/スレッド省略表示

«前へ 次へ»

2件みつかりました。1〜2件目を表示中

[24] 【Zwei Magier】(ディラドゥア・フブキ)
ディラドゥア・クレイモア(czch7434) 2011-11-30(水) 06:31
(蒼空は時として綿菓子の如き無垢を生み出し、美しい生命の輝きを見せる。
 鳥のさえずりが耳に優しく語りかければ、独特の澄んだ風が肌を撫ぜる。
 そして、視界を下に移せば霊峰は雪を被り、裾野にはまた深い緑の森が映える。
 竜種の者ならば、その世界に引き込まれない者も少ないのだろう。
 ――その世界の名は、竜世界ヴォロス。

 その蒼空に抱かれるが如き白亜の演舞台は、様々な美を生み出す揺り篭。
 揺り篭に抱かれた武人たちの様々な種は様々な舞台を演じていく。
 その中の一幕。そこに立つ二人の奇術師の存在は奇異の目を引くのだろう。
 片側に目を運べば緑鱗に燻したが如き銀の入った鱗を持つ戦場の奇術師が。
 そしてもう片側に目を運べば、穢れ無き無垢を纏う鰐獣人がそこに立つ。
 緑銀鱗の戦場の奇術師と、それに対比するかのごとき癒し手の白無垢。
 それは、攻守という意味においては幸運なる出会いであると共に、
 敵からすればまるで悪夢の如き取り合わせなのだろう。
 その並び立つ2つの戦人の視線は、音の波ならぬ2つの魔の波形として共鳴する。

 白き魔力の波が2つ、双方互角とも言うべき異質なそれを抱き、立つ。
 強大なる魔の波形を双方浴びながら、ハウリングを楽しむかのように。
 両者の立ち居振る舞いには貴種のそれを感じさせるものがあるが、
 一方ではまた、戦場に立つ者としての鱗片も隠すことはない。
 その主人達は視線をしかと双方で切り結びながらも、表情は笑んだままで。
 魔力の高まりを確認した緑銀鱗の戦場の奇術師は、切り出した。)

「魔術決闘の作法は事前に伝えたとおりだ。
 あくまで演武で有ることは兼ね承知の上で、限界まで実戦に近づけよう。
 それでは、問おうか。 ――Are You Ready?」

「Okay.では、開演といこうか。
 偽りの戦場で舞おう。その時君は、美しい」

(返答が交わされ、それを引き金にするように魔術決闘の儀礼が行われれば、
 体はすでに戦場に立つ者の気品を感じさせているのだ。
 礼が終われば、永遠の白を纏う癒し手は右手の篭手に透き通る氷の刃を顕現させ、
 緑銀の奇術師はその手に幾つもの歴史が刻まれたであろう古い剣を召喚する。
 プロセスのさなかにも相互の口に動きはなく、また瞳の中に優しさを滲ませることもない。
 ただ、語られずともそこにあるのは、英雄が綴る叙事詩(サーガ)。
 双方の準備整う時、仮初なる戦場の幕もまた花開く。

 袈裟懸けに掛けられた白銀の刃が打ち鳴らされ踊ったのは、
 その儀礼より数瞬を要する事無き合間のことだった。
 打ち鳴らされるもつかの間、横薙ぎの斬撃が銀鱗の奇術師より飛び、
 それをまた白無垢を纏う癒し手が紙一枚の感覚の所で躱していく。
 そして、それに呼応するかのごとく更に凍気の槍が癒し手の手から放たれ、
 それを受け取った銀鱗の奇術師が魔術の力でそれを砕き、行動を止める。
 粉砕された氷の欠片が宙を舞い、美しい戦場のタペストリを織り成す中で。
 間断を許さぬ戦人の行動が感覚を開けさせることもまた、ないのだ。

 双方の肉体が躍動し、乱撃の刃が踊っていく。
 時として火花を散らし、時として一枚の絵を見るかのごとく踊る。
 一歩も譲らず、打ち鳴らされる音叉の間を薄氷一枚で双方潜り、共に舞う闘舞。
 それは、双方の技術が相応に揃い、また息が合わねば行うことも叶わぬ世界。
 技量の純粋なる拮抗を生み出す武人の御業だ。

 精緻で、時として機敏なるが如き技の数々。
 時に青や黄、赤の魔力が飛び、そして銀鱗の奇術師もそれに呼応するように、
 また魔術による対応の形で打ち消しては返す。
 太極図の如き乱撃と魔のつばぜり合いは、まさに芸術そのものだ。
 その中で、交わされる数瞬の目線。それは、双方の対話の構図。
 その会話の中で、全ての流れの決定を行なっていくのだ。その中で。)

『そろそろ終幕と行こうか』

(白の癒し手はそう、目で伝え。緑銀の奇術師も、それに答える。
 癒し手は残りのマナを全て凍気のそれに変え、呼気を整え詠唱に移る。
 一つの言葉は何重にも重なり、共鳴し、
 互いに互いを引き立てては更に新たな詠唱を呼ぶ。
 繰り返される言霊の中、それにより生み出される無数の凍気の矢が、宙に浮かんでいく。
 そして、その無数の矢が宙に浮き、癒し手の意を汲んで宙に形作る時。
 その撃鉄の引き金は、引かれるのだ。一つの言霊によって。)

――『連続詠唱/凍気の矢』(チェーン・キャスト/アイス・ボルト)

――『魔術連結』(スペル・リンク)
――『凍気の艦隊・一斉射撃』(アイス・フリート フルファイア)

(引かれた引き金は戻ることはなく、無数の凍気の矢は生贄を求めて飛び進む。
 通常の存在が見るならばそれは、ある種の絶望の壁となりうるのだろう。
 撃ちぬかれ、そのまま敗北を喫するという誰の目から見ても自明な絶望の未来。
 しかし、それすらも奇術師からすれば変えられる未来でしか無い。
 何十にも及ぶ死を超えて立つ、戦場の奇術師は、より鮮やかにそれを変えて見せる。
 鮮やかなる手管の一つが、そこに具現するには時間を要しない。
 行いは簡単だった。魔術師の隠されたツールの中から一つを選んで、使うだけだ。)

――『高速念動詠唱』(ファスト・サイ・キャスト)
――『魔術掌握:凍気の艦隊』(スペルホールド:アイス・フリート)
――『自壊命令』(セルフ・デストラクト・コマンドメント)

(通常ならば回避する所を奇術師は回避することはなく。
 その鮮やかなる手管を用いて相手の魔術の行使権限を掌握し、
 自ら軽々とその魔術を打ち砕いてみせる。それは、奇術師の本気の一つである。
 行使に要する魔力は後ほど補えばいい。それは、芸術性を極限まで高めた一つの解法。
 飛び散る無数の氷片が煌めく中で、双方の合意の上にそれは完成される。
 その輝きの中で、奇術師と癒し手は、出し尽くした充足感と共にそこにあったのだった。

 その充足感と共に、一つの芸術の幕は閉じる。
 艶やかなる一礼の中に、様々な感情と心理を織り込んで。

 一つの叙事詩が、ここに完成する。)
[51] 【審査結果】
事務局(maaa0001) 2011-12-04(日) 00:31
翡翠の姫・エメルタ
「同族の戦いを見るようで親しみがありますね。意気込みを感じる演技でした」
評価:★★★

蒼き雷鳴・ザクウ
「武器と魔術をともによくするなら、斯様な戦い方になるのだな」
評価:★★★

首狩り大将・オウガン
「あそこはだな、なんつか、ゴリッとだな、ゴリッと」
評価:★★★

異端児・アドン
「うまく言えないけど、ふたりの間の信頼感みたいなものがあるような気がしたな」
評価:★★★★

総合評価:13点(20点満点)

«前へ 次へ»

2件みつかりました。1〜2件目を表示中

 

ページトップへ

螺旋特急ロストレイル

ユーザーログイン