樹海は、どのような謎を秘めているのか。 そして、広大な「前人未到の領域」には、どんな冒険が待つのだろう……? それはおそらく、全てのロストナンバーが持つ疑問であったろう。 今回については、本格的な探索を行おうと考えた酔狂なひとびとは、彼ら以外にもいた。すっごいいっぱいいた。観光シーズンの青木ヶ原なみの大人気スポットですよもー。みんな前のめりで樹海にGO〜な今日この頃! そんなこんなで、遅れをとってはならじと、再びの探検隊が結成されたのだった。 +++++++++++++++++++++++ 【樹海探検隊/メンバー表】 虎部隆………隊長 相沢優………記録係 一一 一………影の大黒柱 しだり………NEW COMER! +++++++++++++++++++++++ なお、装備と食料の準備が充実しているのは、いつものことである。 ** 青よりも赤よりも、ひとは、緑の階調を見分けることができるという。 浅緑。深緑。若緑。老緑。 したたる緑のあいだをぬい、腰まである草をかき分け、彼らは歩き続ける。 しっとりとした苔が、まるで引き止めるように足を包み込んでも、彼らの探索が停滞することはない。 奥へ、奥へ。もっと先へ。行けるところまで。 鬱蒼とした原生林が枝を伸ばし絡み合っているさまを、ふと優が見上げた――そのときだった。 頬をかすめ、鋭く黒い風が吹いた。 いや、風だと思ったそれは……、(……鳥?) 漆黒のオオワシが一羽、猛々しい翼を広げ、飛翔している。オオワシは彼らを認識したうえで旋回し、原生林の枝に止まった。「ラファエルさん?」 どうしてそう呼びかけたのか、優にもわからない。 ラファエルが青いフクロウであり、このオオワシと似ても似つかないことは、優にはわかってるはずなのに。 ――強いていうなら。 出身世界を同じくするもの特有の雰囲気が、漂っていたからというべきか。「ヴァイエン候をご存じか、ヒトの少年よ」 壮年の男の声で、いらえがあった。 あのフクロウやシラサギと同じ匂いを感じるのに、ひどく対照的な、厳しく険しい冷ややかな声。 「……? 俺が知ってるのは、ラファエル・フロイトさんっていう、青いフクロウさんですけど……」「成る程」 オオワシの声に、重い怒りがこもる。「候が生き伸びておられたとはな。陛下に、あのような背信をしておきながら」「どういうことですか?」「もしや、あの呪われたシラサギも共に居るのか? 忌々しいことだ」 吐き捨てるように言うオオワシを、隆が睨みつけた。「おいおいおい、さっきから聞いてりゃなんだよおっさん。ラファエルさんやシオンが何したっていうんだよ。説明してもらおうじゃんか」 しかしオオワシは、それには答えず、前方を見る。「そんな話をしている暇などないようだぞ、少年」 いち早く異変に気づき、反応していたのは一だった。「チャ、チャチャチャチャ、チャイチャイチャイ」「どんなときでもノリがいいなあ、一やんは」「ちっ、違っ、そっ、そこに」 震える手で、一は指さす。 「チャイ=ブレが……、います」 一同は、見た。 アーカイヴ深層にいた、あの、恐ろしい存在と酷似した、巨大なそれが……。 今、彼らの前で、目を見開いているのを。「うっそお~~~!?」 目を見開く隆の前で、チャイ=ブレもどきは、微妙にすがたを変えつつあった。 少しずつその身体を攻殻で覆い始め、やがて、その背に亀裂が走る。 細い線のようだった裂け目は、みるみるうちに広がった。 淡い光が生まれ、背を割って、透明な羽根が伸びていく。「なんなんだろうなー、この超展開」 がしがしと、隆は頭を掻く。「チャイ=ブレじゃないと思う……」 そう言ったのは、しだりだ。「見かけだけ似てるけど、違う気がする」「じゃ、じゃあこれって何なんですか隊長〜〜〜! どうしましょう〜〜!? 戦うんですかこれと? 勝てる気がまっっっっったくしないんですけど!」「なんかすごいワームってことだな! よし、隊長命令!」 隆の判断は迅速で、かつ、堅実だった。 い の ち だ い じ に。 一同は撤退を決意した。 じゃ、そーゆーことで! と、きびすを返したのだ。 だが、虎部隊長命名の「なんかすごいワーム」は、巨体に似合わぬ素早さで移動するではないか。 たかしは、にげようとした。 ゆうは、にげようとした。 ひめは、にげようとした。 しだりは、にげようとした。 だが、まわりこまれてしまった! さあ、どうするどうなる? 樹海探検隊、絶体絶命……!=========!注意!企画シナリオは、便宜上、参加枠数が「999」になっていますが、実際には特定の参加予定者のために運営されています。この企画シナリオは下記のキャラクターが参加予定です。他の方のご参加はご遠慮下さい。万一、参加予定でない方のご参加があった場合は、参加がキャンセル(チケットは返却されます)になる場合があります。<参加予定者>虎部 隆(cuxx6990)相沢 優 (ctcn6216) 一一 一 (cexe9619)しだり (cryn4240) =========
ACT.1■ワームのターン ぴしり、ぴしりと、音を立て、ワームの背の亀裂は広がっていく。それは血管のように縦横に走り、甲殻を覆い尽くした。稲妻のかたちのひび割れが、身体全体を細かに包み込んだ瞬間――硬質の表殻は剥がれ落ちていった。 それは何か大いなるものが壊れて、破片となって散っていくさまにも、どこか似ている。だが、決してこのワームが自滅や崩壊をしたわけではなくて、「変化」したのだ、ということを、そしてその変化が常識とはかけ離れていることを、一同は理解した。 「……脱皮」 しだりが、じつに的確な表現をした。探検隊メンバーの中で、この水神がおそらくは一番、冷静に情報を精査・分析できる立場にあった。 しだりの指摘どおり、まさしく、それは脱皮だった。 チャイ=ブレに似たワームは甲殻を脱ぎ捨て、おぞましくも鋭い大鎌を持つ、半透明のカマキリとなった。長く大きく広がった羽根はきらきらと輝いていて、そこだけを見れば美しい蝶のようだ。ひとひとり程度なら簡単にまっぷたつにできそうな死神めいた鎌と、禍々しい逆三角形の頭部とのアンバランスさが異様だった。 「ちょー! 俺たちの心の準備ぃぃぃぃぃーーーー!!!!」 虎部隊長が絶叫する。 身体が乾くのを待っているのか、それとも力をためているのか、カマキリは動かない。 獲物たちに向かって、ぎらつく大鎌を向けたまま、静止している。 その羽根の付け根に、何かが、きらりと光っている。 しだりは無言でそれを見つめてから、おもむろに、水の結界を結んだ。 これでしばらくは、時間が稼げる。 皆がオオワシと話したいのなら、その余裕も多少はあるだろう。 ** オオワシは樹の枝に止まり、厳しい虹彩を放つ目を、こちらに向けている。 静観のかまえを見せている様子に、隆はツッコんだ。 「おい大鷲さんよ、コレはあんたの仕業か?」 「違う」 「違うなら助けてー!」 オオワシのいらえはにべもない。 そして、隆の返しも思いっきりストレートだった。 「さて、いかがいたそう。おぬしらに加勢する道理はないにしても」 漆黒の翼をふさりと広げ、 「このまま、見殺しにするのは後味が悪いというもの」 「見殺しゆうなぁぁぁーーー!」 「うむ。見ればまだ若い少年と少女らゆえに」 オオワシは樹の枝から舞い降りる。 次の瞬間、彼らの前に立ったのは、簡素な黒の革鎧を身につけた、40がらみの男だった。それ自体が鎧のような筋肉の、堂々たる体躯である。狷介で取っつきにくそうな表情や、重々しい物腰は、いかにも融通の利かない、堅物な武人という雰囲気だ。 「あの」 優もまた、オオワシの武人と視線を合わせる。 「ナラゴニアのひとですか?」 「左様」 「俺は、相沢優っていいます。あなたの名前を教えてください」 「ロックと申す。ロック・ラカン」 「ロックさんは、ラファエルさんやシオンさんと同じ出身なんですね?」 「そうだ。それがしは、双翼の大陸が連なるフライジングにて、女王陛下の近衛であった。今は、恩義深き人狼公にお仕えする身」 「そうですか……。俺にとっては、ラファエルさんもシオンさんも、大切な仲間なんです。何があったかはわかりませんし、立場や考えは違うのかも知れないけれど、今は力を貸していただけませんか?」 ひた、と、まっすぐに、優はロックを見据えた。 強くなりたい。大切なひとたちを護るために。 マキシマム・トレインウォーを経て、いっそう強固になった想いが、今も優を突き動かしている。 そのつよいまなざしに、ロックの狷介な瞳が、ほんのわずか、和らいだ。 「そうそう。事情はしらんが、ここはあんたの世界じゃないんだから、禍根を持ち込むのはスマートじゃないぜ。ラファエルさんはいいひとだ」 隆は肩をすくめる。 ロックは腕組みをし、何ごとかを思案している様子だ。 「たしかに、この場の理は、おぬしたちにあるようだ、ヒトの少年よ」 ――だが、おぬしらの「力」を、しばし、見たい気もする。 ロックの口元が、少し持ち上がる。どうやら、笑った……、ようだった。 ACT.2■探検隊のターン 「えーい、鷲ヤローにそこまで言われちゃしかたない、最後まで見届ければチャイ=ブレのことも分かるかも知れない! 逃げずに真っ向勝負で行こうぜ!」 隆は一歩、矢面に立つかのように、進みでた。 「大丈夫、皆を守るのが隊長の仕事だ!」 「……これ。渡しておく」 しだりは、まず優に、次に一に、そして、すっっっごく雑な仕草で、隆に、自分の鱗を渡した。 皆を護るための、保険の意味をこめて。 「ありがとう、しだり」 「しだりさん、ありがとうございます」 「おっ、さんきゅーな」 しだりは、頷く。 優には、親しみをこめて、一には、年相応の女の子に対する態度で。 隆には、 「……今だけだから。あとで全部、回収するから」 と、たいそうそっけない。 そして4人は、それぞれの選択により、動く。 【隆の選択】 フレンドリーに微笑む。 死んだふりをしてみる。 ふしぎなおどりを踊る。 →黒歴史をばらしてみる。 隆の脳裏に、あのとき、アーカイヴ深層でアリッサが言った言葉が蘇る。 ――もし、起きたとき、機嫌が悪かったら、たべられちゃうから。 『食べる』というのが、記憶のことだと仮定する。 そのうえで、捨て身の作戦に挑戦することにしたのだ。 「よぉし、聞け、なんチャイ(なんちゃってチャイ=ブレの略)。必殺奥義、食べたらお腹こわして七転八倒の恥ずかしい記憶を喰らえ攻撃だぁぁぁ! ……あ、隊員は聞くなよ、この呪文は他人が聞くと精神が崩壊するんだ、俺の」 それは、隆くんが小学校新一年生のみぎり。 桜舞い散る校庭でのひとコマである。 「入学式が始まるまで、まだ時間があるわね。お母さん、ちょっとお化粧直しをしてくるわ。ひとりで待てるわね? もう小学生なんだもの」 スーツを新調し、ヘアスタイルもばっちりきめた隆くんのママンは、メイクの崩れを直すためにお手洗いへ行った。その間、隆くんは桜の木のそばにおとなしく立っていた。 時間にすれば、さほど待たされたというわけではない。 校庭には案内係の先生がたもいたし、ママンは挨拶してから行ったので、セキュリティに問題があったわけでもなかった。だが、見知らぬ人々が行き交う初めての校庭で、ぼっちで待っていた隆くんには、永遠のときが経過したように思われたのだ。 桜が散る。 肩に散った花びらを、幼い少年は払い落とす。 何度も、何度も。 少しずつ少しずつ、心細くなっていく気持ちを、振り切るように。 お母さんは、もう、帰ってこないかもしれない。 そんな恐怖に、ふと襲われたとき。 桜吹雪の向こうから、スーツすがたの女性が近づいて来た。矢も楯もたまらず、駆け寄ってしがみつく。 「うわぁぁぁーーーん、おかあさーん。おかあさーん。どこまでおしっこにいってたんだよう。いつまで顔なおしてたんだよう。こわかったよう。しらないひとばっかりでさびしかったよう」 ぐしっ、ぐしっ、と、しゃくり上げながら、止めどなく流れる涙と鼻水を、きれいな色のスーツに押し付ける。 と。 しなやかな白い手のひらが、隆の頭に置かれた。いい匂いのハンカチが、隆の涙をぬぐう。 「虎部隆くん? ……泣かないのよ。お母さんは、もうすぐ戻っていらっしゃるわ」 「………!!!!」 驚きのあまり、思わず鼻水が引っ込んだ。 スーツの色が似ていたので間違えてしまったが、若くて美人で優しげな彼女は、これから隆の担任となる新人教師だったのである。今から思えば、ちょっとフランに似ていたような気もする。 「どうだカマキリヤロー! その後6年間『みんなの憧れの涼子先生をよりによってお母さんと間違えて抱きついた事件』として語り継がれた俺の苦悩の記憶を喰らえぇぇぇぇーー!」 ……。 ……。 ……。 ……。 ゆうは、こめんとを、さしひかえた。 ひめは、こめんとを、さしひかえた。 しだりは、こめんとを、さしひかえた。 わーむは、あさってのほうこうを、みている。 「それなりの戦略があってのことだとは思うのだが」 ロックが腕組みを解かぬまま、生真面目なコメントを述べた。 「ワームには効果を及ぼしてないように見受けられる」 「てめー鷲ヤロー! 聞いてんじゃねーよぉぉ!」 シャーペンの芯を、隆はロックに向けて、ぺしっと放った。 【優の選択】 →防御壁を展開する。 →ワームに接近する。 →ギアで攻撃する。 →今後の戦術を練る。 ワームの様子を観察しながら、優はじりじりと近づいた。 カマキリの大鎌の攻撃力がどれほどのものなのか、今はまだ測る手段がない。 ギアを抜き放つ。 刀身は淡い光をまとい、防御壁を展開していく。 心持ち、膝を落として。 次の呼吸で、一気に切り込んだ。瞬発力を生かして大鎌の下をくぐり抜ける。 剣が風を斬る。 カマキリの腕が、片方、切り落とされた……! と、思いきや。 鈍い音がして、はじき返される。 ワームはこの形態になっても、外殻は思ったより堅いらしい。 (威力不足か。だったら) 戦いながら、優は素早く戦術を微調整する。 防鏡壁を、自分の身体の表面と、剣の周囲へと展開させる。防鏡壁の反発力を利用して、攻撃力を高める手段にでたのだ。さらにギアには狐火操りの力を纏わせる。 鮮やかな太刀筋を描き、剣が一閃、二閃。 カマキリの両腕は、胴体から離れ、宙を飛んだ。 【一の選択】 →ロックと対峙する。 「ロック・ラカンさんですね。初めまして。一一 一です。一が三つ並んで、はじめかず、ひめ」 ぺこり、と、一は、礼儀正しく頭を下げる。どうやらロックは、礼節を重んじるようだと、感じたからである。 「心得た、一。おぬしは戦わぬのか? それがしにかまけていて良いのか? ヒトの少女よ」 「私は戦いに向いていないので。それ以外のところでお役に立ちたい性分なんです」 「後方支援に徹しているということか。己の分を知ることは大事なれど、なかなか出来ぬもの。見上げた心がけといえよう」 「……あの。さしつかえなければ、ラファエルさんたちとの間に何があったのか、教えていただけませんか?」 「それを知って、何とする」 「私たちは、ラファエルさんたちと知り合ってからの期間のほうが、長いです。クリスタル・パレス――あ、ターミナルで運営中のカフェのことです――にも、よく行ったりしてます。ですから、どうしてもラファエルさん側に感情移入してしまいます。悪く言われたら、哀しいです。でも、ロックさんに対して、一方的な糾弾は出来ないし、しちゃいけないとも思います。だって私たちは『何も知らない』んですから」 でも、これから知っていくことはできます。 だから――教えてください。 いったい何が、あったのか。 少女の真摯な瞳に射られ、ロック・ラカンは黙り込む。 しばらく考えてから、ようやく、口を開く。 「あのシラサギは呪われた《迷鳥》であるゆえ、翼を切り落としたうえで、ヒトの帝国の管理下に置くことを女王陛下が定められた。ヴァイエン侯ラファエルどのは、その保護者であったのだが、女王陛下の決定に逆らい、シラサギを連れて逃げたのだ。……陛下の命により、それがしが翼を切り落とそうとした、直前に」 「こう、入り組んでるみたいで、どこまで把握できたか、ちょっと自信ないですけど。でも、それは、過去のことじゃないですか。過去の確執じゃないですか」 「昔の確執ごときにこだわるのは、愚かしいことだと?」 「そこまでは言いませんけど、非生産的です」 一は、きっぱりと言い切った。 「戦争は終わりました。旅団のひとたちも、ターミナルへ訪れる事が可能になりました。その逆もまた然りです。だったら、ロックさんもクリスタル・パレスを訪ねて、ラファエルさんやシオンさんと、直接お話するべきじゃないかと思うんです」 「……ほう。何らかの決着をつけるのが、筋と申すか」 「その方が双方にとって、救いになるはずだと、少なくとも私は、信じています」 私たちは前へ進めるはすじゃないですか。 それに……、だって、寂しいじゃないですか。 ロストナンバー、特にツーリストは、故郷から放逐されて同郷者を失った、とても孤独な存在のはず。 せっかく、会えたんじゃないですか。 貴重な、同郷者と。 なのに、遠く離れた故郷の因縁で、今もいがみ合うなんて、寂しすぎるじゃないですか。 「食べてみてください。これ、ラファエルさんが作ってくれたんです」 一は、エナメルバッグからサンドイッチを差し出した。 探検隊のつねとして、全員、出発前には、食料調達のためクリスタル・パレスに立ち寄っていたのである。 ロックは、怪訝な顔をした。 「それがしが存じ上げている侯は、料理などするようなかたでは……」 「ひとは、変われるんじゃ、ないでしょうか」 【しだりの選択】 →ワームを観察する。 しだりには、わかった。 カマキリの羽根の根元で、光っている「それ」が、何であるか。 あれは、世界計の破片だ。 だから、このワームはチャイ=ブレの情報を含む何かを吸収することができ、一時的にせよ、チャイ=ブレと同じ外見を取ることができたのだろう。 ACT.3■ワームのターン 両腕を失ったカマキリは、それでも必死に羽根を駆使し、宙を飛んでいる。 くわっ、と、開いた口からは、鋭い牙が見えた。 ACT.4■しだりのターン 機動力を削ぐため、しだりは、超高圧の水を刃に変えた。 すさまじい勢いで繰り出される、水の刃。 カマキリの羽根は、さっくりと斬り落とされた。 ACT.4■優&隆&ロックのターン 「おし。羽根が斬られたところで、こりゃあ、やっぱ、懐に入り込んで急所を刺すっきゃないかな」 「すみませんがロックさん。上空に連れていってもらっていいですか?」 「何とするつもりか?」 「剣を垂直に構えて、防鏡壁を展開しながら、空から一撃できれば、って」 「思い切った判断は、なかなかに好ましい」 ACT.5■一のターン 優のギアの一撃は見事に決まった。 ワームが大きく口を開け、断末魔の道連れにせんと、のたうち回る。 「今、楽にしてあげます!」 その口に、一は、クリパレで自身が作ったサンドイッチを放りこんだ。 ……綾直伝の、ロシアンサンドを。 ごくん、と、飲み込むなり、ワームはあっさり倒れた。 「やったー! 探検隊の友情パワーですね!」 ひめは、にこにこした。 たかしは、うーん、と、うなった。 ゆうは、うーん、と、うなった。 しだりは、どうつっこんでいいか、かんがえている。 ろっくは、もらったさんどいっちを、みつめた。 ACT.6■司書室にて ワームから入手した世界計の破片を渡すため、4名は、無名の司書のもとを訪れた。 「おかえりなさーい。樹海探索、どうだった? 楽しかった?」 きらきらした目で出迎えた司書の肩に両手を置き、隆はがっくりとうな垂れる。 「死ぬかと思った」 ** あのあと。 4人とロックは、しばらくの間、一緒に樹海を探索してみた。 一時的な、同行者として。 可能な限り遠くまで行ってみたのだが、しかし、その果てに辿り着くことはできなかった。 ただ、わかったことが、ひとつ。 図書館と旅団、どちらに属していようとも、さして、変わりはないのだということと―― 人狼公に仕えているオオワシと、何らかの縁ができた、ということを。
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