クリエイター青田(weem7811)
管理番号1170-12531 オファー日2011-12-25(日) 00:04

オファーPC 阮 緋(cxbc5799)ツーリスト 男 28歳 西国の猛将
ゲストPC1 シンイェ(cnyy6081) ツーリスト その他 31歳 馬に似た形の影

<ノベル>

 夜も更けたインヤンガイの薄暗い路地裏、疾走するバイクに跨った青年は恐怖に顔を引き攣らせていた。
「見つけたぞ、暴霊めが!」
「成敗!」
 それを黒馬に跨った男が追い掛けている。
『そう簡単に捕まるかってんだ!』
 爆音を轟かせたバイクが、独りでに急加速する。
「いきなり加速するなぁあー!?」
 青年が悲鳴を上げた。


 時は遡り、これより前。
「協力を感謝する」
 インヤンガイの探偵の一人である、チェン・リウはある2人を迎えていた。
 1人は、長く伸びた白金と黒の斑の髪が目を惹く偉丈夫である、阮緋。
 もう1人は、1人と言うべきなのか、深い漆黒が美しい力強い馬である、シンイェ。
「現れているのは、バイクの暴霊だ。昼夜問わず爆音を響かせて走り回っている。幸い轢き逃げ事件は起きていないが、時間の問題だろう」
 無駄な前置きもなく、唐突に依頼内容の説明をチェンは始めた。
「その暴霊は、小回りが利き壁や天井も走れる。袋小路に追いつめて退治しようとしたが失敗した」
 手帳を捲る音が静かに響く。
「何かしらの未練があるかもしれないが、それについては不明。退治の方法はそちらに一任する」
 ぱたりとチェンの手帳が閉じられた。
「以上だ。何か質問はあるか?」
 そうして、緋とシンイェに目を向けた。
 チェンの視線を受けた2人は静かに目配せした後、緋が口を開いた。
「では、その暴霊が一番目撃されている場所を教えてくれ。後は俺たちでどうにかしよう」
 そして、今に戻る。


「逃げたぞ、緋!」
「解っている!」
 緋が右足でシンイェの胴に軽く叩けば、ギアの封天にあしらわれた鈴が美しく響く。
 そして、小さな鈴の音は激しさを増し、ついには稲妻の如く路地裏に鳴り響き出す。
「良く解らないけど、あれ絶対ヤバイ?!」
『俺もそう思う!』
「征け! 猛き虎よ!」
 緋の右足の銀の輪飾りから、虎を象った稲妻が撃ち出される。咆哮で大気を震わせながら、暴霊へと飛び掛かる。
 咄嗟に、暴霊は車体を倒して避けるが、青年の足には掠っていた。
『そんな豆鉄砲に当たるか!』
「掠ってる、掠ってる! 俺、足焦げたよ!」
 泣き喚く青年を尻目に暴霊バイクは、さらに加速していく。
「逃げるのであれば、少々痛い目に遭うぞ!」
 再び大気を震わせて雷の虎が駆ける。
「それ、少々じゃないから?!」
『秘儀、壁走り!』
 ハンドルを切ったバイクが、ビルの壁面を走って雷をやり過ごす。
『ノロマな馬さん、こっちだぜ!』
 馬鹿にするように気の抜けたクラクションが鳴る。
「ノロマ? 馬? 暴霊風情が生意気な! 緋よ、振り落されるな!」
 シンイェの巨躯が競走馬のように絞り込まれていくと、首を前に倒したシンイェが一気に加速する。
「ぎぁああ!? 追いついて来たぞ!」
『そうこなくちゃ!』
「喜ぶなー!」
 暴霊を間合いに入れた緋が、手に持った青龍偃月刀を一閃させる。
「破ァ!」
『あらよっと!』
 しかし、暴霊はバネのようにびよんと飛び上がると、あり得ない動きで壁に貼り付いて、そのままビルの屋上へと真直ぐ駆け上がった。
『さらばー!』
「くっ、天井や壁を道とする相手が、こうも仕留め難いとは」
 得物を構え直す緋の下で、土煙を立ててシンイェが足を止める。
「おのれ、逃がすか!」
 興奮したシンイェが鼻息を荒げる。
「しかし、どうやって追ったものか」
「気は進まぬが、翼を作る。このままコケにされて引き下がれるか!」
 シンイェの胴体から影が横に突き出した後、それに沿って漆黒の膜が広がる。それは、翼というより蝙蝠の被膜を彷彿とさせる。
「さあ、風を呼べ。ともに駆けるぞ!」
 緋の左手の封天が、鈴の音を小さく奏でた。


「帰りたいぃ!」
『男がぴーぴー泣くな!』
「これが泣かずにいられるかっ! 俺、何にも悪くないだろ!」
『たまたま運が悪かっただけだよな』
「お前が言うなぁー!!」
 涙目で叫んでいる青年の名前は、ジン。数時間前までは、取り立てて特徴のない一般市民だった。
 残業で遅くなったので夕飯を兼ねて一杯引っ掛けた後、ほろ酔い気分で店から一歩踏み出した瞬間。
 バイクに跳ねられた。
『乗り手獲得だぜ!』
 薄れる意識の中で、すぐ側で誰かの声を聞いた気がした。
 そして、気が付けば暴霊バイクに跨り、神さまに追い回されている。
 すぐにバイクから跳び下りようとしたジンだったが、暴霊に止められた。
 曰く、このバイクから離れたらジンは死ぬ、らしい。
 ジンを跳ねた時、勢いでうっかりジンの命を取り込んでしまい、その命を使って重傷のジンを回復させたらしい。
 直に、返せと叫んだジンに返ってきたのは、満足するまで付き合ってくれなきゃ返さないもん、という楽しげな暴霊の声だった。
 それから今に至るまで、ジンはバイクに跨っていた。
 壁面を駆け上がっているジンの髪を、吹き上げる風が巻き上げた。
「え?」
 違和感を覚えたジンが振り向くと、漆黒の翼を広げて飛ぶ馬が見えた。そして、その背に跨る偉丈夫は、青龍偃月刀を構えている。
「ひっ」
『飛んだ!?』
 意表を突かれた暴霊の反応が遅れた。
 そして、光を弾く偃月刀の刃に、恐怖に歪む自分の顔が見えた時、ジンの本能が弾けた。
「しっ」
 ジンは前輪のブレーキを掛けた。
『お?』
「死んでたまるくぁー!」
 壁面を擦る音を聞きながら、自分の体ごと車体の後部を振れば、一時的に壁に固定された前輪を支点にして、車体が大きく回転する。
 コマ送りのように鈍く光る偃月刀の切っ先が、ジンの視界を通り過ぎて行く。
『おおお! やればできるじゃないか!』
「うるぁぁぁー!!」
 今度はそのまま壁を地面へと向かって駆け下る。
 風を受けて飛んだせいで、途中で止まれずビルの屋上へと2人は降り立った。
 そして、深い夜でも灯りの消えないインヤンガイの一画を疾走する暴霊が、2人の眼下に見える。
「敵も中々やる」
「ああ。楽しくなってきな、星夜」
「奇遇だな、俺もそう思ってきたところだ」
 2人に殺る気が入ってしまった瞬間だった。


「ちょっと止まれ、一大事だ」
『ん?』
「トイレ行きたい」
『はあ!?』
「生理現象だよ! ほっとしたら、猛烈にトイレ行きたい!」
『お前、死にそうになってるってのに』
「うっさい! 漏らすぞ、この野郎!」
『おまっ!? 人として恥ずかしくないのか!』
「暴霊が言うな!」
『仕方ない。そこの路地裏で済ませろ』
「トイレ行かせてよ!?」
『俺から離れたら、死ぬのに?』
「人はトイレと一緒に生まれたわけじゃないよね」
 そして、周囲に人がいないのを確認して、ジンが用を足して戻ってきた時、一陣の風が吹き抜けた。
「こ、これって」
 嫌な予感に見上げるジンに、漆黒の巨馬が落ちてきた。
「っぎええ!?」
 悲鳴を上げたジンは、暴霊バイクへと飛び付いた。そのすぐ横に降り立ったシンイェの下の路地が、地響きを立てて陥没する。
「早く出せ!」
『お前手洗った?』
「んなこと、今どうでもいいだろ!?」
 ジンはキックスターターを蹴り降ろして、必死にアクセルを全開する。
『何だとう! お前、トイレの後に手を洗わない野郎と握手できんのか!』
「それで死なずに済むなら、握手くらいするわっ!!」
 全速発進に煽られないように体を倒したジンが、暴霊に唾を飛ばして叫ぶ。
 そして、暗い路地の前方を照らすライトの中に、一人の偉丈夫が浮かび上がった。
「挟み撃ち!?」
 前方に立ち塞がる緋は、偃月刀を上段に構えている。
『必殺、暴霊光線!』
 暴霊のライトが瞬くと、絞り込まれた照明が強烈な閃光を放った。
 しかし、緋が驚いたのは一瞬。すぐさま鋭い気合いとともに振り降ろした偃月刀が、閃光を両断した。
 そして、ビルの壁面に突き刺さった光が、爆煙を広げ狭い路地を覆った。
 振り降ろした偃月刀の刀身に、緋の頭上を飛び越える暴霊の姿が映った。
 緋の口元が愉快と言わんばかりに持ち上がった。
 煙の向こうから足音が近づいてくると、緋は無言で跳び上がった。
「乗れ!」
 白煙から飛び出したきたシンイェの背に、示し合せたように緋が落ちると、そのまま2人は暴霊を追いかけた。


「帰りたいよ~」
『ああもう! いつまでもメソメソするな!』
「死にたくない~」
 情けない声を出すジンの下で、暴霊が止まった。
『ほら、早く帰んな』
「え?」
『帰りたいんだろ』
「え、い、いいの?」
『やる気のないヤツ乗せてても面白くねぇんだよ』
「ちょっと待て。帰れって、お前から離れたら俺死ぬんだろ。どうやって帰るんだよ?」
『ああ、それ嘘』
「はああ!?」
 暴霊の話を纏めるとこうだった。
 自分の未練は、自分を任せられる相棒と一緒に、手強い相手と熱い勝負がしたい、ということ。
 手強い相手がやってきたし、見込みのありそうな相棒も運良く見つけられた。
 これが、きっと最後の機会なんだろうと。
『なのになー。嘘で焚き付けても、肝心の相棒がこれじゃあな。せっかくイイもん持ってるのにさ』
「イイもん?」
『お前、気がついてないの? 途中から俺の操作はお前に半分くらい任せてたんだぜ?』
「えっ」
『無意識かよ、つくづく惜しいな。冗談抜きで、お前レーサー目指してみなよ。イイ線いくぞ』
 笑うように暴霊のライトが点滅した。
『ほら、さっさと降りろ』
「う、うん」
 ジンはゆっくりとバイクを降りた。
「さ、さようなら?」
『だな。それじゃあな』
「お前、これからどうするんだ」
『とりあえずは走るだけ走って、最後はあいつらに退治されて終わりだろ』
「そ、それでいいの?」
『いいも何も、暴霊の最後なんてそんなもんだろ。それとも、俺の走りに付き合ってくれんの?』
「それはない」
『だろ。それじゃな、うかうかしてると追いつかれるぞ』
 振り返らないように意識しながら、ジンは重い足を動かした。
 帰ればいい。そうすれば、もう死ぬような目に合わないんだ。ここで帰れば、きっといつもと同じ日常に戻れる。
 なぜ、足が重く感じるのか。なぜ、振り返らないように意識しなければならないのか。
 なんで、走ろうとしないのか。
 そして、気がつけばジンの足は止まっていた。


 追い付いた緋とシンイェの前に、暴霊たちが待ち構えていた。
「逃げるのは終りか?」
『勝負を申し込む!』
「勝負?」
『ああ、お前らが勝ったら大人しく退治されてやる。だけど、俺らが勝てば、お前らは俺に退治されろ』
「互いの命を賭けるということか」
『その通り!』
「俺たちが受けると思っているのか?」
『思うね。お前ら、そういう馬鹿な真似は大好きだろ? 俺と同類だ』
「ははは! 良かろう、受けて立とう!」
 痛快とばかりに声を立てて緋は笑うと、顔を引き締めた。
「俺の名は、院緋」
「俺は、シンイェだ」
 無言で名を問う緋に応えて、暴霊とジンも名乗った。
『俺は、フォン』
「ジ、ジンです」
 ジンは、自分が酷く浮いているのを感じていた。
「それで勝負方法は?」
『至って簡単。どっちが先に目標地点に着くかだ』
「その場所は?」
『この地区で一番高いビルの屋上だ。鉄塔があるから、大通りに出ればすぐ解る』
「ふむ、そこなら解るぞ」
『それと、空を飛ぶのは禁止だが、それ以外は何でもあり』
「解りやすくて助かる。では、開始の合図は?」
『ジンの投げた石が地面に落ちたら開始だ』
 その時、初めて緋はジンを見据えた。向けられる視線の強さに、圧倒されながらもジンは目を逸らさなかった。
「良い目をしているな」
 緋が口元を緩めると、ジンの感じていた重圧が消えた。
 思わず膝が崩れたジンを、車体で支えたのはフォンだった。
「今更だけど、お前、フォンって名前だったんだ」
『ホントに今更だな。そんなことより、これ使え』
 暴霊の座席に、一組のライダーグローブがあった。 
『それしてれば、少しなら無茶できる』
「つまり無茶前提、と」
『俺は一回帰してやったんだぞ』
「解ってるよ」
 ジンは黒いライダーグローブを身に付けた。
 初めてしたはずの手袋なのに、不思議とジンの手に馴染んだ。
『ったく、どういうつもりだ』
「解らないよ。自分でも馬鹿だって思ってるしさ」
『そうだな、大馬鹿だよ。こんな暴霊の酔狂に付き合うってんだから』
「それだと、今ここにいるやつら全員大馬鹿ってことになるな」
『はははっ、間違いないな!』


 そして、勝負が始まった。
 ジンの投げた石が地面に落ちた瞬間、先に飛び出したのは緋たちであった。
 が、その背後に向けて、フォンのライトから閃光が放たれた。
『油断大敵! 何でもありなんだぞ!』
 虚を突かれた2人は、まともに光線を喰らって地面に弾き飛ばされた。
 それを横目に、ジンを乗せたフォンが悠々と走って行った。 
「ふ、ふふっ、汚い小細工を!」
「おのれ、一度ならず二度もコケにしおったな!」
 2人の背に燃え盛る炎が見えたような気がした。
「さっきの光、わざと威力抑えたよな?」
『誰かさんが燃料ケチるからな』
「ふーん、それでもいいけど。でも、これであの神さまたちに火が付いたな」
『察しが良いな』
「開き直ったからかな?」
『いいぜ、そのまま吹っ切れてろ!』
 大通りに出ようと、フォンが車体を傾けて曲がっていた時、雄叫びを上げる稲妻の虎が、路地裏の闇を引き裂いて飛び出してきた。
 後輪に当たるとジンが思った時、自分の右上半身が爆音を出した。
『何やってんだ!?』
 ジンの右腕は焼け爛れて、肩から力なく垂れていた。
「あ、いや、後輪に当たると思ったら、つい」
『ついで、腕一本失くすつもりか!』
 ジンの右腕の傷がどんどん修復されていく。
「いや、フォンが治してくれると思ったから」
『えっ』
「跳ねられた俺の体を治せたくらいだから、多少の傷なら問題ないかなって」
『お前、それが俺の嘘だったらどうすんだ!?』
「嘘じゃなかったんだから、それでいいよ。馬鹿に付き合うって決めたんだ。とことん馬鹿になるんで面倒よろしく!」
 ジンは吹っ切れたように初めて笑った。
『かぁー! 燃えてきたぁー!』
 フォンが歓喜の声を上げると、けたたましくクラクションが響き渡った。
『大判振る舞いだ! 皆、一緒に走るぜ!』
 すると、クラクションの消えた周辺の路地から、無数の無人バイクが派手にエンジンを鳴らして走り出してきた。
『皆、足止め頼むぞ!』
 フォンの号令に従った無人バイクが、大通りへと飛び出してきたシンイェと緋に襲い掛った。
「あの暴霊の力か、小癪な真似を!」
 封天から放つ雷虎が、前から迫るバイクを打ち砕く。
 車体を倒したバイクが、横転しまたた滑ってシンイェの足を狙う。
「舐めるな!」
 避けようともせず、シンイェはそのまま金属の車体を踏み潰して駆け抜けた。
「俺は走るぞ! お前が掃除しろ!」
「承知!」
 横から車体をぶつけようとしてくる無人バイクを、緋の偃月刀が両断する。
 真っ二つにされたバイクに衝突した後続のバイクが爆発する。
 夜明け近いインヤンガイの大通りが、次々と爆音と火柱に彩られていく。


 ビルに先に到着したのフォンだった。速度を緩めることなく、一気に壁を駆け上がる。
 少し遅れて、緋とシンイェが辿り着いた。
「封天の風で、そなたの翼を叩き続ける。荒っぽいが、構わないか?」
「望むところだ」
 左手の封天から鈴の音を止めることなく鳴らしている緋の横で、シンイェはすぐに影の被膜を広げた。
「駆けよ、疾風の如く!」
 封天より放たれた馬を象る風が、シンイェの被膜を突き破る勢いで噴き上がった。
 まるで嵐に吹き飛ばされる羽毛のように、軽やかにシンイェの巨躯は飛び上がる。
 見る見るうちに、先を走る暴霊の背が大きくなっていく。
「緋よ、跳べ!」
 屋上を通り過ぎる瞬間、緋はシンイェの背を蹴って空へと跳び出した。
 ほぼ同時に、屋上を飛び出したフォンから、ジンも跳び出していた。
 そして、先に屋上に降り立ったのは、――緋であった。 
 それは、一般市民と武人の身のこなしの差であった。
『あー、負けた! 最後なんだから、勝ちたかったな~』
「ごめん。結局、俺のせいで負けちゃったな」
『いや、十分だよ。素人のくせにさ』
「……フォン」
 フォンは掛値なしでジンを労った。ジンの上着の右側は焦げ跡が残っているし、受け身も何も知らないのに跳び出したジンは、最後に脳震盪と全身打撲を起こしていた。
『怪我はサービスで修復しといたから、感謝しろよ』
 暴霊の車体が、少しずつ大気に溶けるように薄くなっている。
『それに、しても、お前となら、本当のレー、スも走、って、みた…』
 フォンの最後の呟きは、夜空に溶けて形にならなかったが、ジンの心にはしっかりと届いていた。
「ありがとうございました。神さまたちが本気になってくれたから、フォンは成仏できたと思います」
 屋上に佇む緋とシンイェに、ジンは深々とお辞儀をした。
 ジンの言葉を聞いた時、2人はそもそもの目的を思い出した。
 暴霊退治に来たはずなのに、いつの間にか真剣勝負に興じていたのだ。
「それなのに、怖がって失礼しました」
 続いた台詞に、気不味い雰囲気に襲われた2人が目配せをすると。
「い、いや、解れば、それでいい」
 誤魔化すように咳払いをしながら、緋は重々しく口を開いた。
 そして、許してもらえたと思ったジンは、ゆっくりと頭を上げた。
「そ、それと、一つお願いが~」
「何だ、言ってみろ」
「下まで乗せてください」
 インヤンガイの摩天楼を背後に、ジンは晴やかに笑った。



クリエイターコメント のちに、インヤンガイのバイクレースの歴史に残る偉業である7連覇を成し遂げた遅咲きの天才レーサーの名は、ジンといった。
 そして、ファンの間では有名な話であるが、ジンはレースに臨む際、レース用のグローブとは別にあるボロボロのライダーグローブを必ず持ち込んでいたそうだ。

 塗り替えられることはないだろうと思われた6連覇を成し遂げたレーサーの名前は、フォン。
 自身も優秀なメカニックである彼は後進の指導にも積極的に関わり、レーサー時代から愛用していたライダーグローブを死ぬ時まで常に持ち歩いていたらしい。



大変お待たせ致しました、青田でございます。
…エクストリーム土下座を習得しなければなりませんね。
と、ととと、とりあえず、お届けさせて頂きます。
頂いたプレイングをもらった時には、大まかに枠を組んでみて受諾しているのに遅れて申し訳ありません。


今回は、いつにも増して字数制限が手強かったです。
泣く泣く大幅に削って、圧縮しております。
原因は解っているのですがががが。
今回の頂いたプレイングから、ストーリー全体の雰囲気はコメディ寄りに解釈して組み立ております。
しかし、お二方とも生真面目な性格であり、今回の流れだとお二人の絡みからは青田にはコメディを生み出せないことに気が付きました。
そうなると、モブである暴霊と被害者の方でコメディ要素を出してもらうことになります。
その結果、PC2人とモブ2人というより、PC4人に近い状態になってしまったのです。
どうにもモブが出張ってきてしまい、根本的に考え直さないとダメかなと悩んでいたのですがっ。
〆切もあるので、青田にオファーしたのが運の尽き、と嫌な開き直りをして完成させました。
字数が欲しい!


緋さん
結構書き進むまで、院緋と打ち込んでいました、すいません。
思い込みって怖いです!
追掛けっこメインなので、ギアについてあまり掘り下げた使い方をできませんでした。口惜しい。
封天の発動過程を、鈴を鳴らすと雷や風の音を模倣するかのようにどんどん音が大きくなり、同じような音を出して効果が発動すると捏造させてもらいました。
鈴を鳴らすという動作が必要だと読んだ時に、ぽぽぽんと出た演出なのですが、青田としては面白いかなと思っております。
気脈を読む能力も活用してみたんですが、諸事情よりごにょごにょ。
権謀術数を嫌い竹を割ったような武人ということなので、ノッてくると一直線というイメージです。


シンイェさん
馬に良く似た馬じゃない馬?と軽く混乱していました。
ギアについては、ほぼノータッチになってしまいました。口惜しい。
身体を変化させること、体重を軽くすることは好きではないということですが、元世界との事を考えると、現在馬の姿をしている事も好きではない?と思えました。
そうなると、馬の姿を取ることに何かしらの矜持があるように思えました。
それなら、自分の誇りを曲げるようなことをしたくないとということで、辻褄が合うのかなと妄想しました。
被膜の他にも、足を6本にして速く走る、額から角を出してバイクを突き刺して放り投げるなど、色々と妄想だけはしていました。


それでは、少しでもお楽しみ頂ければ幸いです。
ご縁があればまたよろしくお願い致します。
公開日時2012-02-12(日) 23:10

 

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