(マーメイド達の休日と仕立屋リリイの間の一場面)
ターミナルの屋敷に戻り、シュマイトは旅の荷物を片付け出した。 初めに鞄からそっと取り出したのは貝殻のブレスレット。 窓からの日射しに透かして光に目を細めた後、手首に嵌めてみた。 紫のテイルコートの袖に素朴な輝きが映える。 似合う……ような気がする。 つけた姿を大鏡で確認し、内心でそうつぶやく。 しばらく身に着けてみようか。 一度はそう思うも、迷った末にはずす。 大切なものだからこそ、持ち歩いて壊したり失くしたりしてしまうのが嫌だ。 その臆病さこそがシュマイトの本質。 だが、とシュマイトは思う。 身につけていくべき日はきっと遠くない。 ブレスレットをくれた親友の結婚式。 花嫁との絆を忘れないために。 そこにすがらないと、泣き出してしまうかもしれないから。 ブレスレットを棚の箱に収め、シュマイトは荷解きを再開した。 |