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【水彩音】(福増 在利、テューレンス・フェルヴァルト)
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| 福増 在利(ctsw7326) 2011-12-02(金) 02:32 |
笛の音が、聞こえたような気がした。柔らかな風が吹く。 舞台の端から、白い羽根が一枚中央へと風に乗り舞い落ちる。 それを追うように、その白い羽根の持ち主である、緑色の蛇竜人が歩いてきた。その周りを、蛇竜人の気を引こうとでも言うかのようにくるくると飛びまわり付いて行く30cm程度の、竜の妖精。 蛇竜人が輪で括っているその髪の先、普段はそのまま伸ばしている先には鉄の鈴が下げられていた。凛とした透き通った音色が響く。 再び風に吹かれ舞い上がらんとしたその羽根を、蛇竜人が右手で摘み上げ、顔の前に持ってきた。それに釣られる様にして妖精が右腕に乗り、羽根を掴んで取り上げる。 くるりと蛇竜人の方を向く竜の妖精。蛇竜人は微笑み、妖精の頭と顎を撫で、そしてゆったりと舞い始め、後を追ってリィン、リィィンと鈴の音が鳴る。 す、と腕を舞台の先へと伸ばしながらその舞が止まる。鈴の音が一際大きく鳴り響き、妖精が、腕を伸ばされたその先へと羽根を掴んだまま飛んで行った。 そのまま蛇竜人から離れた妖精は、軽快に飛び上がり、その身体が光に包まれ、人の姿を取りながら大きくなり。 そして少年とも少女ともつかぬ竜人の姿を取って着地した。 光の収まったテューレンスのその姿は、いつもの服とは少し違う。軽装の吟遊詩人の服を身に纏い、頭には羽帽子を被っていた。 羽帽子に、今まで持っていた在利の羽根を挿して付け加え、己のトラベルギアである笛を取りだして口を付ける。 同時に、在利が水の入った瓶の蓋を外した。まるで己の意思を持っているかのように、ギアから水がうねる透明の蛇となり宙へと溢れだす。再び在利がゆったりと舞い始め、それに合わせて水が舞う。 優しい、物語の序章のような旋律が笛から流れる。踊る在利の鈴が合わせる様に鳴り響く。 不思議な力に操られ、まるでリボンの様に地に落ちることなく、テューレンスのギアの効果できらきら輝きながらくるくると舞う水が、在利とテューレンスを覆うようにアーチを作ったその瞬間、それは起こった。 優しかった旋律が終わりを告げる様に、長く長く力強い1つの音を出す笛に合わせ、水が光を反射、虹の色に染まる。 形状も含め本物の虹となった水が、やがて笛の音が徐々に途切れるに合わせて色を失い、在利の瓶の中へと戻って行った。 瓶を剣の柄に見立て、鞘に納める動作をする在利の動きに合わせ鳴り響いた鈴の音が、序章を締めた。
笛を仕舞ったテューレンスが、腰の左右に挿した両方の鞘から青いサーベルを抜き放つ。両腕の金属の細工を施された腕輪がシャン、と音を立てる。 再び水の剣を抜き放った在利が祈る様に胸の前に翳す。透明な刀身が真っ直ぐに立ちあがり陽の光を受けて煌めく。 陽の光を反射しながら振り上げられた2本のサーベルが振り下ろされ、テューレンスが打楽器のように地を踏みならしつつ舞い始めた。腕輪の音に踏みならすリズムが加わる。 それに合わせて在利も舞い始める。だがその動きは小さく、テューレンスに合わせる様に。 水の刃がしなり、分かれ、テューレンスの刃を追う2本の軌跡となる。 テューレンス本人へは水が全くかかることなく、腕輪と鈴の音を旋律に透明な軌跡を引いて振るわれる青の刃。 大きく両腕が横へと振り上げられ、そのまま頭上へと持ち上げられたサーベル同士の切っ先が触れる。 2つの金属の音が鳴り響いていた所に3つ目の音が加わり、その上でサーベルを追って二又に分かれていた水がぶつかり、音を立てて弾けた。 テューレンスを避ける様にしてその周りに降り注ぐ水のカーテン。カーテンは舞台に落ちることなく、まさにカーテンとなりテューレンスの姿を歪ませる。 その中で、テューレンスが再び笛に口を付けた。 先程の優しい旋律とは違い躍動感溢れる笛の音が流れ始める。カーテンが同時に輝き始める。 初めは光の反射がより強くと言った感じだったその輝きが、音楽がより力強くなるにつれて強くなり、水のカーテンが光のカーテンに変わった数秒後。 比喩などではなく、そのカーテンが外側に弾けた。大小様々な光の粒が辺りに飛び散るが、それらは全て、辺りに落ちる前に空中に時が止まったかのように制止する。これもテューレンスのギアの効果だ。 鈴の音が鳴り響いた。 スキップするように踊りながらその弾けたカーテンに近寄った在利が、瓶を翳して止まる。 笛の曲調が躍動感あふれる物から激しい物となると同時に、光の粒が全て瓶の中へと飛びこんだ。反動で溢れだそうとする光を操り、鞭の様に撓らせながら在利はステップを踏み出す。 激しい曲に合わせ踊り、光のリボンが操られる。その白い光が青に、赤に、緑に輝きやがて代わる代わる虹の色に輝き始めた。 在利の翼がはためき、その身体が宙に舞い上がる。 大きく舞台の周りを飛び始めた在利の、その広げた両腕に乗る瓶から再度光のカーテンが流れ落ちる。今度は向こうの風景が見える程度に薄く。 舞台を飛ぶ在利に引っ張られその虹の幕が回る。列車の、観客席の、来賓席の手を伸ばせば届くすぐ傍を通り、見ている者の視界を数秒の間虹色に染める。 やがて舞台へと舞い戻った在利。水が瓶の中へと仕舞われる。一瞬鳴りやむ笛の音。 数瞬の沈黙の後、テューレンスの笛に添えていた指が動く、大きく吸われた息が吹きだされる。 終わりを告げる力強く高らかな笛の音。 まるでその音に驚いて飛び出したかのように在利の瓶から水でできた竜が飛び出し、二人の周りを飛び回る。 息が続く限りテューレンスの笛の音が続き、腕輪が小刻みに音を鳴らし始め―――そして、竜が瓶の中へと姿を消すと同時に鈴の音。
最後に2人が一礼した時に腕輪と鈴が軽く音をたて。 それっきり、音は聞こえなくなった。 |
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どうだった、かな?
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| テューレンス・フェルヴァルト(crse5647) 2011-12-03(土) 01:07 |
無事、演武を、終える事が、できたね。 なかなか、綺麗に、できたと、思うんだけど、どうだろう。 在利さん、お疲れ様。誘ってくれて、ありがとう。 在利さんと、演武を、見てくれた、人たちに、感謝を。 |
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【審査結果】
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| 事務局(maaa0001) 2011-12-04(日) 00:36 |
翡翠の姫・エメルタ 「優雅な演技だったと思います。どこか親しみも感じますし」 評価:★★★★
蒼き雷鳴・ザクウ 「目は惹きつけられる。できればより実践的な技も盛り込めればさらに良かった」 評価:★★★
首狩り大将・オウガン 「おーっ、と思うところはあるな。俺としてはもうちょっとグオーッての見たかった」 評価:★★★
異端児・アドン 「どうやってるのかわからないけど、なんか凄い!」 評価:★★★
総合評価:13点(20点満点)
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お疲れ様、でした。
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| 福増 在利(ctsw7326) 2011-12-04(日) 02:20 |
テューレンスさん、お疲れ様でした。そしてお誘いに乗ってくれてありがとうございました。 審査員の皆さんも観客の皆さんもありがとうございます。
思いのほか好評価で嬉しいです。 ただ、ザクウさんとオウガンさんのコメントを聞いて「テューレンスさんVS水の竜」とかすればよかったかなぁ……とちょっと思ったりも。 その、僕は非戦闘員なので実践的な技となるとちょっと……。
それではこれにて。 最後にもう一度、見て下さりありがとうございました。(礼 |
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