぇような」
相変わらずヒトの話を聞かないリーリウムに、理月が溜め息をこぼした。そういうところは緊張感皆無と言ってもいい。
戦闘となれば引き締まるのが、彼らがプロである所以なのだろうが。
『ぬ……』
悪魔は一瞬渋い顔をしたが、
『少しはやるようだが……これは我が付属物だ。我を斃さぬ限り、幾らでも復活する。疲弊し力尽きるまで、存分に踊るがいい!』
すぐにそう高らかに宣言し、再度触手たちを呼び起こしてみせた。
触手の先端が節足動物さながらにさわさわと蠢いている様子などは気色悪いの一言に尽きる。
が。
「つまりは、本体をさっさと叩け、ということだな。では、この怨み……存分に晴らさせてもらう」
魔女ッ娘衣装を無理強いされたことで相当切れていると思しき白亜が、少女めいた繊細な美貌に似合わぬ凄惨な笑みを浮かべ、
「それの足止めをお願い出来るだろうか?」
理月とリーリウムのふたりが頷き、黒々とした津波へ再度挑みかかるのを確認したあと、宙に指を掲げ、素早く呪文の詠唱に入る。
――真禮に借り受けた言霊は、自然と、まるで感情のように、魂の奥底から必要な『言葉』を浮かび上がらせる。使用者は、それをなぞるように印を切り、音のある言葉として紡げばいいだけなのだ。
『暁閃よ。金環蝕よ。天より降り、貫き打ち据える金光よ』
ぱりぱりぱりッ。
白亜が淡々と呪文を紡ぐと、暗澹たる空を黄金の光が奔った。
その隣に、少し腰の引けた柳が並ぶ。
彼は、頼もしいような、眩しいような、困ったような目で、舞うように触手を斬り払い、斬り捨ててゆくふたりの後姿を見つめつつ、
「僕は……攻撃とか、怖くて出来ないから。皆さんの補助に回ります、
そう言って、指を宙に滑らせた。
『腕(かいな)よ。そは抱擁、高める檄、扶け手の銀輪なり。同胞(はらから)を奮起せしむる言祝ぎなり』
柳は、どんな場面であれヒトを傷つけることが怖い。
自分が死を恐れているから、他者にそれを与えることができない。
それは、相手が、すでに何人もの被害者を出した悪魔であっても変わらず、だからこそ彼は戦闘要員になり得ない。
しかし、この場にあって、そんな悠長なことを言っている場合ではないのもまた事実だ。彼らが敗れれば、また、
巻き込まれたに均しい関わり方であっても、彼はリーリウムにそれと望まれてここへ来た。柳は、その期待を裏切れないと感じる。
『魂よ昂揚せよ、聖戦のために』
一番最初に完成した柳の魔法は、絹のように滑らかな青光となって、この場にいた『魔女』たち全員を包み込んだ。
「ええと……魔力増幅の補助魔法を使ってみました。攻撃魔法の威力が上がると思います」
それだけ言うと、次に、個人個人の防御力を上げるべく、再度呪文を紡ぎ始める。
言霊とは、高濃度の霊的エネルギーであるという。
なるほど、それが全身を巡る柳の身体は、心地よい熱気に包まれている。
くすり、と笑い、目だけで礼を言った白亜が、ひとつめの魔法を完成させる。
『天上より堕ちよ、金雷の一矢よ』
掲げた腕を鋭く振り下ろす。
瞬間、天が眩しく輝き、
バシイイィッ!
耳をつんざくような轟音とともに一条の雷光が奔り、星の悪魔を直撃した。
『ぐ……!?』
防御にと折り重なった触手をやすやすと打ち砕いたそれは、柳の補助魔法によって威力を増していたこともあって、悪魔の角を一本、粉々に打ち砕いた。砕けた角は、地面に落ちるや否や、黒いしみとなってどろりと溶け、消えてゆく。
『き、貴様ら……』
ぎりりと歯噛みした悪魔が背中の翼を大きく広げ、羽ばたかせる。
と、彼の周囲を渦巻いていた暗黒が、全長三メートルを超えようかという大蛇の群となって、呪文を紡ぐ魔女たちへと襲いかかった。蛇は恐らく、百匹を超えていただろう。
その動きは滑らかで素早く、黒々とした蛇の群が迫るのを目にして柳は思わず身体を硬くしたが、
『舞い飛べ、炎燕。貫け、水鶫。浄化の琴弦を震わせよ、静謐なる空と清冽なる水辺のために』
ゆきの声が朗々と響くや否や、炎と水から生み出された数百羽の小鳥たちが蛇の群と悪魔目がけて一直線に飛び、その熱い、鋭いくちばしで蛇の津波を散々に突き崩し、貫いて、燃やし尽くした。
『ぐ、ぬ……!』
小鳥の中には、勢いを失わず、そのまま悪魔に激突し、その大きな身体を貫いたものもあった。
悪魔が顔をゆがめる。
何かにひびが入る、ピシリという音が聞こえた。
「……やるじゃねぇか」
見事な一撃にヒュウと口笛を吹き、『白竜王』を一閃させて触手を斬り払いながら、理月もまた脳裏を奔る言葉を音にする。
白亜が雷の雨を降らせ、悪魔をよろめかせた。
かと思うと、次の瞬間には刃と化した白雷を解き放ち、悪魔の翼を片方、ばっさりと抉り取る。
――ひとりが使える言霊は多くても五回。
それを過ぎると、肉体が負担に耐え切れなくなってしまうと、言霊を借り受けるとき真禮から聞いたのに、随分な飛ばしようだ。
よほど怒っているらしい、と、悪魔の咆哮を聞きつつ理月は胸中につぶやき、
『闇の華よ。蝕む穴、飲み込む顎、引き裂く鉄爪よ』
『白竜王』を指の変わりに宙に滑らせ、印を切る。
老人の姿をした精霊を召喚した柳が、『彼』を使役して、魔女たちの身体能力の底上げを図る。
ふわりとした浮遊感のあと、身体が軽くなったのが判る。
魔法ってのも悪くねぇ、などと胸中に笑い、理月はそれを開放した。
『謳え、崩壊の惨歌を』
ずろり、と、理月の足元から顕れた鈍い闇黒が、悪魔の影を捉え、その影を食らって行く。
――影は、魂の座する場所であるという。
『ぐ、が』
ぱきぱきと硬い破砕音がした。
炎の小鳥を再度召喚したゆきが、それを真正面から突撃させる。
白亜が再度詠唱に入った。
すでにその息は上がっているが、そんなことはどうでもいいらしく、頓着する様子もない。
『迅雷よ、閃光よ! 打ち砕く千なる聖閃よ』
そこに巨大なエネルギーを感じ、理月はリーリウムと目配せを交し合うと、触手の追撃を退けながら悪魔の傍から離れた。
と、先刻まで沈黙を守っていたシャノンが、
『疾(と)く来たれ、疾く降れ。黄昏を、呪毒を、業敵を撃ち伏せよ』
白亜のそれに、己が詠唱を唱和させた。
――この一撃で悪魔の物理攻撃無効化属性を打ち砕く気なのだろう、言霊が持つすべてのエネルギーを込めるつもりだ。
白亜が目をわずかに笑みのかたちにし、シャノンを見遣った。
シャノンは涼しい顔で、長い指先で宙を撫でる。
空を、清冽な白銀の光が奔った。
そこに含まれる神威を、壮絶なるエネルギーを、恐らく悪魔も感じ取っただろう。
『き……貴様ら……ッ!!』
すでに角と翼を片方ずつ失い、身体のあちこちに穴を開けられた無残な姿で、怨みと憎しみを込めて悪魔が吼える。
――千年もの時間を封じられた、その苦しみなど、当事者以外誰も理解できないだろう。悪魔の憎しみ、恨みつらみなど、彼らには真実理解することは出来ないだろう。
だが、悪魔が、映画でも、この街でも、不特定多数の誰かを傷つけ、苦しめてきたということもまた確かな事実だ。
否、その事実が厳然として存在するがゆえに、この中の誰もが、悪魔のための憐れみを持たない。
『雷神よ、神なる槍を遣わせよ』
白亜とシャノンの声が美しいハーモニーを奏でる。
白銀の光に照らされたふたりはどこか神々しい美に満ちていた。
『降れ、白雷の槍よ』
完成は、一瞬。
そして、
ごぉん、ど、どおぉお……んッ!
轟音とともに、滝か豪雨を思わせる激しさで、鋭い眩しさを伴った雷の槍が降ったのもまた、一瞬のことだった。
あまりの大音響に、周囲の音が一切かき消される。
あまりの眩しさに、周囲の色が一切かき消される。
悪魔の悲鳴、もしくは絶叫もまた、誰にも聞こえなかった。
悪魔がいつ倒れたのかも、誰にも見えなかった。
ただ、音と光がおさまって、彼らの五感が元に戻ったとき、何かが、甲高い音を立てて砕け散ったことだけは確かだ。
4.あっけない終わり
『く、く、……ぐぐ、き、さま、ら……!』
怨嗟の声とともにようよう身を起こした悪魔は、一回り小さくなったように見えた。
彼の周囲に満ちていた黒い闇も、今はもうない。
触手はあの雷光に灼かれてしまったのか、すでに消えていた。
片方だけ残っていた角は焼け焦げて煤けており、翼はあちこちに穴が空いて、身体のあちこちがひび割れている。
『この我を、明けの明星ルシファーを……』
悪魔はみなまで言うことが出来なかった。
「誰であれ、理不尽に他者を傷つけては駄目なのじゃよ」
いつの間にか背後に立っていたゆきが、頑是ない子どもを諭すかのように訥々と言うや否や、どこからか取り出した巨大なハリセンで悪魔の後頭部を激烈な勢いで強打し、前へつんのめらせた。
すでに相当弱っていると思しき悪魔が、踏ん張りきれず、よろよろと前後へよろめくのを、
「他人を傷つけんのは平気でてめぇは駄目とか、言わねぇよな?」
「だから、かのお方の貴い御名を、汚らわしい魔物の分際で口にしないでと言っているでしょう」
口々に言った理月とリーリウムが、悪魔の右脇と左脇を駆け抜け様、ほぼ同時に袈裟懸けに斬り下ろす。
『がっ、ぐ……!』
悪魔の身体がビクン、と跳ねた、その次の瞬間。
高らかに響く銃声。
大きく仰け反った悪魔の、その額に、ぽっかりと黒い穴が空く。
悪魔の目が、大きく見開かれた。
山羊の口がぱくぱくと何度か開閉され、
「三流の魔物ごときが、俺の目の前に現れたことが間違いだ」
硝煙を立ち上らせる愛銃FN Five-seveNを両手にしたシャノンの、冷ややかな侮蔑を込めた言葉が終わると同時に、すべての力を失った巨体が、ゆっくりと地面へ倒れてゆく。
――しかし、地響きは聞こえなかった。
何故なら悪魔は、地面に倒れるよりも早く、プレミアフィルムに変わってしまったからだ。
あまりにもあっけない、劇的な変化も強大な魔として威厳もない、簡単すぎる終わり方だった。
映画がどういう終わり方だったのかは、内容があまりにも破廉恥だった所為ですべてを確かめられていない柳も含めて誰も知らないが、この分だと、大したカタルシスは期待出来ないのではなかろうか。何せ、破廉恥さを追求した映画の大半は、残念ながら、ストーリー性という大事な部分で大きく欠けていることが多い。
ともあれ悪魔は消滅し、問題は解消された。
それと同時に、ざざざっ、という、砂嵐のような音がして、沈鬱で薄暗いこの閉鎖空間も、ゆっくりと姿を消してゆき、この場所が、銀幕市の町並みとしての体裁を取り戻したのは、そこから三分後のことだった。
「任務完了、かな」
溜め息をついた柳が、アスファルトに転がるプレミアフィルムを拾い上げる。
「皆さん、お疲れ様でした。白亜さん、大丈夫ですか?」
「ああ、うん、何とか。案外疲れるんだな、言霊って」
「そうですね、僕もなんか、身体がだるいような気がします」
「本当は」
「え?」
「あいつをこう、ブーツの踵で踏み躙って鬱憤を晴らそうと思っていたのに、咄嗟に動けなくて機会を逃してしまった。残念だ……」
暑くもないのに滝のような汗をかき、息を荒らげている白亜を――そのくせ顔に似合わぬ報復行動に出ようとしていたらしい白亜を――、リーリウムが脇から支える。
――支えられた瞬間、白亜の身体が跳ね上がったような気がするが、きっとそこは指摘してはいけない部分だ。
「お疲れ様でした、亜子さん、ゆきさん、柳沙さん、理子さん、シャニィちゃん。皆さんとっても素敵だったわ、スカートの裾から、太腿がこう、チラリと覗いたときなんて、わたし、ちょっと欲情しそうになったもの」
剣を鞘へと仕舞いながら――何の変哲もないその剣が、鞘に収まった瞬間、跡形もなく掻き消えたのは、きっと目の錯覚ではないはずだ――、にっこりと美しく、晴れやかに、思い切り黒くコメントするのはリーリウムだ。
「若い綺麗な娘さんが欲情とか言うなよ頼むから! いたたまれなくな……って、尻を触るな、そこ! っつか楽しいのかそんなもん!?」
森の娘の在りようになど今更言及しても仕方のないことだが、明らかに映画内とは一線を画した黒さを垣間見せる彼女に、ものすごくいやらしい手つきで可愛いヒップを撫でられた理子ちゃんが悲鳴めいた抗議の声を上げる。
無論、うふふと楽しそうに笑ったリーリウムは、
「……せっかくだから、亜子さん柳沙さんシャニィちゃんにも触らせていただこうかしら」
若い美しい娘さんにあるまじき仕草でわきわきと手を動かし、魔漢女三人に悲鳴を上げさせただけだったが。
リーリウムが楽しそうだったのと、漢女たちの反応が面白かったので、四人には申し訳なく思いつつ、ゆきもまたくすくすと笑った。
実を言うと、長く生きてはいても『女の子』であるゆきは、こんな可愛い恰好が出来たことが嬉しかったのだ。女の子である以上、可愛い衣装への憧れももちろんある。
それに、普段無力な自分が、言霊のお陰ではあれ戦闘に参加でき、役に立てたと言う事実もまた嬉しい。
そんなゆきを微笑ましげに見つめていた――なんで男と女でそんなに扱いに差があるんだ、とは突っ込んではいけない――リーリウムが、
「ああそうだわ、ゆきさんは限定タルトを買いに来られたのよね。お手伝いいただいたお礼に、ワンホールお持ち帰りいただいても結構よ」
ふと思い出した、と言った風情で報酬を口にする。
「おお、そうなのか! では、ありがたくいただくのじゃよ、皆、きっと喜ぶ」
「え、じゃあ俺は?」
「もちろん、理月さんも、どうぞ」
「よしっ」
お土産の話ににこにこ笑うゆきと、当初の目的が果たせたことにガッツポーズを取る理月。
「柳さんとシャニ……じゃなくてシャノンさんも、よければお茶して帰ってくださいね。真禮様が、ハロウィン限定の軽食を出してくださっているから。シャノンさんにはお酒もお出しするわ、よろしければ」
「ああ、はい……まだハロウィンお茶会、終わってないですもんね。森の娘さんたちの綺麗な魔女っ娘姿を見て、今日のこの衝撃を洗い流します」
「……そうか、まぁ、なら寄らせてもらうかな……」
これでようやく仕事が果たせ、地獄が終わるのだ、と、漢女三人が安堵の息を吐き、ゆきがにこにこと笑う中、リーリウムに半ば担がれた白亜だけは、
「あの、私は特に何も要らないので、すぐにでも帰らせてもらえるとありがた――……」
「亜子ちゃんは、せっかくだから、このままお仕事に出ましょうね。だってこんなに可愛いんだもの、亜子ちゃんのファンの皆さんも、きっと喜んでくださるわ。わたしたちだけが堪能しては怒られてしまう」
「えッ!? い、いやあの、でも、今日は、本当はシフトには入っていないわけだから、」
「だって、もう、出勤簿に『一日』の判子を押してしまったもの」
「うう……」
更なる地獄が決定したようだった。
誰もが(特に漢女たちは)気の毒に、と思いはしたが、そこで口を差し挟んで自分が被害に遭いたいわけもなく、自然、白亜とリーリウムから目を逸らすことになる。
――ともあれ、悪魔は滅び、あの一画には平穏が戻った。
それだけは、確かなことだ。
その功労者が、美しき魔(漢)女たちだったという事実もまた。
5.大団円、には、ほど遠く、けれど。
柳は対策課に提出すべきプレミアフィルムを手に、魔法を使いすぎた疲労からだけではなくぐったりと打ちひしがれている白亜を見ないようにしつつ、リーリウムの隣を歩いていた。
すらりと背の高い彼女が――恐らく、理月よりほんの少し低い程度ではないだろうか――、ぴんと背筋を伸ばして歩く姿は大層美しく、それは女王や森の娘たち全員に言えることだったが、これで趣味がアレじゃなくて、性格がああじゃなかったら最高なのになぁ、などと柳は思っていた。
もちろん、今では、性格がよくてたおやかなだけの森の娘など想像もつかないが。
「……リーリウムさん」
「どうかなさった、柳さん?」
ひとつ、気になったことがあって、柳がリーリウムを呼ぶと、彼女は、可愛らしい仕草で首を傾げてみせた。
「僕、『薔薇よ密やかに』を拝見したんですけど」
「ええ」
「……森の娘さんたちって、リーリウムさんみたいに、皆さん、戦えるんですか?」
「そうね、得手不得手はあるでしょうけど、わたしたち七人を含む森の娘全員が、大抵の戦いはこなせると思うわ」
「じゃあ……どうして、」
素朴な疑問を口にしようとして、柳はハッと思い留まった。
彼女らの映画を知っているらしい面々の視線が、悼みとも興味とも取れぬ色彩を含んでふたりを見つめているのが判る。
柳は、いたたまれない気分になった。
すでに映画の中での滅亡が運命付けられている彼女らに、ならば人間たちが襲ってきたとき何故返り討ちにしなかったのか、などと、どうしてあっけらかんと問いかけることが出来るだろうか。
「いえ、すみません、何でもないです。さっきの剣さばき、すごかったですよ。とても綺麗でした」
結果、お茶を濁してしまった柳を、リーリウムは目を細めて見つめていたが、ややあって、くすりと笑った。
「わたしたちは、【混沌の時代】から【白銀の時代】において、混沌とした世界の安定のために創造神たちによって創られた対大魔用の戦闘種だったの」
「それは、どういう……」
「世界が安定し、人間たちの時代、【火と鋼の時代】がやってきたとき、すべての役目を終えて森の娘として創り変えられた。そのまま、穏やかな時代を、穏やかに終えるようにと」
リーリウムに担がれた白亜が、何とも言えない目で彼女を見ている。
「でも、」
「ええ」
柳の言いかけた言葉をさらい、リーリウムが頷く。
「人間は増えすぎ、力をつけすぎ、そして傲慢になりすぎた。旧時代で役目を終え、あとはゆっくりと消えてゆくだけだったわたしたちや、他の神聖生物たちは、彼らによって駆逐されるの。そういう運命なのよ」
どこか他人事でもあるそれに、理月が苦笑した。
「……なんか、随分、達観してるんだな」
「ええ、だってわたしたち、驚くほど長く生きているんですもの」
「だが……だからって、容易く滅ぼされてやる必要はなかっただろう」
「そうね、それは少し残念に思うわ。せめて誰か生き延びて欲しかった、とも。でも、人間たちによって自ら立つ【火と鋼の時代】は世界と神々が目指した収斂のかたちなの。わたしたち神聖生物の誰もが――ああ、わたしたちを愛しすぎたレジィ様を除いて、だけれど――、共存出来ない運命を嘆きこそすれ、憎んだり恨んだりすることはなかったのよ」
柳は現代ホラー映画出身のムービースターだから、彼女らのいるようなファンタジー世界についてはよく判らない。それらしい本や漫画、映画を見て、それらしい知識を持っているだけだ。
だから、住処を追われ狩られて生存を脅かされながらも、人間という暴君を恨まなかった神聖生物たちの気持ちは判らない。彼らが自分の足で立って歩くための犠牲になることを厭わなかった彼女らの気持ちは判らない。
――そして、だからこそ、理解する。
今の彼女らが、こんなにも強靭で、活き活きと腹黒い理由が理解できる。
「なるほど。自世界の理の及ばぬ銀幕市ならば遠慮は要らない、か」
苦笑交じりのシャノンの言葉は、真実の大半を言い当てていただろう。
リーリウムがにっこりと笑った。
「ええ。この町はわたしたちにとって仮寝の夢。わたしたちはわたしたちの運命をしばし忘れて、心地よい幸いに微睡むことが出来るわ」
柳は銀幕市に実体化できてよかった、と思うことの方が多いが、この町の歪みを、この町に実体化してしまった己を、それを為したリオネを、ひどく、深く憎むものも少なくはないという。
それらの感情の齟齬が、深刻な事態を引き起こしているのもまた事実だ。
しかし、
「……気持ちは、判る。私もまた、仮宿に立ち寄っただけなのだろうと」
「そうじゃな。だが、この一瞬一瞬を、こうして交われた幸いを、忘れたくはないとも思うのじゃよ」
「そうだな……ここに来たお陰で得たものもたくさんある。それって幸せなことだよな?」
「……否定はしない」
少なくとも、こうして今ここにいる現実を、この奇跡を、柳は否定してしまいたくないのだ。今、この場に集った誰もがそう思っているように。
「僕も、そう思います。せっかく、こうして今ここにいるんだから、享受しなきゃ損ですよね!」
柳が力を込めて言うと、あちこちから同意の声が返った。
終わりはいずれ来る。
だからこそ、大切にしなくてはならないものが、今の銀幕市には満ちている。
――カフェ『楽園』が見えた。
店は、今日も、よく賑わっているようだ。
「さあ、お茶にしましょう。今日のタルトもまたサリクスの傑作よ、楽しんで行ってね」
リーリウムの言葉に、皆が頷く。
太陽は徐々に、西へと傾いてゆくようだった。
――などと少ししんみりしつつも、結局人手が足りず、店に入ったところを女王に見つかって、あらちょうどよかったわ、などと、着替えることすら許されず魔女っ娘のままで全員駆り出され、血涙とセクハラにまみれながら接客に駆け回らされるのが、いわゆるカフェ『楽園』クオリティなのだが。
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クリエイターコメント | 皆さん今日は、シナリオのお届けに上がりました。
女装と魔法バトルという、趣味を詰めこんだお話になりましたが……いかがでしたでしょうか。呪文を考えるのは、バトルを考えるのと同じくらい楽しいです。全部捏造ですけどね。
ともあれ、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
そして、リーリウムの同行をご要請くださった方がおられたお陰で、森の女王と愉快な仲間たちが何故この銀幕市においてここまで伸び伸びと黒いのか、その理由をお披露目することが出来ました。その節はどうもありがとうございました。
そんなわけですので、この先もカフェ『楽園』は甘味好きにとっての天国であると同時に、殿方にとっての地獄であり続けることでしょう。 仕方ねぇ巻き込まれてやるか、と、渋々でも仰る漢女の皆さんの、これからのシナリオへのおいでをお待ちしております。
それでは、また、次なるシナリオでお会いいたしましょう。 |
公開日時 | 2007-10-31(水) 21:00 |
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