★ 神さまたちの夏休み ★
イラスト/キャラクター・背景:ミズタニ


レディM:
この街では騒動は絶えないけれど……。
あれもおかしな事件だったわよね。はじまりの前に、そう――、8月になったある日、私が、広場で郵便配達みたいな人に会ったのだったわ。



★???
あのう……、すみません。

(郵便局員風の男が話しかけてきた)

レディM:
何かしら?

★???
綺羅星ビバリーヒルズって……、どっちの方向ですかね?

レディM:
それならあっちのほうだけど……。

★???
あ、そうですか。ありがとうございます。

(男は、ぼんやりと、光のようなものに包まれている)

レディM:
……。あなた、郵便配達?

★???
ええ。配達です。このへんは来たことがなかったんで、迷っちゃって。柊さんってお宅はすぐわかりますかね?

レディM:
市長の家ならすぐわかると思うわ。市長に配達なの?

★???
いえ、柊さん気付でリオネさんに。……じゃ、私はこれで。

(ふわり――、と男は、まるで月面でジャンプするように跳躍すると、そのまま青い空へ消えてゆく。レディMは、男の履物に、羽根が生えているのを、その時、見たと思った)


レディM:
どうもあの配達人は、リオネに、神さまの世界(なによ、それ?)からの手紙を届けに来ていたみたいね。



 それは、何の前触れもなく、唐突にやってきた。

 銀幕市タウンミーティングがいったん終了となり、アズマ研究所の件はいまだ片付かないものの、あとはどうあれ先方の出方もある。
 そんなときである。リオネが勢い込んで、柊邸の書斎に飛び込んできたのは。
「みんなが来てくれるんだってー!」
 瞳をきらきらさせて、リオネは言った。嬉しそうに彼女が示したのは、見たところ洋書簡のようだった。しかし郵便局の消印もなければ、宛名書きらしきものも、見たことのない文字か記号のようなものなのだ。
「……これは?」
「お手紙ー」
 市長は中をあらためてみた。やはり謎の文字が書かれた紙が一枚、入っているだけだった。
「あの……、これ、私には読めないようなんだけど……」
「神さまの言葉だもん」
「……。もしかして、お家から届いたの? なんて書いてあるのかな」
「みんなが夏休みに遊びに来てくれるって!」
「みんなとは?」
「ともだちー。神さま小学校の!」
「……」
 どう受け取るべきか、市長は迷った。しかし、実のところ、リオネの言葉はまったく文字通りのものだったのだ。
 神さま小学校の学童たちが、大挙して銀幕市を訪れたのは、その数日後のことであった。



レディM:
そのあと、神さまの子どもたちがやってきて、いろいろな事件が起こったわ。詳しくは銀幕ジャーナルのバックナンバーを調べたら記事があるから、興味があるなら読んでみるといいわね。でもね、このときやってきたリオネのまたいとこの女の子が……あとで、とんでもないことをしでかすのよね……。

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