クリエイター北野東眞(wdpb9025)
管理番号1158-19595 オファー日2012-09-26(水) 19:03

オファーPC 旧校舎のアイドル・ススムくん(cepw2062)ロストメモリー その他 100歳 学校の精霊・旧校舎のアイドル

<ノベル>

「パス1枚に付きロストナンバー1人の乗車。これが世界図書館のルールです。お守りください」

 ……あの司書は一体、どこのどなたでしたのか。なんか、こー、ふわふわなまだらな毛のイケメンで、頭は赤い毛に覆われて、背中にファスナーがあったような、注意のあとおいしいカレーを食べさせていただきましたが、なんや注意のときは美少女でしたのにカレーを食べていやしたら、小さくなってにやりっと笑ってましたわ。肌の色は褐色できりっとした刃物のように鋭い印象の女性、で、頭には二本の角があって、お尻からは黒い尻尾が生えておりましてにゃあと……うむ、困りやしたねぇ、わかりやすい特徴があがっていくのに名前がとんと出てきやせん。この特徴がすべてはいっているお方でやんす。むっ、わっちが嘘をついていると言うと? このプリティな目を見てください。嘘をつくにはあまりにも澄んだ、きらきらの星のような、いや、朝日のように神々しい、え? 線が2本引いてあるだけじゃないかですかって……あ、あ、あ、あ、あんさん!? なんてことを言うんでやんすかぁ!? ――大正解でやんす! はははは、このススムくん、嘘はつきやせんが、からかうことはありやんすよ? けどな、レポーターのお嬢さん、もうちょっとこっちに来てください、そうです、そそっと、そそっと、ほぉら、じぃいいと見てくださいでやんす。わっちの目はですなぁ、生まれた世界の、それは、それは高貴なお方がひいてくださいやしたんですよ? そうでやんす、お米に文字がかけるお人で、この目は線のようで、実は轟く龍の絵となっているんでやんすよ! あまりにも細く書いてあるんでわからんかもしれませんが、よーく見てください! え、たかだか人体模型にそんなことをする人がいるかって、かぁー! あんさん、なんべん、わっちのレポートしてるんですかぁ! え、以前、1回しただけで、それも嘘ぽかったなんて、ひどい、ひどいですわー! ええ、ええ、わかりやしたよ! あんさんにはこの際、しっかりと話しあいましょう! この旧校舎のアイドル・ススムくん、木製の誇りと吐きだすいちご味の心臓に賭けて逃げも隠れもついでに燃えもしません! えっ元は木だから良く燃えるっていわれ、ええい、だまらっしゃい!

 ふぅー。わっちとしたことがつい熱くなってしまいましたなぁ。えらいすいません。けど、これもあんさんにはわっちのことをしっかりと知ってほしかった……いわば愛の鞭のようなものとして受け取ってください。え、そんなものはいらない。そうでやんすな。鞭よりも、もっといいものをさしあげましょう。すー、ごけごけごけええええええええええええええええええええええええええええ!

 ささ、いちご味の心臓でやんす! 前は食べていただけなかった気がするんで今日こそは! 吐きたて、ぴちぴち! ほら、跳ねてますで! ほれほれ、お嬢さん、食べてください! 最近、いちご味の心臓も古いような気がするんでやんすよ。ほら、食べるんでしたら、飲み物も必要でやんすよね? 鼻から紅茶を出そうかと思うんでやんすよ。いや、それは見た目があかん? そうですなぁ。たしかに、ちょっとあかんですなぁ。でしたら、この剥きだしの赤と青の血管をぶっちりととって、紅茶のあったかいの、つめたいのが出るようにしたらええですかなぁ? お嬢さん、なにか思いつきまへんか? 


 ああ、すいやせん。話がものすごく飛んでしまいましたなぁ。いけませんなぁ。こー、物覚えの悪さの上に、つい話が脱線してしまう癖が……ハッ! これがもしや痴呆! いややわぁ、まだぴちぴちの百ちょっとのはずが、あれ? わっち、百、百、何歳でしたっけ? あ、あかん、これは、ホンマにアカンですよ! 痴呆が、痴呆が進行してるでやんす! え、だったらビタミンBでやんすか? はは、そうですなぁ。しかし、困りましたなぁ、飲食不要なわっちにはとんと摂取出来ないものでしてなぁ。しかし、教えていただいたこと今度、ためしに口のなかにいれてみましょか。ビタミンでしたら、レモンですかねぇ? ただその場合、わっちのプリティないちご味の心臓がレモン味になってしまう可能性も……え、わっちの口は心臓に直結しているのかって? ははは、ばかいっちゃいけません。この人体模型。麗しい学生さんたちに我が身を見てもらい、人体の不思議を理解してもらうためにいるんでやんすよ。いまでこそ動きまわってますがねぇ、え、だったらなぜいちご味の心臓が吐き出せるのか、それって胃から出てきてるかって……はぁー、ホンマ、これやから何も知らんお人は困りますなぁ。いいですか、わっちはですなぁ。え、ああ、今はその話は右にでも置いていけ? そうですなぁ。すいやせん。また話が飛んでしまいましたなぁ。で、なんのお話でしったけ? あ、そうそう、ロストレイル消失の御話でやしたなぁ。

 あの頃、わっちは二百体ほどおりやした。ええ、いまでこそ百体がぱたぱたと元気にチェンバーを駆けまわって、踊ったり、掃除したり、歌ったり、ときどき心臓を吐いたりとしておりますがね。そう、あの事件のきっかけは、人手が大量に欲しいっていう依頼でした。この身、誰かのお役にたてればそれこそ嬉しいことはありません。昔は学生さん相手にただ動かず寄り添うだけでやしたからなぁ。ここにきて動けるようになったのをきっかけに今まで多くの人に優しくされたことへの御恩をどんな形にしろお返しできたらと。まぁ、たまに悪戯書きするクソガキもおりまして、そういうやつにはそれそうとうの報いを今ならお返しできる……っと、それはええですな、それでですな、わっちらは喜び盛んにその依頼に飛び付いたわけでやんす。もう二百体ですからなぁ。「わっちを必要してください」「いいえ、わっちを」「わっちです!」「役に立ってみせます!」の声がターミナルいっぱいに広がりました。そんなわけでススムリーダー一号が「みんな、必要とされたいかー」「おおおおおお」「わっちらの魅力を今こそみせるときですー」「いくぞおおおおお」と音頭をとりましてな。そんなわけで二百体のわっちらは司書さんに、みんなで手を出して「ちけっとおんなましぃ!」と言いました。そうしたら、その司書さんっていうのが、そうです、冒頭に出てきて、そりゃ、もうこわーい人でやした。つまりはですな、チケットは一枚しか与えらないってことでやんすよ。これやとわっちら全員は行けないやないですかぁ! ――勇気と根性を絞り出して訴えたんでやんすんよ、二百体で……ええ、泣き落とし、色仕掛け、ブーイング、イチゴ味の心臓賄賂……ことごとく司書さんにけっ飛ばされやした。それもこわーい睨みつきにわっちにはスゴスゴと引きさがるしかありませんでした。
 そんなわけで一枚しかもらえなかったチケット。それを真ん中にぽつーんと置いて、わっちらは顔を見合わせました。
 どないしょうか。
 そうですなぁ。
 木の脳味噌をフル回転させてですなぁ。はじめはじゃんけんできめましょか、ということになったんですわ。けど、ほら、わっちらみんな元は一人なんで、ずぅとアイコが続くんでやんすよ。埒があかんってことで今度は椅子取りゲームならぬチケットゲームってことで二百体が円になってチケットを真ん中に音楽をかけて走り回り、音楽が終わった瞬間に飛びつく……これでチケットをびりびりにちぎってしまいましてなぁ。幸いにも、その場にセロテープがあって、みんなで一時間ほどかけて直しましたが、どうしても端っこの一枚が見つかりません。本当に口から大量の心臓と一緒に脳味噌まで飛び出すほどあせりって、司書さんに見せたら

「チケットは1枚しか発行できません。そして、欠けたり、折れたものは使用できません」

 な、なんやってー! とその場にいるわっちらは唖然としました。え、じゃあ、これつかえないんですか? そう聞いたら「使えません」との無情の一言……こ、このままでは依頼にいけんなってしまうっ!
そんなわけで三人集まれば……でしたら、わっちには二百体おるわけですからなぁ。なんぞいいあいでぃあが生まれるはずです。で、出た結論がですなぁ

「1人残して全員で無賃乗車すればいいんじゃね?」でやんした。

 そんな顔せんといてください。あのころは若かったんでやんすよ。それに仕方ありません。チケットは一つ、けどみんなで行きたいやないですかぁ。まぁ、そのとき自分たちの大胆な発想にどきどきしたことをよぉに覚えてますわぁ。それにあれですわ、ばれなきゃ、何も怖くないでやんすよ。二百体もおりますから、叱られるときも一人やないわけですし。

 そんなわけで、決行したわけです。どうやって? それはですな、わっちら三々五々に分かれて、駅舎に忍び込んだんでやんすよ。ある者は駅員になりすまし、ある者はゴギブリのように地下から、あるものは分解されてゴミとして、ある者は他の乗客さんの手荷物に、ある者は駅弁売り……まぁ、入る手段はいろいろとあるんですわ。ふぉふぉふぉでやんす! あのときは怪盗ススムくんズになれるんやないかなぁと思いましたわ。
 それでですなぁ。あとは目的のロストレイルが出るときに全員で飛び出して、しがみつく、という至ってシンプルな作戦でやんすよ。え? 変装したりするなら、それではいればいいんじゃないか? いやいや、それがですなぁ、入ろうとするとあの駅員さんがめっちゃ立ちふさがるんです。チケットもってない人は通しませんって。もしチケットをもってなかったら、建物の裏に連れていかれて……あ、あああ、あかん、これ以上えげつないことはいえません! とにかくこわーいことがまってるんです。そんなわけで、あの駅員に捕まらんためにはロストレイルのドアが閉まって、いざ出発する、というタイミングやないとあかんわけですわ。そんなわけであっちらはその瞬間、全員が変装を解いて駆けだしたわけです。もちろん、木製の人体模型とロストレイルじゃあ、勝負になりません。ですからね、こういうときのために一体のススムくんの頭をはずして、ロープでくくっておいたでやんす。それを思いっきりロストレイルに投げるんでやんす。そうやってロストレイルのどこかにひっかればいいなぁと思いました。そしたら見事にドアノブに顔面が刺さってですなぁ、一体の尊い犠牲がおったおかげで……だいじょうぶでやんすよ、脳味噌は木でやんすからね。あとはそのロープにみんなでしがみつけばいいだけでやんす。

「後ろがつかえてるでやんす! 前へ前へ!」
「こうなったら線路と列車の隙間に忍び込むでやんす」
「いざとなったら、ススム合体でやんすよっ!」
「ひぃぃ、わっちのダンディな尻に摩擦熱で火がぁ~?!」

 あのときの修羅場はれそはもう大変でやした。いや、それ以上に大変でしたのはそれからです。ほら、わっちら百九十九体……たとえ木であっても、それだけ集まれば重かったらしく、ロストレイルが軋みはじめ、ぎぃぎぃといって、大きく揺らいだでやんすよ。そして、あっと言う間に劫火に包まれてディラックの海に沈みやした。
 あの瞬間のことは、今でも忘れません。此処に残るわっちにみんなの声がしたんでやんす

「ススムその百号、あとはお前に任せやしたでぇええ」
「さらばああああ、たーみなる、ススム、一同、敬礼ぃいいい」
「はいいいいいいいい!」

 さ・ら・ば――!!

 わっちの目には仲間たちが敬礼する姿がありありと見えやした。そして、チェンバーに残ったわっち以外、みんなディラックの海の藻屑になりやした。愚かさと悲しみの結末でした。
ロストレイルが今13? しかないのは、そんな理由でやんす。ここでこのお話は……どっとはらい

クリエイターコメント 今回、二度目のレポートということで、以前よりもつっこんでお聞きしようと思いました。しかし……お話を窺っていて、ロストレイルはたしか12台じゃ? それにススムくんは今も百体くらいいるはず、それにここにきた経緯って……はっ、私の背中を叩く優しい手。そして「お嬢さん、世にもターミナルの奇妙な物語にいらっしゃい」あ、あ……(このあとレポート報告は途切れている)

オファー、ありがとうございました。
オファー文を見て吹きだしました。さて、どこまでが真実でしょう。ススムくんによるターミナルの世にも奇妙な物語はまだまだ続きそうですね。
公開日時2012-10-15(月) 21:40

 

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