ぼくは0世界が大好きだから、ほんとうはどこにも行きたくなかったんです。 だけど、図書館に属するものとして、どの依頼にも行かずにいるのも、甘えているなあと、いちおうは考えたんです。 0世界にお店でも構えていたら、ちょっとは、免罪符になったかもしれないですけど。
それで、ごくごく簡単な依頼――危険なんてなにもない、ビギナー冒険者が引き受ける最初の依頼のようなの、もらいました。 アニモフの島の調査。 コンダクターなら、こっちがいいんじゃないかって。もふもふと遊んでくるだけだからって。
依頼は、ほんとにほんとに簡単。 前もって他の報告書に目を通した時は、どれもすごーく適当だったので、こんなのでいいのかなーあーって、正直思ってたんですけど、あれ、・・・しょーがないんですね。なんか納得しました。 ぼくも小学生の作文みたいな報告書になっちゃいましたもん。
―――でも。
ねえ、なんでみんな、アニモフを気持ち悪いと思わないんですか。 そりゃ可愛いですけど。ものっすごく可愛いですけど。触ってるといつまでももっふもっふしたくなりますけど。
なんなんですかあのこたち。
なんにも考えないでロストナンバー受け入れて、あけっぴろげで、真っ白でまっしろで、 ぼく、ぼく、やっぱりにへらって笑って、一緒においしいお茶飲んで、お菓子のお土産やまほどもらって。 もう、ぼく、なんだか、ずううっと、へらへらって笑うしか。 笑う、しか。
アニモフがきゃっきゃと笑うたび、ぼく、ものすごく空しくなっていくんです。
おかしいのかな。 ぼく、おかしいのかな。 彼らが笑えば笑うほど、虚しくて、怖くて。 すうっと身体が、冷めて、視界が、遠のいて、無邪気に可愛いアニモフが、ずうっと離れていくような、幻覚、が。
まだ、大丈夫です。 ぼくはひとりでも、大丈夫です。 いつでも、にへらって笑うくらいは、出来るようになったですもん。
だから、ちゃんと、最後には。 お別れ―ってむぎゅむぎゅ抱きついてくるから、仕方なくちょっと抱き返して。ちょっとだけって思ってたのが足んなくて。嬉しそうにするもんだからむっぎゅーって抱き抱きして。 山ほどのお土産のお礼も忘れずに。 またねって、笑って言って。
ロストレイルがディラックの虚空へ入るとき、ちょっとだけ、ちょっとだけ、ぼくの足元にも大きな穴が見えた気がして ぼく、ずっと眠って帰ってきた。 |