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[22] <北天のポラリス> 上映会
金町 洋(csvy9267) 2013-06-30(日) 21:54
ブザーの音が鳴る。


一段、照明が落とされたかと思うと、ホール内が急速に暗くなり
……互いの顔はおろか、手のひらも見えない程に、闇が静かに広がった。


硬過ぎないが、まだ張りの残った座席に腰掛けて待っていると
あなたの視界の右手側に
ぼう、と白い明かりが灯る

--カシオペア、かつて海神の怒りを受けた王妃も今や物言わぬ
美しい星の群れとなり、ひたすらに北天の空を巡っています--

落ち着いた男性の声がどこからともなく響き、
そうしている間にカシオペアと呼ばれた5つ星が
持ち上がり、そのさらに内側、回転軸のあたりが
いっそう青白く輝いた


--北極星、ポラリスは惑星・地球の天の北極に輝く二等星--

正面に現れた、ひときわ明るい光点を中心にして
女王以外の星々が、きらめきを増しながら現れる

--今回のお話は、ポラリスを抱く竜の翼と、それを見守る7つ星の物語--

星々の姿が顕になると共に、アナウンスに合わせて
一瞬、翼のような透かし絵が輝いた後

光の線がほどけ、あどけない子グマの姿を取り……
女王星の反対、ポラリスの左手に控えていたように
立派なメスの大グマが姿をあらわした……
[23] 神代の逸話
金町 洋(csvy9267) 2013-06-30(日) 22:02
軽やかな音楽に合わせ、おおぐま座の位置に重なっていたメスグマが
いつの間にか、美しい乙女の姿に融けて変わっていた

その乙女の視線の先に、いつの間にか現れた弓持つ若い狩人

--おおぐま座は、北天に輝く七つ星を尾に持つ星座です
尾が普通のクマよりはるかに長いのは、木の王に
振り回されたからという逸話が残っています--

--こぐま座は、北天に常に輝く北極星、ポラリスを
いだく星座です
長く、ドラゴンの翼座と呼ばれていました--

立ち現れた、透かし絵の人々は、いつの間にか
劇場のように広がる天球の上、かつて起きたという
物語を、物言わず語り始めた……。



おおぐま座は元々、森の妖精ニンフであったとされている。
彼女--カリストは、一生を清い身であることを誓い
女神アルテミスに使える侍女であった。
ある日、大神ゼウスに美しさを見初められ、言い寄られる。
男性への警戒心が強いカリストはアルテミスの姿をとった
ゼウスに近づかれ、ついには身ごもってしまう。
その後カリストは妊娠が発覚したことで、主人であるアルテミス
(あるいは夫の不貞を知り嫉妬に燃える女神ヘラ)によって、
元の美しい姿の片鱗も無い大きなクマへと姿を変えられてしまう。

……この逸話には他にも、女神の怒りから彼女を守る為にゼウス自ら
が彼女を変身させたという説もあるが、尤も広く知られる逸話は
次のようなものである。


カリストはクマにされた後も十数年生き続けた。森を彷徨うクマ
の姿で、狩人たちから獲物として狙われるみじめな日々をおくる。
一方、赤子であった息子アルカスはすっかり一人前の狩人になって
いた。ある日、森で出会った大グマへ矢を射掛ける。実はその
大グマこそ、かつてアルカスを産んだ母カリストであった。

その様子を天から見ていた神がいる。大神ゼウスである。
この親子を哀れに思い、ゼウスはあわやという前に親子
共々天に召し上げ、母をおおぐま座に、息子をこぐま座
に変えたという。
カリストを憎み続ける女神ヘラは、この二つの星座が海に
入って休むことができないようにさせた。

それ故に、母であるおおぐま座は、息子であるこぐま座の
周りを慕うように回り続ける。地上に降りて休むことなく
沈むことなく、北天に輝き続けているという……
[25] <ブザーの音が再度鳴り、照明がゆるゆると目を焼いていく>
金町 洋(csvy9267) 2013-06-30(日) 22:08
<上映会、おまたせ(?)しました

上記のような具合で小話などを紹介させて頂きました。
お楽しみいただけたら幸いです>


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