オープニング

 しゃァん、しゃァん、ぢゃァん。
 響き渡るは鈴鳴と、打たれる鐘の音。

 しゃァん、しゃァん、ぢゃァん。
 煌めくのは翻る白刃、躍る五色の彩。

『何故』
 澱んだ街を覆う宵闇に、震える声が染み渡る。混濁した大気の中で冴え冴えと刃は輝き、柄に纏う五色の羅紗が鮮やかに閃く。
 青き仮面に金の縁取りを施して、夜闇に融け切れぬ黒衣の鬼は、再び問いを口にした。
『何故、剣を手にした? 弱き人間よ』
 対峙する男に、答えるべき言葉はない。
 仮面の鬼は沈黙を聞き届け、鋼の刃を翻した。

 しゃァん、しゃァん、ぢゃァん。
 星の昇らぬ夜空に、鮮烈な赤が爆ぜる。



「霊力都市・インヤンガイのリージャン街区にて、連続殺人事件が起こっています」
 集まったロストナンバーに向けて一礼を送り、世界司書リベル・セヴァンは静かにページを捲った。
「これは私が見た光景です。現地では、未だに殺人犯の姿は確認されていません」
 ただのひとりも、その剣劇を目撃した者はいない。そう前置きをして、怜悧な女司書は事件の概要を語り始める。
「リージャン街区には、巡節祭の時期に行われる伝統的な祀事として、『剣戟』と言う舞が在ります。――犯人は、その舞手と同じ格好をしていました」
 死者の魂をその身に背負った鬼神『ヘイイェ』と、四人の剣士が勇猛な戦いを繰り広げたという伝承を下敷きにした、鎮魂の儀式だ。一年の始まりを祝う巡節祭を一カ月後に控えた街は今、その準備で忙しいと言う。
「青い仮面に、金の装飾がなされた黒い衣。鬼神役の舞手が身につける装束です。衣装は去年の鬼神役が保管していますが、複製は可能でしょう」
 青い燐光をその身に纏いて、五色の羅紗に飾られた髪と二剣を振り乱す、それは紛れもなく、伝承の鬼神そのものであった。リベルは導きの書に垣間見た情景を、淡々と語る。
 人の背丈をゆうに超える跳躍を見せ、着地すれば足場を砕き、剣の一振りでコンクリートの壁をも薙ぎ払う。勇壮に、豪放に舞う黒夜の鬼神は、人知を越える怪力を有している。だが、人がそれを演じているのか、暴霊が人の形を取っているのかは『導きの書』で見た限りではわからなかったと言う。
「私からの話は以上です。……詳しくは、現地の探偵、ユー・イェンに伺ってください」
 そこで話を区切り、怜悧な世界司書は再び深く頭をさげた。


「遅い」
 錆びれた事務所のドアを潜った旅人達を出迎えたのは、そんな苛立ちの声だった。ドアの向かいに位置する回転椅子に腰掛けて、不機嫌な面持ちで頬杖を付く一人の男。
「情報屋に繋ぎを頼ンでからもう三日だ。アンタらんトコ、時計狂ってんじゃねェの?」
 イェン、と手短に名乗ったリージャン街区の探偵は、口早にそう言いながらも彼らをソファに座るよう促す。
 霊力開発が遅れ、インヤンガイの中では比較的平穏な区域に突如として起こった連続殺人事件だ。平素は適当なこの探偵も、流石に今回ばかりは焦りの色が濃い。がりがりと頭を乱雑に掻き乱し、ひとつ息をついた後、探偵は幾分か落ち着きを取り戻した様子で彼らの前に書類――写真を並べた。
「早速だが事件の話に移るぜ。殺されたのは今日までに七人、どれも二~三十代の男だ。全員、一太刀で首をはね飛ばされてる」
 抵抗の隙すら許さず、いずれも背が高く体格のがっしりとした男達を一刀で斬り伏せている。並べられた写真を覗き込むロストナンバー達に構わず、探偵は話を続けた。
「去年アンタらに手伝ってもらった巡節祭の事件があったろ。――あン時の舞手の一人も殺られてる」
 とんとん、と枯れた指先が指し示すのは、精悍な顔立ちをした、しかしインヤンガイの住人にしては色素の薄い男。写真の右上隅には白い点が小さく打たれて――否、この男だけではない。白、青、朱と何色かの点が、それぞれの写真の隅に描き込まれている。
「コレが事件が起きた順に場所を書き込んだ地図だが、日時・場所共に法則性はまるでない」
 並べた写真の傍にごちゃごちゃとした街の平面図を広げてみせ、その隙間に穿たれた七つの朱点をひとつずつ指し示していく。次の事件が起こる場所を予測することは難しそうだなと、旅人達の内心を代弁して男はわずか自嘲気味に唇を歪めた。
 この探偵の下に事件の依頼が舞い込んだのは、もう二週間以上も前になると言う。ちょうど三人目の犠牲者が出た直後だ。
「……四人を、助けるコトができなかったンだ。オレじゃァ」
 曰く、幾ら追いかけてもその尻尾を掴むどころか、己だけでは姿さえも目にする事はできなかったと。
「暴霊の仕業か、生きた人間の所業か、ソレすらも判らねェ。……だが、どんな理由があったとしてもこの不条理を見逃していいワケがねェ、そうだろう!?」
 だァん、と並べられた写真が浮き上がるほどに強く机を叩き、憔悴しきった顔で探偵は強く声を荒げた。震える肩を誤魔化しもせずに四人の協力者の顔を見回して、一度深く頭を下げる。深く、机と額とが擦れ合うのではないかと思えるほどに深く。
「……頼む」
 そうして絞り出された声は、鋼のように打ち震え、冷たい色をしていた。
「ヘイイェがこんなコトをするはずがないんだ。――あのニセモノを、捕まえてくれ」


 しゃァん、しゃァん、ぢゃァん。
 昏い街の何処かで、鈴鳴の跫が響いた。

品目シナリオ 管理番号1126
クリエイター玉響(weph3172)
クリエイターコメント皆様、こんばんは。玉響です。

こちらのノベルはインヤンガイを舞台とした二本立てのシナリオを予定しております。
ですが、前編だけ、あるいは後編だけのご参加も歓迎ですので、気兼ね無くご参加くださいませ。

前編は地道な調査、推理を行っていただきます。
今回はゲーム的な要素として二箇所ほど判定を用意しており、それらの結果如何により後編の内容が変化いたします。OP中に散りばめられた情報から、この事件に対する皆様の考察・調査方法などをお聞かせください。
また、当方の過去シナリオ「【巡節祭】青き鋼と黒夜神」と少なからずリンクしておりますので、そちらもお読みいただければまた新たなヒントなどが得られるやもしれません。

このノベルでは状況によっては後味の悪い結末を迎えることがあるやもしれませんが、御容赦くださいませ。
ちなみにプレイング受付期間が6日とやや短くなっております。お気を付けください。

それでは、参りましょう。死の季節を自在に舞い踊る、鈴鳴の跫を追いかけて。

参加者
ヴィヴァーシュ・ソレイユ(cndy5127)ツーリスト 男 27歳 精霊術師
黒城 旱(cvvs2542)ツーリスト 男 35歳 探偵
百田 十三(cnxf4836)ツーリスト 男 38歳 符術師(退魔師)兼鍼灸師
リーリス・キャロン(chse2070)ツーリスト その他 11歳 人喰い(吸精鬼)*/魔術師の卵

ノベル

 額と共に机に強く擦りつけられた探偵の右手に、武骨な男の手が重なった。制止の声も上げず探偵の懇願を止めて、弾かれたように振り仰ぐ彼へ、黒城 旱は緩くかぶりを振る。
「まあ落ちつけよ、探偵さん」
 縒れた煙草を一本取り出し慣れた所作で火をつけ、雑多に積まれた書類や灰皿に集まる吸い殻の山、淀んだ室内の空気を懐かしく思って視線を彷徨わせた。
「俺も探偵だが、焦ったって事態が好転するなんて事は絶対起こらないぜ?」
「……判ってる」
 紫煙を吐き出しながらのんびりとそう述べ、一本どうだと探偵にも差し出した。
「しかもこんな可愛いお嬢ちゃんも一緒なんだ、俺としちゃ気合の入り方も違うってモンだぜ。なぁ、リーリス?」
「うん」
 へらり、と緩い笑みを浮かべて金髪の美少女――リーリス・キャロンを指差して言う。旱としては割と本気の発言であったが、探偵には冗談として受け止められたらしく、弱弱しい苦笑が返った。
「では、イェン。幾つか確認したい事があるが、いいか」
 宥め役は旱に一任し、事態の成り行きを見守っていた大柄の男――百田 十三が、机に僅か身を乗り出した。並べられた写真の右上、書き込まれた何色かの点を指差していく。
「この色分けの意味はなんだ? お前は五行を知らぬと聞いたが」
「……それ、一年前の奴も言ってたな。何なンだよ、五行ってのは。そりゃ五色のつもりだ」
「ごしき?」
「この地に伝わる思想の一つでしょう。ほぼ、壱番世界の五行思想と変わらないと聞きました」
 首を傾げる旱に、怜悧な美貌の青年が注釈を加えた。感情の燈らない、左だけの緑眼が、ゆっくりと七つの写真を見比べている。
「ですが……五色だとしても、一色足りませんね」
「金か」
 ヴィヴァーシュ・ソレイユの白く繊細な指先が、左から順に点を指差していく。青、赤、白、黒、青、赤、白――被害者たちはこの順で殺されたようだった。
「金と言えば五行思想では土行・中央・黄龍などを象徴するが……何故、それだけが殺されていないか心当たりはあるか?」
「知らねェよ。殺人鬼に聞いてくれ」
 つっけんどんに突き返す探偵の表情が、憮然としたものに変わる。剣呑な雰囲気を打ち破るように旱が声を上げた。
「んじゃ、別の質問をしよう。どうしてお前は犠牲者に五色を割り振ったんだ、探偵さん?」
「……どうせ気付いてンなら、答える意味もねェな」
 つまりは、旅人達の予想するもので正しいと。そっぽを向いたまま答えが返る。薄暗い天井に蟠る紫煙は蛍光灯の光を遮り、室内に幾重にも連なる影を落とすような錯覚さえ与えた。
「おまえの知り合い……白の舞手が殺されたのは三番目という事でいいのか?」
 先程探偵の指さした色白の男の写真を目の端に留め、十三がそう問えば、探偵は頷いた。知人の死をきっかけに、この依頼を引き受ける事にしたのだという。
「では、もうひとつ訊きたい事がある。この街区に鬼神の装束は幾つ保管されている?」
「オレが持ってる儀式用の一つだけだ」
「ならば、それを見せてもらいたい」
 威圧感溢れる容貌の十三の言葉に、億劫そうに腰を上げた探偵は事務所の奥へと姿を消した。ほどなくして、豪奢な黒の衣装と青い仮面を手にし、男が戻ってくる。
 重要な祭具であるはずなのにぞんざいに放られたそれを受け止め、机の上に広げて十三は検分を始めた。他の三人も周りに集まり、それぞれに気になった点を探っていく。
「返り血は……ねえな」
「では、やはり鬼神の衣裳は複製されたもの――」
「……いや、」
 二人の会話に思わず否定を返し、その先に続く言葉を、十三は呑み込んだ。今は口にするべきではない。代わりに、装束の検分を続ける。
 その横顔を、少女の紅の瞳が見つめている。
 十三は勿論それに気付いていたが、振り返り、眼を合わせる事はしない。それを視てはならぬと知っているゆえに。
「ところでイェンおじちゃん」
「ん?」
 振り返る事のない十三につまらなさそうに唇を尖らせ、しかし少女は愛くるしい笑顔を振りまいて探偵の元へと駆け寄った。
「事件のあった日とか、よく眠れてる? 眼の下のクマ、凄いよ?」
 眼帯で片目を隠し、ひとつだけ残されている真紅の瞳。
 探偵の眼が一点に集中するのを見越して、その瞳孔が大きく開き、顕れた漆黒の虚が対峙する男を捉えた。
「もしかして、睡眠不足で怒りっぽいのかな」
 深淵。
 宵闇にも似て果てのない、冥府の如きその色が顕れたのはほんの一瞬だったが、それだけで充分であった。
「……あァ、」
 茫然と、魅入られたように男が言葉を紡ぐ。
「夢をな、視るんだ」
「夢?」
 ふらつく探偵の身体を、リーリスの華奢な手が支える。
「街を彷徨って、目の前には……男がいる」
 呟く声から、開閉する唇から、瘴気にも似た暗い何かが溢れ出る。リーリスはそれを確かに認めて、幼い唇が笑みの形を刻んだ。
 かたり、と男の肩が震え、それは次第に全身に広がっていく。
「オレには判る。そいつを、探してたんだって。だから、手にした“剣”で、剣で――ッ!」
「剣で? ねぇ、それでどうしたの、おじちゃんは?」
 真紅の瞳が妖しく歪む。煌めきは茫然と謳う男を捉えて離さない。

「その辺にしておけ、リーリス・キャロン」

 鋭く真摯な声が、立ち込める気配を切り裂いた。
 少女と探偵に目を向ける事もなく声を投げ、巨躯の退魔師は腰に提げた紙片を一枚剥がし取る。
「はぁい」
 甘さと幼さを残した口調で素直に頷いて、少女はふらつく探偵を背もたれに預け、机を回り込んだ。蓄積された疲労ゆえか、探偵は糸が切れたように眠りこんでしまっている。
「火燕招来」
 札に呪を書き付け、十三が言葉を編めばそれは翻り、燃え盛る鳥へと姿を変える。
「先程の挙動が気になる。俺の式をつけておこう」
「ああ。……さて、じゃあ俺は行くとするぜ。調べておきたいものがあるんでな」
 灰皿に盛られた吸い殻の山に己の煙草を混ぜ、旱は立ちあがるとひとつ伸びをした。その傍に、少女が駆け寄る。
「ねえ、リーリスもおじちゃんと行っていい?」
「ああ」
 可愛らしい少女の頼みを断る選択など、彼には存在しない。少女の差し出した手を取り、和やかに会話を交わした二人が事務所を立ち去るのを見守って、ヴィヴァーシュもまた立ち上がった。
「この街は、これだけの事件が起きてもまだ、儀式を続けるのでしょうか」
 外套に袖を通しながら、すいと緑の視線を十三へ移す。感情の籠められていない、しかし内面の起伏を確かに感じさせ得る瞳で、若き精霊術師は答えを求めぬ疑問を口にした。
「おいそれとやめられるものでもなかろうよ」
 十三の簡潔な応えに、小さく頷きを返す。
「……ええ、不可思議な存在が紛れ込んでいても不思議ではない街ですし、続けなければならない理由も何処かにあるのでしょうね」
 それが、人の倫理を超えたところに在るのだとしても。


 年に一度、新しい年の訪れを祝う祭。
 街は今の時期、その準備に浮かれている。
 人気の少ない路地裏には陰惨たる事件の影が落ち、暗く湿った気配を漂わせているが、表通りを歩いて情報を集めている分にはその匂いは感ぜられない。民家から点々と垂れる五色の幕を視界の端に映し、旱は当て所もなく街を歩く。
 気紛れな少女は美味しそうなものを見つけた、と通りに並ぶ露店へ消えた。止める暇さえない、吹き流れる風のような自由な素振りであった。
 さてこれから何を調べようか、と顎に手を宛てた旱の頭に、不意にひとつの言葉が蘇った。

『また逢おうぞ、異邦の戦士達よ』

 去年の巡節祭の記録を思い返す。
 儀式の終わり、春の剣士に討ち取られた鬼神は笑い、青き燐光と五色の蝶へと姿を変えて空へ昇った。それは数多の魂の化身であり、黄泉へと至る道筋でもあったと言うのだが。
「燐光に、蝶か……」
 それらしきものでも飛び交っていれば判りやすいのだが、と半ば自嘲気味に曇天の空を見上げた、その視界の端。
 青い燐光を湛えた一匹の蝶が、ゆらゆらと飛んでいく。
「……ビンゴ、ってか?」
 引き攣れた苦笑を零し、しかし旱はその鮮やかな色彩を追った。
 閃く青は、灰色の街の澱んだ大気の中を融けるようにして消える。消えたかと思えばひらりと旱の前を掠めて顕れ、またからかうようにその奥へといざなう。青空よりも鮮やかな色彩の燐光を振り撒いて、燃え盛る焔の奔放さを持って廃屋街を飛ぶ、その姿はインヤンガイの街には不釣り合いなほどに美しい。
 下手に制止の声を上げればふっと掻き消えてしまいそうで――旱はただ無言で、消えては現れるひとひらの青を追って脚を進めた。

 廃屋街を抜け、蝶は街区の果てへ向かう。
 やがて路地は突き当り、儚い青が広がる宵闇の奥へと消えていくのを認め、旱はその場に立ち尽くした。
 剥きだした岩肌の中央で、巨大な漆黒の洞(うろ)がぽかりと口を開けている。
 霊能力を持たぬ彼にさえ、その先へ立ち入る事を躊躇させるほどの気配――神威と呼ぶべきか判然ともつかぬものが、吹き付ける風の如くに溢れだしている。洞に充ちる闇は漆黒で塗りつぶされているだけのようにも、ありとあらゆる色彩が渦を為して黒を形作っているようにも見える。
「……死者の世界から“二里の祠”を渡り、鬼神は現世へと現れるんだったか」
 その洞の名を示すようなものは何一つとしてない。
 だが、溢れ出んばかりの闇を内包したこの洞穴こそが、死者の世へと繋がる“二里の祠”であると、そう言われれば納得してしまうだろう。
「どの国にも、此岸と彼岸を繋ぐ『門』の伝説は残されている」
 背後から声が響く。
 身を強張らせ、しかしその声が聞き覚えのあるものであった事に安堵して旱は振り返る。
「百田」
「これが“二里の祠”か」
 巨躯の退魔師は軽く手を上げ、旱の隣に足を進めた。洞の奥、全てを呑み込むかのような暗闇にふと視線を移し、十三は何やら理解したかのように首を振る。
 尽きる事のない闇、全てを覆い尽くす黒は、慈悲深ささえ孕んでいる。
「……ここの鬼神は、随分と優しいな」
 不意に十三の漏らした穏やかな声音を、旱は聴き逃す事などなかった。訝しげな目を向ければ、羆に似て厳つい容貌の退魔師は緩やかに首を振る。
「死者の魂を共に運んでくださるのだから。……我々の世界では、あまり聞かぬ話だ」
「へえ」
 そう言うもんか、と呟き、新しい煙草を取り出して口に咥える旱の眼には、無彩色に濁る廃屋街が映り込んでいる。
 暴虐と犯罪とが蔓延し、太陽にさえも見放された旱の世界は、この霊力都市によく似ていた。――だから、この世界に何度も足を運んでしまうのかもしれない。
「……ん?」
 ふと、彷徨わせていた視線を一カ所に留める。
 洞の入り口を塞ぐようにして張り巡らされた紙の縄が、ずたずたに切り裂かれていた。視線を降ろせば、砂利道に紛れてその欠片と思しき紙片が散らばっているのに気が付く。内の一枚を拾い上げて、旱はそこに記された文字を読もうと口を開き――、
「……駄目だ、こりゃ読めねえ」
 達筆というよりは悪筆と呼ぶべきか。旅人の恩恵を受けた彼にも読めぬことばの羅列を前に、軽く眩暈を覚えた。
「ふむ。これは呪言か……俺のものとは随分と違う様式だ」
 だが、同じく紙片を一枚拾い、眺めていた十三にはその詞の意が多少なりとも判るらしい。となればやはり呪いや儀式に関するものであろうと、旱は読み解こうとする努力さえ諦めた。餅は餅屋だ。
「猛き鬼を祠の向こう――彼岸に留め、その神性を崇めるもののようだ」
「つまり、奴が無闇に出られないよう張ってあるって事か」
「平たく言えば、そうだな」
 断面から垂れ下がる、縒り編まれた束縛の呪。鬼を崇め、神に感謝し、その荒魂を鎮めるためのそれが、無惨にも破られている。
「だが、神下ろしにはそれなりの手順と器が要る。形を真似ただけでは神は下りんよ……普通はな」
 それを無視し、強引に鬼神を引き摺り出した何者かが居る。切り裂かれた呪符はその確たる証拠ではないか。
 洞の奥を見遣る十三の視線が、鋭く変わる。何もない筈の背後を振り返り、剣呑に虚空を睨みつけた。
「――火燕が破られた」
「は? どういう事だよ」
「異形の力で強引に切り裂かれたようだ。火燕の元となる符を見極めて、的確に」
 これでも魍魎夜界では五本の指に入るほどであったのだが、と豪放ささえ窺わせる顔で苦く笑い、十三はすぐに表情を引き締めた。腰から翻る紙片を破り、目にもとまらぬ速さで何かを書き付け、挟んだ指先で虚空へと滑らせる――と、紙片は紅蓮の炎を纏う一羽の鳥へと変じ、燃える尾を引いて澱んだ街を駆け抜けていった。
「切り裂かれたって事は、イェンはどうした?」
「判らん。次の火燕を飛ばしたが……その場に留まっている可能性は低いだろう」
 襲われたか、攫われたか、或いは己から逃げ出したか。
 己の推測を口にする十三の表情に、しかし焦りや戸惑いの色は見られない。この展開さえも想定の端に置いていたかのような、嵐の中を留まる大木の如き堂々さを持って火燕の飛び往く先を見つめている。
「……鬼神の仕業か」
「火燕――俺に気配さえも悟らせぬ太刀筋の鮮やかさ、恐らくはそうであろうな」
 旱は咥えていた煙草を大地に捨てるとその火を踏み消した。髪をかき混ぜ、息をひとつ吐く。――そして、おもむろに瞼を閉じた。己の力、千里眼を用いる。
 廃屋街を抜けて、人の行き交うリージャン街区へ。
 波間を泳ぐ魚の如くに、するすると己の意識を街に融け込ませていく。広がる視界、意識を鋭利に尖らせて、灰濁した街に燈る一点の黒を探す。鋼の煌めきを。翻る五色の彩を。
 表通りを脇に逸れる。人気のない寂れた路地。
 五色の羅紗を翻し、鈴鳴の跫と共に歩く鮮やかな闇を纏う男の姿。仮面に空いた虚ろな双眸が向う先、二つの人影が視える。インヤンガイの真理数を抱いた精悍な体躯の男と、痩身に光帯びるような銀糸の髪――、
「――ヴィヴァーシュだ!」
 叫びと共に瞼を開く。
「何、」
「鬼神が居た。ヴィヴァーシュと、恐らく舞手の男の前に」
 瞳を開く寸前、最後に視えた景色は、男を庇うようにして立ったヴィヴァーシュの繊手が滑り、渦巻く風刃が鬼神へと襲いかかる姿だった。
 どちらからともなく、二人は駆け出していた。


 しゃァん。

 冷涼なる鈴鳴の跫が響く。
 濃密なる宵闇の気配が、迫っている。

 風の動きでそれを悟り、ヴィヴァーシュは咄嗟に身を翻した。隣を歩く男を己の後ろへ庇うように。暮れ泥む景色の中に、生ける黒を探して眼を凝らす。
 視界の片隅で、影が揺らぐ。
 否、それは影ではなく、黒い闇を纏う異形だ。
 澱んだ大気を固め、鋭い矢の形を描き出して投擲する。
 だが、仮面の男は嘲笑うように身を翻し、地面を蹴って宙へと飛んでそれを躱した。鈴鳴の跫を響かせ、豪放な剣舞にも似て空を駆ける男を、それでも緑の隻眼で以てヴィヴァーシュは追う。風が届かないのであれば焔を落とし、龍の形を持った水を泳がせて、壁を砕き大地を断ち割る男を追従する。
『何故だ』
 大気を震わす、摺鉦の声。
 迫る宵闇にも似た寒々しさを伴って、鬼神が銀の精霊術師へと問う。
『異邦の旅人よ、何故そうして足掻く』
「目の前に在る命を、むざむざと奪われるわけには行きませんから」
 眉ひとつ顰める事なく、冷厳なる光の力を継ぐ者は静かにそう応えた。
 ヴィヴァーシュと舞手とに迫ろうとする鬼神を許さず、刃を通さぬ厚い岩壁を現出させる。仮面の男が怯んだ隙を狙い、壁の向こう側へと焔の雨を降らせる。手応えは無い。一歩退いて、また次の盾を呼びだそうと構えた彼の耳に、不穏な音が響いた。次いで轟く、震動。
 視界を塞ぐ土壁が、一閃により断ち割られる。
 驚いて跳び退るヴィヴァーシュの鼻先を、目にもとまらぬ剣閃が掠めた。柔らかな銀糸の前髪が、幾筋か持っていかれる。開かれた距離もまた一歩で縮められて、青い仮面の男の姿を間近に捉えた。
 仮面に覆われていない口許がいびつな笑みを刻み、低く冷たい金属質な声が響く。
『取り残されて尚、生き続けるのか。愛する者に置き去りにされて、尚』
「――ッ」
 銀の眼帯の奥に閉じ込めた、古い傷が音を立てて彼の心を抉る。
 いたみに言葉を喪ったその一瞬を突いて、鬼神はヴィヴァーシュの脇をすり抜けた。濃密なる闇の気配が、彼の背筋を冷たくなぞり、そしてまた、傷が疼く。
『汝は情深い男だ。――そう、秋の剣士のように、情深く、そして脆い』
 耳に響く、摺鉦の笑い声。
 振り返れば、黒衣の姿は既に遠い。
 戦いの地から遠く離れ、路地の奥へと曲がろうとする背中を追って高く跳ぶ。黒夜の鬼神が灰に凝る大地を踏み抜く度、硬いその面に大きな罅が走った。大地を踏み、闇を跳んで、舞手の男へと肉迫する。
 五色の羅紗を翻し、右手の剣を振りかざす。落ちる勢いそのままに、無防備な後頭部目掛け刃を走らせた。

 鈍い音が轟く。

 剣を持つ手に走る振動は、首を刎ねたそれではない。

「……ッ、悪いな、そう簡単には死なせられないんでね」
『ほう……』
 トレンチコートの裾が、鈍重な宵闇を含んではためく。
 顔前に掲げた左腕で以て勇壮なる鬼神の太刀を受け止め、旱は気丈に笑みを浮かべた。トラベルギアの防御力を用いても、岩さえも断ち割るその剣閃を片腕で受け止める行為は賭けに等しかった。
 重い。
 耳に聴こえる骨の軋む音、噫、しかしそれは錯覚だ。己はまだ折れていない。

 みしり、

 対峙する両者の耳に、それははっきりと届いた。
 己が骨の折れる音か、と感じたが、やはり違う。左腕に圧し掛かる重みが、奇妙に撓んだ。力の均衡を保ったまま、視線をずらす。灰鋼に煌めく剣。今まさに旱の腕を断ち割ろうとしているそれに、小さく亀裂が走っている。
 くつくつと、仮面の下から摺鉦の笑い声が漏れた。
 まるで、己の劣勢を喜んでいるかのように。
『汝は強靭な男だな。我では手を出す事が出来ぬ――黄金の剣士のように』
「……そういやおまえ、金の剣士だけは殺してねェな」
『あれは巡りの中に含まれておらぬ。大地そのものだ。故に我を殺す事は出来ぬし、我が殺す事も出来ぬ』
「へえ……出来ないって? 俺に、お前を殺す事が」

『今はまだ、その時ではない』

 漆黒の闇を切り裂く、光の筋が閃いた。
 鬼神の黒衣、翻る長い裾が断ち割られ、色付いた肌膚が覗き一筋の赤が散る。それがヘイイェ、人の肉体を持った鬼の傷であると認識する前に、仮面の男は跳び退って右腕を抑えた。駆けつけた十三の投げた鉄串が男の腕を掠ったのだと、何処か冷静にヴィヴァーシュは認識する。
 手放した灰銀の刃が、アスファルトに落ちて跳ねる。それを拾い、人の血を流す鬼神は宵闇の装束を翻して路地の奥へと逃げ去った。
「あ、おい、待てっ!」
 唐突な展開にバランスを崩した旱だが、慌てて体勢を立て直してその背に縋る。――しかし、鈴鳴の跫は既に何処かへと消え失せた後だ。耳を澄ましても、千里眼を広げても、捉える事は出来ない。
 旱は肩を落とし、大きく息を吐いた。
「大丈夫か、ヴィヴァーシュ」
 鉄串を両手指に挟み、未だ緊張を解かないままの十三が、立ち尽くす青年に声をかける。
「ええ」
 小さくいらえを返し、ヴィヴァーシュは洋装の胸ポケットから細い煙草を取り出した。火を付ければ、旱のものとはまた違う穏やかな薫りが街を往く風に融ける。
「何故、次の標的が判った?」
 静けささえ感じさせる煙草の香が、眼帯の奥の疼きを鎮めていく。十三の問いにしばし無言を返し、青年は閉ざしていた左の瞼を持ち上げた。
「犠牲になった男性達はおそらく、以前に剣士の役を務めた方」
「ああ、それは俺も気付いていた」
 旱の相槌に僅か頷いて答え、ヴィヴァーシュは探偵事務所から借り受けた被害者たちの写真の隅、記された四色の点を指差した。
「ですので、剣士役を務めた人をマークしていれば現れるのでは、と考えました。――一年を巡る季節に剣士を当てはめれば、春は青、夏は朱、秋は白、冬は黒となります」
 そしてそれは、被害者の殺されていった順番と、一致する。
「これが二巡し、次に狙われるのは黒……鬼神役のどなたかです。イェンさんには百田さんの火燕が付いているので、滅多な事は起こらないと考えて。……そこから先は当てずっぽうだったのですが、上手く行きました」
 あっさりとそう言い放つヴィヴァーシュの表情は、平時と変わらぬ涼しげな色を纏っていた。鬼神を取り逃がした事さえも気に留めず、次の対処を考える。
「ですが、まだ他の代の鬼神役の方々が居ます。一刻も早く、警戒を呼び掛けるべきでしょう。……巡節祭が終わるまでは、気を抜いてはならないと考えます」
 鬼神の司る冬は、巡節祭の終わりまで続く。故にかの暴霊が狼藉を揮っていられるのもそれまでであり、逆を言えば剣戟の日を待たなければ、鬼神を討ち倒す事もできないのではないか――そう、ヴィヴァーシュは考えていた。
 機会は一度。剣戟の行われる夜、その一夜のみだ。
 壁に凭れかかり煙草に火をつけながら、旱は鬼神の立ち去った虚空を眺めた。打ち鳴らされる摺鉦の如き声が、鼓膜に焼き付く。
「……あいつ、俺達を剣士に喩えてたな」
「今の奴には、そう見えるのだろうな」
 偶然なのか意図的なのかは判らないが、旅人は四人で、鬼神に相対する剣士もまた四人だ。
 鬼神の虚ろな眼に見えていたのは、異邦の旅人たちだったのか、己を殺す宿命を背負った剣士たちだったのか。――彼はそれを、待ち望んでいたのだろうか。
「なかなか憎い演出だと思うぜ、それ」
 くつ、と喉奥でひとつ笑って、旱は咥えた煙草を宵迫る空に燻らせた。
「……けどよ、アイツの声。どこかで聴いたような」
「それは、当然だろう」
 首を傾げる旱に、退魔師の堂々たる声が返る。その指先に、ひらりと滑空してきた炎の燕が降り立った。「俺達は既に、何度も聴いている」
「――では、まさか」
 ヴィヴァーシュが小さな驚嘆と共に、怜悧な視線を滑らせる。彼もまた、鬼神との対峙で感付いては居たのだろう。
「ああ、纏っていた装束で確信した」
 希薄な生の気配に、いびつな神威の名残。
 そして何よりも、苦痛に震え、己の罪に怯え、器から追いやられようとしている儚い魂が、十三にその推測は真実であると訴える。
 “ヘイイェがこんな事をするはずがない”その言葉の意味は、ただ己の罪を信じたくなかっただけなのだ。己の視た夢を。

「あの鬼神こそが、ユー・イェンだ」


 駆ける脚が鈍り、痛みばかりが鋭敏になっていく。
 理由など知っている。右腕に受けた傷の為だ。あの鉄串に巻かれた符からは、彼に馴染み深い束縛の呪が感じ取れた。忌々しく、懐かしい。人々が彼に与えた役割を如実に示した、符で縒り編まれた縄。
 彼岸と此岸を繋ぐ祠の入り口を塞ぐそれが、断ち切られていた事に気付いたのはいつだったか。訝しく思って此岸へ赴き、強引に闇から引き摺りだされて己さえも見失い――今に至る。
 誰が彼にそれを課したのか、詮索するつもりは毛頭ない。
 ただ、還りたいだけだ。彼岸への門を再び開き、己の安楽の地である向こう側へと。
 それが叶わぬ今、せめて痛みと呪だけでも紛らわせようと思い、この場所へと還ってきたのだ。鈴鳴の跫が砂利道を叩き、闇が彼を迎えるために震える。
「ねえ」
 その背中に、声が降る。
 泥濘の街にそぐわぬ、眩いまでの純白が降り立つ。
「ヴィヴァーシュお兄ちゃんが秋の舞手で、旱おじちゃんが大地の舞手。――じゃあ、十三おじちゃんが夏の舞手で、私が春の舞手って事でいい?」
 無邪気な声を伴って、顕れた白い鳩は紅の瞳を煌めかせた。するりとその姿がリボンのようにほどけ、やがて金と青の色彩を得、片目を眼帯で覆った洋装の少女、リーリス・キャロンが其処に現れる。
『好きにするが良い』
 少女の願望に頷くでもなく答え、鬼神は剣を抜き放つ。男であれ女であれ、彼の前に立ち塞がるのであれば、それは五色の剣士。――最早己の意義を喪った黒夜の神には、そう見えているらしい。
「ねえ、イェンおじちゃんはどうしたの? リーリス、おじちゃんに遊んでもらいたくて来たんだけど」
 小さく唇を尖らせて、少女は次の問いを口にする。
『この器の主か? 先程までは確かに眠っておったが、今はどうしているか』
「……死んだの?」
『さてな』
 その答えを、肯定と見るか否定と見るか。
 落ちる沈黙を是とせず、鬼神が宵闇を滑った。五色の羅紗が翻る。振り降ろされる剣、鈍く光る剣閃。

 ――黒き神の放った一閃は、確かに少女の身を切り裂いた、はずだ。しかし、包み込むような冥府の気配が立ち去らない。
 人間じみた仕種で周囲を見渡す鬼神を、嘲る声が落ちる。
「……そうね、キミも塵族で出来てるんだから、当たり前か」
 次いで現れたのは、紅い瞳の仔狼。
 咄嗟に振るった剣が小さな獣を捉え、切り裂く。だが、剣の触れた場所から獣の肉体はほどけて、違う形を紡ぎ出していった。金の髪に青い洋装の、ひとりの少女。
「斬られても死なないもの……だからこういう事が出来るの」
 片側だけの紅眼が凄絶な光を燈し、幼い少女の姿をした冥族は笑った。不穏な気迫に圧し負けて、鬼神が摺鉦の声で唸り、一歩後退る。
「ねえ、キミは暴霊――霊力の塊なんでしょ? どんな味がするのかな?」
 気紛れな捕食者の眼で鬼神の無様を嘲り、あくまでも無邪気さを装って問う。
『笑止!』
 ぢゃァん!
 大鐘の声を憤慨に張り上げ、しかし鬼神は豪放に笑った。
『我を喰らうても無駄だ』
「無駄?」
『この男は最早還らぬ。我もまた、違う形をとって麗江(リージャン)に降り立つまでの事よ』
 不穏な響きを残し、異形の闇が立ち籠める。リーリスごと包み祠の奥へと渦を巻いて消え行こうとするそれから咄嗟に逃れ、少女は闇へと変じた鬼神の姿を探す。人の肉体を留めているはずのそれを。
 しかし、覆い尽くすは黒ばかり。

 ひらり。

 融けて消える闇の向こう側から、一筋の青が蝶の形をとって飛び去った。


 主を喪った探偵事務所には、沈黙だけが横たわっている。
 足を踏み入れても、最早先日のような闇の気配は残っていない。その原因たる男が消えてしまったのだから、当然だろうか、と十三は口にするでもなく得心した。
 鬼神との対峙以降、街区での殺人ははたりと途絶えた。そして、鬼神はおろか、その宿主であるユー・イェンも煙のように忽然と姿を消し、旱の千里眼でも十三の火燕でも見つけられる事はなかった。
 世界司書からの帰還要請を受け、列車の待つ『駅』へ還る前にもう一度だけ手掛かりを探しに四人はこの場所を訪れ、しかし――やはり、と言うべきか、無意識の内に七人を惨殺した探偵は、生活の内にそれを悟らせる痕跡などは残していなかった。
 ただひとつ、探偵の坐していた机の上に、見覚えのないメモが伏せられている以外には。
 何気なく近付いた旱が、その紙を裏返す。
 ――そこには、荒々しくも何かに怯え、震える文字だけが残されていた。

『 全部、夢だったんだ。

                    ゆるしてくれ。

                       瑜 焔(ユー・イェン)』

クリエイターコメント四名様、大変お待たせいたしました! 御参加、ありがとうございました。
新しい年の巡る直前、彷徨う鬼神との邂逅を記録させていただきました。

OPコメントで触れた「判定」について、幾つかお話を。
ひとつめの判定は「被害者の殺された順番」であり、こちらはヴィヴァーシュ様が「一年を巡る季節に舞手を当てはめる」と明記してくださったので、殺人を未然に防ぐ事ができました。
もうひとつの判定箇所については、「犯人=鬼神を目撃していないはずの探偵が何故“ヘイイェ”の名を口にしたか?」でした(皆様は世界司書からの情報でそれを知っていましたが、インヤンガイの住人は誰も知らないはずです)。
こちらについて言及された方はいらっしゃらなかったのですが、百田様が「イェン自身が鬼神である可能性」を提示してくださったので、「探偵は生死不明のまま消失」とし、その行方は後編に委ねる事と致しました。

筆の向くまま自由に捏造してしまいましたので、口調、設定、心情等、イメージと違う点がありましたら事務局まで御伝えください。出来る限りで対処させて頂きます。

それでは、物語は幾つかの謎と不穏な影と一筋の希みを孕みつつ、後編へと続きます。
機会が御座いましたら、また何処かの階層にてお逢いしましょう。
公開日時2011-02-13(日) 13:20

 

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