ぼくのお祖母ちゃん、8人兄弟のしっかりもの長女で、家を継いだんだそーです。結局廃業?しちゃったらしいけど。
祖母の一人娘である母は、祖母の末の妹、ええっと、ぼくから見ると大叔母さん、と、姉妹のように育ったらしいです。10かそこらしか離れてなかったとか。だけど並ぶと、母の方が姉に見られてたとか。
で。今から話すのはその大叔母さんのこと。
旅行が趣味の翻訳家。 おもしろいはなしをたくさんしてくれたから、ぼく、すごく懐いてて。 たまに日本に帰っているときには、よくひとりで遊びに行ったりね、したんですよう。
あ、うちと、大叔母さんちって近所で。幼稚園児が徒歩で行ける距離。 母も大叔母が面倒見てくれてるから、安心してたんじゃないかなーって。 うちにぼくがいなくなってて、大叔母が日本にいる期間だったら、きっと一緒にいるのね、って、いつか母は思うようになってて。
でも。 その日は夕方になっても、夜になっても、ぼくが帰ってこなかった。
大叔母に電話入れてみたのだけれど、誰も出てこなくて。家に行っても、電気も付いていなくて。 携帯電話なんて持ってないから、あちこち探し回ったり、警察に届け出たり、したんだって。
そして、一晩経ったら、ぼくだけが歩いて帰ってきた。 大叔母ちゃんは、列車に乗って行っちゃったよ。っていうのが、当時のぼくの証言。 でも、最寄り駅に彼女らしき人影を見た人は誰もいなくて。 大叔母は、そのまま行方不明。 今でも、戻ってきてないんですよー。
そこまでが、ぼくの幼い頃の記憶。
で。 あれは大学入った後だったかなあ。 その、大叔母の娘っていうひとが、祖母の葬式に来てたの。 ぼくは記憶になかったけど、母は、大叔母そっくりだって。
――ね。わかるかなーあ?
そのとき、ぼく、覚醒してなかったけど。 今なら、もしかしてって、思うんですよーう。
大叔母さん、ロストナンバーだったんじゃないかなって。 ぼくはもしかして、小さいときにロストレイルを見ていたんじゃないかな、って。 |