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[54] 【特別任務】雷鳴に哭く竜

モリーオ・ノルド(ctdr1024) 2012-03-10(土) 23:39
ジャンクヘヴンを飛び去った「竜」……ファージ化してしまったフォンスだが、そのゆくえは今のところ不明だ。ただし、飛び去った方角はわかっている。

そして、その方角の海域で、上空に不審な黒雲がわだかまり、雷雨に閉ざされている箇所があるらしいことがわかった。

かなりの確率で、その中にフォンスがいるものと思われる。
きみたちはそこへ向かって彼を――今となっては致し方ないことだが、討伐してほしいんだ。

ファージ化したことで、フォンスにどの程度理性が残されているのかはわからない。会話はもうできないかもしれない。仮に対話が成立したとしても、倒すより他に道はない。

現場の海域は、今は放棄された海上拠点――ごく小規模な海上都市のようなものだね――の廃墟だけが点在する領域だ。雷雨のため、海は荒れているので注意してほしい。

もっとも重要なことは……現場近くで、「銀の円盤」が目撃されたという話もある。
間違いなく、世界樹旅団と遭遇するだろう。かれらはファージを操る技術を持つというから、フォンスの確保を企てているのだと思う。逆に言えば、現時点ではかれらもまだフォンスを手に入れてはいないし、操ることができていないということだ。

かれらより先にフォンスを見つけ、終わりを。かなうことなら、平穏な眠りを与えてやってほしい。

<ご案内>
【第2ターン:外交班】に参加した人は、この任務に参加して下さい。
こちらに参加した場合【第3ターン:探索班】スレッドでは発言できません。

下記URLより、プレイングの送信をお願いします。
http://tsukumogami.net/rasen/event/ev29/ev29_mission.html

締め切り:3月20日(火)午前10時頃
※注意:【第2ターン:探索班】とは締め切りが違います。
[92] 【特別任務】
モリーオ・ノルド(ctdr1024) 2012-03-21(水) 21:54
「俺がもしファージ化したら、すぐに倒して欲しいと思う」
 出発に際して、ぽつり、と山本 檸於は言った。
「自分の大事なものを壊してしまう前に。……宰相がジャンクヘヴンに留まって町を破壊しなかったのは、まだ理性があるからかもしれない」
「……」
「わかってる。けどもう、倒すしかないって」
「……悲しいし、よくない。――だけど、誰かが割り切らなきゃねっ!」
 ファーヴニールは、そっと笑みを浮かべた。

 海は荒れ、風が哭く。
 冷たい雨がふたりを打った。
 檸於は雷雨の中心を目指そう、と言った。この雷雨が竜の能力によるものなら、その領域の中心に本体がいるのが道理。ふたりが目標をさだめたそのとき、ふいに、トラベラーズノートにエアメールが着いた気配があった。
 リーリスか一……ジャンクヘヴンに残ったふたりからの連絡かと頁を繰って――ふたりは顔を見合わせる。
『フォンス宰相の件で話したい。彼を助ける方法がある。旅団にバレるのはまずいから内々に落ち合いたい』
 そのメッセージの差出人は「三日月灰人」だった。

 雨ざらしの海上拠点につくと、たしかにその人物が待っていた。
 濡れぼそった牧師服。青ざめたおもてに、うっすらと笑みを浮かべたが、それは決して、懐かしい図書館の仲間に会えた喜びではなかった。
「本当に……灰人さん……?」
「ええ。私です」
「宰相を助ける方法があるって?」
 檸於が言った。その声には、期待がこもっていた。
 灰人の瞳がひややかに彼を映す。
「……彼に針を刺したのは私です」
「え」
「フォンス宰相に、レイナルドを襲わせる予定でした。多少、見込み違いはあれ、おおむね、そのとおりにはなりました」
「ちょっと待って。いったい何を」
「本当なのか」
 ファーヴニールが厳しい声で問う。
「ええ」
「なんで彼に針を刺した? 愛した世界を滅ぼす存在に変える……どうしてそんなやり方を選ぶんだ!」
 思わず、檸於が感情を迸らせた。
 くくく、と灰人の喉が笑う。
「愛した世界。そうでしたね。彼はこの世界に帰属したのでした。でもそれが……なんだと言うんです?」
「っ!」
 鋭く息を吸った檸於の肩を、ファーヴニールが掴んだ。
「灰人さん。なんでわざわざここでそんな話を?」
 すっ、と灰人がわずかに瞳の色を変えたのを、ファーヴニールは見逃さなかった。
「俺たちの足止め――陽動か!」
 ファーヴニールたちが動くより速く、灰人のロザリオが閃光を放った。
 ふたりは視界を奪われる。
 しかし――次の攻撃はなかった。
「な……」
 痛む目ににじむ涙をこらえながら、ふたりが見たのは、ぐったりと正体を失った灰人を抱えた軍服の男――ヌマブチである。
「妄言だ」
「ヌマブチ、さん……?」
「おのれを失ったものの妄言に惑わされるな」
 ごう、と炎があがり、熱波が頬を焼く。
 火炎の壁にまぎれ、軍人は牧師を抱えたまま去る。
 そのときだ。
 かれらの頭上を、猛スピードで過ぎてゆくもの。
 轟く雷鳴と――空を切り裂く咆哮。……竜だ!

「今のはいったいどういうことなんだ! 灰人さんが宰相を……? でもヌマブチさんは……」
「考えるのは後!」
 檸於を連れ、竜の翼でファーヴニールは翔ける。
 前方を、紫電をまとった竜が飛ぶ。
「一気にいくよ」
「わかった」
「相方が檸於くんで助かったよ。レオカイザーなら無理も利く。……俺も無茶が出来るッ!」
 追いついた。
 竜は身体をくねらせ、そして、雷撃を放つ。
「レオシィィィルドッ!」
 檸於のトラベルギアであるロボットのシールドが攻撃を受け止める。
 一方、ファーヴニールは片腕を竜変化させ、鋭い爪を相手に突き立てた。
 長い身体を反転させ、竜が逃れる。
「逃すか!」
「レオレーザーァァァ!」
 レオカイザーの光線が牽制するように暴風雨を貫いた。
 逃げる竜。追いすがるふたり。
 空には黒雲が渦を巻き、海はしぶきをあげてうねる。そして天と地のあいだにいくつもの稲妻が走り、それはさながら生命誕生以前の惑星の様子を思わせた。
「下!」
 ちょうど真下に、海上拠点の石づくりの床があるのを確認して、檸於が叫んだ。
 いいタイミングだ。ファーヴニールが、翼を広げ、間合いをとった。
 トラベルギアに、青白い光が宿る。
 竜が、かっと牙の並んだあぎとを開けて威嚇したが、構わず、ファーヴニールは《竜の心》により高まった電撃を叩きつけた。
 天地が真っ白に染まる。
 容赦のない渾身の電撃は、竜を濡れた石の地面に縫いとめる。みしり、と石の床にひびが走り、竜の身体はそこになかば埋めこまれたようになっている。直撃を受けた部位の鱗は黒焦げだ。
 そのまま急降下。次の一撃で屠る――!

「だめよ」

 さっと空をなにかが横切っていった。
 銀の円盤――ナレンシフだ。
 そこから舞い降りる灰色の影を檸於は見た。
 世界樹旅団がらみの報告書にたびたび登場しているツーリスト、キャンディポットと呼ばれている少女だった。
「この子は、渡さない」
 自由落下の速度で降り立ったキャンディポットは、叩きつける風雨も厭わず、倒れ伏した竜を抱くようにした。
「させるか!」
「レオブレェェェドッ!」
 檸於がレオカイザーに剣を抜かせ、飛ばすが、それを銃剣に受け止めたのはヌマブチだった。
 その肩越しに、竜の身体がみるみるうちに収縮し、キャンディポットの腕の中に収まってゆくのが見える。
 ふふ、とキャンディポットの唇に笑みが宿る。
 だがそこへ、ファーヴニールの電撃が降り注ぐ。キャンディポットが悲鳴をあげた。
 ヌマブチは一瞥すると、レオカイザーを弾き返し、インバネスを翻してキャンディポットに駆け寄った。
「終わったか」
「ええ。はやく戻りましょう。ナレンシフを――」
 ヌマブチは空を仰いだ。
 さっきキャンディポット(と、おそらくヌマブチを)を届けたナレンシフは一見して姿がない。それを確認すると、ヌマブチは拳をキャンディポットに叩きこむ。
「!?」
 驚くファーヴニールたちを、ヌマブチは見つめる。
「……キャンディポットはウッドパッドを持っている。それで連絡がとれる」
「ヌマブチさん。あんた……」
「ツケを精算したい」
「なら一緒に――」
 ファーヴニールが言うのへ、ヌマブチは無言で首を振った。
 そして、駆け出す。
 ふたりが最後に聞いたのは、ウッドパッドに話しかける声……。
「ウォスティ、撤収だ。キャンディポットが捕まった」
 そして近づいてくるナレンシフの機影が見える。
 ファーヴニールたちのまえには、意識を失ったキャンディポットと、彼女の「飴玉」が入ったボトル、そして一本の「針」とが残されていた。

  * * *

 一方――。
 ジャンクヘヴンでは一一 一とリーリス・キャロンが活動していた。
 リーリスは、太守、そしてモリーオの傍に張り付くようにしていた。
 世界樹旅団が陰謀の輪郭を、もっと大きなものだと彼女は見る。たとえば世界司書が派遣されてくることもかれらの狙いのうちかもしれないと。
「アリッサは増援要請を受けてくれた?」
「伝えてはおいた。しかし今のところ推論だけではね。……おっと、そう残念そうな顔をしない」
「旅団を甘く見てはいけないと思うの」
 リーリスは言った。
「全面戦争にならなかったのはアリッサが専守防衛だったからだもの……旅団は最後までやると思う」
「ま、それはそうだろうね。……アトラタの大使の件、さっき太守に言ったよ。それは了承してくれた」
 太守の執務室で、職務の邪魔にならない程度に、モリーオは近くに待機し、リーリスはその傍らにいる。そうすればいざというときにリーリスがふたりともを守ることができるからだ。
「それでアトラタの大使は?」
「うん。ジャンクヘヴン太守の直言だからね。慌ててアトラタに戻るようだよ。実際、海賊の動きが活発になってきているのは嘘でもなんでもないのだからね。アトラタだけじゃない、葬儀に来ていた他国の賓客も早々に退散させるつもりのようだ」
 リーリスは頷く。
 彼女の助言で、アトラタの大使はジャンクヘヴンを去らせた。ひとつずつ、懸念事項は消していく。
 今のところジャンクヘヴン内に旅団の活動の気配はない。
 だがきっと、なにかを仕掛けてくるはずだとリーリスは確信している。

 調査を続けていた一から報告が届いたのはすぐあとのことだった。
 彼女はレイナルド宰相について調べていたのである。
 レイナルドの生家ディアス家は、由緒正しい一族で、過去に何人もの太守を輩出している。反対に、武官の一族だったミラン家から、バルトロメオが初めて太守にならなければ、レイナルドが太守になっていたのは間違いない……そんなことは、ジャンクヘヴンの人間なら誰でも知っていることのようだった。
 そのことが彼が「ジャコビニ」になってしまった原因なのだろうか?
 一がレイナルドについて調べることを、太守は止めなかった。彼もまた、知りたいのだと言う。腹心の部下が海賊になってしまったことを、気づけなかった、とバルトロメオは口惜しそうに言った。
 太守の口利きがあったので、ディアス家の領地にも立ち入ることができた。
 レイナルドの心中や、彼がジャコビニになった経緯などをすべて調べ尽くすには時間も人手も足りなかったと言わざるをえない。だが彼女は、少なくともそれを見つけることができた。
 ディアス家が所有し、今は使われていない造船所に、ひっそりとそれは隠されていた。
 ジャコビニの「幽霊船」だ。
 見た目はボロボロに偽装され、しかし航行は可能な船。
 武器だけでなく、不思議な機械と――樽詰めされた大量の「虹色の貝殻」を積んでいた。
 部下に指示するためと思われる書付によれば、貝殻を燃料に、この機械は霧を発生させるようだ。

  * * *

 ほどなく、シェルノワルからも報告が届いた。
 そして、竜を追っていったふたりからも。
 モリーオは険しい顔で言った。
「これなら、図書館も増援を送らざるを得ないな」

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螺旋特急ロストレイル

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