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【Diclose】(クアールの妖精獣、ウルズとラグズの演武)
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| クアール・ディクローズ(ctpw8917) 2011-12-02(金) 14:47 |
ぽてぽてと、小麦色の色した子犬が会場へと駆け込んできた。 ご自慢の赤いマフラー靡かせて、意気揚々とした面持ちで審査員席を見据えて。
とことこと、白銀の色した子猫も後に続けと躍り出る。 お気に入りの青いマントがを風に揺らし、好奇に満ちた瞳で観客席を眺めて。
二匹の小さな妖精獣はそれぞれ向いた方へ、ぺこりと頭をさげてご挨拶。 背中合わせになった獣二匹、互いの尻尾を絡ませて、準備はいいかと確認しあう。
「わふぅ!」「みぃっ!」
お互いに一つ鳴きした後、向いた方へを四本足で一斉に走り出す。 子犬と子猫、二匹の間にある程度の距離が生まれたら、いよいよ演武が始まる。
赤いマフラーを解いた子犬――ウルズはそれをリボン代わりにして、あっちへこっちへと飛び跳ねる。 応援団の旗よろしく振り回される布の中から、愛嬌には似合わぬ短剣が3本ほど零れ落ちた。 マフラーを付け直し、落ちた短剣を拾い集めたウルズはそれを宙へと放り投げる。
ふわりと、それぞれの剣が異なる高さまで舞い上がれば、やがて重力に任せて地へ降りる。 落ちる一本をウルズは小さな手で受け取り、それをまた宙へ、もう一本が落ちてくれば、また宙へと投げる。 その間、ウルズは剣を受け取るためにあっちへきたりこっちへきたり。 どこか忙しないジャグリングが始まった。 けれど決してヘタなわけではないらしい、剣の落ちる位置を少しずつズラしても、剣は一本も地に落下していない。
一方、向かいに立つ白銀の子猫――ラグズは青いマントの裏側から一枚のトレーを取り出した。 更にその小さな手にしっかりと収まっているのは、毛皮の色と同じ色した拳銃が一丁。 ウルズが短剣をそうしたように、ラグズもトレーを宙へと放り投げる。
宙に舞うトレー、こちらも高く舞い上がった後に重力に身を任せ地面へ落ちる、そう思われた。 けれどソレは発砲音、それに次ぐ破裂音とともに中空に留まり、再び落ちようとしてもまた留まる。 地に居るラグズが天へ向けている拳銃が弾丸を放ち、落ちるトレーを下からどんどんと撃ち上げる。 中空の的を地に落とさぬように撃ち続けるという、見かけによらず精密な射撃の腕を魅せて、子猫はどこか誇らしげに鳴いた。
やがて個人技はここまで、とウルズは3本の短剣を全て受け止め、ラグズは射撃を止めてトレーを地に落とす。 二匹の獣はぺこりと礼をした後、背中合わせになっていたお互いと向かい合うように体の向きを変えた。 演武を始める前と同じように、準備を確認しあうように再び鳴き合う。 短剣と拳銃、二種の武器がキラリと光った。
ウルズが投げた一本の短剣は、会場の中央へと向かうようにすいっと放り投げられた。 放物線を描くような軌道を辿る刃はやがて上昇を止めると、ラグズのいる方へ向けて落ちていく。 けれど本来辿るとされた軌道からは外された。 発砲音と破裂音、ラグズが短剣を撃って弾き返す。 銃弾に押し返された刃はまるで壁にぶつかったかのように反射して、ウルズの手元に戻ってきた。
ウルズが短剣を投げる。 ラグズが弾丸を放って短剣を弾く。 一定の間隔で繰り返された異色のキャッチボールは、ウルズが投げる短剣の本数を二本、三本へと増やすことで激しさを増す。 中空では刃と弾丸が文字通りぶつかり合うセッションが行われ、地では子犬と子猫がそれに合わせるかのように舞い踊る。 やがて二匹は徐々に距離を詰め、刃と弾がぶつかる高度も下がってくる。 同時に響く音の間隔も狭まってきた。
やがてゼロになった距離と間隔。 二匹の妖精獣は、手にした短剣と拳銃をお互いの顔の横へと置いた。 その絵柄はまるで、お互いの背中に迫り来る脅威を己の武器で退けようとする意志の表れ。
そこへ、わざとらしく響く第三者の足音。 ウルズから見て右へ飛ぶのは一本の短剣、鋭利な刃は黄色っぽくて分厚い表皮へと突き刺さる。 ラグズから見て左へ飛ぶのは一発の弾丸、小さな鉄の塊は短剣の柄を弾いて、刃を更に押し込ませた。
現れた第三者は体こそは人の形をしているが、頭部はまるでジャック・オ・ランタンのようなカボチャ頭だった。 目と口を表すかのような穴を開けられた南瓜の眉間に当たるだろう位置には、ウルズが投げ、ラグズが銃で弾いて押し込んだ短剣が突き刺さっている。 やがて南瓜全体に刃の亀裂が生まれ――、ガラズがバリンと割れるかのように砕けた。 跡形もなく散る南瓜の中から現れたのは、子犬と子猫、それぞれの主である作家の顔。 二匹とお揃いのローブを着込んだ召喚士は、懐に仕舞っていた眼鏡を掛けて、二人の我が子に向けて小さく微笑む。
とたとたと、子犬と子猫が作家へ向けて勢い良く走りだす。 ウルズは尻尾が千切れんばかりにぱたぱたと振り、ラグズは尻尾どころかヒゲもピンと立てて。 そして作家は右足にもふっとしがみ付く子犬、左肩に颯爽と飛び乗った子猫の代わりに審査員席へと視線を向けて。
これにて演武は終了です、と、いつもの無表情のままで深々と頭を下げた。 |
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わふぅ!
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| クアール・ディクローズ(ctpw8917) 2011-12-02(金) 14:50 |
わふっ、わふーっ! (じょうずにできたーっ!) |
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みーっ♪
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| クアール・ディクローズ(ctpw8917) 2011-12-02(金) 14:51 |
みーっ、みゃーっ♪ (うまくできたのにゃーっ♪) |
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【審査結果】
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| 事務局(maaa0001) 2011-12-04(日) 00:32 |
翡翠の姫・エメルタ 「まァ、可愛いですね。ね、ザクウ」 評価:★★★
蒼き雷鳴・ザクウ 「(*´Д`)」 評価:★★★★★
首狩り大将・オウガン 「へー、あの獣たち、アドンよりすげぇんじゃねぇか?」 評価:★★
異端児・アドン 「……orz」 評価:★
総合評価:11点(20点満点)
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(一礼の後、首を傾げ)
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| クアール・ディクローズ(ctpw8917) 2011-12-04(日) 01:03 |
…………? (一方の評価は得たようですが、もう一方は評価どころか心をへし折ってしまった感じが……。)
(とりあえずもう一度礼をしてから、二匹の妖精獣を連れて退場。) |
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