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[25] はじめてのおつかい
音琴 夢乃(cyxs9414) 2012-07-22(日) 00:17
ぼくは0世界が大好きだから、ほんとうはどこにも行きたくなかったんです。
だけど、図書館に属するものとして、どの依頼にも行かずにいるのも、甘えているなあと、いちおうは考えたんです。
0世界にお店でも構えていたら、ちょっとは、免罪符になったかもしれないですけど。

それで、ごくごく簡単な依頼――危険なんてなにもない、ビギナー冒険者が引き受ける最初の依頼のようなの、もらいました。
アニモフの島の調査。
コンダクターなら、こっちがいいんじゃないかって。もふもふと遊んでくるだけだからって。

依頼は、ほんとにほんとに簡単。
前もって他の報告書に目を通した時は、どれもすごーく適当だったので、こんなのでいいのかなーあーって、正直思ってたんですけど、あれ、・・・しょーがないんですね。なんか納得しました。
ぼくも小学生の作文みたいな報告書になっちゃいましたもん。

―――でも。

ねえ、なんでみんな、アニモフを気持ち悪いと思わないんですか。
そりゃ可愛いですけど。ものっすごく可愛いですけど。触ってるといつまでももっふもっふしたくなりますけど。

なんなんですかあのこたち。

なんにも考えないでロストナンバー受け入れて、あけっぴろげで、真っ白でまっしろで、
ぼく、ぼく、やっぱりにへらって笑って、一緒においしいお茶飲んで、お菓子のお土産やまほどもらって。
もう、ぼく、なんだか、ずううっと、へらへらって笑うしか。
笑う、しか。

アニモフがきゃっきゃと笑うたび、ぼく、ものすごく空しくなっていくんです。

おかしいのかな。
ぼく、おかしいのかな。
彼らが笑えば笑うほど、虚しくて、怖くて。
すうっと身体が、冷めて、視界が、遠のいて、無邪気に可愛いアニモフが、ずうっと離れていくような、幻覚、が。

まだ、大丈夫です。
ぼくはひとりでも、大丈夫です。
いつでも、にへらって笑うくらいは、出来るようになったですもん。

だから、ちゃんと、最後には。
お別れ―ってむぎゅむぎゅ抱きついてくるから、仕方なくちょっと抱き返して。ちょっとだけって思ってたのが足んなくて。嬉しそうにするもんだからむっぎゅーって抱き抱きして。
山ほどのお土産のお礼も忘れずに。
またねって、笑って言って。

ロストレイルがディラックの虚空へ入るとき、ちょっとだけ、ちょっとだけ、ぼくの足元にも大きな穴が見えた気がして
ぼく、ずっと眠って帰ってきた。

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螺旋特急ロストレイル

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