クリエイター阿瀬 春(wxft9376)
管理番号1147-14652 オファー日2011-12-30(金) 22:00

オファーPC ゼシカ・ホーエンハイム(cahu8675)コンダクター 女 5歳 迷子
ゲストPC1 三日月 灰人(cata9804) コンダクター 男 27歳 牧師/廃人

<ノベル>

 さらり、頬に滑らかな布地が触れる。
「っと、ごめんよ」
 とんがり帽子に猫の仮面の男の子が、帽子の縁に手を添えて仮面の奥の眼を細める。ゼシカ・ホーエンハイムの白い頬を撫でた黒いマントの裾をもう片方の指先で摘まみ、悪戯っぽくお辞儀する。腰を屈めて、小さな少女を覗き込む。
「うううん」
 頬を薔薇色に上気させて、ゼシカは精一杯答える。頭を横に振る。
 柔らかく結わえた蜂蜜色の髪がふわふわと顔の周りで踊る。舞う髪と一緒になって、葡萄の髪飾りがぶつかりあってかちかちと鳴る。力いっぱい振る頭につられて花柄模様のスカートがひらひら揺れる。
 猫の仮面から唯一除く口許をにっこり笑ませ、猫仮面はくるりとその場でおどけたターンをする。とんがり帽子のてっぺんに縫い付けられたかぼちゃの飾りが不思議な光の尾を引く。
「では、良き邂逅を」
 かぼちゃお化けの飾りの開いた口の中、虹色にきらきら光る小さな石は竜刻の欠片だろうか。
 とんがり帽子の先で揺れるかぼちゃ飾りに眼を奪われながら、ゼシカはちょっと首を傾げる。
「かいこう?」
 猫仮面はゼシカの仕種を真似る。
「烙聖節に起こる千の不思議のひとつ」
 猫仮面の脇を、ゼシカの横を、賑やかな衣装纏った人々が次々に通り過ぎる。ドレスを飾る極彩色の羽飾りが揺れる。真白の布を頭から被った幽霊たちが群なして駆けて行く。石畳の道や石造りの家々の軒や屋根に飾られた、かぼちゃの形の角灯が温かな光で夕闇の街を行く仮装の人々を照らし出す。
「会いたい人の幻、見られるかも」
 猫仮面は意味深な笑みを唇に浮かべる。眼を丸くするゼシカの耳に顔を寄せ、
「会いたい人、居る?」
 内緒話のように問う。そのくせ、ゼシカが答えるよりも先にマントの裾を翻し、
「さらば」
 烙聖節のお祭りに浮かれる人込みの中に紛れ込む。ゼシカは楽しげなマントの背中を澄んだ青の眼で見送る。もうちょっときちんとお話できれば良かったかな。あのおにいちゃんみたいにスカートの裾をつまんでご挨拶すれば良かったかな。でも、知らないひとと言葉交わしたから、胸が小さな鳥のようにことことと騒いでいる。
 胸の中の小鳥を静めたくて、肩から提げたポシェットの紐と一緒に小さな胸をそっと押さえる。ことこと騒ぐ小鳥は、でも、不安を撒き散らすものではない。
 ゼシカは知らない間に俯いていた細い顎を持ち上げる。澄んだ青の眼を上げれば、烙聖節のお祭りに賑わう街が目の前に広がる。
 色んな色彩と大きさのかぼちゃ飾りでクリスマスツリーみたいに飾り立てられた煉瓦のお家。おいしそうなかぼちゃ色のお菓子がたくさん並ぶ露店、かぼちゃのブローチやかぼちゃマークの編みこまれたリボンのお店。石畳の道の左右に立つ街路樹で揺れるかぼちゃおばけの形した角灯。
 さわさわ、ざわざわ。
 思い思いのおばけの仮装に身を包んだ古都ダスティンクルの人々が、聞き慣れないヴォロスの言葉で喋る。たくさんのひとのたくさんの言葉がゼシカの耳をくすぐる。聞き慣れないのに、知らない言葉のはずなのに、耳を傾ければ言葉の意味は不思議と心に届く。
 知らない人ばっかりの知らない街だけれど、顔をぐっとあげれば藍色の空には星がきらきらしているし、街は星のきらきらに負けないくらいお祭りの灯で輝いている。お祭りに繰り出した人々はみんな明るい顔で笑っている。
 賑やかに笑いさざめく人々の顔を、身体を包むお祭りの熱気を感じているうちに、胸の中の小鳥は今度は楽しげに唄いだす。わくわく弾みだす。
 跳ねる心と一緒になって、ゼシカはぴょんと一度飛び跳ねる。スカートの裾も金色の髪と葡萄の髪飾りも、肩から提げたポシェットも、ゼシカと一緒にふわりと跳ねる。
 かぼちゃ飾りと灯の光で溢れる賑やかな街路をゼシカは歩く。路地の向こうから聞こえる明るい音楽に足を止め、露店の傍らで迷惑そうに丸くなるかぼちゃの仮面を被せられた猫の背中をそっと撫で、擦れ違う華やかな仮装の婦人を頬染めて見惚れて、――
 ふと、ゼシカは知らない街と知らない人々の真ん中で立ち尽くす。
 青い眼がきょとんと瞬きする。迷いもなく歩いていた踵がうろうろと惑い始める。小さな手がポシェットの紐を心細げに掴む。
 立ち止まるゼシカの肩を頬を、冷たい布が掠めて過ぎる。大人の足が腕が、小さな身体を邪魔そうに避けて行く。
 周りの大人がぼんやり歪んで、ゼシカは泣き出しそうになっていることに気付いた。慌てて俯く。みんなこんなに楽しそうなのに、泣いちゃったりしたらきっといけない。
 ぎゅっと肩に力を籠める。片手にポシェットの紐、もう片手にスカートの裾を握り締める。地面をぐうっと踏ん張って、瞳をめいっぱい開いて涙をがまん。
 がまんしてたのに、それなのに、
「どうか、しましたか……?」
 優しい声が降って来た途端、ぽたり、うっかり涙が地面に落ちてしまった。眼を覆っていた涙の膜が剥がれて落ちる。俯いた視界の中に、黒い服着た大人の足がくっきり映る。
「誰かとはぐれてしまいましたか」
 男の人の柔らかな声が降って来る。優しい手が腕に触れる。腰を屈めてゼシカと眼の高さを合わせてくれる。
 その人の顔は黒い翼広げた鳥のかたちした仮面に覆われていた。仮面の奥から心配そうにゼシカを見る黒い眼がとてもとても優しくて、ゼシカは眼に残った涙が頬を伝うのもそのままに、その人を見つめる。
 黒い翼は光の加減で青くも見える。翼の先と鳥のお腹や胸にあたる部分が真白の色した鳥さん。
「カササギさん」
 昔見た鳥の図鑑の記憶を辿って、ゼシカは仮面が表す渡り鳥の名を思わず口にする。お伽話で、お空の川の橋渡しをする鳥さん。
 ふわり、仮面の奥の眼が微笑んだ。
「はい」
 丁寧な言葉で答えて、男の人はゼシカの頬を伝う涙を冷たい掌で拭う。
「カササギさんです」
 よくご存知ですね、と褒められてゼシカはちょっと嬉しくなる。カササギさんの優しい声と掌のおかげか、知らない人に会うたびことことと震える胸の中の小鳥は今は不思議と大人しい。
「こんばんは」
 冷たくて優しい掌に撫でられた頬がぽかぽか温かくて、それがなんだか嬉しくて、ゼシカはカササギさんに挨拶する。
「はい」
 カササギさんは嬉しそうに笑ってくれる。
「こんばんは」
 カササギさんの言葉は、周りの仮装の人々と聞き慣れない言葉とは違って、真直ぐに届いてくる。どうしてかな。
「カササギさん」
 カササギさんの声をもっと聞いてみたいと思った。カササギさんを呼んで、けれどそこから先の言葉が思いつかなくて、仮面の顔をじっと見つめる。言葉が出てこないせいで胸の小鳥がことこと暴れ始める。
 カササギさんが立ち上がる。もう行っちゃうの、ゼシのこと置いてっちゃうの。
 置いていかないで、そんな言葉さえ声に出来なくて、ゼシカは俯く。
 俯いた頭に、カササギさんの優しい掌が触れた。弾かれたように顔を上げると、ゼシカの頭よりもずっと高い位置にカササギさんの柔らかな笑みがあった。
「お城に行きましょうか」
 カササギさんはゼシカの頭の上を確かめる。見えない何かを探すように黒い眼を細くする。その眼は何だか悲しんでいるようにも微笑んでいるようにも見える。
「きっと貴方を知る方も、……」
 カササギさんは言いかけて、慌てたようにゼシカの前にもう一度しゃがみこむ。失礼しました、と丁寧に謝ってくれる。
「お名前を、教えてもらえませんか」
 頭を下げた拍子にカササギの仮面がずれそうになって、カササギさんはぶきっちょな手つきで自分の顔を押さえた。
「私のことは、どうぞカササギと呼んでください」
 そう言うカササギさんが何だかやっぱり悲しそうで寂しそうで、
「カササギさんも、迷子なの?」
 ゼシカは思わずカササギさんの大きな手に手を伸ばす。カササギさんの手を両手で握って名乗る。
「ゼシよ」
 そうして、気付いた。カササギさんは、ゼシと同じ言葉を話している。
「ゼシさん」
 カササギさんはゼシカの名を口にして、仮面の隙間から見える口許を優しく笑ませた。カササギさんの笑みにつられて、ゼシカの青い眼に笑みが浮かぶ。
「私は迷子ではないですよ」
 ゼシカの片手を大きな掌で包んで、カササギさんは立ち上がる。賑やかなお祭りの人波を、ゼシカの歩みに合わせてゆっくりゆっくり歩き出す。
 大きな手に手を引かれて歩けば、さっきまではあんなに怖かった知らない人波も知らない街も、ちっとも怖くなかった。露店から掛けられる知らないおばさんの呼びかけも、傍を駆けて行く仮装の男の子も、あちこちの軒先に掛けられたかぼちゃおばけの飾りも、どこかから聞こえてくる大きな音の知らない音楽も、全部ぜんぶ、何にも怖くない。
「ちょいと兄さん、買ってかないかい」
 露店から大きな声で呼びかけられるたび、カササギさんは律儀に足を止める。ゼシカの頭よりも大きなかぼちゃおばけ型の角灯を勧められてはすみません持って行けませんと謝り、原色の飴で出来たゼシカの背丈もある魔女の杖を押し付けられそうになっては心底困った様子で後ずさる。
「お父さんとお揃いでどうかしら?」
 ゼシカの掌よりも小さなかぼちゃ飾りをたくさん並べた露店のお姉さんに話しかけられ、ゼシカは小さな身体をますます小さくする。思わずカササギさんの手に両手で縋りついて、黒い服で覆われた足の後ろに隠れてしまう。
「ああ、いえ、娘ではないのですが……」
 ゼシカはカササギさんの黒い服の裾に顔を隠しながら、カササギさんの困ったような声に耳を澄ませる。カササギさんの大きな手が、大丈夫、と頭を撫でてくれる。
 カササギさんの服の裾をぎゅっと掴んで、真っ赤になった頬をそこに押し付ける。
(おうちの、におい)
 カササギさんは、生まれ育った教会付きの孤児院と同じ匂いがした。教会で焚かれるお香の匂い。教会のシスターの匂い。こっそり探検した屋根裏で見つけた、あの写真が入っていた小さな箱の匂い。
 ゼシカはカササギさんを見仰ぐ。おうちのにおいがするのは、カササギさんがゼシと同じ言葉を喋る人だからかな。シスターとよく似た色の服を着ているからかな。
「ゼシさん」
 頭をもう一度撫でられて、ゼシカは顔を上げる。
「よければ、貰ってください」
 目の前に広げられたカササギさんの掌には、小さな小さなかぼちゃの飾りがふたつ。にっこり笑ったオレンジかぼちゃおばけとイエローかぼちゃおばけ。
「いいの?」
「お嫌でなければ」
 嫌なんかじゃない、ゼシカは首を横に振る。
「ありがとう」
 オレンジさんはゼシ、イエローさんはカササギさん。
「ふたつでもいいのですよ」
「うううん、ひとつずつよ」
「ありがとうございます」
 買って貰ったのはゼシカの方なのに、嬉しいのはゼシカの方なのに、カササギさんはとても嬉しそうに笑う。カササギさんの笑顔が嬉しくてゼシカも笑う。
 朗らかな笛とお腹に響く太鼓と遠くまで流れる弦楽器の音が近付いてくる。一晩中のパレードだよ、と露店のお姉さんが教えてくれる。
 ゼシカの周りの仮装の人々から歓声があがる。
「見えますか」
 賑やかな衣装の隙間から覗いてみたり、懸命に背伸びをしてみたりしたけれどもやっぱりパレードは見えなくて、ゼシカは肩を落とす。
「手を」
 カササギさんに言われるまま、両手をさし伸ばす。おうちのにおいが近くなる。
 カササギさんの両腕に抱き上げられて、目線がぐっと高くなる。慣れない高さがちょっと怖くて、ゼシカは両手でカササギさんの首にしがみつく。
 音楽に乗って、たくさんのかぼちゃおばけの仮面の行列が行く。かぼちゃおばけたちが笛を吹き、弦楽器を掻き鳴らし、太鼓を叩く。音楽に乗ってたくさんのかぼちゃおばけたちが踊る。きらきら光る紙ふぶきを撒き散らす。
 ゼシカは眼を丸くする。心がわくわくと跳ねて、跳ねるままにくすくす笑う。カササギさんの首にぎゅっと抱きついて、
(パパってこんな感じかな)
 手を引いてくれる大きな掌も、抱き上げてくれる両腕も、優しく笑って見つめてくれる眼も、全部ぜんぶ、心を嬉しくしてくれた。何も怖くなくしてくれた。
「ゼシね、パパを探してるのよ」
 カササギさんに抱きついたまま、ゼシカはぽつり、零す。
「ママ、ゼシを産んで死んじゃったの」
 カササギさんが息を呑む。悲しい溜息をそっと洩らす。
「パパ、きっとどこかで迷子なんだわ」
「そう、ですか……」
 パレードが遠くなる。
 カササギさんの優しい手が何度も何度もゼシカの頭を撫でる。励ますように、勇気を分けるように、寂しさを温めるように。
「私にも」
 首にしがみつくゼシカを両腕で抱き締め返して、カササギさんは息をそうっと吐く。
「愛しい妻と子供がいたのです」
 カササギさんの襟元に鼻を押し付け、ゼシカは胸いっぱいにカササギさんの匂いを吸い込む。カササギさんは、やっぱりおうちのにおいがする。
「ですが、私が至らないせいで妻も子供も、……」
 頬と頬がくっつくくらいに近いカササギさんの囁き声が深く沈む。
「私は、妻と子供を死に至らしめてしまいました」
 お腹が痛いような声でカササギさんは言う。
「私が、最愛の家族を殺したも同然です」
 カササギさんは自分で自分のお腹にナイフを突き入れている、そんな気がした。痛くて痛くて堪らないのに、そうしなきゃいられない、そうしていなきゃ立っても居られない。
 カササギさんの声が震えるのを、肩が震えるのをどうにかしたくて、ゼシカはカササギさんの首にしがみついていた腕をぐっと伸ばす。カササギの仮面の奥にある黒い眼を真直ぐに覗き込む。仮面に半ば覆われたカササギさんの頬を小さな両手で包み込む。
「でも、」
 言いかけて、言葉が詰まる。カササギさんは泣いていた。大人の男の人が、家族を想って泣いていた。
「でも、カササギさんのお嫁さんと子供は、やさしいカササギさんが大好きだったんでしょ?」
 きっとそうに違いない、ゼシカはそう決める。会ったばかりのゼシカだってやさしいカササギさんを大好きなんだから、お嫁さんになるくらいだから、子供として生まれようとするくらいだから、カササギさんの家族はカササギさんが大好きに決まってる。
 かなしい眼のカササギさんに笑って欲しくて、ゼシカはゼシカが話せる言葉の限りを尽くす。
「お嫁さんが死んじゃったのはカササギさんのせいじゃないわ」
 カササギさんの冷たい頬を、ゼシカは一生懸命に擦る。お互いに大好きなのに、殺しちゃうなんて絶対にありえない。神様はそんな運命を人の背に負わせたりしない。ゼシカは幼い心にそう信じる。
「もしゼシがカササギさんの子どもだったら、」
 優しいカササギさんの子どもだったら。
 この人がゼシのパパだったら。
 優しい、かなしい眼がすぐ近くにある。少女の青い眼を映す黒い眼にみるみる新しい涙が溢れる。何かを、誰かを思い出したかのように男は少女を抱き締める。
 ゼシカはカササギさんの首に力いっぱい抱きつく。
「……大好きなお父さんが泣いてるの、いやだもの」
 言った途端、涙が零れた。カササギさんの首に額を寄せて、ゼシカは小さな悲鳴にも似た嗚咽を洩らす。
「泣かないで」

 ゼシカの手にはオレンジかぼちゃおばけの飾り。
 カササギさんの手にはイエローかぼちゃおばけの飾り。
 お城までは、目の前にある広い階段を登れば着く。広い階段を、色んな色の光を放つ不思議な角灯を持った仮装の人々が登って行く。
 不思議な光の中で、ゼシカはカササギさんを見仰ぐ。繋いだ手を離すまいと小さな手に力を籠める。
「さあ、着きましたよ」
 それなのに、カササギさんは階段の半ばでゼシカの手を解こうとする。まるでお城には行きたくないみたいに光集うお城からカササギの仮面を背ける。
「お城、一緒に行かないの?」  
「いえ」
 カササギさんはゼシカの小さな手をそっと撫でる。
「もう行かなくては」
 静かで、けれど断固としたカササギさんの声に押し退けられて、ゼシカは掴んでいた大きな掌を離す。ゼシカの頭をもう一度撫でて、カササギさんは踵を返す。振り返らない背中が、光掲げる仮装の人々の中に紛れてしまう。
「カササギさん」
 精一杯大きな声で、ゼシカはカササギさんに呼びかける。
「ありがとう」
 カササギさんの背中はもう見えない。見えない背中を追いかけて、階段を下りる。赤や橙、黄や緑、様々の光がゼシカの脇を通り抜ける。光の川のその底で、ゼシカは足を止める。スカートの裾をふわり揺らしてしゃがみこむ。
 カササギさんが通り過ぎた道の後に、古い写真が一枚。カササギさんの落し物かな、と拾い上げた写真には、大きなお腹を両手で抱いて幸せそうに微笑む、
「……ママ?」
 ゼシカとよく似た女の人。
 写真を抱き締めるゼシカの傍に、小柄な影が不意に立つ。尖がり帽子に猫の仮面の少年は、ゼシカの横に腰掛ける。
「幻、見たか?」
 楽しげに問いかけて来る少年を見、ゼシカはもうどこにも見えないカササギさんの背中を探して視線を彷徨わせる。小さく囁く。
「幻じゃないわ」
 幻なんかじゃないもん、繰り返すゼシカの手にはママの写真とオレンジ色のかぼちゃの飾り。
 それから、繋いだ手の確かな温もり。


クリエイターコメント お待たせいたしました。
 烙聖節に華やぐ古都でのおはなし、お届けにあがりました。
 今回は離れてしまいましたが、ふたりがいつか必ずもう一度、手を繋ぎ合えますように。そう願うばかりです。

 おはなし、聞かせてくださいましてありがとうございました。
 またいつかお会い出来ますこと、楽しみにしております。
公開日時2012-02-18(土) 21:00

 

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